ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランス人の時間の使い方、この10年でどう変わったのか?

2011-11-21 20:35:03 | 社会
●到着時間
ある時、世界的な音楽コンクールが行われた。
開始1時間前にドイツ人と日本人が到着した。
30分前、ユダヤ人が到着した。
10分前、イギリス人が到着した。
開始時間ピッタリにアメリカ人が間に合った。
5分遅刻して、フランス人が到着した。
15分遅刻して、イタリア人が到着した。
30分以上経ってから、スペイン人がようやく現れた。
ポルトガル人がいつ来るのかは、誰も知らない。
(『世界の日本人ジョーク集』~早坂隆著)

時間に関しては上記のような評判をもつフランス人。どちらかと言えば、イタリア、スペイン、ポルトガルなどと一緒に「地中海圏」に属してしまっているようですが、良く言えば、しっかり者の多いフランス人。自分の時間の使い方、過ごし方には、それなりの見識を持って、上手に時間管理しているのではないかと思われます。

どのようなことに多くの時間を費やしているのでしょうか。そして、時代の変化とともに、その内容に何らかの変化は起きているのでしょうか。時間の使い方からも、フランス社会の変化の一端がうかがえるかもしれません。

その変化を、10日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

「誰にとっても一日は24時間であり、その半分を寝ること、食べること、身の回りのことに費やしている」・・・このように、“Insee”(Institut national de la statistique et des études économiques:国立統計経済研究所)が11月10日に発表した研究報告は、説明を始めている。そのタイトルは、「前回調査からの11年で、家事に費やす時間はより少なく、インターネットに接続する時間はより多く」(Depuis onze ans, moins de tâches ménagères, plus d’Internet)。

調査結果は、以下のようになっている。2010年、フランス人は毎日の自由に使える時間の半分、つまり4時間58分を画面の前で過ごしていた。この時間は1999年より若干増えている。画面の前といっても、最も長い時間を費やしているのはテレビの前で、平均2時間テレビを視聴している。詳しく見ると、主婦は1999年よりも19分長くテレビを観ているが、学生の場合は逆に30分短くなった。その減少分のほとんどがパソコンの前に座る時間となっている。年代に関わらず、パソコンを操作している時間は女性よりも男性の方が長くなっている。25歳以下に限れば、男性は女性よりも一日で30分も長くパソコンの前にいる、という結果になっている。

2010年にフランス人がネットサーフィンやネット上でのゲームに費やした時間は平均33分で、1999年より16分長く、ほぼ倍増したことになる。

一方、読書時間、そこには本や新聞だけでなくネットに公開されているニュースなどを読む時間も含めてだが、1986年と比較すると約三分の一、9分も減っている(27分から18分に減少したようです)。最も読書時間が長いのは退職者で、毎日30分以上読書時間を取っている。

“Insee”の調査は、余暇の増加と労働時間の減少の相関関係について直接は言及していないが、男性の労働時間は11年前と比べて平均11分短くなっている。女性の労働時間には変化は見られない。就労している男性は平均で週37時間15分働いており、一方、女性の場合はパート勤務も多いため、週29時間5分だった。

“Insee”が1,600人を対象に余暇の過ごし方に関して行った別の調査によれば、労働はフランス人にとって最も気が進まない時間の過ごし方となっている。その結果を、日刊紙『ル・フィガロ』は、「家事や通勤でさえ、仕事よりは快適な時間だと見做されている!」と紹介している。

家事に費やす時間については、男性では変化が見られないが、女性、特に働いていない女性では一日に30分も減少している。料理の時間は、女性では1999年と比べて10分短くなっている。男性が料理のために割く時間はほとんど変わらないか、若干減少している。しかし、男性が子どもの世話や料理以外の家事に費やす時間は5分増えている。

・・・ということで、天上の楽園を追放された人間に与えられた苦役、労働はフランス人にとって最も嫌な時間なんだそうです。昔から言われていましたが、現在でも変わらないことを“Insee”の調査結果が示しています。働くことが趣味・生きがいという我ら日本人とは、なんと隔たった生き方、価値観なのでしょう。地球の裏と表くらいの違いがあります。

しかし、はじめに紹介したジョークによれば、日本人とフランス人が地球の裏表くらいの差なら、スペイン人やポルトガル人とは宇宙の端っこ同士・・・そうした国々で暮らしていらっしゃる日本人の皆さんのご苦労や、いかばかりか。しかし、住めば都、人間は順応できる生き物ですから、ね。上手く適応されているのでしょう。もしできなければ、さっさと帰国なさっているでしょうから。

上記のジョーク集には欧米諸国しか出てきませんが、私が住んだ、例えばタイの時間に関する感覚は、スペインやポルトガルに近いものがあります。何しろ「微笑みの国」、笑って済ませないとやっていられません。その点、中国は、アメリカやイギリスに近いような気がします。時間に関しては、あまりショックを受けませんでした。他にいろいろ驚くことはありましたが・・・ただ、泰中両国で、共通して指摘されたことは、日本人はどうして一生、他人に指図される立場で、満足できるのか、ということでした。人に使われるより、使う方の立場になれば、達成感にしろ、満足感、精神的余裕、金銭的余裕も大きくなるのに、人に使われて、よくそれだけ働く気になれるね、独立する気はないの???

国や地域による違いは、調べるほどに、知るほどに多くなってきます。しかし、どんなに異なっていても、我らはみな、宇宙船「地球号」の乗組員同士。追い出したり、抹殺することはしてはいけないし、またできないことだと思います。しかも「違い」は、国同士だけでなく、国内の地域同士、そして個人同士でもありますが、否定するのではなく、受け入れ、認め合うことが大切なのではないでしょうか・・・行うは難し、ですが。