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宇宙船を飛ばすカネがあるなら、スクールバスを買え! 日本の子供をうらやむネットユーザー

2011年11月27日 09時31分29秒 | 海外
 「子供の安全を無視する民族に未来はない」「宇宙船を飛ばすカネがあるなら、まずスクールバスを買え!」。中国のインターネットで最近、甘粛省で起きた幼児21人が死亡した交通事故について、このような怒りに満ちた書き込みがあふれている。背景には命の軽視、教育、炭鉱開発、ずさんの交通管理などさまざまな問題があり、「今日の中国社会のゆがみの象徴」とも指摘された今回の事故。それについての論評は、痛烈な政府批判となった。

 11月16日の午前9時15分ごろ、甘粛省慶陽市正寧県の道路で、同県最大の幼稚園「小博士幼稚園」の送迎バスと、石炭を運ぶ大型トラックが正面衝突した。送迎バスは9人乗りのワゴン車を改造したもので、当時は園児62人と運転手、幼稚園スタッフの計64人が乗車していた。事故で園児20人と運転手が死亡し、ほかの園児のほとんどは頭を強打するなどのけがを負い、数人は意識不明の重体が今も続いているという。

 中国メディアの報道によれば、事故当時、現場付近は濃い霧に包まれ視界が悪く、送迎バスは対向車線を逆走しており、時速も約80キロと規定速度より20キロもオーバーしていた。

 その日の幼稚園の授業開始時間がすでに過ぎていたため、急いでいた運転手は対向車両に気づくのが遅れた可能性もある。さらに現場周辺は、規定搭載重量を超える石炭を運ぶ大型トラックが多く往来しているため、路面が劣化していたことも大惨事につながった原因の1つと指摘される
 この事故が報じられると、ネットで最初に話題になったのは、「9人乗りのワゴン車に64人も乗れるのか」だった。中国メディアが調べたところ、事故車のような送迎バスの定員オーバーは中国では決して珍しいケースではなかった。河南省駐馬店で定員7人のワゴン車に33人の子供を乗せ、浙江省義烏市で20人乗りのバスに84人もの小学生を乗せていたケースが甘粛省の事故の直後に各地のメディアに発見された。

 距離が遠くても子供をいい学校に行かせたい保護者と、学生をより多く集めたいとの学校の思いが一致し、一部の学校に学生が集中する現象は全国で起きている。しかし、スクールバスを購入する資金がなく、ワゴン車を改造し代用するケースが多いという。

 今回の事故車両となったワゴンは後部座席を全部外しており、子どもたちをすし詰めの状態で乗せていた。ある地方テレビ局が大人2人、子供62人を使って実際に検証してみたところ、全員が改造ワゴン車に乗車できたが、外からみても重量オーバーが明らかで、「こわくて運転したくない」と運転手は話していた。

 事故を受け、米国や日本のスクールバスの写真がネットに出回った。米国のバスは事故があっても子供の安全を守れる丈夫な作りとなっている。日本のバスはかわいいおもちゃ箱やアニメキャラクターのような形をしており、子供が乗っていることをほかの車両にアピールしていることが話題となった。「うらやましい」「外国の子供は幸せだ」「こういうソフトの面で追いつくのにあと50年かかるだろう」といった書き込みが寄せられた。
 事故を受けて、一部の地方政府は、地域内の学校に対し「定員オーバーの送迎車両」の使用を禁止とする通達を出したが、子供たちが学校に行けなくなり、休校に追い込まれた学校が現れた。広西チワン族自治区では、バスが利用できなくなったことで、多くの小学生が10キロ以上も徒歩で通学しなければならなくなり、「すしづめでいいからバスを使いたい」と訴える保護者が続出した。

 今回の事故の責任は幼稚園やバス運転手にあるものの、それ以上に政府が負わなければならないとの意見が多くあり、ネットの批判の矛先は政府の予算の使い方に向けられた。「北京五輪に使うカネがあるならスクールバスを買え」「上海万博に…」「宇宙開発に…」「アフリカ援助に…」「空母建設に…」と連想ゲームの形で延々と続き、中国政府の莫大(ばくだい)な予算を投じた事業をあげ、それよりも子どもの安全が重要であることが強調された。

 怒りが最も多かったのは共産党幹部の高級公用車だ。中国では、地方指導者がドイツ製高級車を愛用しており、市トップの党委書記クラスになれば、1人で複数台の乗用車を持つケースも珍しくない。「幹部はバスで通勤しろ!」「公用車の予算をスクールバスに回せ!」といった怒りの声が殺到した。こうしたネットの世論に配慮する形で、中国政府は事故のわずか2日後の18日に、共産党・政府機関の公用車に関する規則を策定し、「公用車を排気量は1800CC以下、価格は18万元(約216万円)以下に抑えるように」との通達を全国の各省市に出した。事故が起きた甘粛省慶陽市は、「来年1年間、公用車の新規購入をやめ、その予算を全額スクールバスの購入に充てる」と発表した。
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