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忘備録の泉

思いついたら吉日。O/PすることでI/Pできる。

欲求行動の認知理論

2019-07-20 10:15:44 | 心理
人は“目で食べる”というが、これは欲求の認知説をよく言い表している。
お腹がいっぱいなのに、なぜ人はまた食べるのか。
それは生理的欲求からではなく、外の刺激によるのである。
食欲をそそるおいしそうな食事(誘因)によって生じる行動なのである。

行動にはこのように、内から人を動かす力(動因)と、外から人を引っ張る力(誘因)とがある。
誘因によって生じた欲求に行われる行動を認知主導型行動という。
心理的欲求や社会的欲求はこの誘因の認知から生じる欲求・行動が多い。

欲求を認知的に考えていくときの重要なキーワードは、価値と期待である。
第一に誘因が当人にとってどのくらい価値があるかが、欲求を生じ、行動させるひとつの重要な決め手となる。
もうひとつは、目標が獲得できるかという期待である。
“できる”という確信が欲求を生じ、行動を起こさせる。
まったくできそうにない難しい課題ではやる気が生じない。
目標達成への道筋がきちっと見えているとき、欲求は生じやすい。
勉強においても仕事においても、目標が設定され、達成への期待が明確に意識されると、達成欲求が強められ、作業効率はぐっと上がる。
これは、認知が欲求を生じるからだ。

現代社会で生活している私たちは、生理的欲求はほぼ満たされており、ほとんどの行動は心理的欲求、社会的欲求によって動いているといえる。
以下の「マレーの欲求リスト」は、この心理的欲求の分類に力点が置かれている。

A. おもに生きていない対象と結びついた要求

1.獲得欲求: 所有物と財産を得ようとする要求

2.保存欲求: いろいろなものを集めたり、修理したり、手入れしたり、保管したりする要求

3.秩序欲求:ものを整頓し、組織立て、片づけ、整然とさせ、きちんとする要求

4.保持欲求:ものを所有し続け、それを貯蔵する要求; かつ質素で、経済的で、けちけちとする要求

5.構成欲求:組織化し、築き上げる要求

B. 野心や権力に関係した要求

6.優越欲求:優位に立とうとする要求、達成と承認の複合

7.達成欲求:障害に打ち勝ち、力を行使し、できるだけうまく、かつ速やかに困難なことを成し遂げようと努力する要求

8.承認欲求:賞賛を博し、推薦されたいという要求; 尊敬を求める要求

9.顕示欲求:自己演出の要求; 他人を興奮させ、楽しませ、扇動し、ショックを与え、はらはらさせようという要求

C.地位防衛に関係した欲求

10.不可侵性欲求:侵されることなく、自尊心を失わないようにし、"よい評判"を維持しようとする要求

11.劣等感の回避欲求:失敗、恥辱、不面目、嘲笑を避けようとする要求

12.防衛欲求:非難または軽視に対して自己を防衛しようとする要求; 自己の行為を正当化しようとする要求

13.中和欲求:ふたたび努力し、報復することによって敗北を克服しようとする要求

D. 力の行使に関係した欲求

14.支配欲求:他人に影響を与え、あるいは統制しようとする要求

15.恭順欲求:優越者を賞賛し、進んで追随し、喜んで仕えようとする要求

16.模倣欲求:他人を模倣、またはまねようとする要求; 他人に同意し、信じようとする要求

17.自律欲求:影響に抵抗し、独立しようとする要求

18.反動欲求:他人と異なった行動をし、独自的であろうとし、反対の側に立とうとする要求

19.攻撃欲求:他人を攻撃したり、または傷つけたりしようとする要求; 人を軽視し、害を与え、あるいは悪意をもって嘲笑しようとする要求

20.服従欲求:罪を承服甘受しようとする要求; 自己卑下

E. 愛情に関係した欲求

21.親和欲求:友情と絆をつくる要求

22.拒絶欲求:他人を差別し、鼻であしらい、無視し、排斥しようとする要求

23.養護欲求:他人を養い、助け、または保護しようとする要求

24.救護(依存)欲求:援助、保護または同情を求めようとし、依存的であろうとする要求

F. 禁止に関係した欲求

25.非難回避欲求:しきたりに反する衝動を抑えることによって非難、追放または処罰を避けようとする要求; 行儀よく振舞い、法に従おうとする要求

G.質問応答に関係した欲求

26.認知欲求:探索し、質問し、好奇心を満足させる要求

27.証明欲求:指摘し、例証しようとする要求; 情報を与え、説明し、解釈し、講釈しようとする要求

マレーの心理発生的要求リスト(Murray, H.A., 1938)より

ルビンの杯

2019-07-19 13:32:01 | 心理
心の中にできた心理的環境が外の世界と同じではないのは、人間特有の知覚の仕方による。
知覚の基本法則には次のようなものがある。
(1)図と地的知覚
(2)対比的知覚
(3)ゲシュタルト的知覚
(4)恒常的知覚(その場の見え方が多少異なっても同一性を持ったものと知覚する傾向)
(5)運動知覚
(6)三次元的知覚


(1)の「図と地」の関係を明らかにしている図が、「ルビンの壺」である。
まずは杯に見える、あるいは花瓶にも見える。
初めてみる人には、なかなか人の顔には見えない。
この絵の中に杯を見る人は、真ん中の白い部分を「図」として知覚し、黒い部分を「地」(背景)として知覚しているのだ。
杯の上辺と下辺の縁を何かで隠すと、杯は見えなくなり、二人が向き合った顔の絵となるだろう。
黒い部分が「図」として知覚され、白い部分が「地」となる。
ルビンの壺は、人の知覚の不思議さと同時に、物事はいろいろな角度から見なければいけないことを私たちに教えてくれる。

若い男性がこの絵を見ると若い女性に見え、姑にいじめられている若いお嫁さんには意地悪なおばあさんに見えるという。
日頃の欲求や不満・不安が絵の見方を変えるというのだ。
若い女性にしか見えない人は、どうしたらおばあさんの顔に見えるのか。
まず、若い女性に見えたときの耳を、おばあさんの大きな目と見る。
そして若い女性に見えていたときのあごをおばあさんの大きなカギ鼻と見るのだ。

コピーの学校
帰りたい夏は、
いくつあってもいい。


ナポレオンの亡霊

2019-07-18 13:51:02 | 心理
目は心の窓、つまり知覚は心理の入り口である。
目で見ることから、心が働き始める。
人は外の世界をどのように見て、心の世界をつくっているのだろうか?
外の世界を知るのは目だけではなく、耳、鼻、舌、そして皮膚の感覚器官があり、これらを「五感」という。

ものを見るというとき、もちろん外にあるものを見るのであるが、同時に心の持ち方も見るものを決めるので、双方向のプロセスを考えることが大事である。
あるのに見えないということがあるし、逆にないのに見えるということもある。
上の図を見て、ある人にはナポレオンが立っているのが見え、別の人には2本の木しか見えない。

なぜ同じではないか、その原因は3つある。
【認知決定の3要素】
(1)感覚器官(目の働き)
(2)知覚特性(ものの見方)
(3)認知プロセス(心で見る)


コピーの学校
第三次世界大戦が、
テレビゲームでありますように。



傾聴は人を生かす

2019-03-09 15:27:28 | 心理
じっくり傾聴され、相手が自分のことを理解し受け入れてくれたと感ずることができると、心の底に眠っている自覚していなかった思いや願いに気づくようになる。
そうして自分を受け入れられるようになると、自分の気持や感覚に自信がもてるようになり、その自分の正直な気持ちや感覚を大切にするようになる。
自分自身を好きだと思えなかった人も、自分を好きだと感じられるようになる。

自分のありのままの姿を信頼できるようになると、悩み事が減っていく。
それは、他人から悪く思われるのではないかという不安から解放され、他人の目をそれほど気にしなくなり、他人の価値観に振り回されなくなるからである。

物事や他人について悲観的な受け止め方をする傾向があった人も、現実を見つめ、現実に即した感じ方をするようになる。
考え方も柔軟になり、白か黒かで決着をつけなければ気が済まなかった人が、「こういう見方、感じ方、方法もあるな」と、異なる側面を認めることができるようになる。
生きること自体がらくに感じられ、自発性とやる気が湧いてくる。
他人に理解してもらえると自分に自信がもて、自由でらくな生き方に出会い、もっと良い人生にしたいという気持ちが強くなってくる。
人は「心」に生かされるのである。

傾聴を妨げるもの

2019-03-07 09:37:37 | 心理
人の話に素直に耳を傾けることのできない人がいる。
負けたくないという気持ちが強すぎると、傾聴を妨げる。
幼いころから「強くないといけない」「負けてはいけない」「成功しないといけない」と期待されて育てられた人は、競争しようとする傾向が強くなり、話を聴くのが苦手になるケースが多い。
競争心そのものは悪いことではないが、話を聴くことができなければ、人との関係は疎遠になり、人生において大きなマイナスになってしまう。

仕事関係や近所づきあいなど様々な場面で、「自分が正しく、相手が間違っている」ことを証明しなければならないという思いに発展してしまうと、人間関係がぎくしゃくしてしまう。
自分の正しさにこだわる人は、心が弱く不安定で、間違ってしまうこと、失敗することをとても恐れる。
そのため、話の流れをコントロールして主導権を握ろうとしてしまう。
聴き手が主導権を握ってしまっては、相手の話を聴くことはできない。
どちらが正しく、どちらが間違っているかということにとらわれず、人とのつながりを大切にしながら関わっていくのが傾聴である。

傾聴においては、会話がどんな内容になるのか、どんな方向に流れていくのかは、話し手にも聴き手にもわからない。
相手に話したいことを話してもらい、聴き手はそれを理解しよう、受け入れようとしてついていくだけで、その結果どうなるのかの予測はできない。
とにかく話を聴くときは、話の流れに身を任せることだ。
そう考えれば、どんな人からの、どんな話でも、不安になることはない。