ユリイカ - deep breathing

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SFのよいところ

2007-01-17 14:56:46 | 考える
少し前から気になっていた『老ヴォールの惑星』を読んだ。4篇入っている。しばらく読んでいなかったSFというジャンルだが、読んでよかったあ。解説には「環境と主体の相克を描破した」とあるが、難しくなく読む人が感情移入できるし、最後に希望がある小説だった。どれもよかったが最後の「漂った男」に感動した。環境といっても、今世の中でいわれてる環境は自然環境をさしていることが多い。エネルギー問題や廃棄物の問題を技術やデザインでかっこよく乗り越えていこうという流れがメディアでは主流である。でも、環境ってそういう問題だけじゃなくて自分の周りにいる「人」も環境である。環境問題は現実の世界だと卑近な問題ばかりで、つい「これって一時代前の◯◯の言い換えじゃない」とか「本当に未来のことを考えている専門家はいるんだろうか」といった突っ込みを入れたくなってしまう。それに対してSFのよいところは小説という自由な立場を生かして、もっと根源的な問題をきちんとついてくれて、考えが広がるというか、多くの可能性を示してくれるところだ。大きな視点で自分もしくは自分達を見る事ができる。著者の小川一水さんは1975年生まれ。これからの作品の展開も更に楽しみ。安部公房のような袋小路に入らないでね。