『高等教育における発達障害学生の修学支援と一般学生中間層の学生支援の融合・共用化の提案』
最新社会福祉学研究,8号,41~48頁,2013年3月
PDFダウンロード>> 「8414820133.pdf」をダウンロード
<要旨>
高等教育の発達障害学生支援では、発達障害の診断があり支援を受けている学生が約1,000人であるが、それに対して発達障害の診断はないが学内において教育的配慮を受けている学生が約2,000人と、診断のある学生の2倍の数になることが報告されている(日本学生支援機構)。高等学校と比較して、高等教育では学習スタイルや学生生活が大きく変化し、自己管理や対人コミュニケーションがより多く求められるようになる。この環境変化によって、診断のない発達障害学生に対して配慮や支援の必要が生じていると考えられる。医学的診断や障害者手帳の取得は、障害学生支援の予算拠出の根拠となる。そのため、診断のない発達障害学生に対する支援は、障害学生支援というより、一般学生支援として行われることになる。
一方、一般学生についても、多様化した入試による学力不足の問題や、産業構造の変化により流動性の高い知識基盤社会への適応、雇用情勢の悪化により企業の新人研修として行われていた社会人基礎力の養成など、高等教育に対する社会的ニーズが変化している。このことから、一般学生についても、初年次導入教育やキャリア支援、学生相談を中心とした学生支援の充実が課題として挙げられている。特に、一般学生には積極群と不適応群の間に、消極的な中間層が存在し、全体の6割程度と多数派であることが指摘されている(明治大学・筑波大学)。現在の社会的ニーズとして支援の充実が求められているのは、この一般学生中間層に対する支援であるといえる。そして、診断のない発達障害学生は、この一般学生中間層に含まれていると思われる。
診断のある発達障害学生の支援に対しては、障害学生支援のための予算が拠出される。しかし、診断のない発達障害学生については、その予算が拠出されないた
め、クラス担任教員や教務課職員等が個別に相談に応じ、配慮するなど、インフォーマルに支援がなされている。このような支援の方法は、引き受ける学生の数
が次第に多くにつれて、教職員の負担が増加していき、いずれ行き詰まることが懸念されている。そこで本研究では、このような現状に対する合理的配慮として
の解決方法として、発達障害学生支援と一般学生中間層支援を融合・共用化した学生支援を提案した。このような共用化された学生支援は、発達障害学生と一般
学生の双方に有益なものとなり、学生の認知的個性に基づく個別化された教育やキャリア支援を促進することが期待される。
※他の関連記事>> http://blog.goo.ne.jp/hidefujita/d/20130811
最新の画像[もっと見る]