ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

「シャンパン社会主義者」の面目躍如・・・DSKの新しい住まい。

2011-05-28 21:54:23 | 政治
ニューヨークのブロードウェイ70番地に仮住まいしていたドミンク・ストロス=カン(Dominique Strauss-Kahn)が新しい住まいに転居しました。

保釈される前に、いったんアッパー・イースト・サイドにあるアパートメントでほぼ決まりかけていたのですが、同じ建物や近隣の住民の反対などもあり、急ぎ仮の住まいとしてマンハッタン南部にあるアパートメントに腰を落ち着けました。しかし、手狭であり、警備上などの面からもよりふさわしい物件を探していました。

これまでの仮住まいにしても、同じ建物内の住民、特に女性はインタビューに答えて、どんな人か知らないけれど、性犯罪者が同じ建物に住むのは不安だわ、と言っていました。しかも道路をはさんで建物の向かいには多くのカメラが入り口にレンズを向けていました。住民はDSKが退去してホッとしているのではないでしょうか。

そして、DSKの新しい住まいとなったのは、トライベッカ(Tribeca:ソーホーの南西にある地区、Triangle below Canal Streetの略がその名の由来)にある豪奢なアパートメント。どのような住まいで、それをめぐりどのような反応が起きているのでしょうか・・・26日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

ドミニク・ストロス=カンが25日夜、20日に保釈されて以降住んでいたアパートメントを出て、トライベッカにある豪奢な住まいに居を移した。そこで、警察の監視下、ホテルの女性従業員に対する強姦未遂に関する裁判に備えることになる。

前IMF専務理事は、私服警官に付き添われて、ブロードウェイにある仮住まいをしていた建物を出、待たせていたクルマに乗り込んだ。手錠はされていなかった。彼が向かった先は、トライベッカにあるフランクリン・ストリート(Franklin Street)153番地。その一帯は、かつて倉庫や工場が立ち並ぶ地区だったが、1990年代にロフトなどに改装され、今やおしゃれなエリアとして人気を博している。DSKが住むのはその一角にある2階建てのエレガントな家だ。

メディアはさっそくこの新たな住まいの前に陣取った。不動産会社によれば、この住まいには、3つの寝室、4つのバスルーム、大きなロフト・スタイルの居間、ジャグジー、ビデオ・ホール、その他贅を究めた設備がそろっている。ニューヨーク・タイムズは、この家は有名な建築家、レオポルド・ロザーティ(Leopoldo Rosati)によってリノベーションが施され、1,400万ドル(約11億3,500万円)ほどで売りに出されていたと伝えている(DSKはこの家を買ったのではなく、賃借することにしました)。

「このような家賃、これほどに高い家賃を聞けば、多くのフランス人が驚くことも理解できる」と、社会党の報道官、ブノワ・アモン(Benoît Hamon)はラジオ局とのインタビューで語っている。ブノワ・アモンによれば、月ごとの家賃は35,000ユーロ(約400万円)だそうだ。

「ストロス=カンが夫人と非常に裕福な家庭を営んでいることは誰もが知っていることであり、それゆえこの家を借りることにしたのだ。しかしこの家賃が、我々フランス人にとって非常に高価なことは否定しようがない。」このように、ブノワ・アモンは言葉を継いだ。

「ニューヨークの判事は、25日の早いうちに、DSKがマンハッタン内で住まいを引っ越すことを認めていた。DSKはマンハッタンに住むよう居所指定を受けており、それに従っている。」司法関係者はこのように説明している。

新しい住まいからDSKは警官のエスコート付きで弁護士に会いに出かけたり、裁判所へ出向いたり、医師や宗教的施設(シナゴーグなど)へ赴くことができる。弁護士は、同じく25日、コミュニケを通して、性的暴行でDSKを訴えている客室係の女性やその家族には一切コンタクトを取っていないこと、DSKが完全に無罪であることを確信していることを、公表した。

ホテルの従業員に対する性的暴行と強姦未遂で告訴されているDSKは6月6日、有罪か無罪かを述べるために裁判所に出向くことになっている。DSKは起訴内容を全面的に否認している。

・・・ということで、新しい住まいの家賃は月額400万円! 年額でもすごいと思ってしまいますが、月額の家賃です。さすが、「シャンパン社会主義者」ですね。

しばらく前、DSKがいかに庶民とかけ離れた豪奢な生活を送っているかを、与党、UMP(国民運動連合)の息のかかったメディアが大々的に報道していましたが、やっぱり、ね・・・と思ったフランス人は多いのではないでしょうか。

プライヴェートに関しては、寛大なフランス人。ミッテランの隠し子についても“Et alors”と言われただけで認めてしまいました。DSKに関しても、フランスで起きた事件なら、DSKのいつもの女好きが今度はちょっと度が過ぎたね、くらいで済んだのかもしれませんが、アメリカでの事件だけに、起訴されてしまいました。しかし、いくらプライヴェートと言っても、こと「お金」に関しては、さすがのフランス人もそう寛大ではいられないのではないでしょうか。

寛大でないというよりは、厳しいかもしれません。ミシェル・アリオ=マリ(Michèle Alliot-Marie)が外相を辞任せざるを得なかったのも、チュニジアの前政権との癒着、特に親のビジネス絡みでの金銭的不明瞭さが指摘されたことが一因にありました。また、DSKの後任としてIMF専務理事に立候補したラガルド財務相(Christine Lagarde)も、金銭絡みの職権乱用で訴追される恐れがあります。

「ラガルド氏の関与が指摘されたのは、仏実業家ベルナール・タピ氏が保有株売却で損失を受けたとして、売却委託先で当時国営だったクレディ・リヨネ銀行に損害賠償を請求した訴訟。ラガルド氏は2007年、同銀の政府代表の資格で介入して訴訟を打ち切り、調停に持ち込んでタピ氏に有利な形で係争を終結させた。」(時事通信:5月25日)

*ベルナール・タピ(Bernard Tapie):実業家、政治家、俳優。サッカー・チーム、オリンピック・マルセイユの元会長。会長職にあった1993年、チームはUEFAチャンピオンズカップで優勝。その時の中心選手の一人が、現名古屋グランパス監督のドラガン・ストイコビッチ。タピ自身は、その後、八百長問題で辞任。

フランス人の「お金」に対する目は、日本人よりも厳しいかもしれません。その「お金」に関して、庶民とはあまりにかけ離れた優雅な生活を送るDSK。そのイメージは、他の社会党政治家にも影響するかもしれません。失脚したDSK、生ける社会党大統領候補を走らす、になるのでしょうか・・・

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。