2022年7月15日~17日、2泊3日の実地踏査の旅の2日目です。朝早く起きて展望露天風呂に浸かったあと、諏訪湖畔まで散歩に出かけました。地元の人が散歩やランニング、ラジオ体操などを楽しむ中、ゆったりとした時間を過ごして宿に戻りました。
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この日の最初の目的地は国宝土偶「縄文のビーナス」が出土した棚畑遺跡です。霧ヶ峰の南斜面の山裾に広がる台地に位置する縄文時代中期(約5000年前)の集落遺跡で、現在は日本電産サンキョー(株)の茅野事業所が建っています。黒曜石流通の交易・交流の拠点として繁栄した集落で、南北2カ所に環状集落がある双環状の集落構造になっていました。
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「縄文のビーナス」はこのあと行った尖石縄文考古館に実物が展示されていました。
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次の行き先が中ッ原遺跡です。ここは縄文時代中期(約5,000年前)から後期前半(約4,000年前)の遺跡で、八ヶ岳の火山活動により形成された東西320m、南北100mの細長い尾根状台地に位置する八ヶ岳西麓の拠点的な集落と考えられています。200軒以上の竪穴住居跡、3,300余りの柱穴・墓穴・黒曜石の貯蔵跡などが発掘され、多量の土器や石器が出土したほか、土坑からはヒスイやコハクも出土しました。この遺跡から出た土偶も「仮面の女神」として国宝に指定されました。中ッ原遺跡は保存され、土偶発掘時の状況が復元保存されていました。
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「仮面の女神」も尖石縄文考古館に実物が展示されていました。全国に5つしかない国宝土偶の2つがこの博物館にあって実物が展示されているのです。何とも言えない興奮でした。ふたつの土偶の最大の違いはレントゲン写真を見てわかる通り、「縄文のビーナス」は土の塊で頭・手・足・胴体を成形しているので丸ごと土の塊になっているのですが、「仮面の女神」はなんと内部が中空になっているのです。これに何か意味があるのか、それとも「仮面の女神」の方が時期が新しいため、その間に製作技術が進んだのか。
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2カ所の国宝土偶出土地を見たあと、これらの土偶が展示される尖石縄文考古館に向かいました。この博物館では土偶に興奮するだけでなく、縄文遺跡が広がる八ヶ岳の各地から出た遺物がこれでもかというくらいに展示されています。まさに縄文遺物の宝庫です。
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博物館は尖石遺跡と与助尾根遺跡に挟まれたところにあるので、見学後は両遺跡を実際に歩いてみました。与助尾根遺跡にはお決まりの復元された竪穴式住居がありましたが、尖石遺跡はまるでゴルフ場のように一面が芝で覆われて保存されていました。谷に降りる10数メートルの階段の下には遺跡名の由来となった尖石(三角の尖った石)が祀られていて、なんと4本の柱に囲まれていました。
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朝の始動が早かったおかげでまだ午前中。ここからは白樺湖を通過して星糞峠黒曜石原産地遺跡を目指します。昨年のブラタモリでメチャメチャ興味を持った黒曜石。和田峠あたりの黒曜石の石器が全国各地に流通していることは知っていたものの、その採掘跡が残っているとは知らなかった。でも、ブラタモリでやっていた星ケ塔遺跡は観光体験プログラム以外では入れないとのことなので、こちらの星糞峠に行くことにしました。星糞峠体験ミュージアムに車を停め、まずはミュージアムを見学です。
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なぜここで黒曜石が採れるのか、縄文人はここに黒曜石があることがどうしてわかったのか、などなど抱いていたいくつかの疑問が解決しました。20分ほど見学した後、遺跡まで登りたいことを受付に申し出ると、熊除けの鈴を渡され、登山口まで案内してくれました。駐車場の向こうに見える山の左手の中腹辺りを目指します。
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30分弱で到着。周辺には採掘抗が点在しているのですが、どこも埋まってしまっていてよくわかりませんでした。少し登ったところに「星くそ館」という展示施設があり、大きな採掘抗の剝ぎ取り標本が展示され、採掘の様子をリアルに見ることができました。
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星くそ館の周囲の地面をよく注意してみると、なんと、黒曜石の小さな破片があちこちに散らばっているではありませんか。黒い小さな粒もあれば、1センチ角くらいの少し大きな塊や、薄いガラス片のように透き通ったものなどが無数に。これは興奮したなあ。
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朝から国宝土偶や黒曜石をこの目で見ることができ、この日は興奮続きの1日です。このあとはいよいよ最後の目的地である森将軍塚古墳を目指します。途中、信州に来たからには信州そば、という先輩のご要望通り「信州立岩和紙の里」というところで手打ちの信州そばを昼ご飯にしました。ここの蕎麦、なかなかのものでした。
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森将軍塚古墳に到着したのが15時過ぎです。お昼までと違って空が雲に覆われて今にも降り出しそうな空模様。ふもとの古墳館で情報をインプットしてから古墳に行こうと思ったのですが、中に入ると職員の方が、もうすぐ雨が降り出すので先に古墳を見学した方がいいとアドバイスをいただき、そうすることにしました。丘陵上の古墳まではマイクロバスの送迎があり、さっそくバスに乗りこんで古墳に向かいました。
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森将軍塚古墳は、長野県最大となる全長100mの前方後円墳で4世紀末の築造とされています。曲がった尾根上に築造されたことによって左右対称ではなく、後円部が楕円形に近い形になっています。
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古墳は綺麗に復元整備されいます。左右対称でない曲がった形になっているという特徴だけでなく、地面からの墳丘斜面の立ち上がりが急角度になっていて階段がないと登れない構造になっていること、後円部に長さ15m、幅9mの範囲に、深さ3m近い穴が掘られ、その内部に「墓壙」と呼ばれる二重の石垣で囲まれた巨大な竪穴式石室(石槨)が築かれていることなど、なかなか珍しい古墳です。この石室は東日本最大級の大きさで、ふもとの古墳館に復元展示されています。
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丘陵上の平坦面を目いっぱいに使って築かれているので、墳丘の斜面がそのまま丘陵の斜面につながっているようで、墳丘に登って足元をみると少し恐怖感があります。それでも墳丘からの眺めは絶景で、長野盆地が一望できます。
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古墳館の職員さんの言う通り、30分ほどで雨が降ってきました。マイクロバスに乗って下山し、古墳館を見学します。この施設の売り物は何といっても巨大な石室の原寸大復元模型です。上から俯瞰できるだけでなく、下の階からは内部構造を見ることもできます。なかなか見事な展示です。
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三角縁神獣鏡の破片が出土したこともヤマト王権のつながりを物語っています。
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曲がった丘陵上に築かれたために曲がった前方後円形になったと解説され、学芸員さんも「いちばん優先したことはこの丘陵上に造ることでした」とおっしゃっていましたが、もっとも優先したことは100mの規模にすることだったのだと思います。丘陵に造ることを優先するのなら50m規模ならきれいな前方後円墳が造れたはずです。学芸員さんは「大和あるいは尾張から越後へのルートを押さえたかったヤマト王権が科野(信濃)の首長と折り合いをつけた結果、この古墳が築かれた」とも。
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丘陵上に復元された古墳と墳丘からの眺め、巨大石室を復元した古墳館の展示、学芸員さんとの会話、どれもこれも至福の時間を作ってくれました。ほんとにこの日は興奮の1日となりました。
土砂降りの雨の中を出発し、この日の宿泊地、JR長野駅前にあるビジネスホテルをめざします。ここまでの2日間、何とか耐えてきた天気でしたが、夜のうちに回復して、と祈るばかりでした。
(つづく)
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この日の最初の目的地は国宝土偶「縄文のビーナス」が出土した棚畑遺跡です。霧ヶ峰の南斜面の山裾に広がる台地に位置する縄文時代中期(約5000年前)の集落遺跡で、現在は日本電産サンキョー(株)の茅野事業所が建っています。黒曜石流通の交易・交流の拠点として繁栄した集落で、南北2カ所に環状集落がある双環状の集落構造になっていました。
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「縄文のビーナス」はこのあと行った尖石縄文考古館に実物が展示されていました。
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次の行き先が中ッ原遺跡です。ここは縄文時代中期(約5,000年前)から後期前半(約4,000年前)の遺跡で、八ヶ岳の火山活動により形成された東西320m、南北100mの細長い尾根状台地に位置する八ヶ岳西麓の拠点的な集落と考えられています。200軒以上の竪穴住居跡、3,300余りの柱穴・墓穴・黒曜石の貯蔵跡などが発掘され、多量の土器や石器が出土したほか、土坑からはヒスイやコハクも出土しました。この遺跡から出た土偶も「仮面の女神」として国宝に指定されました。中ッ原遺跡は保存され、土偶発掘時の状況が復元保存されていました。
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「仮面の女神」も尖石縄文考古館に実物が展示されていました。全国に5つしかない国宝土偶の2つがこの博物館にあって実物が展示されているのです。何とも言えない興奮でした。ふたつの土偶の最大の違いはレントゲン写真を見てわかる通り、「縄文のビーナス」は土の塊で頭・手・足・胴体を成形しているので丸ごと土の塊になっているのですが、「仮面の女神」はなんと内部が中空になっているのです。これに何か意味があるのか、それとも「仮面の女神」の方が時期が新しいため、その間に製作技術が進んだのか。
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2カ所の国宝土偶出土地を見たあと、これらの土偶が展示される尖石縄文考古館に向かいました。この博物館では土偶に興奮するだけでなく、縄文遺跡が広がる八ヶ岳の各地から出た遺物がこれでもかというくらいに展示されています。まさに縄文遺物の宝庫です。
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博物館は尖石遺跡と与助尾根遺跡に挟まれたところにあるので、見学後は両遺跡を実際に歩いてみました。与助尾根遺跡にはお決まりの復元された竪穴式住居がありましたが、尖石遺跡はまるでゴルフ場のように一面が芝で覆われて保存されていました。谷に降りる10数メートルの階段の下には遺跡名の由来となった尖石(三角の尖った石)が祀られていて、なんと4本の柱に囲まれていました。
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朝の始動が早かったおかげでまだ午前中。ここからは白樺湖を通過して星糞峠黒曜石原産地遺跡を目指します。昨年のブラタモリでメチャメチャ興味を持った黒曜石。和田峠あたりの黒曜石の石器が全国各地に流通していることは知っていたものの、その採掘跡が残っているとは知らなかった。でも、ブラタモリでやっていた星ケ塔遺跡は観光体験プログラム以外では入れないとのことなので、こちらの星糞峠に行くことにしました。星糞峠体験ミュージアムに車を停め、まずはミュージアムを見学です。
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なぜここで黒曜石が採れるのか、縄文人はここに黒曜石があることがどうしてわかったのか、などなど抱いていたいくつかの疑問が解決しました。20分ほど見学した後、遺跡まで登りたいことを受付に申し出ると、熊除けの鈴を渡され、登山口まで案内してくれました。駐車場の向こうに見える山の左手の中腹辺りを目指します。
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30分弱で到着。周辺には採掘抗が点在しているのですが、どこも埋まってしまっていてよくわかりませんでした。少し登ったところに「星くそ館」という展示施設があり、大きな採掘抗の剝ぎ取り標本が展示され、採掘の様子をリアルに見ることができました。
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星くそ館の周囲の地面をよく注意してみると、なんと、黒曜石の小さな破片があちこちに散らばっているではありませんか。黒い小さな粒もあれば、1センチ角くらいの少し大きな塊や、薄いガラス片のように透き通ったものなどが無数に。これは興奮したなあ。
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朝から国宝土偶や黒曜石をこの目で見ることができ、この日は興奮続きの1日です。このあとはいよいよ最後の目的地である森将軍塚古墳を目指します。途中、信州に来たからには信州そば、という先輩のご要望通り「信州立岩和紙の里」というところで手打ちの信州そばを昼ご飯にしました。ここの蕎麦、なかなかのものでした。
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森将軍塚古墳に到着したのが15時過ぎです。お昼までと違って空が雲に覆われて今にも降り出しそうな空模様。ふもとの古墳館で情報をインプットしてから古墳に行こうと思ったのですが、中に入ると職員の方が、もうすぐ雨が降り出すので先に古墳を見学した方がいいとアドバイスをいただき、そうすることにしました。丘陵上の古墳まではマイクロバスの送迎があり、さっそくバスに乗りこんで古墳に向かいました。
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森将軍塚古墳は、長野県最大となる全長100mの前方後円墳で4世紀末の築造とされています。曲がった尾根上に築造されたことによって左右対称ではなく、後円部が楕円形に近い形になっています。
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古墳は綺麗に復元整備されいます。左右対称でない曲がった形になっているという特徴だけでなく、地面からの墳丘斜面の立ち上がりが急角度になっていて階段がないと登れない構造になっていること、後円部に長さ15m、幅9mの範囲に、深さ3m近い穴が掘られ、その内部に「墓壙」と呼ばれる二重の石垣で囲まれた巨大な竪穴式石室(石槨)が築かれていることなど、なかなか珍しい古墳です。この石室は東日本最大級の大きさで、ふもとの古墳館に復元展示されています。
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丘陵上の平坦面を目いっぱいに使って築かれているので、墳丘の斜面がそのまま丘陵の斜面につながっているようで、墳丘に登って足元をみると少し恐怖感があります。それでも墳丘からの眺めは絶景で、長野盆地が一望できます。
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古墳館の職員さんの言う通り、30分ほどで雨が降ってきました。マイクロバスに乗って下山し、古墳館を見学します。この施設の売り物は何といっても巨大な石室の原寸大復元模型です。上から俯瞰できるだけでなく、下の階からは内部構造を見ることもできます。なかなか見事な展示です。
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三角縁神獣鏡の破片が出土したこともヤマト王権のつながりを物語っています。
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曲がった丘陵上に築かれたために曲がった前方後円形になったと解説され、学芸員さんも「いちばん優先したことはこの丘陵上に造ることでした」とおっしゃっていましたが、もっとも優先したことは100mの規模にすることだったのだと思います。丘陵に造ることを優先するのなら50m規模ならきれいな前方後円墳が造れたはずです。学芸員さんは「大和あるいは尾張から越後へのルートを押さえたかったヤマト王権が科野(信濃)の首長と折り合いをつけた結果、この古墳が築かれた」とも。
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丘陵上に復元された古墳と墳丘からの眺め、巨大石室を復元した古墳館の展示、学芸員さんとの会話、どれもこれも至福の時間を作ってくれました。ほんとにこの日は興奮の1日となりました。
土砂降りの雨の中を出発し、この日の宿泊地、JR長野駅前にあるビジネスホテルをめざします。ここまでの2日間、何とか耐えてきた天気でしたが、夜のうちに回復して、と祈るばかりでした。
(つづく)
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