ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランス人は、自国の大統領より、ドイツの首相を信頼している!

2011-08-12 22:04:10 | 政治
せっかくのヴァカンスだというのに・・・ヨーロッパからそんな声が聞こえてきそうな今年の夏です。

S&P(スタンダード・アンド・プア―ズ)がアメリカ国債の長期信用格付けを最高水準のAAAからAA+に1ランク格下げ。ヨーロッパではギリシャに次いで、ポルトガル、スペイン、そしてイタリアについても財政支援の必要性が指摘され、ECB(ヨーロッパ中央銀行)がスペインやイタリアの国債買い入れを実施している模様。市場の関心は、保護されていないフランスとベルギーの国債へ。そしてついに、フランス国債の格下げが噂されるまでに・・・アメリカ、ヨーロッパでの財政問題から、株価は乱高下。ドル安、ユーロ安の一方、円高、スイスフラン高。金の価格はうなぎのぼり。

ヴァカンス中だからと対応を怠れば、自国のみならず、世界へ大きな影響を与えてしまいます。サルコジ大統領も南仏でのヴァカンスを一時切り上げて、エリゼ宮の執務室へ。関係閣僚も集めて、緊急会議。どのような対策が取られるのでしょうか。

ユーロ圏ではないですが、イギリスでは一人の若者が警官に射殺されたのをきっかけに、暴動が発生。キャメロン首相はヴァカンス先のイタリアから急きょ帰国。警察の力で暴動を抑え込みました。ロンドンに配備された警官の数は16,000人。警官たちのヴァカンスも取り消されたとか。若者の高失業率と社会の閉塞感が背景にあると指摘されています。他のヨーロッパ諸国にとっても、決して対岸の火事で済ますことのできない問題です。

さて、経済危機、財政危機は、国家の問題だと無関心でいることはできません。庶民の生活にも影響を及ぼします。では、どう対処すべきなのでしょうか。そして、頼れるのは誰なのでしょうか・・・フランス人がどう考えているのか、11日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

多くのフランス人が、現在の財政危機の影響を心配しており、問題を解決するにあたって、自国のサルコジ大統領よりもドイツのメルケル首相に期待している・・・これが、調査会社Harris Interactiveが日刊紙“Le Parisien”の依頼で行い、11日にその結果を発表した調査の要点だ。

その調査によれば、回答者の79%がフランスの財政状況を心配しており、67%が自分の家計への影響を心配している。新たな財政経済危機を回避するに当たって頼れる人や指導者は誰かという質問には、自分自身がしっかりしなくてはと回答した人が48%で最多。次いで、メルケル首相とドイツ政府という答えが46%、さらにはIMFが41%、産業界が39%、EUが36%。サルコジ大統領とフランス政府と答えたのは、わずか33%だった(日本メディアの報道では、オバマ大統領とアメリカ政府が37%だったとありますが、『ル・モンド』には出ていません。よくある単純なミスなのか、あるいは反米感情のなせるわざなのか・・・)。

一方、頼りにされていない、つまり不信の対象になっているのは、わずか6%の回答者が頼りにすると答えただけのディーラーを筆頭に、銀行が17%、格付け会社も同じく17%。また、財政赤字を削減するためにフランスが取るべき方法については、85%の回答者が歳出削減と答え、増税と答えた12%を大きく上回った。

この調査結果は、週のはじめに金融市場が大きく変動したのを受けて、この財政危機に関する緊急ミーティングを行うべく、サルコジ大統領がヴァカンスからパリに戻った翌日に発表されたものだ。

会議後、たった一つのメッセージが発表されたが、それは関心を寄せていた人々を納得させるものではなかった。財政赤字削減を急ぐために採用する断固たる措置を8月24日に発表すると、そのスケジュールを若干早めただけだったからだ。そこに含まれる主要な対策は、税の網目をさらに狭くし、取れるところからさらに取ることだ。

サルコジ大統領は24日までに各国首脳と会うつもりだ。16日にはメルケル首相とエリゼ宮で会う予定になっている。その会談では、ユーロ圏の経済政策に関する提案について話し合うことになっている。

・・・ということで、財政赤字削減のためには、さらに歳出削減を行うべきであり、増税に走るべきではないという声が、フランスでは圧倒的に多くなっています。行政の支出にはまだ無駄があるはず、そこを削れ、という声なのでしょうね。

一方、日本では、消費税率の引き上げもやむを得ないという声が多くなっており、好対照をなしています。行政の無駄削減を民主党に期待したが、事業仕分けという一過性のパフォーマンスで終わってしまった。無駄の削減が難しいのでは、仕方がない、増税もやむなし・・・為政者にとっては、とても御しやすい国民です。フランス首脳は、日本国民を統治したいと思うのではないでしょうか。

『世界の日本人ジョーク集』に、次のような内容の一節があります。世界最強の軍隊とは・・・アメリカ人の将軍にドイツ人の参謀、そして日本人の兵隊。一方、世界最弱の軍隊は・・・中国人の将軍に、日本人の参謀、そしてイタリア人の兵隊。どちらにも顔を出しているのが日本人。もちろん日本人に関するジョークを集めたものだけに、そうなっているのでしょうが、戦略は作れないが、現場で額に汗しながら、下された命令を効率的に、徹底的に実行していくのに優れた日本人。しかも、無理難題も我慢して受け入れ、実行していく日本人。

しかし、どこの国に笑われようと、これがわれらの特徴。堂々と現場の力で生きていけばいいと思っています。戦略を描くのが下手な国民性なら、政治家にそれを求めるのも無理。政治家には邪魔をしないでいてもらい、国民の力で、現場の力で新たな一歩を踏み出すべきなのではないか。漂流する政治を見せつけられているだけに、そうした思いを一層強く持ってしまう今日この頃ではあります。
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