ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

Forest-green jacket & Parasol for gentlemen

2010-09-11 04:00:00 | 白井さん


 台風一過の昨日の横浜は約一ヶ月ぶりに最高気温が30度を下回り大変過ごしやすい一日でした。頬を撫でる港の風も心地好く、ようやく暦の上だけでなく身体でも秋を感じることができました。明日からまた残暑がぶり返すようですが、その後はゆるゆると穏やかな陽気になってゆくそうです。

 そんな爽やかな秋晴れの一日に白井さんが選ばれた服は、今期新たにワードローブに加えられた綺麗な深緑のジャケット。

 『新しいから少しいじめてやらないとね。』

 なるほど“いじめる”かぁ~(笑)。これまた独特な表現!

       

 今回のコーディネートは白井さんがお好きな組み合わせ“Green & Blue”。ジャケットの緑とイングリッシュタブカラーシャツの青、いずれも上質な生地が用いられているので発色が良く、そのコントラストは目に鮮やかに写ります。縞のタイはジャケットから、チーフはシャツから、それぞれ色を拾い“初秋の清涼感”を感じる装いです。

 靴は金茶の柔らかな色合いが殊に美しいスウェードのキャップトウ。細部に至るまで白井さんが細かく指定して作製された一足ですので、色のみならずその形も思わず溜息が出るほどの晴らしい靴です。靴下にはジャケットとほぼ同色の深緑を。

 いずれの品も匠の技で仕立てたベーシックなフォルムに上質な素材を纏わせたシンプルなもの。しかし最も大切なのはそれらを着こなすこと。長年の経験から導き出された組み合わせの妙がキラリと個性を主張する、それが“白井流”・・・ですね!



 さて、白井さんがお手に取られている傘は、傘は傘でも“Umbrella”ではなくて“Parasol”、つまり“日傘”。それも白井さんの為に作られた暦とした“紳士用の日傘”なのです。

 私は昨年の夏、この日傘を白井さんに見せていただいたのですが、“紳士用の日傘”というもの珍しさもさることながら、ほとんど芸術品と云っていいまでの完璧な美しさは私の脳裏に鮮烈に焼きついていて、この項を始めた際も“是非、真夏の盛りに麻のスリーピースと一緒に写真に収めてみたい!”と心中密かに企画していたにもかかわらず、その麻のスリーピースを拝見した際は白井さんの着こなしの素晴らしさに唯々心奪われてしまい、日傘のことはすっかり忘れてしまった(汗)、という経緯があり、些か旬を過ぎてしまいましたが、夏が終わってしまう前にこれだけは何としてもご紹介したい!という私のわがまま企画です、今回は(長い・・・汗)。

    

 張りは支那絹紬(けんちゅう・・・柞蚕糸(さくさんし)で織った薄地の平織物。淡褐色を帯びて節がある。布団・洋傘・衣服などに用いる。)。マラッカ(籐)の柄にシャンクは樫、石突は水牛。骨は英国の古の老舗スティールメーカー、S.FOX社製。裏地の緑にもご注目を!!

 この項をご愛読いただいてる方ならどちらの日傘かはもうお判りでしょう(笑)。以前にもご紹介させていただいた、今はなき元町の洋傘職人・小島さん製作のまこと美しき日傘です。

 白井さんは、

 『昔は本当にお洒落な人が多かったんだろうね~。この日傘を差して13本柾目の桐の下駄履いてちょっとぶらり、なんてのは洒落てるだろうね~(笑)。』

 と仰りながら傘を丁寧に丁寧に巻き直し仕舞われていました。







Cotton suit & alpaca knit tie

2010-09-09 04:00:00 | 白井さん


 信濃屋さんのウィンドウがぐっと秋めいてきて道往く人の目を楽しませています。毎年の風景なのに何故か新鮮に感じるのはきっと私だけではないでしょう。我々のDNAの中にある四季を愛でる心がそう感じさせているのに違いありません。

 今日の“白井さん”は初秋を楽しむコットンスーツの着こなしです。

   

 イタリーの豊かな遊び心と優れた色彩感覚がこの色を生み出すのでしょうか。ジャンニ・カンパーニャ(伊)のハンドメイド・スーツは見る者も楽しませる独特の色合い。そして合わせる小物もまた遊び心溢れ色鮮やかです。

 足元はスウェード&ラバーソールの外羽根プレーントウ。鮮やかなグリーンのニットタイは複数の色の糸が複雑に絡みあい躍動感のある編み込み。胸元にはタイとは少し色のトーンが異なるグリーンのペイズリー柄のチーフを。

   

 夏が始まった頃、このブログを楽しみしてくれている服飾仲間のT君との会話で、

 『白井さんは麻のシャツは着ないんですかね?』

 という素朴な疑問がテーマになったことがありました。早速後日、白井さんにこのことを質問してみると、

 『何枚か持ってはいるけど滅多に着ないねえ。シャツは上質の綿が一番良いよ。』

 とのお答えをいただいたことがありました。確かに夏の間も最も“登板数”が多かったのは白井さんが“絹ポプ”と呼び、愛用されている超細番手の綿のポプリン織りのシャツでした。

 しかし!今日はその滅多にお召しにならない“LINO”麻のシャツの登場です。但し、白井さんは基本的に人前ではジャケットは脱がない主義なので、私の判断で写真の構図がちょっと控えめにしてあります。ご容赦を(笑)。

 ナポリで衝動買いされたというシャツはノータイでも決まる小さめで柔らかい襟。各所に施されたギャザーや両胸のフラップポケットもエレガントで、これならジャケット無しでも品良く決まります。そして、何となく白井さんの中での麻のシャツの位置付けが解ったような気がします。

   

 それから、今日のニットタイの素材はタイトルにある通り“アルパカ”。

 実は先日、ひょんなことから白井さんとこのアルパカのニットタイの話になり、その時私が、

 『ええ~!アルパカですか!じゃあ冬用ですね?』

 と伺ったところ、白井さんが、

 『いや、そんなこともないけどね。』

 と説明してくださった、という経緯がありました。まさに“百聞は一見にしかず”。私にとっては今日の白井さんの着こなしにはそんな意味も含まれているのです。白井さん、ありがとうございました!



Pistachio green jacket

2010-09-04 04:00:00 | 白井さん


 9月最初の白井さんの着こなしは季節を先取りした“秋色”の装いです。

   

 そろそろ収穫を迎えるピスタチオの緑を連想させるグリーンのグレンチェックのジャケットはダリオ・ザファーニ(伊)。そして濃茶のギャバディンのパンツは信濃屋オリジナル。茶系のパンツは更新65回目にして初めてではないでしょうか!これは大変貴重なショットです(笑)。

 細身のドットのタイも濃茶(信濃屋オリジナル)、艶やかに輝くタッスルスリップオンも濃茶、ソックスの色にもご注目を(笑)。ジャケットの“緑”とストライプのシャツの“青”のコントラストは目に爽やかで、この色の組み合わせは白井さんもお好きなのだとか。

“シーズンの過渡期には色で変化をつける”・・・前回お話いただいた通り、早速濃い目の色を組み合わせに取り入れて“秋の気分”を表現されています。洒落者とは常に一歩先を歩むものなのですね。

     

 この日は元町の家具屋さんと喫茶店に寄り道してから帰ろうと思い、白井さんと帰り道をご一緒させていただきました。日中の暑さを残した夕暮れの馬車道を歩きながら白井さんは、

 『早くフランネルが着たい。ツィードもね(笑)。』

 と仰っていました。“ああ~白井さんらしい表現だなぁ~”と思い、心のメモに留めました。

 If summer comes, can Autumn be far behind?



Stripe suit & shoes like an antique furniture

2010-09-01 20:16:12 | 白井さん


 今回からこのブログの更新も9月を迎えることとなりました。9月はまたの名を長月。秋の夜長が語源らしいですが、最近では長いといえば“残暑”。夏が大好きな私ですが、こうダラダラと暑い日が続くと些かうんざりしてしまい軽く夏バテ気味になってしまいます。ひょっとすると今年の十五夜は“カキ氷片手に月見”なんてことになるかもしれません。

 

 まだまだこの暑さはつづきそうですが、残暑来たりなば秋遠からじ、この項をご覧頂いている洒落者の皆さんは来るべき次の季節を見据えつつ着々と準備を整えていらっしゃることでしょう。とはいえ、季節の変わり目は着るものにとかく悩むもの。そんな時は、

 『色で変化をつけるのがいいね。』

 と、この日は白井さんから着こなしのワンポイント・アドヴァイスを頂きました。いきなり秋冬物の素材へ移行するのは無理があるので、素材は夏物でも少し濃い目の色や抑えた色調のものを使うなどして着こなしに変化をつけるのが良い、とのことです。

 今日の着こなしは明るめの色使いながらも色調を揃え、落ち着いた“晩夏”の雰囲気が表現されているのかな、と感じました。

   

 さて、タイトルに“shoes like an antique furniture”なんてちょっと大胆な表現を使ってしまいましたが、決して言い過ぎではありません。白井さんの靴はこの日も素晴らしい、そして独特な輝きを放っていました。シルヴァーノ・ラッタンツィ(伊)のキャップトウです。

 セブンアイレッツ、リヴォルターテ、コバ内側の鋭角的な切れ込みから続くべべルドソール、といったディテイルもさることながら、特筆すべきは独特な“古び”を纏わせる白井さんの“磨きの技”。今日の靴はさほど古いものではないとのことですが、まるでアンティークの家具を連想させるような深みのある艶と輝きを湛えています。白井さんは、

 『ちょっとイタズラしてみただけだよ(笑)。』

 と仰っていましたが、誰もがおいそれと辿り着ける境地ではないことは火を見るよりも明らかなことです。表面をツヤッと光らせるだけなら私にもできるのですが、白井さんの靴は内側から底光りするように、時に鈍く、時に強く、時に柔らかく、時に鋭く、見る角度によって様々な輝きを放ち見る者を魅了して止まないのです。

   



Summer-weight cashmere blazer & white linen pants

2010-08-28 04:00:00 | 白井さん


 白井さんの着こなしとは全く関係の無い余談ですが、今年のNHK大河ドラマ『龍馬伝』が面白くて目が離せません。残念ながら前半は見逃すことが多かったのですが、最近になって漸くじっくり観始めています。今回の大河は同番組史上最高との呼び声が高いリアルな映像と美術が見所の一つとなっていて、その迫力には毎回度肝を抜かれています。物語りもいよいよ佳境に入ってきつつあり、役者達の演技にも熱が篭ってきています。

 前回放送では海外密航の企てに失敗した亀山社中の近藤長次郎が切腹をしましたが、長次郎役の大泉洋、主演の福山雅治、放送終盤の両氏の哀切溢れる心情表現にすっかり心打たれてしまい思わずもらい泣きしてしまいました。何事にも影響を受けやすい私が早速近所の書店で司馬遼太郎著『竜馬がゆく』を買いに走ったのは言うまでもありません。

 『竜馬がゆく』を読むのはこれで何回目かになります。私には変な癖があって、読み終わった文庫本で、内容が良く、今後も比較的入手が容易と思われるものは割と躊躇い無く人に、相手は選びますが、譲ってしまいます。もう名前も忘れてしまったのですが、10代の頃読んだ旅好きな作家のエセーの中で、

 『旅には一冊の文庫本を持っていく。そして読み終わったら焚火にくべて燃やしてしまうのだ。だって、読みたい本はまだまだあるのだから。』

 みたいなこと(ちょっと記憶は曖昧です)が書いてあって、もしかしたらその影響かもしれません(もったいないので燃やしはしませんが)。貰った人にとってはお節介極まりない迷惑行為かもしれませんが、何となくこの癖は抜けません。しかも今回は何度も読んだことのある本の読み返しなので些か不経済です(汗)。ただ、何度読んだ本であっても、また改めて購入した真新しい文庫本には、新たなストーリーに触れるようとする時と同じ精神の高揚を感じます。それが心に残る名作ならば、またお金を払っても惜しくは無いような気がするのです。

 

 余計なお喋りが過ぎました。

 今回はトップの大きな写真が特に良く撮れていました。抜けるような青空と白井さんの装いとのコントラストが効いて、自画自賛ながら大変満足しています。ただ、“Blue blazer with mother of pearl shell buttons”の回に引き続き、今回も白井さんは右手に煙草を手挟んで撮影の小道具としてくださったのですが、私の撮影術が未熟で、煙草が背景と混ざってしまったりして上手く写りませんでした(汗)。白井さん申し訳ありません。

 さあ!今日の着こなしはもうご覧頂いたまま!残暑をさらりとやり過ごしつつ去りゆく夏を惜しむように、平織りのカシミアで仕立てたブレザーに白い麻のパンツを合わせた白井さん。発色美しい縞のネクタイが一際目を惹きます。足元はチャーチ(英)の内羽根プレーントウのホワイトバックス。

 今回も個々のディティールについては敢えて触れないでみたいと思います。項末の“デジタル写真集『白井さん』”と併せて白井さんの着こなしをお楽しみ下さい。ただ、白井さんはこの日こんなことも仰っていました。

 白井さん、  『誰でもある時期はディテイルに拘ってしまう時があるんだよ。“これはこうじゃなきゃいけない!!”ってね。』

 私、     『白井さんもそんな時期があったんですか?』

 白井さん、  『そりゃもちろん。でも今は達観しているよ(笑)。“着たもん勝ち”ってね(笑)。』

   



   


 

Pale shark skin suit

2010-08-26 04:00:00 | 白井さん


 前回は謝りっぱなしで散々な更新となってしまいました(汗)。皆様申し訳ありませんでした。さて、白井さんからも、これは常日頃から教えていただいていることなのですが、

 『個々の細かい点よりも“全体の組み合わせ”や“着こなし”についてもっと触れないとね。』

 と重ねてアドヴァイスをいただきました。本当に有り難いことです。これからも掲載内容には細心の注意を払いつつ、白井さんの着こなしについて少しでも多く触れられるように心掛けて参りたいと思います。

 今回は~“Pale shark skin suit”

 『え!?ライトグレーじゃないの??』

 と思われた方が多いと思います。でも、Pale・・・つまりブルーなんです!(笑)

  

 

 私も最初拝見した時はグレーかな?と思ったのですが、よく見るとなんとなく服地に青白い光沢感があり、

 『あれ?白井さんもしかして今日のスーツはブルーなんですか?』

 とお伺いしたところ、

 『そうだよ。』

 とのお答え。色を言葉で表現するのは極めて難しい作業ながら、とりあえず今回は“Pale(青白い)”という言葉を選びました。ご異存ありやなきや(笑)。

 今日のスーツはイザイア(伊)のス・ミズーラ、かなり明るめの青いシャークスキンのダブルブレストです。

 

 ブルーのスーツに濃茶の靴を合わせるのが“白井流”。もちろん他の選択もあったのでしょうが、

 『やはりこの色(の靴)を合わせたくてね。』(白井さん談)

 とのこと。私などは服の明るさに合せて靴も明るいものを最初に選んでしまうでしょうが、なるほど、こういう合わせ方もあるのかと目から鱗が落ちる思いです。

 ソックスは瑠璃色のソッツィ(伊)。

 『靴下は着こなしでは重要なポイント。結構神経使ってるんだよ。』(白井さん談)

 そうなんです。最近はついつい触れていませんでしたが、これは決して忘れてはならない“白井流の鉄則”です!

   

 グレンチェックのネクタイは信濃屋オリジナル。白井さんはこの日の朝、最初は茶系のネクタイを選ばれたそうなのですが、いざそのタイを締めてみると、幅の広さや重たそうな印象がお気に召さず、このグレンチェックのタイに変えたそうです。

 『そうやって“やりかえす”こともあるよ。』

 と仰っていた白井さん。着こなしに安易な妥協は差し挟みません。ただ、私が気になったのは“やりかえす”という独特なフレーズ。“ネクタイをやりかえす”・・・う~んなんだかちょっとカッコいい言い回しです!洒落者は着こなしのみにて作られるに非ず。

   

 シャツはミラノ郊外にあるというドレスシャツ専門のシャツ屋さん・チチェリ(伊)の、襟型が“フィノッロ”というモデル。ちょっと写真が暗くてわかりにくいかもしれませんが襟の外側の線が途中で角度がクッと変っているのがポイントです。因みに現在信濃屋さんで扱われている襞胸・プリーテッドブザム(pleated bosom)もチチェリだそうで、細かい襞がちょっと他所では見られないという逸品です。近々タキシードを着る予定のある方は是非(笑)。

 厳しい残暑が続いていますが、今日の白井さんの着こなしには“一服の清涼感”、そして“大人のゆとり”が感じられました。

 次第に夏も終わりつつあります。白井さんの夏の着こなしを拝見できるのもあと僅かかもしれませんね。


   

Forest-green jacket

2010-08-21 04:00:00 | 白井さん


 冒頭いきなりで恐縮ですが前回の訂正を。

 まず、ジョルジォ・アルマーニのタイについて、私は“レジメンタル・タイ”と記述しましたがこれは誤りでした。

 『普通に“縞”でいいよ。』

 と、白井さんからご指摘を受けました。レジメンタル・ストライプのルーツは、16世紀の英国連隊の旗の柄。各々の連隊(レジメント)ごとに制定したストライプ柄こそが真の“レジメンタル・タイ”であり、その連隊に所属することの証。

 『なんでもかんでもレジメンタルじゃないんだよ。』(白井さん談)

 とのこと(汗)。不正確な記述をしてしまい申し訳ありませんでした。

 “アルマーニを最初に扱ったのは信濃屋さん”なる記述に関してもまたもや私の勘違いで、これは完全な誤りでした。申し訳ありませんでした。

 更にもう一点。“最初のブレザーはサージ”という記述に関して白井さんから、

 『一着目のブレザーは“フランネル”でしょ!』

 と突っ込まれてしまいましたが、これも私の表現の誤りです。私が銀座天神山のIさんからサージのブレザーをお薦めしてもらって購入したのが2008年の3月で、その時のIさんの提案は、

 『これからの季節(春夏)ならサージをまず揃えた方が良いですよ。』

 というものでした。もちろんIさんはご自身のブログで“ブレザーの基本はフランネル”と仰っていることを付け加えておきます。Iさん、ごめんなさい。

 改めまして、以後は更に発言に気をつけたいと思います。誠に申し訳ありませんでした。

 今日は謝りっぱなしですね(涙)。今日は発言は差し控えます。では、白井さんの着こなしをお楽しみ下さい(笑)。




 


 








Blue blazer & linen tie

2010-08-19 04:00:00 | 白井さん



 一週間ぶりの更新となりました。皆様如何お過ごしでしたでしょうか?

 私はお陰さまで短いながらも充実した休暇を過ごすことができました。まだまだ暑い日は続きますが、残暑に負けず、明日からまた白井さんの着こなしを写真に収めるべく横浜通いを再開したいと思います。

 ただ、如何な猛暑とはいえ夏の終わりが始まるのもこの時期から。私の住まいは小高い丘の上にあるのですが、すぐ裏手が古墳跡らしくたくさんの木々に覆われていて、ここ数週間は蝉の一大コンサート会場となっていましたが、彼らの大合唱は昨夜がファイナルだったようで今夜はその声はピタリと止み、それに替わって秋の虫の音が静かに鳴り響いています。

 皆様も聞こえませんか?微かな“秋の気配”が(笑)。

   

 今回は久々のブレザースタイル。セントアンドリュース(伊)のサージ素材を使ったブレザーの登場です。色・素材・形・・・何処を見ても悪い意味で突出している部分がまるで無く、ベーシックなワードローブ作りには絶対に欠かせない“オーセンティックな一着”と呼ぶに相応しい“Blue Blazer” 。一見何の変哲も無い普通の服ほど長くその主に寄り添うように付き従うということなのでしょうね。但し、一見何の変哲も無い普通の服ほど実はありそうでなかなか無いのですから、世の中というものは本当に不思議です(苦笑)。

   

 基本に忠実なブレザーに合わせるように、BDのシャツ、ストライプのネクタイ、パンツはグレーのトロピカル、とこの日の白井さんの着こなしも基本に忠実なブレザースタイルですね。私は白井さんのこのスタイルが特に好きです。

 タイはジョルジォ・アルマーニ(伊)のリネン素材。ガブリエル・モルテーニ(伊)という工場(?)製で、80年代初めの頃、信濃屋さんで扱われていた一本です。現在は大変有名なアルマーニですが、このタイが信濃屋さんで扱われていた当時はまだまだその存在が日本国内で知られることは薄かったそうです。

   

 ジョンストン&マーフィー(米)のタッスル・スリップオンです。

 この靴もまた長く白井さんに仕えてきた逸品。白井さんがお好きなアメリカ製のスリップ・オンですので、当然ながらその“お気に入り度”はかなり高いはずです。



 さてさて、ここで珍しく宣伝を(笑)。

 最後の写真は最近信濃屋さんに揃い始めてきた今年の秋冬商品の一つ。近年、見事復活を果たしたというウォークオーバー(米)の靴ですが箱の中身は内緒とのこと(笑)。因みにこの靴については以前このブログでちらっと話題にしたこともありました。ご記憶の方もいらっしゃるでしょうか?

 現在、ウォークオーバーは資本が海外に移っているとのことですが、こちらの商品は敢えて米国内の工場での生産にこだわった“正真正銘のメイド・イン・USAのウォークオーバー”ということで、往時の雰囲気を今に伝える靴が数種類ラインナップされるそうです。

 やはり信濃屋さんでも“秋の気配”がしてきたようですね(笑)。





Cordlane suit

2010-08-12 04:00:00 | 白井さん


 先週の木曜日は白井さんがご出張だったため、今回は一週間ぶりの更新となりました。

 この日の撮影は立秋。“暦の上ではもう秋です”なんてフレーズがよく使われますが、日本列島は例年、これからの一週間位がまさに真夏のクライマックス!ヴァカンツァ(お盆)の到来です。ギラギラ輝く太陽から容赦ない陽射しが降り注ぎ陽炎たちこめる横浜馬車道。今日の着こなしの主役はそんな時期にピッタリの一着、

 “Cordlane suit”

 の登場です!

   

 洒落者の諸兄なら一瞥でお判りいただけたと思いますが、この日白井さんがお召しになられていたスーツ、その素材は“麻”。因みに私は白井さんに教えていただくまで判りませんでした(汗)。

 私の拙い知識では、“コードレーンといえば綿”というのが一般的だと思っていたのですが、なるほど~麻のコードレーン・・・その独特な皺の入りと細かなストライプ、素材と柄が相まってぐっと砕けた印象を見る者に与えます。普段の白井さんの隙の無い着こなしとはうって変わり、程よく力が抜けリラックスした雰囲気が漂います。まさに大人の男のヴァカンツァに相応しい(注・白井さんは“お仕事中”)一着です。

 更に、これも私が感じた印象ですが、青と白の縞模様、そのブルーの実に鮮やかなことといったら、巷でよく見かけるグレーっぽいコードレーン素材とは似て非なるもので、まことに潔く華やかで、そして爽やかでした。

   

 今日の着こなしの名脇役は、約40年ほど前の信濃屋さんネームの逸品、アトキンソン(英)のタイ。アトキンソンのタイに使われている“アイリッシュ・ポプリン”と呼ばれるシルク・ウール素材は、そのシルクとウールの張りの強さの差から生じる“撚れ”に特徴があるそうで、

 『“撚れが無ければアトキンソンじゃない”なんて言われてたよ。』(白井さん談)

 とのこと。素材感・色・幅、このタイの全ての要素が今日の着こなしに無くてはならないものといわんばかりに名脇役としての存在感を主張しています。1月15日アップのミチェルソン(英)といい本日のアトキンソンといい、共に至極普通のクレストタイでありソリッドタイなのですが、やはり古の英国製だからなのでしょうか、そこには何ともいえぬ気品と気高さが漂っています。

 シャツは横浜のシャツ職人・遠藤さんのオーダーメイド。白井さんは、やっぱり遠藤さんのシャツが一番着易いなぁ、と仰っていました。

 『最初に一回だけしか型を取ってないんだけどね。』(白井さん談)

 と、かつての日本の職人の技には今もって感心されるそうです。下の写真2枚目はカフのフルギャザーのアップ。

 柔らかく挿されたポケットカチーフは(恐らく)リネンのドット、色はブルー&ホワイト。“アンツーカーレッドラバーソール”(白井さんの命名)のホワイトバックスが足元の軽さを演出。

 遊び心、リラックス、爽やかさ、清潔感、軽さ、それら全てが高い次元でバランスが保たれ着こなしに表現されています。ヴァカンツァはかくあれかし、と(笑)。

   

 今週に入りこのブログへのアクセス数もぐぐっと減りました。恐らく皆さん思い思いの夏休みを過ごされているのでしょう(笑)。

 次回の更新は、信濃屋さんの8月のお休みに合せて再び一週間後(8月19日)の予定となります。私も短くも儚い休日を楽しみたいと思います(苦笑)。

 では、皆様!よい夏の思い出を!



Blackish blue suit

2010-08-05 04:00:00 | 白井さん


 『これはなかなか面白い生地だね。軽くて。(織りは)ツイルだね。色は“Blackish blue”。』

 上着の左袖を右の掌で擦りながら白井さんはこう仰っていた。白井さんが時折なさる仕草だ。

   

 今日の主役は“Blackish blue suit”

 “黒”と間違えてしまうほど濃い青色の、カルロ・バルベラ(伊)の生地を使ったサルトリア・アットリーニ(伊)製の一着は、元々は3ピースでの着用だが、この日は恐ろしく高い気温を考慮してベストは無し。

 『痩せ我慢も大事だけどほどほどに(笑)。』

 とのこと(笑)。

 

 フィレンツェの“エレディ・キアリーニ”でお求めになられたというヒル&ドレイク(英)のグレンチェックのタイ。遠目だと茶色っぽくも見えるが、赤・黒・白で織られている。

   

 『あんまりスーツに合わせるような靴じゃないんだけど、今日は紐靴が嫌だったんでね。』

 この日は少し風邪気味で鼻声だった白井さん。今回は敢えてスリップオンを選択されたのだとか。

 およそ40年に渡って愛用されているというフローシャイム(米)のタッスル・スリップオン。モデル名は“サミット”。アメリカの靴がお好きな白井さんだが、スリップオンは特に“アメリカの靴”が良いのだそうで、『あくまで好みの問題だし、口で説明するのは難しいけど・・・』と前置きをされつつ、アメリカの靴の良い点は“包み込むような踵の丸み”と仰っていた。



 さて突然余談になりますが、この日、信濃屋馬車道店さんは決算セールの最終日、7月最後の週末ということもあり店内はたいへん賑わっていました。

 そんな中、この日は遠方からご来店され、また長年の顧客のお一人でもあるM様から、

 『ブログいつも観ています。頑張ってください!』

 と、大変有り難い励ましの言葉を頂戴いたしました。M様ありがとうございました。

 実は、私はこれまでにもたくさんの方からいろいろな励ましの言葉を頂いてまいりました。また、どの方も一様に仰っていたのが“たいへん参考になります”という言葉でした。そして、その言葉は私にとって何より嬉しく、励みとなっていました。

 改めましてご高覧頂いている皆様に感謝いたします。ありがとうございます。

 今回は初心に帰り、内容を敢えてシンプルにまとめてみました。



Glen plaid suit

2010-07-27 02:24:47 | 白井さん
 

 7月17日の更新で記載した私の発言に誤りがありました。今回は急ぎ訂正するため更新日を繰り上げます。

 『白井さんが今月末で信濃屋さんでのキャリアを了えられます』と書きましたが、私の早合点で事実ではありません。多くの皆様にご心配、ご迷惑をお掛けしましたことを心よりお詫び申し上げます。

 特に白井さんには大変なご迷惑をお掛けしお詫びの言葉もありません。我が未熟を唯恥じ入るばかりですが、私にとって何よりの救いはこのブログを来月以降も続けられることです。これからも張り切って更新する所存ですので、皆様、宜しくお願い致します。

   

 “Glen plaid suit”

 グレーのグレンチェックにゴールドのペインが入った、もちろん夏向きの薄い生地を使った信濃屋オリジナルの一着。元々スリーピースで作られているそうだが、この日の気温を考慮し今日はベストは無し。

 白井さんの前回のスーツスタイルは麻のスリーピース。あるお客様はその時の華麗な着こなしを“まるでアガサ・クリスティーの世界ですね”と評されていたそうだ。

 『やるなら徹底してやらないとね。』(白井さん談)

 それこそがまさに“白井流”だ。

 が、今回はそこからは一転して実に“渋い”。まさに“動から静へ”といった印象。

 “黄金の中庸”

 これもまた“白井流”なのだ。

   

 ネイビーに磨き砂、共に渋い色合いのレジメンタルストライプのタイはミッチェルソン(英)。1月15日アップのクレストタイもそうだったが、今回のミチェルソンのタイも白井さんはとても気に入られていた。

 『このネイビーの色も磨き砂の色も、こういうのってなかなか無いよね。縞の幅と間隔、締めた時の具合も・・・全部が良い。もちろん“自分が好きだ”ってだけで、好みの問題なんだけど、ほら、こんなに擦り切れちゃってる(笑)。』

 “磨き砂”。白井さんはこのタイの縞の色をそう表現されていた。白でもグレーでもゴールドでもシルバーでもない、鈍く、渋い色。シャンパンゴールド、という表現が一番近いのかもしれないが、このタイにその言葉を使うのは適切ではない気がする。

   

 シャツは現在では絶対に手に入らない逸品。横浜のシャツ職人・遠藤さんのカスタムメイド(遠藤さんについては4月22日アップの記事をご参照下さい)だ。生地は、写真では判りにくいが、透け感が特徴の夏のシャツ生地“ボイル”。

 靴はシルヴァーノ・ラッタンツィ(伊)の明るめの茶のキャップトウ。“リボルターテ”という、革の切り目を薄く梳いて内側に織り込んで縫い込む手の込んだ仕様が施されている。ホワイトステッチは実に細やかで美しく、トウはいつものように光り輝いていた。

 



Four pockets jacket & white linen pants

2010-07-24 05:00:00 | 白井さん


 猛暑到来。

 今夏は日本各地で平年を上回る高い気温が記録されているそうだ。このブログの舞台・横浜も例外ではなく、馬車道を彩る赤レンガの舗装も強い陽射しに容赦なく炒り上げられている。

 が、そこは港町。

 海からの風が熱気を拡散させるのか、最近電車を降りるたび思うのだが、私の職場がある新宿に比べるとこの街の方が幾分過ごし易いような気がする。港の空が広いのもそう思わせる理由の一つかもしれない。横浜は人に優しい街だ。

   

 今日の屋外撮影は信濃屋さんの軒先の木陰を利用して。

 このブログをご覧になっている皆さんは当然お気づきの方が多いと思われるが、ここ数週間で白井さんがお召しになる服に“白”が占める割合がぐぐっと増してきている。前回の“White linen suit”の現像写真をお渡しすると、

 『やはり白も良いね。ま、年に1回くらいだけどね(笑)。』

 と、やはりご自身も白の効用に活目されていた白井さんは・・・前回のエレガントな夏のタウンスーツ・スタイルから一転、今回はスポーティーな夏のカントリージャケット・スタイルをご披露してくださった。

   

 今回はタイトルを如何すべきかと些か考え込んでしまったが、白井さんのアドバイスを頂いて“Four pockets jacket & white linen pant”とした。

 『この形で4ポケットはちょっと珍しいからね。』

 と仰るジャケットは、以前何度か名前を伺った“ケッキーノ・フォンティコリ氏(伊)”の手によるもの。白井さんは、 

 『大人しいおじさんだったよ。』

 とフォンティコリ氏の印象を思い出されていた。

 『そういえば以前、小錦関がブリオーニで服を作る様子をテレビで放送していたけど、その時写ってたのを観たっけ。“あ!ケッキーノだ!”ってね(笑)。』

 白井さんは普段あまり多くを語らない方。きっとフォンティコリ氏は著名であるが優秀な職人さんでもあるのだろう。老婆心ながら胸元チーフの位置にもご注目を。色鮮やかなブルー&ホワイトのレジメンタルタイはフランコ・バッシ(伊)。

   

 パンツはナチュラルのリネン。パンツ単体での登場は、このブログ内に限って言えば珍しい、セントアンドリュース(伊)。更に言えば、白井さんが殊更パンツに触れることもなかなか無いことなので、このパンツに上質の麻が使われていたのは間違いないであろう。作りの良さも当然言わずもがな、であろう。

 今日のホワイトバックスはキャップトウ。詳細はうっかり伺い忘れてしまった(汗)。機会があれば後日。

 

 以下は本日の特別編です。

 『白井さんがいつも言ってる“組み合わせが大切”って言葉。あの言葉の意味が本当に判かる人が本当にお洒落な人だと僕は思うよ。』

 『組み合わせって色のことだけじゃないからね。例えば上半身が軽い感じのブレザーなら下も軽い感じの、例えばコットンのパンツを合わせる。それなら靴も軽い、例えばスリップオンにする。上下のバランスの組み合わせもあるんだよね。』

 『“上下”だけじゃないよ“横”のバランスだってある。ジャケットの肩幅、ラペル幅、パンツの裾幅、つまり横のバランスだね。“素材感”や“柄”だって組み合わせの要素。他にもたくさんあるよね。“着こなし”“組み合わせ”・・・無数にあるけど、でもやっぱり“基本”ってあると思うんだ。どんなにカッコいい靴であってもそれが重たい表革のフルブローグならさっき言ったブレザー&コットンパンツには合わせないほうが良い。やっぱり白井さんならそんな合わせ方はまずしないよね。そういう重い靴の時はやっぱり上に着る服もカチッとしたスーツを着るし、ツイードジャケットならスウェードを履くとか、コンビネーションならストライプのスーツとかって、やっぱり抑えるところはちゃんと抑えてらっしゃるんだよね。“着こなしの妙”っていうのはそういう基本の上に乗っかってるものなんだよ。』

 『個々の品のディティールにばかり囚われていると一番大切な全体のバランスが見えなくなってしまう。そうならないために“着こなしの基本”があるんだよね。僕らの世代は皆その基本を“IVY”に学んだんですよ。“穂積和夫の『アイビーボーイ図鑑』”なんてまさに僕の“バイブル”(笑)。白井さんの世代は“アメリカそのもの”から学んでいるけどね(笑)。なんたってまだ戦後だったんだから白井さんの頃は(笑)。でも、今の若い人たちはそういうのが無いから。』

 以上は全て、白井さんの取材をする私のそばでいつも笑顔で冗談ばかり言っていた牧島さんの言葉です。丁度白井さんが席を外された時、一息で一気に話されたので私の記憶に間違いがあるかもしれませんが、概ね上記のようなお話だったはずです。

 牧島さんらしく笑顔でお話されていましたが、牧島さんの目はお話同様真剣そのものでした。以下は白井さんが以前私に仰っていた言葉です。

 『牧島は基本ができているんだよ。根っから服が好きだからね。』



White linen suit

2010-07-22 04:00:00 | 白井さん



 
 
 “ お洒落をするなら、ある程度の痩せ我慢をしないとね ”


                       ・・・白井さん談


   

 洒落者なら誰もが憧れる究極の遊び着、洒落心を擽る魅惑のアイテム、夢か現か幻か、成せば成る、成さねば成らぬ何事も、ナセルはアラブの大統領・・・遂にこの日がやってきた!“麻のスリーピース”の登場だ!

 

 夕刻から書き始めた今日のブログだが、前回の更新を引き摺ったままの私は冒頭の一行、白井さんの言葉を書いてから筆(キーボードを叩く手)が完全に止まってしまった。そして現在、日時は7月22日午前2時過ぎ。

 是非も無し・・・今まで通り書くしかないではないか。

 開き直り故の、普段より若干高めのテンションでのスタートをお許し願いたい。

   

 タイトルを 『 White linen suit 』としたが、正確にはナチュラル(生成り)とすべきだろう。シングルブレスト、ピークトラペル、3パッチポケット、ノーベント・・・アイリッシュリネンで仕立てた信濃屋オリジナルの一着だ。

 

 ジェームズ・ロック(英)のパナマ帽(筋入り)。今回はアップでのご紹介だ。

 白井さんが以前ご覧になった映画(洋画)の登場人物の中に、これと同じ帽子を被った男があり、その男はクラウンの前を凹ませて被っていたそうだ。“パナマのクラウンは取り扱いに神経を使う”と聞いていたが、映画の中とはいえ、本場の男は随分粋な所作をするものである。

 『帽子の似合う似合わないは慣れの問題。本人が気にするほどには他人は見ていない。そんなことよりもっと大切なのは帽子を扱う時の“所作とマナー”。』

 と仰る白井さん。これは以前、私が初めてファーフェルトの中折れを買ったときに白井さんに教わった“帽子術の極意”だ。

   

 シャツはフレンチカフのクレリック。生地は普段白井さんがお召しのものよりは若干薄い。

 『カルロ・リーバ(伊)の古いヤツ。今はこういうクラシックな生地ってなかなか無いよね。』

 襟はプレーンカラー(plain collar)。我が国では“レギュラーカラー”という呼び名が定着している。やはりクラシックな襟型だ。

 レジメンタルストライプのネクタイ、白い麻のポケットカチーフ。

 今日も完璧な胸元。

   

 『随分久しぶりに履いたよ。』

 と仰る今日の靴は遊び心溢れる一足。カーフとキャンバスのコンビはちょぴり可愛らしく、しかしスタイルは極めてクラシカルなスナップボタンブーツ(大塚製靴)。

   

 上質なリネンは目が詰んでいる分ズシリと重い、と聞く。

 真夏にこれを着る人にはきっと相当な覚悟が必要とされるのだろう。

 が、白井さんの如くさらりと着こなせば、これほど見る人の“心”を涼やかにさせる服もまた無いのだろう。

 “装う”とは、つまり、そういうことなのかもしれない。 

 

 “ お洒落をするなら、ある程度の痩せ我慢をしないとね ”

 



Camel hair & linen jacket

2010-07-17 04:00:00 | 白井さん


 
   

Shot on location at the front of Yokohama Specie Bank, Ltd.

   

Camel hair & linen jacket (SHINANOYA)

   

Thin oxford BD shirt (LUIGI BORRLI)

Horizontal stripe knitted tie, Saxe blue cotton pant (BIELLA COLLEZIONI)

   

Plene toe white backs with red rubber soles (ALFRED SARGENT)



Stripe suit with bowtie & Panama hat

2010-07-15 04:00:00 | 白井さん
 


 “まるで銀幕から抜け出してきたような!”

 今日はこの台詞がぴたりと嵌る。紳士の夏服は斯くあるべし。“新”を愛でた前回の着こなしから一転、今回は“古”を尊ぶクラシックスタイル。忘れてはならない。“着こなしのフィールド”を端から端まで目一杯使うのが“白井流”なのだ。

   

 屋外で白井さんの撮影をしていると、馬車道を行き交う人々の中には、白井さんの着こなしに興味を惹かれて足を止める方が毎回必ず居る。今回は特に多かった。足を止める程ではないにしても大抵の人は白井さんに視線を送らずにはいられないようだ。“判る人にも判らない人にも判る”これも“白井流”だ。

   

 軽やかなライトグレーのダブルブレスト・スーツはチェーザレ・アットリー二(伊)のス・ミズーラ。遠目一本のストライプだが、非常に細かなピンストライプ2本一対が狭い間隔で走っており、尚且つその間隔が、狭い→やや狭い→狭い→やや狭い、と一対ずつで交互に変わり、まるで“服地”という平面上に“ゆらぎ”を感じさせるかのような視覚効果がある。見る人に涼やかな印象を与えるまことに見事な夏服である。

    

 スーツばかりではない。小物も涼やかな印象作りに一役買っている。
 
 フレンチカフのシャツはシャルベ(仏)。普段お召しのものよりは若干襟が小さめだそうだ。今日はボウタイ効果で胸襟が大きく開きシャツの白が一段と際立つ。袖口には表が角型、裏が丸型のゴールドのカフリンクスが華を添えている。

 ブルー・ブラック・イエローのレジメンタル・レップの蝶ネクタイは非常にクラシックな逸品。

 『これは古いね~(笑)。恐らくブルックス(ブラザース)かリベッツ・オブ・ボストンのものだと思うよ。ある人からのいただきものなんだよ。』

 世の中は広いもので、白井さんに服飾のプレゼントをされる方がいらっしゃるのだ!その方もやはり非常な洒落者だそうだ・・・当たり前か(苦笑)。

 いずれの品も“涼”を念頭に置かれての選択であろう。

   

 足元を軽やかに演出するのは、アレンエドモンズ(米)のウィングティップ・コンビネーション。控え目な表情ながらこちらもチャーチのコンビネーションに劣らぬ逸品だ。
 
 これは以前、うっかり書き忘れてしまったことなのだが、白井さんは、通常見えるように並べて保管している他の靴とは違い、チャーチのホワイトバックスなどの夏場に使う所謂“白い靴”は、焼けによる変色を防ぐため、オフシーズンは箱に入れて仕舞っておき、シーズン前になると箱から出すようにされているとのこと。

 そして、完璧なコーディネートの最後のワンピースはジェームズ・ロック(英)のパナマ帽だ。

 白井さんは冬場のコートスタイルにはほぼ100%帽子を戴くが、夏場はそうでもない、と伺っていた。だが、やはりというか当然よくお似合いであるし、パナマ初登場ということもあってすっかり興奮した私はついうっかり詳しいお話も伺い忘れ、尚且つアップの写真も撮り忘れてしまうという体たらく(汗)。でもまあ、トップの大きな写真などはかなり良い画が撮れたと自負もしている。

 私が勝手に調べたところ、今日の帽子は“オプティモ”もしくは“筋入り”などと呼ばれる形だそうで、パナマとしては“中折れ”よりも更にクラシックなスタイルなのだとか。やはり今日の着こなしのテーマは“古(いにしえ)”で決まりのようだ(笑)。

  

 ここで余談。

 今日は珍しくいただきものの蝶タイをされていたが、白井さんはこれまで実に多くの品を人に“あげちゃって”いるそうだ。それはこのブログの取材を通じて知ったことだが、お話を伺っているといったいどれだけの品数が白井さんの頭上を、傍らを、前を、足元を通り過ぎていったのか?それはそれは見当もつかないくらいの膨大な数と思われ、当然私のごとき未熟者には、それら通り過ぎて行った品々から得た多くの経験が白井さんの血肉になっているとは理解しつつも、

 “何故あげちゃうんですか?”

 という疑問が浮かんでくる。もちろん考えても栓なきこととは重々承知しつつも、以下は私の勝手な憶測だが、その疑問についてはこれ!といった明確な理由は無いのではないか?と思っている。白井さんは買うときも“直感”なら、手放すときも“直感”なのではないのかしら?・・・と、なんとなく(ずいぶん無責任ながら)そう思うのだ。

 白井さんはご自身を“コレクターではない”と仰っている。

 ワードローブはご自分の“感覚”に沿うものでなければならないし、不変の美学あればこそ常に“変化”するものであり、品数の多寡は二の次(程度の問題はあるが)、と思われているような気も(これまたずいぶん無責任ながら)するのだ。

 誤解を招く物言いをしてしまった。以上はあくまでも全て私の勝手な憶測であり、素人の手前勝手な“独り言”と思し召しいただきたい。こればかりは白井さん以外の誰にもわからない“超々高度な問題”。これまでよりも更に奥深い領域に踏み込んだテーマであることは間違いない。私がもう少し大人になったら伺ってみたいと思う。手前味噌で恐縮だが、今はもう少し、黙ってこれらの素晴らしいポートレートを眺めるのが良いのだろう。