精神機能と能力開発:心理学―教育学―社会学

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心理学と意識 ~行動科学・高次脳機能障害・問題解決と意思決定・人格的な成長~

2015年04月21日 | 意識




『心理学と意識 ~行動科学・高次脳機能障害・問題解決と意思決定・人格的な成長~』

(1)意識と行動科学
 1)心理学の歴史では、主観的な意識や内省報告を排除して、客観的に記述される「行動」を分析の単位とすることで、科学としての心理学が樹立された。
 2)共感や感情移入を排して、観察者(第三者)になること。
 3)状況・刺激 →反応・行動 →その結果 →学習

(2)高次脳機能障害と意識レベル
 1)交通事故の頭部外傷などによる高次脳機能障害では、意識レベル(意識が戻ること)や見当識(自分で自分を認識できること・自己意識)が、第一に評価・測定される。
 2)科学的心理学(行動科学)が排した意識とは、あらゆる精神機能の出発点になっている。
 3)意識レベルをパソコンに譬えると、電源スイッチやデバイスの認識に相当する。

(3)問題解決と意思決定 ~価値と主観~
 1)パズルや受験勉強の問題を解くことと、実務の問題解決との大きな違いは、実務の問題解決のゴールとは、関係者にとって価値があり満足できること。
 2)これは、客観的な論理ではなく、関係者の主観的なもの。

(4)人格的な成長と自己意識
 1)人間の精神機能の知・情・意について、認知的な成長(知)と人格的な成長(情・意)がある。
 2)自己意識や自覚の成長が、人格的な成長といえる。


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1)心理学の主観と客観
実践理論と科学理論 ~汎用的スキルと産学キャリア~ >>このブログ内のリンク先
心理学の1人称、2人称、3人称 ~主観、共感、客観~ >>このブログ内のリンク先

2)知・情・意の「意」と、主観や価値、満足について
人間の精神機能の分類・特徴・階層 ~知・情・意・信~ >>このブログ内のリンク先
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21世紀の知識基盤社会と「意」の時代 ~知・情・意の「意」とは何か?~

2015年03月06日 | 意識






『21世紀の知識基盤社会と「意」の時代 ~知・情・意の「意」とは何か?~』
(0-1)人間の精神機能 = 知・情・意
(0-2)「意」に含まれる機能
意識(自己意識)
意図・随意
注意・不意
意外・意表(想定外)
意志・意地
意欲・得意
意思決定・決意
意向・意見・同意
意味・意義
意匠(デザイン)

(1)再帰的な主観・主体感:自分で自分を認識すること、自己意識。
(2)スリープ(睡眠中は休止する)
(3)意図・随意:制御・コントロール
(4)注意:喚起・選択・集中・持続
(5)意志・意欲:志・モチベーション
(6)得意
(7)意思決定
(8)意見・同意
(9)意味(入れ物の中身・コンテンツ・コンセプト)・意義(新しい価値・付加価値・重要性)
(10)意匠(デザイン)

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1)努力(エフォート effort)
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ダニエル・カーネマンとADHD ~心的努力(effort エフォート)について~ >>このブログ内のリンク先
2)スキルの熟達
無意識有能と熟達 ~オイゲン・ヘリゲル「弓と禅」~ >>このブログ内のリンク先
3)自己意識、自分探し
キャリア・アンカー ~キャリアの拠り所となる自己イメージ~ >>このブログ内のリンク先
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無意識の働き ~適応・不適応・創造・暗黙~

2015年02月10日 | 意識


(0) 意識(言語・論理)、自己意識

(1) 適応的な無意識
1) 直感的な判断が、論理を上回る (本質的洞察)
2) 無意識の有能・熟達 (身体知・暗黙知)
3) 良い習慣 (習慣は意識的な努力が不要)
4) 自動的な情報処理・判断 (常識・日常)

(2) 不適応の無意識
1) 認知行動療法の自動思考 (瞬間的で否定的な、思考習慣)
2) 抑圧されたコンプレックス (臨床症状となって表れる)
3) 悪い習慣 (分かっているのに、つい)

(3) 無意識の創造性
1) 新しいアイデアやインスピレーションは、混沌(カオス)から産み出される。
2) 創造の病・病跡学 (芸術的な創造は、病的なプロセスになることがある)

(4) 暗黙の前提
1) 所与のこと、当たり前のことを見直す。理解の段差(説明不要の前提)を、細分化して説明する(スモールステップ)

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無意識有能と熟達 ~オイゲン・ヘリゲル「弓と禅」~

2015年01月14日 | 意識



オイゲン・ヘリゲル(Eugen Herrigel)
ドイツの新カント派哲学者。大正13年(1924年)~昭和4年(1929年)まで、東北帝国大学に招かれて来日し、哲学を講じた。この間、禅の精神を会得するために、阿波研造 師範の下で弓道の修行を行った。その様子は、『オイゲン・ヘリゲル(著)稲富栄次郎・上田 武(訳)弓と禅 福村出版.』に詳しい。

阿波師範は、弓を意図的に引くのではなく、自己を離れた無我の沈潜によって、引き絞った弓から、満を持して射が“笹に積もった雪のように落ちてくる”ことを待つように指導していた。しかし、ヘリゲル教授はその習得がなかなか進まず、いつも足踏みをしていることに我慢できなくなり、経験のあった小銃射撃の要領で、矢を押さえつけている指を用心深く徐々に開く方法を思いついた。これを見た阿波師範は、自分をだまそうとしたとしてヘリゲル教授の指導を断ることを伝えたが、紹介者の小町谷教授のとりなしで、再び稽古が始められた。

「もし“私が”しなければ、いったい射というのはどうして放されることができましょうか?」
「“それ”が射るのです。」
「ではこの“それ”とは誰ですか?何ですか?」
「ひとたびこれがお分かりになった暁には、あなたはもはや私を必要としません。そしてもし私が、あなた自身の経験を省いて、これを探り出す助けをしようと思うならば、私はあらゆる教師のなかで最悪のものとなり、教師仲間から追放されるに値するでしょう。尋ねないで、稽古しなさい。」

例えば、マネジメントの用語では…
1)無意識の無能 → 2)意識された無能 → 3)意識された有能 → 4)無意識の有能

青年期の自己意識 ~個性の自覚と孤独感~

2014年12月09日 | 意識
一般にいわれる孤独感とは、社会的孤立(人との繋がりがない)のことをさし、社会不適応のリスクのある望ましくない状態とされる。それに対して青年期の孤独感とは、自己意識が高まり自我を確立していく過程で(一過性に)生じるものをさす。青年期の孤独感は、自他の分離性や自己の独自性、個性の自覚に伴う孤独感であり、思弁的・思索的なものといえる。

この思弁的・思索的な孤独感について、1980年代前半に実施された自己意識のアンケート調査と同じ内容を、再度1990年代後半に実施して統計的解析を行った。その結果、1980年代前半には明瞭に示された思弁的・思索的な孤独感が、1990年代後半には不明瞭になっていた。その理由として、①青年期において思弁的・思索的な傾向が低下していること、②インターネットや携帯電話などの普及により、常に人と繋がっている状態(自分1人の時間が少ない)が考えられた。

常に人と繋がっている状態とは、人に支えられている望ましい状態(ソーシャルサポート)である反面、例えば誰かに電話や電子メールを貰った場合はすぐに返事をしなくてはいけないなどのプレッシャーや負担感も指摘される。現在の子どもの人間関係では、「キャラ(クター)」というものが存在する。「キャラ」とは、その子どもの本来のパーソナリティや個性というよりは、劇の配役(演じられた役)のようなものとされる。この「キャラ」により予測可能で調和した人間関係が維持される反面、本来の自分自身を表現できなくなる。自分自身の真の個性に気づき、独創性を発揮するためには、人との繋がりだけでなく、自分1人の時間を確保することも必要になる。

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