ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いよいよ大型連休に入りました。
久々に多くの方々が里帰りや家族旅行に出かけるようです。
「もうふつうの風邪やインフルエンザ並みで、ちょっと恐れ過ぎじゃないですか?」なんて、
ワクチンも打たないウチの先生が呑気な事を言ってます。
中国も、人間力や強権では抑え切れないよ!なんても言ってます。
はい、何はともかく、原稿が届きましたので、早速、小説に参ります、はい、では開幕、開幕!
308 夜空の華やかな光!
皆の目は暗い山影の頂きの小さな岐阜城に釘付けになっていた。
「ドッカーン!ドドドドカーン!」
また空気を震わせる大きな音がした。
暗い夜空に、今度は大音響と共に、美しい光が岐阜城を中心にして四方八方へ広がった。
「えーっ、何だ、あれは何だ?」
太郎が皆に代わって思わず叫んだ。
「えーっ、あんな風に火花が飛ぶのはどうしてじゃ?なぜじゃ?あれは魔法か?」
長老が言うと、修験者も続けた。
「そうじゃ魔法なら、きっととんでもなく大勢のはずじゃ」
ハナ達は恐怖心が消えて、好奇心が勝った。
「わーっ、なにー?あれー?あーっ、綺麗ー!」
「わーっ、あんな綺麗な火って、見たことないわ」
ハナやハナナ達の声はいつしか歓声となった。
太郎達も長老達もただ驚くばかりで、魂が抜けたように口だけを大きく開けて唖然としていた。
外国の家族は、花火よりも皆の大袈裟な反応に驚いていた。
「ああ、そうでしたね、皆さん方は花火を見るのは、今回、生まれて初めてだったんですね?」
木花咲姫は、少し恥ずかしそうに顔を赤らめて笑っていた。
青い制服の彼女が謝った。
「あああ、ごめんなさい、遅れてしまいました。もっと早く言うべきでした。
早くお知らせするつもりだったんですが、話に夢中になっている内に時間が来てしまいました。
ごめんなさい、今回は外国家族の歓迎のための花火を打ち上げると聞いていました。その時間が来てしまいました。驚かせてすみませんでした」
青い制服の彼女は、何度も頭を下げていた。
「ああ、いいんですよ、サプライズのつもりだったんでしょ?外国の家族の方々は大喜びですので良かったじゃないですか?
わたくしの連れてきた皆さん方には、すこしショッキングな花火の初体験になってしまったようですけれど、きっといい思い出になると思います」
と木花咲姫はずっと笑っていた。
「なに?いい思い出じゃと?ああ、決して忘れない思い出じゃ」
「ワシは、心臓が止まりそうになった思い出じゃ、忘れようにも忘れられないじゃろう」
長老達や太郎はやや怒っていた。
「ドドドドカーン」
また大音響がした。
「あっ、今度は三尺玉です、現在一番大きな花火で、直系が約一メートル近くあります。花火は数百メートルの範囲に広がります」
「ひゆーーーー、ドッドッドカカーン!」
見上げる夜空いっぱいに、無数の美しい火花が広がった。
文句を言っていた太郎や長老達も、それにもちろんハナ達も、何もかもすっかり忘れて口を大きく開けたまま夜空を見上げていた。
やがて花火が終了して夜空には静けさがもどった。
「わーっ、すごかったわ、綺麗だったわ、あっと言う間だったわ」
ハナ達が満足そうに感想を述べた。
「ああ、すごかったな、見上げてばかりで首が疲れてしまった、それに腹も減ってきた、よーし、また食べよう、飲もう、なあ爺さん達よ」
太郎は起源良さそうに長老達の肩を叩いた。
青い制服の彼女は、皆のご機嫌な様子を安堵の顔で見ていた。
「あの、皆様、今度は早目にお知らせしておきますが、・・・これから一時間ほど後に、また夜空を御覧になってください。
今度は花火ではありませんが、同じように素晴らしい別のショーが見られます」
ハナナが、振り向きながら
「えっ、何?今度は何が見えるの?」
と友達に話すように無遠慮に聞いた。
「はい、それは見てのお楽しみで・・」
と彼女は教えてくれなかった。
「あーっ、ずるい、ずるい、教えて教えてー」
ハナナが児童のように甲板を踏んでいると、太郎が叱った。
「こらっ、ハナナ、うるさい!そんなのは聞かなくても決まってるじゃないか、この前、テレビに映っていた奴だよ、あれだよ、レーザー光線とか言う奴だよ、いろいろな色の光線でショーをするんだ」
と太郎が、自信満々に言った。
するとタタロも言った。
「ああ、見た事がある、きっとそれだよ」
「なーんだ、そんなのなの?たいした事ないじゃないの?」
がっかりしたハナナがつまらなさそうに言うと、制服の彼女が、
「さあ、どうかしら?それは見てからのお楽しみですね、また感想を聞かせてくださいね?」
と何やら自信ありそうに頬笑んだ。
さて、皆はその夜の宿泊は、観覧船内か、それとも長良河畔のホテルか、どちらか自由に選べた。
が、皆は夜のショーを甲板で寝ころんで見たいからと観覧船に泊まる事にした。
甲板に薄いクッションを敷いて、上を向いて寝ころんでいた。
やがて岐阜城のライトアプも消えて、街の灯りも余分な証明が消され真っ暗になった。
皆の目も、やがて暗さに慣れて見上げている夜空に、星々が少しづつ見えてきた。
近年の環境対策も効果が現れて、数年前から都会の空気も川の水も昔のように澄み切ってきていた。
「あっ、天の川が見える」
ハナナが叫んだ。
「あっ、ほんと!いつも見ていた天の川だわ、天の川って、昔も今も変わらないわね」
ハナが懐かしそうに答えた。
すると、せっかくの思いを壊すように太郎が怒鳴った。
「おい、まさか、素晴らしいショーって、この天の川の事じゃないだろうな?
都会でも、今まで見えなかった天の川が、今ははっきり見られるようになったとか?」
すると、がっかりした様子で長老が言い出した。
「おいおい、それじゃ、何かい?ワシ等はそんな事のために、わざわざホテルのベッドを断って、こんな甲板の薄っぺらい布の上に寝ているって事かい?そんな事だったらワシは嫌じゃ、こんなの止めてくれー」
ハナやハナナ達は、首を横に振って、すぐに否定した。
「でも、素晴らしいショーって言ったでしょ?」
「見慣れた天の川が素晴らしいショーって事はないはずよ」
「だったら、いったいどんなショーなんだ?」
甲板上に寝ころんで皆が好き勝手に話していると、
「あっ、あれ、あれ何?」
「スーー!」
明るい光が夜空を東に向って流れた。
「あっ、流れ星だ!」「流れ星だわ!」
皆がそれぞれに叫んだ。
その流れ星は夜空全体を横切るように長く光りながら流れた。
「へえーっ、それにしても大きな流れ星だったな?」
「そうじゃ、珍しく大きかったぞ、隕石が落ちたかも知れんぞ?」
「あれって、火球(かきゅう)って言うんでしょ?」
「そうよ、あんなに大きいのは珍しいわ」
皆が夜空を見上げながら話し合っていると、また大きな流れ星が出現した。
そして、広い夜空を長く横切った。
「わーっ、まただわ、今度も大きいわ」
「ああ、大きいな、しかも前と同じ方向へ東に流れたぞ」
「二回も大きな流れ星を見るなんて、めったにない事だ、縁起がいいぞ」
「ワシも長く生きているが、あんな大きな流れ星は初めてじゃ、しかも二度も立て続けに見るなんて、全く、何と縁起のいい事じゃ」
と長老達は興奮していた。
皆も静かになって、星が流れた跡の夜空を改めて見上げて感動した。
そして、久々に見た流れ星を思い出し、その余韻に浸っていた。
その時だった。
また大きな光と共に、流れ星が次々に出現した。
「わーーーっ!」
驚く事に、何十と言う明るい流れ星が、一挙に西の空に出現したのだ。
そして、それぞれが交差する事なく、長い光の線となって東の空へ川のように流れた。
(何って事じゃ。こんな流れ星なんて、見た事も聞いた事もない)
長老達はもちろん、ハナや太郎達も、驚きの限界も超えて、もう声すら出なかった。
見上げる夜空いっぱいの、そのスケールが大きかった。
少し前に見た花火とは比べものにならないほど、迫力が違った。
遠くて見渡す限りの広い夜空、その奥いきまですべてを使って広げられた誰も見た事のないような雄大で壮大な光のショーだった。
(つづく)
さて、ここまで載るかな?