忘備録の泉

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二宮翁夜話①

2018-08-01 10:43:04 | 読書
江戸時代は、日本史上、道徳教化の黄金時代であった。
江戸の町は当時200万人を超える世界最大の人口を擁する都市であったにもかかわらず、直接見回りをする同心(警察官)は20人そこそこの人員で足りていたという驚異的な治安のよさを実現させていた。
この時代の道徳を確立し、その実践者として社会をリードしたのが、武士という存在であった。
かつての武士の倫理観と儒教を融合させながら武士の道徳、つまり武士道が形成されていったのである。
そして、この武士道はやがて百姓・町人の世界にも波及し、武士道の民衆化が行われた。

二宮金次郎という人物は幕末の時勢のみならず、江戸時代という「道徳教化の黄金時代」の中からこそ生み出された人物だ。
金次郎は、14歳で父と死別し、16歳で母と死別し、一家離散するという艱難に遭遇している。
金次郎は、こうした心魂に徹する困窮によって、わが身やわが家は本来ないものと覚悟して、人や国のためになることに勤めようと決意した。
そして、農村の復興と繁栄の事業、すなわち百姓たちの幸福のためにその生涯をささげたのである。


わが国近代化の幕開け、明治という時代は、欧米の先進文明を取り入れていくことが、万事に優先して考えられた。
これまでの伝統的な価値観に疑問と批判が投げかけられ、政府・民間とともに欧米の文明文化に没頭し、心酔する傾向に拍車がかかっていった。
当時の社会の風潮は、やがて国民精神に暗い影を落とす結果をもたらした。
道徳的人心荒廃の問題である。
道徳的な混乱にあえぎながらも、近代国家を支え得る精神的バックボーンを希求していた文部省は、翻訳教育から自主教育へ、輸入教育から独立教育へと根本的転換を行った。
民間においては新渡戸稲造の「武士道」や山岡鉄舟の「武士道」が出版され、広く読まれ大きな反響を呼んだ。
国民が武士道的で道徳的な生き方ができる社会の到来だ。

金次郎の倫理思想や農村復興事業も、その弟子たちの活躍により、政府や民間にも広く知られるようになった。
わが国の伝統に根ざした道徳教育を模索していた文部省にとって、二宮金次郎という人物は願ってもない教材であった。
検定教科書や国定修身教科書に、明治33年から終戦時まで取り上げられた。
戦後、戦前の道徳教育は停止命令を受けて、今日にまで至っている。
戦後、まともな道徳教育を学校で教えなくなって、もう70年が過ぎている。
道徳をまともに教わらなかった世代が、3世代にわたろうとしている今日、日本人における道徳崩壊はほぼ完成しつつある。


「二宮翁夜話」は、二宮金次郎の高弟「福住正兄(まさえ)」によって筆録された金次郎の語録である。
人生を豊かにする知恵の言葉を学んでいきたい。

(つづく)


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