ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランスのレストランの評価が低い・・・評価方法が間違っているからだ!

2011-04-23 20:42:31 | 文化
美食と言えば、フランス。フランスには有名シェフも多く、ミシュランの星を獲得しているレスランも多い。日本人シェフも、修行に出かけますね。グルメと言えば、フランス。フランス人自身もそう思い込んでいるのでしょうが、そのフランス人が怒っています。こんなランキングはおかしい。絶対受け入れられない!

何に腹を立てているかというと、イギリスの雑誌“Restaurant Magazine”が発表した「サン・ペレグリーノ賞」(le prix S. Pellegrino)。「料理界のアカデミー賞」とも言われる権威ある賞で、世界のレストラン・ベスト50を認定しているのですが、フランスのレストランのランク・インが少ない・・・これは、おかしい! 評価の仕方が間違っているのではないか!!

では一体、どのようなランキングで、フランスのレストランはどのような状況になっているのでしょうか。19日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

2010年と同じように、今年もデンマークのレストラン「ノーマ」(Noma)が世界のベスト・レストランに選ばれた。審査をしたのは、世界の美食に関する批評家、専門家800人で、「ノーマ」は2年連続でベスト・レストランの栄誉に輝いた。コペンハーゲンの再開発された港湾地区にある倉庫を改造したにレストラン・「ノーマ」を率いるのは、32歳の若きシェフ、René Redzepi(ルネ・レッゼピ)で、その類まれな創造性が高く評価されている。彼はまた、北欧料理大使であり、地元の季節の素材を上手に生かしている。牛乳、フェロー諸島で獲れたヨーロッパアオザエビ(ラングスティーヌ:langoustines)、栗の実、黒パン、自家製ヴィネーグル・・・

スペインからは2店がトップ・ファイブに入っている。「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」(El Celler de Can Roca)と「ムガリッツ」(Mugaritz)で、トップ・テンにはもう1店、「アルサック」(Arzak)が8位に入っている。一方、同じスペインのレストランで、2006年から2009年まで4年連続で1位に選ばれた「エル・ブジ」(El Bulli:世界一予約が取れないレストランとして有名、ミシュランの3つ星)は、ランク・インしていない。伝説のシェフ、フェラン・アドリア(Ferran Adria)が、充電のため、今年7月からしばしの間、閉店するからだ。2014年に再開されることになっている。

上位にスペインのレストランが並ぶ中、ブラジルの“D.O.M.”が昨年から11位も順位を上げ、7位にランク・インした。サンパウロにあるレストランで、シェフはアレックス・アタラ(Alex Atala)。賞の主催者も驚く上昇ぶりだ。

イタリアン・レストランは、2店がトップ・ファイブ入りしている。「オステリア・フランチェスカーナ」(Osteria Francescana:立地はイタリアのモデナ、シェフはマッシモ・ポットゥーラ)と「ファット・ダック」(the Fat Duck:立地はイギリスのバークシャー)。“Fat Duck”のシェフは、フェラン・アドリア同様、分子ガストロノミー(分子美食学:調理を科学的視点から社会的・芸術的・技巧的に解明しようという試み)を信奉するヘストン・ブルメンタール(Heston Blumenthal)だ。

アメリカからは、2店がトップ・テン入りしている。“Alinea”(シカゴ)が6位、“Per Se”(ニューヨーク)が10位。

昨年、トップ・テンに1店もランク・インしなかったフレンチだが、今年はパリ(11区)にあるビストロ「ル・シャトーブリアン」(Le Chateaubriand:シェフはInaki Aizpitarte)が9位に入り、トップ50には、8店が入った。「アストランス」(L’Astrance:パリ)が昨年の16位から13位に、「アトリエ・ド・ジョエル・ロブション」(L’Atelier de Joël Robuchon:パリ)が29位から14位に、それぞれ順位を上げた。一方、「ピエール・ガニェール」(Pierre Gagnaire:パリ)は13位から16位へ順位を下げた。アラン・パサール(Alain Passard)の「アルページュ」(L’Arpège:パリ)は19位、「ブラス」(Michel Bras:オーブラック)が30位。そして「ラ・メゾン・トロワグロ」(La Maison Troisgros:ロアンヌ:多くの日本人が修業したレストラン)は44位を守ったが、ホテル「プラザ・アテネ」(Plaza Athénée)にあるアラン・デュカス(Alain Ducasse)の店(Alain Ducasse au Plaza Athénée:パリ)は41位から45位に後退した。

世界のベストレストラン50は昨年、フランスのシェフや美食評論家たちから、時代の流行を反映しているだけで、ランク付けの基準が明確でないと非難されたが、今年のランキングもまた同じ批判の対象になることだろう。

・・・ということで、日本からは、フレンチの「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」(Les Créations de Narisawa:南青山:成澤由浩シェフ)が12位、和食の「龍吟」(六本木:山本征治シェフ)が20位にランク・インした「世界のベストレストラン50」。日本のメディアも報道していましたから、ご存知の方も多いかと思います。

気になるのは、『ル・モンド』の最後の段落です。フランスから聞こえてくる批判の大合唱。基準がなってない、流行の後追いに過ぎない、美食の本質が分かってない・・・どうしてそう言えるのでしょうか? 

ランク・インしているフランスのレストランが少ない。しかも、上位に少ない。そんなわけがない。フランスこそ美食の本場。その伝統に裏打ちされた繊細にして華麗な味は、世界中の美食家を唸らせている。伝統を守りながら、常に新しさに挑戦している、フランス料理。それなのに、どうして、評価が低いのだ。納得できない。こんないい加減なランキングは、受け入れられない。主催者がイギリスの雑誌だからではないか。フィッシュ&チップスとローストビーフくらいしか生み出さなかった、味覚の分からない国が美食を評価するなんて企画をすること自体が間違いだ!

そんな噴飯やるかたないフランス人の憤りが聞こえてきそうです。もちろん、私の想像ですが、そんな気にさせる、「最後の晩餐」ならぬ「最後の段落」です。
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