ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

シェンゲン協定から、フランス離脱か?!

2011-04-24 20:17:47 | 政治
シェンゲン協定・・・ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可する協定(ウィキペディアより)。この協定のお陰で、私たちも一度加盟国内に入れば、その後の移動に際しパスポート・コントロールなどが免除され、数カ国を旅行するのにはとても便利です。

1985年6月にルクセンブルクの町、シェンゲン近くでベルギー、フランス、ルクセンブルク、オランダ、西ドイツ(当時)の5カ国が文書に署名したことから「シェンゲン協定」と呼ばれていますが、今では加盟国も25カ国に増え、EUには加入していないスイス、ノルウェーもこの協定に加盟しています。一方、イギリス、アイルランドはEU加盟国ですが、この協定には加わっていません。一口に「ヨーロッパ」と言っても、異なる考え・方針があり、そう簡単にはまとまらないようです。

さて、当初からの加盟国・フランスで、一時的にこの協定から離脱してはどうか、という声が上がっています。離脱してしまうと、フランスから他の国に行く際に、いちいちパスポート・コントロールを通らなければならなくなる。これは、不便!

どのような事情で離脱しようなどと考えているのでしょうか。22日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

フランスは今、「シェンゲン協定」と呼ばれる、ヨーロッパ内の自由な移動を認める協定からの一時的離脱を模索している。リビアやチュニジアからの不法移民の大量流入に対応するためだ。

フランス大統領府は、シェンゲン協定の運用には欠陥があると見做しているようで、「EU加盟国と非加盟国の国境においてシステム上の問題が発生する場合には、問題が解決されるまで一時的に協定から離脱することができることを協定に付け加えるよう検討すべきだと思われる」と、エリゼ宮(大統領官邸)は述べている。

北アフリカでの政変、特にチュニジアとリビアでの騒乱によって、大量の不法移民がイタリアに押し寄せている。彼らはひとたびシェンゲン協定加盟国であるイタリアに入国できれば、その後、他の24カ国に自由に移動できる。

この問題が、26日(火曜日)にローマで予定されているフランスとイタリアの首脳会談における、最も微妙な争点となっている。

チュニジア・リビアからの移民の殺到に直面し、イタリアは当初、周辺諸国に移民受け入れの協力を依頼した。多くの移民にとってはフランスが目的地であるため、受け入れ協力は主にフランスに対するものとなった。しかし、フランスはその依頼を拒否。EU委員会も、他の加盟国に連帯を強要することはできないと判断した(フランスの対応を支持したわけですね)。

イタリアは、1月以降で2万人以上に達するチュニジアからの不法移民に6カ月の滞在許可を与え、フランスや他のヨーロッパ各国にいる親類知人の元へ向かわせようとした。この方針に、他の国々が反対の声をあげた。ベルギーの移民とその救済を担当する政務次官、Melchior Watheletは、イタリアはヨーロッパのルールを悪用したと批判している。

17日(日曜日)、フランスはイタリアの国境の町Vintimilleからフランス国内に向かっていた列車のフランス領内への運行を認めず、イタリアの怒りを買った。フランスの言い分は、チュニジアからの移民とともに乗り込んでいた支援者たちが公的秩序を乱す恐れがあったからだ、というもの。

「シェンゲン協定において最も大切な決まりごとは、移民などは彼らが最初に入国しようとする国が適切に処遇するということだ」と、フランスのゲアン内相(Claude Guéant)は語っている。

加盟国が北アフリカから押し寄せる不法移民に対して適切な対処を行えないことによって、シェンゲン協定はその存続が危機に瀕している。その消滅はEU内における自由な往来の終焉を意味し、外国人排斥などを訴える極右・ポピュリズム政党にとっては願ってもない結果となるだろう。

治安と移民政策担当のEU委員、Cecilia Malmströmは、25カ国、4億人が国境なしで暮らしている現状が、チュニジア移民がもたらすフランス・イタリア両国の緊張関係によって終末を迎えるという考えは受け入れがたいと述べている。

Cecilia Malmströmはまた、「ヨーロッパ各国政府が治安に関しては責任を持っているのだが、今日では、政権与党に加わっているイタリアの北部同盟や、大きな勢力となっているフランスの国民戦線など、ポピュリズムや外国人排斥運動を特徴とする勢力からの圧力にさらされ、苦悩している」と、明かしている。

27日、ローマでの仏伊首脳会談では、両国間の争点を解決すべく努力すべきだが、今回の移民流入という危機により、シェンゲン協定が抱えている問題は解決にさらに時間がかかりそうだ。EU委員会は、フランスとドイツがルーマニアとブルガリアのシェンゲン協定への加盟に反対しており、新たな加入には長い時間が必要な状況であることを認めている。

フランスとドイツはさらに、加盟国が国境での問題に対処できない場合には、EUと外国との国境をめぐる条項を修正することを提案している。

・・・ということで、折も折、外国人排斥を声高に叫ぶ極右政党が勢力を伸ばしているときに、北アフリカからの不法移民がヨーロッパを目指して大量にやってきた。ひと悶着なしには済まされないようです。

シェンゲン協定が一時的にせよ停止されてしまえば、国境をまたぐたびにパスポート・コントロールを受けることになります。面倒ですね。

そしてそれ以上に面倒なのは、EU加盟国がそれぞれ、自国の殻に閉じこもり、排他的な政策を取りつつあることです。同じEU加盟国であっても、財政赤字のつけは、その国が払うもの。どうして、関係ない我々の税金が注入されるのだ。我々の税金は、この国をよくするためにだけ使われるべきだ・・・単一通貨ユーロを救うためだとしても、表面上は税金が他国救済に使われるように見えてしまう。そこで、反対だ!という声が大きくなってきています。

外国人排斥どころか、EU加盟国同士でも、排他的気運が高まっています。内へ向ったベクトルが、キャパシティ以上の容量となると、一機に外へ向ってほとばしる・・・いつか来た道。次の火薬庫は、どこになるのでしょうか。同じ轍を踏まないためには、どうすべきなのか。「人類の知恵」が試されているのだと思います。

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