ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランス語話者は、増えているのか、減っているのか。

2010-10-17 18:01:45 | 文化
フランコフォニー国際組織(OIF:l’Organisation internationale de la francophonie)という団体があります。「フランス語が何らかの形で用いられている国・地域の総称」(ウィキペディア)である「フランコフォニー」の国際的組織で、56カ国・地域のメンバーと14カ国・地域のオブザーバーで構成されています。設立は、1970年。

このOIFは、2年に1度、参加国のサミット(フランス語圏首脳会議)を行っています。今回は、10月22日から24日まで、スイスのモントルー(Montreux)で開催されます。その会議を前に、OIFは現在、世界にどのくらいのフラン語使用者がいるのかを調査し、公表しました。13日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

2007年には2億人だったフランス語話者が、2010年には2億2,000万人に増えた! わずか3年で10%も増加したことになります。ビジネス上の共通語がますます英語になっている時代にあって、これはすごい! ・・・しかし、調査方法に変更があったようで、数字を鵜呑みにはできないようです、残念ですが。

2007年までは、さまざまな機関が公表しているデータを基に概算を発表していたそうですが、今回は、国・地域ごとの詳細なデータを調べ、なおかつ不足部分は独自に調査して、より詳細なデータとして発表しました。ということは、増加率はともかく、総数は今回の数字のほうが信頼できそうですね。

しかも、今回はOIFに加盟していない国・地域も調査対象に加えたそうです。独立戦争の影響を引きずって未だに加盟していないアルジェリア(1,120万人)、一部にフランス語話者のいるアメリカ(210万人)、イスラエル(30万人)、そしてイタリアのヴァレ・ダオスタ地方(Valle d’Aosta:サヴォワ地方から国境を越えてすぐ東:9万人)といった小さな数字まで集めたそうで、こうすれば3年前より増えるのは当然ですね。

ただし、今回の調査では、特にアフリカで単にフランス語を話せるだけで、読み書きのできない人は除外したそうです。従って、フランス語話者の総数として、2億2,000万人という数字は過小評価になる、とOIF側は言っているそうです。

ここで、『ル・モンド』は疑問を呈しています。フランス語は、話す人の数では9位、学んでいる人の数では2位(OIFによれば1億1,600万人)の言語。しかし、国際的に英語がすごい勢いで普及しているにもかかわらず、フランス語使用者は今後増えるのだろうか?

OIFの担当者は、次のように述べています。150年前にフランス語は唯一の世界共通語としての地位を失っている。しかし、フランスはそのことを認めるのが遅すぎた。今日、フランス語はもはやエリートのための言語ではなく、生活に必要な言葉として話されている。

フランス語話者を増やすには、生活上の必要性からフランス語を話す庶民を大切にすべきだ、ということなのでしょうね。実際、アフリカでは人口が増えるに従い、旧植民地を中心にフランス語話者が増えている。一方、北アメリカでは伸び悩み、ヨーロッパでは減少している。例えば、イギリスでは、高校の卒業試験の必須科目からフランス語は除外されてしまったそうです。

国際機関でのフランス語の地位はどうなっているのでしょうか。答えは、明らかな衰退。EUで使用される書類のうち、オリジナルがフランス語で書かれたものは全体の15%に過ぎない。ジュネーブにある国連の欧州本部では、書類の90%が英語で書かれている・・・

現在フランス語話者のほぼ半数がアフリカに暮らしていますが、アフリカの人口が今のペースで増え続ければ、2050年には、その割合は85%ほどに達するだろうと予想されています。しかし、これも、学校教育でフランス語がきちんと教えられること、フランス語が公用語として維持されること、という条件が付くそうです。例えば、ルワンダ語・フランス語・英語を公用語にしているルワンダは、英語優先に舵を切ってしまったとか・・・

こうした現状に基づき、22日からのフランス語圏首脳会議に、OIF事務局はフランス語教師の育成とアフリカ諸国での文盲対策を特に強く提案するそうです。フランス語の未来は、アフリカにかかっている!

では日本では・・・大学でのフランス語学習者が減少しているといろいろなところで聞きます。また書店に並んでいるNHKの語学学習テキストでも、フランス語の山は低くなっています。時代は、英語・中国語・韓国語なのでしょうね。しかし、時代に流されず、自分の好きなことをやるのも個人の自由。他人に迷惑をかけなければ、人生、好きに生きたいものです。時代に迎合しないへそ曲がりが多くいた方が、社会も健全なのではないでしょうか。少なくとも面白いのではないか、と思うのですが、日本の現実という厚い壁を前にすると、悲観的にならざるをえません、残念ながら。

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