毎年、この時期になると話題になるのが、ミシュラン・ガイド(le Guide Michelin)。2012年版は「京都・大阪・神戸・奈良」版がすでに10月21日に発売になり、4府県合計で15店が三つ星に輝きました。「東京・横浜・湘南」版は、12月2日の発売。もう少し待つことになりますが、三ツ星店は、増えるのでしょうか。楽しみにしている方も、多いことでしょう。
言うまでもなく、「ミシュラン・ガイド」の本場はフランス。レストラン・ホテルガイドは、その表紙の色から“le Guide Rouge”(レッド・ミシュラン)と言われています。どの店の星が増えたとか、減ったとか、大きな話題になります。また、旅行ガイドの方は、“le Guide Vert”(グリーン・ミシュラン)と呼ばれています。
発売後は書店の店頭にうずたかく積まれることになる「ミシュラン・ガイド」。フランス版の発売は、確か、3月上旬だったと記憶しています。本場、フランスでは、政治家もこのリストを参考に会合の場所を選んだりしているのでしょうか。
今日、そんな質問をすれば、「そんな悠長なことを言っている場合じゃない、二つ星も、三つ星も関係ない。今守るべきは格付け会社のトリプルAだ。財政再建のためには、三つ星での食事など、楽しんでいる暇はない」と叱られてしまいそうです。
そうです、財政赤字の削減へ向けて、緊縮財政をさらに加速させなくてはいけない。さもなければ、ギリシャ、イタリアの次に、市場の標的にされかねない。今が、フランスの踏ん張りどころ!
というわけで、フィヨン首相が7日、追加の緊縮策を発表しました。どのような内容で、予想される国民からの反応は・・・7日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。
フィヨン内閣は7日、臨時閣議の後で、2012年の成長予想が1.75%から1%に引き下げられたことに伴う新たな緊縮策を発表することになっている。
財政均衡策(le plan d'équilibre des finances publiques)は、60億から80億ユーロ(約6,500億~8,500億円)の年間予算削減になるだろうと、最近も政府は語っていた。先週土曜に検討委員会が大統領府で行われたが、一切情報は漏れてこなかった。最近、予算相のヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse)は、歳入を増加させることよりも、歳出を削減することに力点が置かれるだろうと述べていた。正式発表まで数時間、想定されている追加緊縮策の要点を、7日付の経済紙『レゼコー』(Les Echos)の記事を基に、以下にまとめる。
<歳出削減>
・年金改革の前倒し
政府は財政再建策の一環である年金受給年齢の62歳への引き上げを前倒しして実施しようとしている。
年金改革は今年の7月1日から実施に移されているが、当初の計画では2018年までに受給開始年齢を現行の60歳から62歳へ段階的に引き上げることになっていた。しかし、そのスケジュールを2017年に1年前倒しにすることになる。1951年7月1日から12月31日までに生まれた人は60歳と4カ月で受給開始、1952年生まれは60歳と8カ月、という具合に生まれた年が1年遅くなるにつれ受給開始年齢が4カ月ずつ遅くなる。
1年の前倒しにより、次の議会任期(2012年~17年)には数十億ユーロ(数千億円)の予算削減となる。しかしこのような案は、62歳への引き上げに関して、昨年秋、多くの国民がデモに参加したことからも、組合側の激しい反対が予想される。
・社会給付における物価スライド制の部分的廃止
多くの社会給付(退職年金、家族手当、社会最低手当、住宅手当など)は現在、予想されるインフレ率(2012年は1.7%)に基づいてスライドすることになっている。つまり、毎年、支給額が物価に応じて加減されている。しかし、政府はこの物価スライド制を手当の一部において廃止しようと考えている。インフレを考慮に入れないというわけだ。このスライド制廃止により、給付額はあまり増えない、あるいは凍結されることになる。
・社会保障支出の新たな削減
社会保障費も緊縮策に貢献することになる。5億ユーロ(約535億円)ほどが削減になる。9月に提示された来年の社会保障費はすでに、22億ユーロ(約2,300億円)も削減されていた。さらに追加削減されることになる。
・内閣予算のさらなる削減
8月に決定された緊縮策ですでに5億ユーロ(約535億円)削減されていた内閣予算は、さらに5億ユーロ削減されることになる。しかし、現時点では、どの省の予算がどのくらいカットされるのかは、明らかになっていない。
<歳入増加>
・一部サービス・品目の付加価値税(TVA:taxe sur la valeur ajoutée)引き上げ
7%という中間税率が創設される。付加価値税には標準税率19.6%と軽減税率5.5%があるが(実際には医薬品など少数品目を対象とした特別軽減税率2.1%もあります)、その間のもう一つの税率を設けるものだ。対象になるのは、2年ほど前(2009年7月1日)に消費刺激と雇用増加を目的に5.5%に引き下げられていた業種のうち、家庭内でのサービス、飲食業、個人宅での工事を含む建築業などといったセクターだ。飲食業と建築業での付加価値税率アップにより、10億から15億ユーロ(約1,070億~1,600億円)の税収増が見込まれている。
こうした政策はすでに組合側からの反発にあっている。建築業組合連合会は7%までの付加価値税率アップであれば検討の余地があると言ってはいるが、ホテル・レストラン・カフェ・仕出し屋などの組合の全国組織“Synhorcat”(Syndicat national des hôteliers, restaurateurs, cafetiers et traiteurs)は、書記長のディディエ・シュネ(Didier Chenet)が「フランスの税制全体を本質から検討していない付加価値税の改定には、それがどのようなものであれ反対する」と表明している。
・法人税引き上げ
年間の売上高が1億2,000万から1億5,000万ユーロ、あるいは5億ユーロを超える企業に課す法人税を引き上げる予定だ(最終的な発表では、2億5,000万ユーロ(約270億円)を超える売り上げのあった企業への法人税率を5%引き上げることになりました)。
・2番目の「連帯の日」の廃止
高齢医者や障害者の自立支援にむけた予算捻出に国民が協力すべく2004年から始まった「連帯の日」(journée de solidarité:労働者たちが1日無償で働き、その人件費相当分を高齢者や障害者の支援に充てるという制度。実際には有給休暇を取って休む人が多いようです)の今年2回目が今週末に予定されていたが(1回目は聖霊降臨祭の翌月曜日)、財務相のフランソワ・バロワン(François Baroin)が6日の夜、このような制度はもはや時代に合わないと語り、取りやめになった。こうした意見はすでに組合の激しい非難にさらされている。
・・・というわけで、速報性よりは分析・解説を得意とする『ル・モンド』は、日本時間8日午前の時点では、まだフィヨン首相の発表した追加緊縮策の詳細をウェブ上に掲載していませんでした。しかし、その後、いくつかのメディアの報道を見る限り、法人税引き上げ対象企業を除いては、大きな違いはないようです。
ところで、付加価値税。フランス語ではTVAですが、英語ではVAT(Value-Added Tax)。実はフランスが最初に導入した間接税だそうです。税務官僚、モーリス・ロレ(Maurice Lauré)の発案で、1954年に導入されました(1954年4月10日の法律)。付加価値税発祥の地、フランスでは、標準税率(19.6%)・軽減税率(5.5%)・特別軽減税率(2.1%)に新たに中間税率(7%)が加わるわけですが、今までは標準税率が課されるのは贅沢品、軽減税率対象品目は生活必需品とも言われてきました。
必需品に課す税率は低く、贅沢品には高く。至ってまっとうな考えではないかと思うのですが、ではどうして日本では一律の消費税なのでしょうか。商品やサービスごとにどちらに含めるか、判断が難しいのでしょうか。あるいは、消費の現場や税処理の現場での作業が面倒なのでしょうか。細かいことにも細心の注意を払う国民性ゆえ、やろうと思えばできると思うのですが。門外漢にはそう思えてならなりません。税率に差をつけると、低くなった製品は売れるが、高い税率に分類された製品の売り上げが落ち、その業界から文句が出るから・・・なのでしょうか。企業も大切ですが、まずは国民、だと思うのですが。「国民の生活が第一」に期待していただけに・・・
イギリス、カナダ、メキシコなどでは食料品への付加価値税は0%です。イギリスでは、食料品以外にも新聞、雑誌、書籍、医薬品などが付加価値税率0%。また、フランスの軽減税率5.5%の対象には食料品、書籍、文化的・公的サービスが含まれ、2.1%の特別軽減税率の対象には文化事業が含まれます。つまり、書籍や文化イベントも生活必需品!
税率にも、それぞれのお国柄が現れるようです。
言うまでもなく、「ミシュラン・ガイド」の本場はフランス。レストラン・ホテルガイドは、その表紙の色から“le Guide Rouge”(レッド・ミシュラン)と言われています。どの店の星が増えたとか、減ったとか、大きな話題になります。また、旅行ガイドの方は、“le Guide Vert”(グリーン・ミシュラン)と呼ばれています。
発売後は書店の店頭にうずたかく積まれることになる「ミシュラン・ガイド」。フランス版の発売は、確か、3月上旬だったと記憶しています。本場、フランスでは、政治家もこのリストを参考に会合の場所を選んだりしているのでしょうか。
今日、そんな質問をすれば、「そんな悠長なことを言っている場合じゃない、二つ星も、三つ星も関係ない。今守るべきは格付け会社のトリプルAだ。財政再建のためには、三つ星での食事など、楽しんでいる暇はない」と叱られてしまいそうです。
そうです、財政赤字の削減へ向けて、緊縮財政をさらに加速させなくてはいけない。さもなければ、ギリシャ、イタリアの次に、市場の標的にされかねない。今が、フランスの踏ん張りどころ!
というわけで、フィヨン首相が7日、追加の緊縮策を発表しました。どのような内容で、予想される国民からの反応は・・・7日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。
フィヨン内閣は7日、臨時閣議の後で、2012年の成長予想が1.75%から1%に引き下げられたことに伴う新たな緊縮策を発表することになっている。
財政均衡策(le plan d'équilibre des finances publiques)は、60億から80億ユーロ(約6,500億~8,500億円)の年間予算削減になるだろうと、最近も政府は語っていた。先週土曜に検討委員会が大統領府で行われたが、一切情報は漏れてこなかった。最近、予算相のヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse)は、歳入を増加させることよりも、歳出を削減することに力点が置かれるだろうと述べていた。正式発表まで数時間、想定されている追加緊縮策の要点を、7日付の経済紙『レゼコー』(Les Echos)の記事を基に、以下にまとめる。
<歳出削減>
・年金改革の前倒し
政府は財政再建策の一環である年金受給年齢の62歳への引き上げを前倒しして実施しようとしている。
年金改革は今年の7月1日から実施に移されているが、当初の計画では2018年までに受給開始年齢を現行の60歳から62歳へ段階的に引き上げることになっていた。しかし、そのスケジュールを2017年に1年前倒しにすることになる。1951年7月1日から12月31日までに生まれた人は60歳と4カ月で受給開始、1952年生まれは60歳と8カ月、という具合に生まれた年が1年遅くなるにつれ受給開始年齢が4カ月ずつ遅くなる。
1年の前倒しにより、次の議会任期(2012年~17年)には数十億ユーロ(数千億円)の予算削減となる。しかしこのような案は、62歳への引き上げに関して、昨年秋、多くの国民がデモに参加したことからも、組合側の激しい反対が予想される。
・社会給付における物価スライド制の部分的廃止
多くの社会給付(退職年金、家族手当、社会最低手当、住宅手当など)は現在、予想されるインフレ率(2012年は1.7%)に基づいてスライドすることになっている。つまり、毎年、支給額が物価に応じて加減されている。しかし、政府はこの物価スライド制を手当の一部において廃止しようと考えている。インフレを考慮に入れないというわけだ。このスライド制廃止により、給付額はあまり増えない、あるいは凍結されることになる。
・社会保障支出の新たな削減
社会保障費も緊縮策に貢献することになる。5億ユーロ(約535億円)ほどが削減になる。9月に提示された来年の社会保障費はすでに、22億ユーロ(約2,300億円)も削減されていた。さらに追加削減されることになる。
・内閣予算のさらなる削減
8月に決定された緊縮策ですでに5億ユーロ(約535億円)削減されていた内閣予算は、さらに5億ユーロ削減されることになる。しかし、現時点では、どの省の予算がどのくらいカットされるのかは、明らかになっていない。
<歳入増加>
・一部サービス・品目の付加価値税(TVA:taxe sur la valeur ajoutée)引き上げ
7%という中間税率が創設される。付加価値税には標準税率19.6%と軽減税率5.5%があるが(実際には医薬品など少数品目を対象とした特別軽減税率2.1%もあります)、その間のもう一つの税率を設けるものだ。対象になるのは、2年ほど前(2009年7月1日)に消費刺激と雇用増加を目的に5.5%に引き下げられていた業種のうち、家庭内でのサービス、飲食業、個人宅での工事を含む建築業などといったセクターだ。飲食業と建築業での付加価値税率アップにより、10億から15億ユーロ(約1,070億~1,600億円)の税収増が見込まれている。
こうした政策はすでに組合側からの反発にあっている。建築業組合連合会は7%までの付加価値税率アップであれば検討の余地があると言ってはいるが、ホテル・レストラン・カフェ・仕出し屋などの組合の全国組織“Synhorcat”(Syndicat national des hôteliers, restaurateurs, cafetiers et traiteurs)は、書記長のディディエ・シュネ(Didier Chenet)が「フランスの税制全体を本質から検討していない付加価値税の改定には、それがどのようなものであれ反対する」と表明している。
・法人税引き上げ
年間の売上高が1億2,000万から1億5,000万ユーロ、あるいは5億ユーロを超える企業に課す法人税を引き上げる予定だ(最終的な発表では、2億5,000万ユーロ(約270億円)を超える売り上げのあった企業への法人税率を5%引き上げることになりました)。
・2番目の「連帯の日」の廃止
高齢医者や障害者の自立支援にむけた予算捻出に国民が協力すべく2004年から始まった「連帯の日」(journée de solidarité:労働者たちが1日無償で働き、その人件費相当分を高齢者や障害者の支援に充てるという制度。実際には有給休暇を取って休む人が多いようです)の今年2回目が今週末に予定されていたが(1回目は聖霊降臨祭の翌月曜日)、財務相のフランソワ・バロワン(François Baroin)が6日の夜、このような制度はもはや時代に合わないと語り、取りやめになった。こうした意見はすでに組合の激しい非難にさらされている。
・・・というわけで、速報性よりは分析・解説を得意とする『ル・モンド』は、日本時間8日午前の時点では、まだフィヨン首相の発表した追加緊縮策の詳細をウェブ上に掲載していませんでした。しかし、その後、いくつかのメディアの報道を見る限り、法人税引き上げ対象企業を除いては、大きな違いはないようです。
ところで、付加価値税。フランス語ではTVAですが、英語ではVAT(Value-Added Tax)。実はフランスが最初に導入した間接税だそうです。税務官僚、モーリス・ロレ(Maurice Lauré)の発案で、1954年に導入されました(1954年4月10日の法律)。付加価値税発祥の地、フランスでは、標準税率(19.6%)・軽減税率(5.5%)・特別軽減税率(2.1%)に新たに中間税率(7%)が加わるわけですが、今までは標準税率が課されるのは贅沢品、軽減税率対象品目は生活必需品とも言われてきました。
必需品に課す税率は低く、贅沢品には高く。至ってまっとうな考えではないかと思うのですが、ではどうして日本では一律の消費税なのでしょうか。商品やサービスごとにどちらに含めるか、判断が難しいのでしょうか。あるいは、消費の現場や税処理の現場での作業が面倒なのでしょうか。細かいことにも細心の注意を払う国民性ゆえ、やろうと思えばできると思うのですが。門外漢にはそう思えてならなりません。税率に差をつけると、低くなった製品は売れるが、高い税率に分類された製品の売り上げが落ち、その業界から文句が出るから・・・なのでしょうか。企業も大切ですが、まずは国民、だと思うのですが。「国民の生活が第一」に期待していただけに・・・
イギリス、カナダ、メキシコなどでは食料品への付加価値税は0%です。イギリスでは、食料品以外にも新聞、雑誌、書籍、医薬品などが付加価値税率0%。また、フランスの軽減税率5.5%の対象には食料品、書籍、文化的・公的サービスが含まれ、2.1%の特別軽減税率の対象には文化事業が含まれます。つまり、書籍や文化イベントも生活必需品!
税率にも、それぞれのお国柄が現れるようです。