ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

研究者の給与は安すぎる・・・フランスの場合。

2010-10-27 20:14:12 | 文化
今年も日本からお二人のノーベル賞受賞者が出ました。同じ国民として、とてもうれしいニュースですね。お二人を加えると日本からの受賞者は、18名(内、お一人はアメリカ国籍)。文学賞二人、平和賞一人を除く15名の方々がいわゆる理科系の賞での受賞。科学・技術立国、日本。やはり、目指すべき姿は、これしかないと思います。

そして26日、今年の受賞者お二人に文化勲章が贈られることになり、また同時に文化功労者にも。お喜びもひとしおではないかと思います。しかし、今回のノーベル賞受賞がなかったら、文化勲章もなかったのかもしれない・・・さまざまな分野で立派な功績を残されながら、一般に知られていないために、名誉に浴していない方々も多いのではないでしょうか。いや、研究は名誉のためではない。人類に貢献できれば、それでいいのだ。という声もあるかもしれませんが、研究者の方々には、もっと良い環境で仕事に打ち込んでいただきたいと思います。

2007年までで53人のノーベル賞受賞者(マリ・キューリー、高行健など外国生まれを含む)を輩出しているフランスの場合はどうなのでしょうか。文化大国・フランス、さぞやしっかりした研究環境が整っているのかと思いきや、フランス国民の評価は必ずしもそうではないようです。20日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

文部省の依頼を受けてCSAという調査機関が1,051人を対象に行った調査によると、95%と圧倒的多数の人が科学は社会の役に立つと答えています。また79%の対象者が、科学は信頼できるものだと認めています。

しかし、65%の人が職業としての研究者は今日のフランスでは優遇されていないと述べています。この数字、15―24歳では49%に下がりますが、たぶん研究者を含めさまざまな職業での給与など待遇面での詳細をまだ知らないからではないでしょうか。教えを乞うている先生方の待遇はそれなりに見えてしまうのでしょうね。

また、58%の回答者が、研究者の給与はその仕事や能力に見合うだけのレベルに達していないと認めています。そして、68%の人が、研究者の給与はその功績に基づいて一層上げるべきだと答えています。

一方、科学への興味ですが、60%の対象者が、科学にはほとんど興味を持っていないと答えています。そして64%の人がメディアは科学の発展をあまり紹介していないと言っています。これは、鶏が先か、卵が先か、ですね。メディアが科学を紹介しないから科学に興味が持てないのか、視聴者が科学番組を見ないから、メディアは科学を紹介する番組を作らないのか。この状況は、日本でも同じなのではないでしょうか。しかし、日本には、理科嫌いを科学好きにするユニークな授業を行っている先生がいらっしゃいます。同じように、多くの視聴者が科学に興味を持つような番組が作れれば、少しでも多くの国民が科学に興味・関心を持つようになると思います。それとも、それでも芸人のお笑い番組のほうにチャンネルを合わせてしまうのでしょうか。

ところで、日本にしろ、フランスにしろ、以前から頭脳流出が問題になってきました。頭脳の流出先は、言うまでもなく、アメリカ。より良い研究環境を求めて、アメリカへ。施設や人的支援、研究に割ける時間など純粋により良い環境を求めてということなのだとは思いますが、環境の一部に給与が含まれていても、決して非難されるべきではないと思います。

さらに最近では、最先端の頭脳がこれからの国力を左右するとばかりに、世界から優れた研究者を高給や優れた環境で引き抜いている国々も出てきています。例えば、シンガポール。厚待遇で迎えていますが、もちろん待遇に見合う研究成果が出なければ、即契約解除。21世紀の外国人傭兵のようでもあります。しかし、自国がしっかりした研究体制を整えていれば、なにも外国に行く必要はないので、海外に流出する研究者を責めることはできません。

研究者たちのモチベーションをあげるためにも、研究環境の一層の整備が求められているのは、日本もフランスも同じようです。もちろん、日本とフランス以外にも同じような悩みを抱えている国々も多いことでしょうか。どこが先に現状を変え、自国の頭脳を維持、進化させることができるのか。各国の将来の立ち位置が、ここで決まってしまうかもしれません。頑張れ、日本!

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