「キング」と聞いて、何を思い出しますか。“roi”ではなく、“king”。普通に、「王様」なら、ルイ14世、いやルイ16世、いやいやアレクサンダー大王だ・・・と、実在した王様ではきりがありません。
王様以外で「キング」と言って思い出すのは、例えば、私のようなジャンク・フード好きなら「バーガー・キング」(Burger King)。ミュージック・ファンなら「キング・レコード」なんていうのもあります。AKB48の加入で業績好調のようですが、ベテランでは、梓みちよ、布施明も所属しています。ディズニー・アニメが大好きという方なら、「ライオン・キング」(The Lion King)。シンバの成長と活躍が観客を楽しませてくれた1994年の作品ですね。
そして、人名なら、“I have a dream.”で有名なキング牧師(Martin Luther King Jr.)。あるいは、ナット・キング・コール(Not King Cole)。『モナリザ』(“Mona Lisa”)などのヒットで有名なジャズ・ピアニストですね。また、ホラー小説の名手、スティーヴン・キング(Stephen Edwin King)もいます。『キャリー』が有名ですが、映画『ショーシャンクの空の下』(The Shawshank Redemption)の原作者としても有名ですね。
人名で「キング」となると、どうしてもアメリカ人が続いてしまいますので、スポーツ界、例えばサッカーの世界で「キング」を探すと・・・まずは、ペレ。ブラジルをワールド・カップで3度の優勝に導いた大スターで、1956~1977年の現役時代、1363試合に出場し1281得点したと記録されています。大記録ですね。記憶にも、記録にも残る偉大な選手で、“The king of football”と呼ばれています。
日本なら、「キング・カズ」こと三浦知良。1982年、15歳にしてブラジルへ渡り、プロ・サッカー選手を目指しました。89年にはコリチーバ、90年にはサントスと契約し、2年間で5得点。帰国後の活躍はご存知の通り。
そして、フランス人サッカー選手では・・・プラティーニですか。いいえ、プラティーニは「将軍」。では、ジダン。残念。答えは、エリック・カントナ。ご存知ですか。
Eric CANTONA・・・1966年5月24日生まれの45歳。1992年から97年まで所属したマンチェスター・ユナイテッドでは、4度のリーグ制覇に貢献。ピッチ上での活躍はもちろんですが、ファンとの悶着や場外でのトラブルでも名を馳せ、常にメディアに狙われる存在でした。しかし、人気は抜群で、“King Eric”と呼ばれ、多くのファンの心をつかんでいました。
その結果、「マンチェスター・ユナイテッドの20世紀最高の選手」(Manchester United’s player of the century)の名誉に浴したり、「プレミア・リーグ歴代最優秀選手」(イギリスの銀行・バークレーが行った投票)に選ばれたりしています。1997年の現役引退後は、ビーチ・サッカー(football de plage)のフランス代表監督兼選手として2005年のビーチ・サッカー・ワールドカップで優勝。2011年にはニューヨーク・コスモスのスポーツ・ディレクターに就任しています。
また、サッカー以外でも、俳優として活動。引退前の1995年、“Le bonheur est dans le pré”に出演したのを皮切りに、今までに17作ほどの映画に出演しています。中でも、ケン・ローチ(Ken Loach)監督の『エリックを探して』(“Looking for Eric”、2009年製作)では自分自身の役を演じて話題になりました。映画の中の台詞“I’m not a man, I’m Eric Cantona”は一種の流行語になったほどです。
さて、このエリック・カントナが大統領選での立候補へ向けて行動を開始したという情報が、フランスから伝わってきました。キングが、大統領へ・・・どのような状況なのでしょうか。9日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。
サッカー界のレジェンド、エリック・カントナ、現在では俳優として活躍中だが、そのカントナが大統領選への立候補に必要な国会議員、地方議員、首長など500人の推薦署名(異なる30以上の県・海外領土から選出された人々を含むという条件があります)を求める運動の一環として、全国の自治体の首長たちに支持を求める文書を送った。このように、日刊紙『リベラシオン』(Libération、1973年創刊、発行部数=12万部)が9日、伝えている。
「ご存知のように、ハイレベルなスポーツ界での経歴や芸術の分野での活動などプロとしてのキャリアを超えて、私は私たちの生きる時代が若者へ提供する機会(非常に限られていますが)、今日の社会が生み出す不公正(あまりにも多く、激しく、組織的ですが)に常に注意を払うタイプの人間です」と、カントナは首長たちに宛てた1月4日付の手紙に記している。
「首長の皆さん、私が皆さんの支援を必要とするのは、フランスが直面している政治的論争の中で皆さんの署名が必要だからです」とカントナは続け、さらに「私はシンプルだが明快なメッセージ、真実を明らかにするが、リスペクトの気持ちも失わないメッセージ、連帯感があり、力強いメッセージを送りたいのです」と述べている。レター・ヘッドに「エリック・カントナ、コミットする市民」(Eric Cantona, citoyen engagé)と書かれた手紙は、カントナのホームページ(www.ericantona.fr)にアップされることになっているが、まだ準備中のようだ。
率直な物言いと予知できない行動で知られている、このかつてのサッカー界のスターは、2010年末に突然、銀行口座から預金を引き出すよう呼び掛けることにより、不意の喧しい話題を提供したことがある(年金受給開始年齢を60歳から62歳に引き上げることを含む年金改革に反対する運動“le mouvement social contre la réforme des retraites en France de 2010”に賛同しての言動です)。しかし、このアピールは失敗に終わった。1992年から97年までプレーしたマンチェスター・ユナイテッドでは4度のリーグ制覇に貢献し、マンチェスター・ユナイテッドの長い歴史の中でも最も優れたプレーヤーの一人であると言われる“King”エリックは、1997年に現役を引退した。今では俳優であるカントナは、イギリス人、ダン・ジャメット(Dan Jemmett)演出によるアルフレッド・ジャリー(Alfred Jarry:1873-1907、シュールリアリスム・ダダイズム・SFの祖、世紀末の呪われた詩人などと評される奇才)作“Ubu enchaîné”(三部作『ユビュ王』の中の一作『鎖につながれたユビュ』)の巡業公演に加わっている。
・・・ということで、キング・エリックが、大統領の座を目指して動き始めたようです。はたして、500人分の推薦署名を集めることができるのでしょうか。職人意識、プロ意識の強いフランスですから、テレビに出ていた有名人が政界に簡単に入れるような我らが日本と同じようにはいかないのではないかと思います。それでも、立候補したい、政党の支持がなかろうと。「私はエリック・カントナだ」。できないことはない、という気持ちなのでしょうか。ただ寡聞にして、カントナがどのような政治信条、政策を持っているのか知らないだけに、軽々しくコメントはできません。二重行政の解消と道州制以外の政策を聞いたことのない橋下大阪市長へコメントができないのと同じです。二人とも、単なる「権力欲」だけの人物でないことを願っています。
ところで、エリック・カントナが参入を狙う大統領選挙。最新の世論調査結果が出ていました。8日の『ル・モンド』(電子版)が伝えていますが、その概略をご紹介します。
第1回投票での投票意向で、フランソワ・オランドとニコラ・サルコジの差が縮まった。社会党のオランドがトップの座は守ったが、先月比0.5ポイント増の28%で、2ポイント増やして26%となった現職のサルコジ大統領が迫っている。極右・国民戦線のマリーヌ・ルペンは1ポイント減らして19%、中道・MoDemのフランソワ・バイルーは1ポイント増やして12%となった。
決選投票でも、オランドとサルコジの差は縮まったが、それでもオランドは54%(前月比2ポイント減)で、サルコジの46%(前月比2ポイント増)をまだ大きく引き離している。
・・・ということで、フランソワ・オランドとニコラ・サルコジの差が縮まってきました。選挙キャンペーンは投票直前の数カ月でいい、はじめからトップを走れば、風も強く疲れてしまう。かつてそう言っていたサルコジ大統領。その作戦が、見事功を奏するのでしょうか。エリック・カントナが風雲児として嵐を呼ぶことができるのでしょうか。役者が増え、ますます目が離せなくなってきた、大統領選挙です。
王様以外で「キング」と言って思い出すのは、例えば、私のようなジャンク・フード好きなら「バーガー・キング」(Burger King)。ミュージック・ファンなら「キング・レコード」なんていうのもあります。AKB48の加入で業績好調のようですが、ベテランでは、梓みちよ、布施明も所属しています。ディズニー・アニメが大好きという方なら、「ライオン・キング」(The Lion King)。シンバの成長と活躍が観客を楽しませてくれた1994年の作品ですね。
そして、人名なら、“I have a dream.”で有名なキング牧師(Martin Luther King Jr.)。あるいは、ナット・キング・コール(Not King Cole)。『モナリザ』(“Mona Lisa”)などのヒットで有名なジャズ・ピアニストですね。また、ホラー小説の名手、スティーヴン・キング(Stephen Edwin King)もいます。『キャリー』が有名ですが、映画『ショーシャンクの空の下』(The Shawshank Redemption)の原作者としても有名ですね。
人名で「キング」となると、どうしてもアメリカ人が続いてしまいますので、スポーツ界、例えばサッカーの世界で「キング」を探すと・・・まずは、ペレ。ブラジルをワールド・カップで3度の優勝に導いた大スターで、1956~1977年の現役時代、1363試合に出場し1281得点したと記録されています。大記録ですね。記憶にも、記録にも残る偉大な選手で、“The king of football”と呼ばれています。
日本なら、「キング・カズ」こと三浦知良。1982年、15歳にしてブラジルへ渡り、プロ・サッカー選手を目指しました。89年にはコリチーバ、90年にはサントスと契約し、2年間で5得点。帰国後の活躍はご存知の通り。
そして、フランス人サッカー選手では・・・プラティーニですか。いいえ、プラティーニは「将軍」。では、ジダン。残念。答えは、エリック・カントナ。ご存知ですか。
Eric CANTONA・・・1966年5月24日生まれの45歳。1992年から97年まで所属したマンチェスター・ユナイテッドでは、4度のリーグ制覇に貢献。ピッチ上での活躍はもちろんですが、ファンとの悶着や場外でのトラブルでも名を馳せ、常にメディアに狙われる存在でした。しかし、人気は抜群で、“King Eric”と呼ばれ、多くのファンの心をつかんでいました。
その結果、「マンチェスター・ユナイテッドの20世紀最高の選手」(Manchester United’s player of the century)の名誉に浴したり、「プレミア・リーグ歴代最優秀選手」(イギリスの銀行・バークレーが行った投票)に選ばれたりしています。1997年の現役引退後は、ビーチ・サッカー(football de plage)のフランス代表監督兼選手として2005年のビーチ・サッカー・ワールドカップで優勝。2011年にはニューヨーク・コスモスのスポーツ・ディレクターに就任しています。
また、サッカー以外でも、俳優として活動。引退前の1995年、“Le bonheur est dans le pré”に出演したのを皮切りに、今までに17作ほどの映画に出演しています。中でも、ケン・ローチ(Ken Loach)監督の『エリックを探して』(“Looking for Eric”、2009年製作)では自分自身の役を演じて話題になりました。映画の中の台詞“I’m not a man, I’m Eric Cantona”は一種の流行語になったほどです。
さて、このエリック・カントナが大統領選での立候補へ向けて行動を開始したという情報が、フランスから伝わってきました。キングが、大統領へ・・・どのような状況なのでしょうか。9日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。
サッカー界のレジェンド、エリック・カントナ、現在では俳優として活躍中だが、そのカントナが大統領選への立候補に必要な国会議員、地方議員、首長など500人の推薦署名(異なる30以上の県・海外領土から選出された人々を含むという条件があります)を求める運動の一環として、全国の自治体の首長たちに支持を求める文書を送った。このように、日刊紙『リベラシオン』(Libération、1973年創刊、発行部数=12万部)が9日、伝えている。
「ご存知のように、ハイレベルなスポーツ界での経歴や芸術の分野での活動などプロとしてのキャリアを超えて、私は私たちの生きる時代が若者へ提供する機会(非常に限られていますが)、今日の社会が生み出す不公正(あまりにも多く、激しく、組織的ですが)に常に注意を払うタイプの人間です」と、カントナは首長たちに宛てた1月4日付の手紙に記している。
「首長の皆さん、私が皆さんの支援を必要とするのは、フランスが直面している政治的論争の中で皆さんの署名が必要だからです」とカントナは続け、さらに「私はシンプルだが明快なメッセージ、真実を明らかにするが、リスペクトの気持ちも失わないメッセージ、連帯感があり、力強いメッセージを送りたいのです」と述べている。レター・ヘッドに「エリック・カントナ、コミットする市民」(Eric Cantona, citoyen engagé)と書かれた手紙は、カントナのホームページ(www.ericantona.fr)にアップされることになっているが、まだ準備中のようだ。
率直な物言いと予知できない行動で知られている、このかつてのサッカー界のスターは、2010年末に突然、銀行口座から預金を引き出すよう呼び掛けることにより、不意の喧しい話題を提供したことがある(年金受給開始年齢を60歳から62歳に引き上げることを含む年金改革に反対する運動“le mouvement social contre la réforme des retraites en France de 2010”に賛同しての言動です)。しかし、このアピールは失敗に終わった。1992年から97年までプレーしたマンチェスター・ユナイテッドでは4度のリーグ制覇に貢献し、マンチェスター・ユナイテッドの長い歴史の中でも最も優れたプレーヤーの一人であると言われる“King”エリックは、1997年に現役を引退した。今では俳優であるカントナは、イギリス人、ダン・ジャメット(Dan Jemmett)演出によるアルフレッド・ジャリー(Alfred Jarry:1873-1907、シュールリアリスム・ダダイズム・SFの祖、世紀末の呪われた詩人などと評される奇才)作“Ubu enchaîné”(三部作『ユビュ王』の中の一作『鎖につながれたユビュ』)の巡業公演に加わっている。
・・・ということで、キング・エリックが、大統領の座を目指して動き始めたようです。はたして、500人分の推薦署名を集めることができるのでしょうか。職人意識、プロ意識の強いフランスですから、テレビに出ていた有名人が政界に簡単に入れるような我らが日本と同じようにはいかないのではないかと思います。それでも、立候補したい、政党の支持がなかろうと。「私はエリック・カントナだ」。できないことはない、という気持ちなのでしょうか。ただ寡聞にして、カントナがどのような政治信条、政策を持っているのか知らないだけに、軽々しくコメントはできません。二重行政の解消と道州制以外の政策を聞いたことのない橋下大阪市長へコメントができないのと同じです。二人とも、単なる「権力欲」だけの人物でないことを願っています。
ところで、エリック・カントナが参入を狙う大統領選挙。最新の世論調査結果が出ていました。8日の『ル・モンド』(電子版)が伝えていますが、その概略をご紹介します。
第1回投票での投票意向で、フランソワ・オランドとニコラ・サルコジの差が縮まった。社会党のオランドがトップの座は守ったが、先月比0.5ポイント増の28%で、2ポイント増やして26%となった現職のサルコジ大統領が迫っている。極右・国民戦線のマリーヌ・ルペンは1ポイント減らして19%、中道・MoDemのフランソワ・バイルーは1ポイント増やして12%となった。
決選投票でも、オランドとサルコジの差は縮まったが、それでもオランドは54%(前月比2ポイント減)で、サルコジの46%(前月比2ポイント増)をまだ大きく引き離している。
・・・ということで、フランソワ・オランドとニコラ・サルコジの差が縮まってきました。選挙キャンペーンは投票直前の数カ月でいい、はじめからトップを走れば、風も強く疲れてしまう。かつてそう言っていたサルコジ大統領。その作戦が、見事功を奏するのでしょうか。エリック・カントナが風雲児として嵐を呼ぶことができるのでしょうか。役者が増え、ますます目が離せなくなってきた、大統領選挙です。