ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

BACの結果も発表になった、さあ、バカンスだ・・・2011年BAC&バカンス事情。

2011-07-06 23:16:41 | 社会
夏休み前の、大きな話題というか、大きな障害、BAC(baccalauréat)の筆記試験の結果発表が5日に行われました。例によって、悲喜こもごも。抱き合う学生、飛び跳ねる学生がいる一方で、涙にくれる学生。国や社会の違いを超えて同じような光景が展開されています。

今年のバックの結果について、5日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。654,548人(内訳は一般BACに50%、工業BAC24%、専門BAC26%)が受験した今年のBAC。合格率はどの程度で、前年と比べ、どう変動したのでしょうか・・・

国民教育省が発表した今年のBAC筆記試験の結果速報によれば、一般BACの合格率は76.8%で前年を2ポイント上回り、工業BACも67.9%で0.8ポイント向上したが、専門BACは74.1%で3.8ポイント下回った。

一般BACのうち、165,000人が受験した理系は、数学の試験問題が事前にネット上に公開されてしまうという事件により配点が変更されたため、その試験結果には特に関心が集まったが、合格率79.8%で前年比1.1ポイントのアップとなった。

この点に関し、リュック・シャテル(Luc Chatel)国民教育相は、採点者の厳格さに敬意を表すとともに、数学の平均点が例年並みで大きな変化がなかったことを指摘している。

他の一般BACでは、文系が70.9%で0.9ポイント、経済・社会系が75.0%で3.9ポイントそれぞれ昨年を上回った。リュック・シャテル文相は、「一般BAC3コースの合格率はともに前年を上回り、歴史的高水準だった2009年に匹敵するだろう。一方、ここ数年、合格率が大きく向上した専門BACは、数ポイント昨年を下回ったが、まだ十分な水準を確保している」と語っている。

上記の数字は速報値で、今週末まで行われる調整により、若干変動することになる。

・・・ということで、BACの結果発表という恒例の悲喜劇が終われば、フランス社会は一気にバカンス気分へ。一方、日本では東日本大震災の影響もあってか、夏休みに遠出をする予定の人は、昨年より減少しているようです。

JTBによると、夏休み(7月15日~8月31日)に1泊以上の旅行に出かける予定のある人は、国内旅行で7230万人(前年比-2.7%)、海外旅行は228万人(同-5.8%)になる見通し。つまり、対前年では減少傾向にあるようです。しかし、震災後の自粛ムードから、旅行意欲は徐々に回復しつつあるそうです。

また、フォートラベルによれば、今夏の連続休暇日数の平均は「7.4日」。最も回答の多かった休暇日数は「5日」で全体の約2割。続いて「9日」が17.3%、「10日」が11.3%の順。つまり、1週間から10日が一般的夏休み。その間に、帰省したり、家族旅行したり・・・これが日本の夏休みですが、一方、フランスは・・・今年の夏休み事情を、4日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

調査会社Obea / Infraforcesが6月23日から28日、1,008人を対象に行った電話アンケートによると、この夏、バカンスに出かける予定のある人は55%で、45%はバカンスには行かないと答えている。行かないと答えた45%の人のうち、45%は予算がないからと答え、40%は生活のために節約するから、と答えている。

昨年、実際にバカンスに出かけたのは48%で、そのうちの17%は今年は出かける予定がないと答えている。

バカンスに出かける時期は、今年も例年通りだと答えた人が61%、行き先についてはエジプトやチュニジアに行くのは断念したという人が20%に上っている。

また政府が提案している学校の夏休み短縮に関しては、49%が反対、賛成は32%に過ぎない。

・・・ということで、フランス人と言えば、バカンス、というイメージがありますが、必ずしも全員が出かけるわけではない。半数程度の人たちでしかないようです。バカンス・シーズンは観光業にとっては稼ぎ時ですし、また、経済的に苦しい層にとってはバカンスも高根の花。

そこで、バカンスに出かけられない人たちに、せめてリゾート気分を、と始められたのが「パリ・プラージュ」(Paris Plage)。ドラノエ(Delanoë)パリ市長の発案で、当初はセーヌ河岸で行われていましたが、その後は19区の“Bassin de la Villette”(ヴィレット貯水池)にも広げています。今や、観光客にとってもパリの夏の風物詩になっています。

先日のFrance2のニュースでもやっていましたが、今年のバカンスには、「アラブの春」が影響を及ぼしているようです。『ル・モンド』の記事にもあるように、エジプトやマグレブ諸国などへ出かけることを止めたフランス人が多い。やはり、政情不安がその理由です。君子、危うきに近寄らず、でしょうか。その分、国内で過ごすという人が多く、国内のサービス産業にとっては、願ったり、叶ったり。経営者にとってはありがたいトレンドですが、その分、バカンスの取れない従業員が増えてしまう。世の中、うまく行きません。
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