ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

そう、ベルギーの終わりに備えねば。

2010-09-18 20:37:57 | 政治
“Oui, il faut se préparer à la fin de la Belgique”・・・5日のル・モンド(電子版)の見出しです。ここ3年ほど、フランス語を話すワロニー地方とオランダ語を話すフランドル地方との間での対立から政治的空白が頻発しているベルギー。ついに、その分裂が確かなものになってきたようです。

以前にもご紹介しましたが、ベルギーは3つの地域に分けられています。工業を中心に新しい産業が発達し、住民の所得も高い北部のフランドル地方と、昔ながらの炭鉱、農業に依存し、経済的に苦しい南部のワロニー地方、そして、オランダ語圏に飛び地のようにある、フランス語話者の多い首都ブリュッセル。

産業構造の転換を行い、経済的豊かさを享受するフランドル地方は、以前から分離独立を主張してきました。6月13日の総選挙(下院定数:150議席)でも、独立を強硬に主張する政党“NV-A”(新フラームス同盟)が第一党になりましたが、獲得議席数はわずか27議席と、小党分立の状態。しかも、ドウェーバー党首は首相の座にはこだわらないと明言。

そこで、26議席を獲得して第2党となったフランス語圏の社会党がオランダ語圏の社会党と手を組めば連立政権が成立するだろうと、ワロン系社会党のエリオ・ディ=ルポ党首を中心に組閣工作に着手しました。しかし、3カ月。ついに断念。国王も、社会党による組閣断念を受け入れました。ベルギー、再び三度、政治空白に突入です。

新フラームス同盟は、各地域がそれぞれの経済力に応じて暮らすべきだと主張し、一方のワロン系社会党は地域格差の拡大を懸念。貧しい地域への手厚い補助金を求めています。国としての将来像を共有できなかったようで、結局、溝を埋めることができませんでした。

国王は経済対策、財政再建策の実施へ向け、政治空白を少しでも短くしたいと、両地域それぞれ一人ずつの調停者を任命し、今回の政治危機を脱するために話し合いを始めるよう命じました。

そして、今回の連立不成立を受けて、今までは分離独立に消極的だったフランス語圏の政治家たちからも、ベルギーの終焉に備えるべきだという声が上がり始めています。例えば・・・

「分離独立となれば、その影響を最も深刻に受けるのは貧しい人々だ。国として存続できることが望ましいのだが、フランドル地方の大部分の人たちが分離を望んでいることは無視できない。従って、貧しい人々が困らないよう、ベルギーの終末に対して準備をすべき時になってきている。さもなければ、いざ独立となった時にあたふたとし、物笑いの種になりかねない。」

「流動的な状況に対応すべく、すべての仮定を考慮に入れておく必要がある。少なくとも、自分たちのことは自分たちでやらなければならないということだけは確かだ。しかし、ワロニー地方とブリュッセルは、今でも自分たちの足で立つことができる。明日まで待つ必要はない。」

「今や分離独立へ向けての漸進的準備の段階に入っている。」

調停作業がどうしてもうまくいかない場合は、再び総選挙を行うことになるそうで、その場合は分離独立を叫ぶフランドル地方の政党の勢いがさらに増すことが予想されています。

5日の日曜日には、フランドル地方に住むオランダ語を話す人たちが、ブリュッセルへ向けて自転車で、あるいは徒歩で大行進を行いました。目的は、ブリュッセルとその郊外に多く住むフランス語話者たちに、フランドル地方に住んでいるなら、オランダ語を話し、フランドル地方の文化風習に従うべきだと訴えるため。毎年恒例の行進なんだそうです。

フランドル地方に続いてワロニー地方でも、分離独立の声が上がり始めた・・・ベルギーの国家としての命運は、風前の灯、なのでしょうか。EU統合の中心地ブリュッセルを首都とするベルギーの分裂。非常に皮肉な状況です。しかし、まとまる人がいれば、分かれて出て行く人もいる。離合集散は人の常。せめて、分離独立が流血の騒ぎにならないことを願っています。

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