飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

飛騨も残暑 生き物達の引継ぎ

2010-08-30 18:22:52 | 俳句

みんみん蝉が我が家の庭の立ち木に来て、朝から泣く。どう言うつもりか1泣きするとさっさと立ち去る。そこは、思い出してみると、つばめもよく鳴いていたところだ。
今は他の鳥の鳴き声もたまにする。どうも野鳥や昆虫の止まり木らしい。
ちょっと前から、家の周りに木々があると、枯葉は落ちるし、木はどんどん大きくなるから、切手しまおうと、思っていたが、考え直すことにした。
と言うのは、最近蚊にさされて葦やうで、それに尻までかゆくてたまらない。今までこんなことはなかったのに、と不思議がっていると、ピーンと来た。あのつばめの親子が去ってからそうなったのだ。
つばめは飛んでいる昆虫を食べる。家の周りでよく鳴いていたのも、たぶん蚊を取る訓練を雛達にしていたのではないか。親子八羽が家の周りの蚊を食べれば、蚊達はおいおいと飛んでも行けない。じっとヒソンデいて、つばめがいなくなった今、さあ今だとばかりに思い存分我が家の中まで入って来るのではないか。
蚊は草むらにひそむ。立ち木には野鳥が来る。立ち木のみを切ってしまったら、大変なことになるところだったかもしれない。と言って最近見かける、草取りが嫌だと、草むらもない、アサファルトやジャリばかりの家では、照り返しがひどくてミニヒートアイランドになる。

ゆく夏や 肌さす陽より 北の風  湧水

朝せみの 追い払われる 残暑かな  湧水

ひと雨が 残暑追いやる 飛騨初秋  湧水 

立秋の 風やうなじに しのび寄り  湧水 

遠慮無し 我が家とばかり こおろぎかな  湧水

こおろぎの 声とだえれば 気にかかり  湧水

ゆく夏を とどむる術無し 遅せみかな  湧水

こおろぎに 引き継ぎせわし 蝉しぐれ  湧水

夕顔の 城みなぎりし 一夜かな  湧水

そう言えば、2、3年前のことだが、ちょうど今頃高山市の千光寺を訪ねた。両面宿なと円空仏で有名な古刹である。

静けさや 千年一日 蝉の寺  湧水

千 光陰 止めて静けさ 蝉の声  湧水 

千年の 沈黙に耐え ひとり蝉  湧水 

木目浮く 古刹に若き 素足かな  湧水

どうがそら遺跡

鮎くだり 木の実の山々 堂之上  湧水 
松倉城址

松のみの 観音遠き 秋城址  湧水 

欲のみの 城跡さびし 蝉も無し  湧水 



連載小説「幸福の木」 その47 話 卵いっぱいの落ち鮎

2010-08-27 17:42:08 | 小説

ハイハイハイハーイ、おまたせ!残暑でザンショ、いつまでも暑い毎日でございます。飛騨の小路 小湧水でございます。夜や朝は、多少涼しくなりましたが、まもなく、九月、九月は学び事を始めるに良い月、また物事の変わり目の月だそうです。
ウチの先生も、筆がはかどらないと言って、部屋の配置換えをするそうです。あっしは、あまり関係ないと思いますけど。
そうそう、つばめのことですが。やっぱりアレが、旅立ちのお礼参りだったようです。その後、パッタリとつばめ達の姿を見かけなくなったようです。律儀なものですね。
そう言えばウチの兄弟子はどうしちゃったんでしょう?最近、さっぱり見かけなくなって、どこかでツバメでもやっているんですかね、えっ、有り得ない!まあ、あっしには、どうでもいいことなんですが。
さてさて、ヘタな前置きはこのくらいにして、太郎やはな達の話とまいりましょう。それにしてもタイトルが気になりますね。来月、飛騨川も網の解禁でしょ?はい、余分なことでした。はい、では、開幕開幕!

47 卵いっぱいの落ち鮎

コオロギが鳴きだしていた。
高さ1500m近い位山にはもう秋風が吹いていてさわやかだった。
仙人や師匠とマレオは、山頂にとどまって何か修行をしていた。
が、太郎やはな達は、山頂を下って途中の峠の近くに野宿していた。山頂では、水が無く、住むには不便だったからである。
「まあ、仙人が紹介してくれる空巣修験者が来るまで、しばらく休憩だ。夏休みだ!」
との太郎の号令に皆は大喜びだった。
はなとローザは、ふつうの女の子にもどって、勾玉の首飾りに刺激されて、何やら髪や耳、指に飾る物を作っていた。
ゴクウとケンは久しぶりの自由時間なので、思いのままに森の中を駆け巡っていた。
太郎は、しばらくのんびりと寝そべっていたが、そのうち腹が減って来ると食べ物のことを思い始めた。
「あっ、そうだ!落ち鮎だ!忘れていた。落ち鮎の季節だ」
と思いつくと立ち上がって、
「おーい、ゴクウ、ケン、川へ行くぞ!」
と大声で怒鳴った。
すると、どこからか、ケンとゴクウが大急ぎで、駆けて来て、太郎と共に山を下っていった。
位山は日本の本州の太平洋側と日本海側との分水嶺である。
「あの、太郎隊長、方向が違いますが、どこの川へ行くんですか?」
ゴクウが聞くと、
「ああ、ここから見える川は駄目だ。そりゃ、もちろん大きな川だ。あの川は小さくて鮎も少ない。けもの道で別の峠へ行き、南に大きな川があるはずだ。そう、あ
っちの方だ
と太郎は指さした。
尾根伝いに進み、もうひとつの峠を下ると視界が開けた。そこには、大きな川が平坦な野原を曲りくねっていた。
「おお、あれだ!あの川だ。冬に渡ろうとした、あの川だ」
太郎達は、転げそうな勢いで川岸に着いた。
「ああ、この川は鮎がまちがいなくいますね。匂いがします」
透き通るような水を見ながら、ゴクウが言った。ケンもワンワン合槌を打った。
「よし、久ぶりにこの槍で突くか」
太郎は、着の身着のままで川へザブーンと飛び込んだ。
汗まみれだったゴクウやケンも続いた。
皆で水遊びをしていたが、やがて太郎が落ち鮎を槍で突きにもぐった。
しばらくして、太郎が何も取らずに上がって来た。
「ああ、くそっ!駄目だ。俺の腕が落ちたのか、そんなはずがない。水が澄んでいて見え過ぎるのだ。鮎達に近づく前に逃げられてしまう」
ゴクウがしばらく考えていたが、すぐ、
「川があそこで、二つに分かれています。私達が細い川の方へ鮎を追い込むから、あの狭い所で待ち伏せして、岸から突いたらどうですか?」
と言った。
「なるほど、それもいい考えだ。早速、やるか。じゃあ、鮎を追い込んでくれ」
と太郎が岸の岩で待ち伏せした。
ゴクウとケンが、上流の二股に分かれる所で細くない方の川に立ち塞がって鮎の行くてを妨害した。
「太郎隊長さーん!準備できました。どうですか?」ゴクウが大声で聞いた。
「おお、いいぞいいぞ!大きな奴がいっぱい来るわ。続けてくれ」
大声で返事して、太郎は早速槍で突き始めた。
ゴクウ達から、太郎が何度も突く様子が見えた。もういいだろうと思って、ゴクウ達が川から出て、太郎の傍へ行った。
「大量ですか?」
ゴクウが聞くと、太郎は首をうなだれていて、鮎の姿は一匹も無かった。
「駄目だ。槍が水に入ったとたんに、奴等が身をかわす。それに流れが速過ぎてて、狙いが定まらない」
と言い訳をして、しょんぼりしていた。
「それじゃ、網を作りましょう。それなら、確実です」
とゴクウが提案した。
「網?網って、あの藤ツルで編んだやつか?」
太郎は聞き直した。
「ええ、そうです。でも、もっと細いもので編むんです。鮎がすり抜けないように。それをここに置けば、まちがいなく鮎が取れます」
とゴクウが水を指さした。
「ああ、なるほど」
太郎はその気になった。早速、細い藤ツルや木の皮を獲ってきて、網を編んだ。それを丸く囲んだ木の枝にくくりつけた。
「おお、我ながらうまくいった。これなら、まちがいなく取れる」
もう夕方になっていたが、前回と同じように、ゴクウとケンが鮎を追い込み、太郎が下流の細い所で網を川に入れ、待ち続けた。
「おお、いいぞいいぞ!来る来る!」
太郎の嬉しそうな声がゴクウやケンに聞こえた。
もういいだろうと思って、ゴクウとケンが川から上がって、太郎の傍へ行くと、また、太郎がしょんぼりしていた。
「太郎隊長、どうしたんですか?鮎はどこですか?」
ゴクウがいぶかしそうに聞くと、
「駄目だ。水の力が強過ぎて、鮎が入ったら急に重くなって、俺まで流されそうになった。危ない所だった」
と再びしょんぼりした。
「じゃあ、あの網は?」
とゴクウが聞くと、
「聞くな。言わなくても判るだろ?」
と、少し怒り出した。
ケンがワンワン吼えると、
「うるさい!」
と太郎は一喝、ケンも黙ってしまった。
「まあ、今日はもう遅いから、終わりにしましょう。明日は明日の風が吹くでしょう」
ゴクウのなぐさめの言葉に太郎も落ち着いて、河畔で夕食をして早々に寝た。
夕食は途中の山で獲ったアケビやマタタビだった。
太郎は、楽しみにしていた、美味しい卵いっぱいの落ち鮎のクシ焼きが食べられなかったことと、ゴクウ等に比べ、自分のふがい無さに腹が立って、なかなか寝つかれなかった。
あの苦労して作った網も流されてしまったのだった。
一方、はなやローザ達も、夜になってももどって来ない太郎達を心配していた。

翌朝早く、太郎は何を思ったのか、近くの竹やぶに入り、剣で細く長い竹をどんどん切り出した。
ゴクウとケンが傍へ行くと、
「ああ、いいところへ来た。さあ、これを、昨日の場所へ運んでくれ」
と言った。ゴクウ達が言われたように竹を運ぶと、太郎がやって来て、
「よし、まず、この太い竹を岸と岸に渡し、この細い竹を川の前方に突きさして、反対側をこの太い竹に縛ろう」
と言って何かを作り始めた。
そのうち、形が見えて来た。今で言う、「ヤナ」だった。竹と竹の間は鮎が通り抜けられたが、鮎達は怖がって通り抜けようとしない、すると、鮎達は水の流れに押されて、斜めの竹の上の方へ上がって来た。
すると、太郎は、今度は槍で邯鄲に突き刺すことができた。
「ああ、すごい、すごい!さすが、隊長、すごい物を発明しましたね」
ゴクウが手をたたいて喜んだ。ケンも吼えっぱなしだった。
その時、遠くで、
「はーい、太郎にいちゃーん!何しているの?」
と言う、はなの声が聞こえた。はなとローザが心配して、迎えに来たのだった。マレオが師匠に言われ、護衛を兼ねて案内をしていた。
「わっ、わっ、わーっ!すごい、ああ、魚がいっぱい、」
近くに来たはなやローザ達は驚きの声を上げた。
太郎は得意になって、咳払いした。
「あの、これ、これって、元々ここに有ったのでしょうか?」
マレオが聞いた。
「何を、馬鹿な。こんな物が初めから有るかよ。俺が作ったんだ」
太郎はもう、得意満面だった。
「うっそ!きっとどこかの村の人がやってたんだわ。それともゴクウさんのアイデア?」
と、はなが、聞くと、
「いえ、隊長の発明です」
とゴクウは、いつもの生真面目な調子で答えた。
どうも信じられないと言う顔で、はなやローザが見ていると、
「さあ、ボサッと立っていないで、手伝った、手伝った!昼飯は鮎づくしだ」
と太郎が大声で促した。焚き火を囲んで、皆で焼いた鮎をたらふく食べた。
「あの、太郎さん、師匠達にも持っていっていいですか?」
とマレオが聞くと、
「いや、その必要は無い。食べたけりゃ、来るさ。匂いは風に乗って届くから」
ときっぱり言って、マレオをがっかりさせた。
「それに、我々は当分ここに宿泊する。この落ち鮎で保存食を作らないとな。はな、お前達もここで寝るんだぞ」
と太郎はえらそうに命令した。
はなとローザは顔を見合わせた。すべての物を峠の所に置いていたからである。
「あの、師匠に怒られますので、私は夕方までに帰っていいですか?それに、鮎をちょっと持っていかせてください」
とマレオが小さな声で意外にはっきり言うと、
「うーん、まあ、しかたがないな。そうだ。その代わり、はな達の荷物を持って、もう一度ここまで来てくれ。それならいいぞ」
と言うと、マレオは困ったような顔をして、はな達にに荷物を聞き、鮎を数匹持って出発した。

夕方、マレオがはな達の荷物を持って再びやって来た。
ちょうど、夕食の最中だった。
「はい、師匠にヤナのことを話したら、いい勉強だから、こちらにおれ、とのことでした。お手伝いしますので、よろしくお願いします」
と恥ずかしそうに頭をさげた。
「勉強だなんて、格好いいことを言って。用は鮎がほしいんだろ?まあ、いいさ。食べろ、たべろ、山ほど有るさ」
と太郎が言うと、マレオはほっとした顔になった。
それにしても、このヤナがお兄ちゃんの発明だなんて」
と、はながまだ信じられない口調で言ってた。
太郎は昨夜の夢を思い出し手いた。
それは、幼い太郎が父や村の長老と一緒にヤナを作っている夢だった。それは、もっと小さなヤナで、竹も四片に割ってていねいに並べられていた。
はなは、その頃は赤ん坊で、そんなことは知るよしもなかった。

ハイハイハイハーイ、時間となりました。きっと、昔はダムも堰堤も無かったから、天然の鮎が海から飛騨へ、今頃は、飛騨から海へ、たくさん移動したんでしょうね。鮎だけじゃなく、他にもマスやサケも、もっともこれ等は逆にこれから冬にかけて来るんですが。まあ、いわゆる「まほろば」だったんでございましょう。はい、いい言葉ですね。
はい、では、またのお運びを願いまして、ザンショ、ザンショ!




こっちゃんへの自然農法教室 (その 6 ) スイカ苗は砂地のような柔らかい土へ

2010-08-26 08:47:50 | 農業

今年、また大きなスイカが9個も収穫できた。中くらいのものも含めれば12個獲れたことになり、大豊作だった。苗は二株だ。
場所
西瓜(スイカ)を植える場所は毎年同じ場所に植えている。畑の道路脇の水はけの良い場所だ。
定植 
自然農法の苗を購入して、シルばーのお爺さんに、ボカシを少し入れ、黒マルチをかぶせた畝に穴を開けて、三株植えてもらったが、直後に一週間ぐらい寒い日が続いた。
2,3週間経った頃、草取りついでに、苗に触れてみたら、寒さで萎縮してしまったのか、全然成長していなかったので、これは枯れると思って、植えなおすことに決めた。
ホームセンターで、花の苗を買った時、幸い、売れ残っていたスイカの苗が三個あったので、2個を買った。一個400円近くで高価だったので、2個だけ植え直すことにした。(失敗すれば、スーパーでスイカを買って食べた方が安上がりになるから)
植え直し
枯れかかった苗を引き抜いて、土の匂いを調べたが、異常が無さそうに思えたが、苗の下の土の固いことに気づき、驚いた。あわてて指で掘ってほぐしたが、指が痛くなるほど堅かった。ひょっとしたら、成長しなかったのは、寒さのためではなく、この土の固さのためだったかと感じた。
今度は大丈夫と思っていたら、案の定、その後、どんどん成長して、私が、まちがって傷つけるといけないから、草取りに畑へ入れないくらいになった。
八月の初め、もう獲れると言うので、大きいスイカを二個収穫してもらったが、少し早過ぎて甘味も十分のっていなかった。
それに懲りて、残りのスイカはお盆まで、ホッタラカシにしていたが、お供えにと収穫したところ、ちょうど獲り頃だった。三個も大きなスイカが獲れたので、合計五個も獲れたことになり、十分もとは獲ったと満足した。あとは小さいものだろうと、またほったらかしにしていたら、朝早くカラスが近くへ来て鳴くようになった。
ちょうどシルバーのお爺さんが来たので、獲り頃だったら獲ってくださいと、言うと、5個も獲ってきた。そのうち4個は前回と変わらぬほど大きいスイカだったので驚いた。

と言う訳で、今年はスイカが大豊作だった。それと、改めて思ったことは、スイカはメロンと同じで、乾燥地の作物である。乾燥地と言えば、砂地だ!だから、苗の下の土は砂地のように柔らかくしておかないと、細い根が伸びて行けない。この根が地中深く伸びて水分を吸うから、乾燥に強くなるのだ。このことは、他の苗も同様であるが、特にスイカやメロン等には砂地のような柔らかい土にするように気をつけましょう!   以上。

ついでに、茄子(ナス)についても報告しておくと、
やはり、植えた直後の寒さが災いした。あまりにも寒いので、本当はビニールトンネルをして上げればよかったのだが、あわててレジ袋をかぶせたぐらいだった。
予想通り成育が悪かった、
植えなおしのスイカの苗を買った時、ついでに一本ナスの苗も買って、植えたところ、あっと言う間に、前植えたナスよりも大きくなってしまった。葉も巨大で全体の格好が伸び伸びしていた。これに比べ、寒さに会った前のナスは、全体に小さく貧弱だった。
やはり、茄子はインドが原産の暑い気候が好きな作物だ。飛騨の場合は、多少収穫が遅くなっても、苗を植えるのは、遅い方が無難だと、改めて思った。
ナスは、毎夕の水やりと週一回程度のボカシ等の追肥を欠かさなければ、今年のような暑い時は、どんどん伸びて大量の収穫ができる。


飛騨の晩夏 ゆく夏の兆し

2010-08-24 21:34:53 | 俳句

相変わらず、朝も暑い。
しかし、虫や鳥はもう夏の終わりを察しているようだ。
我が家では、つばめのうるさいくらいの声がしなくなって、他の声が耳に入るようになった。

つばめ去り 静かな土間に こおろぎかな  湧水

ゆく夏や 蝉と子等が 大騒ぎ  涌水 

 裏出口 網戸しまえと こおろぎかな  涌水 

新涼や 蝉等は朝寝 われ散歩 湧水 

キリギリス 声なめらかな 晩夏かな  湧水 

ゆく夏や 古刹に黙す 二人づれ  湧水

ゆく夏や 空きバス二人 甘き声  湧水

炎天を 覚悟でいでば 涼風かな  湧水

カラカラと 浴衣むすめの 旅館げた  湧水 

下駄音の アレグロ序奏 雷雨かな  湧水

ギコギコと 初ヴァイオリン こおろぎかな  湧水

サングラス 取りても泣かれ おさな孫  湧水 

無人駅 ドア開きギャルと 蝉しぐれ  湧水

いなか駅 女子高性と 蝉しぐれ  湧水

ゆく夏や 午睡の目覚め 父母さがす  涌水 

みのむしの 父母さがし泣く 目覚めかな  涌水 

濡れタオル 蒸らす頭の 炎天下  湧水



連載小説「幸福の木」 その 46 話 大昔の天皇

2010-08-22 22:58:34 | 小説

ハイハイハイハーイ、おまたせ!飛騨の小路 小湧水でーす。遅くなりまーした。いや、先生の原稿が遅くて、暑さのせいでしょうか?つばめがいなくなったせいでしょうか?そうそう、昨日の夕方、家族八羽全員が来たんだって、お礼参りにはまだ早いんじゃないかだって。
それに、驚きましたよ。スイカですが、大きなのが九個もなったんです。そんなこんなで、筆が進まないようですが。ふつう、小説はプロは夜中に書くんでしょう。でも、ウチの先生は夕食後は、すぐ、まぶたが重くなるタイプですから無理でしょうね。お陰で、あっしまで残業になってしまって。はい、愚痴はこのくらいにして、早速、開幕とまいりましょう。はい、では、開幕、開幕!

46 大昔の天皇

「天皇?天皇って何ですか?」
太郎もはなもゴクウもローザも皆が口を開いて聞いた。
「ほほーっ、なかなか学びに熱心だな。それとも単なる好奇心かな?まあ、どちらでもいい。若い時は何でもどん欲に学ぶことじゃ」
と仙人は喜ぶばかりで質問になかなか答えなかった。そこへ、師匠が口をはさんで来た。
「天皇って、早く言えば、この国を支配する王と言うことだ。要するに、エライ人って言うことだ」
と師匠が言うと、皆は仙人の顔を見た。
「ああ、そうだ。その通りじゃ。だが、王と言ってもふつうの王とは違う。税金を取ったり、食べ物を納めさせたりしない。すべて自分で作る。だから支配じゃなくて、皆が尊敬して従うと言うことじゃ」
太郎やはな達は、分かったたような分からないような顔をしていた。
「それで、その天皇はどこにいるんですか?今も勾玉の暦を持っているんですか?」
ゴクウとマレオが体を乗り出して聞いた。
「おお、それじゃよ。それじゃ、それじゃ、その天皇がいたのは大昔の話じゃ。今はその跡継ぎがどこにおられるのかさっぱり分からない。ただ、アチコチにその子孫が残っているかもしれないと言うことじゃ」
と仙人が言うと、
「ああ、それで、勾玉を持っていた、はなやローザを子孫と勘違いしたんだな」
と太郎達は納得がいった。
「そう言うことだ。天皇の力が弱まった時代に、悪い家来や地位を狙う有力者が現れた。彼らに取られたり盗まれたりしないように、勾玉、管玉いっぱいの暦の首飾りを、バラバラにして、子や孫達に配ったと言う噂だ。天皇の血を引く証拠としてじゃ。分かったか?」
と師匠は、また口をはさんだ。
太郎やはな達はまた仙人の顔を見た。
「そうじゃ、しかし、困ったことに、その後、皆が特に族長等が、自分で勾玉を作って首飾りにするようになった。まあ、にせ物が増えてしまったのじゃ」
と仙人は顔をしかめた。
「ああ、よく分かる!ここにもマネしてる奴がいるさ」
と太郎が言うと、
「だって、格好いいもの。誰でも憧れるわよ」
と、はながふくれっ面になった。
ローザもすまなさそうに勾玉の首飾りを胸の中へしまおうとすると、太郎が「しまった!」と思った。
「まあまあ、これは、大昔の話じゃ。その勾玉もきっと大昔に作られた物じゃろう。相当立派なものだからの。それに勾玉の他に、天皇が持っていた物に鏡と剣があるんじゃ」
と仙人が言うと、太郎はドキッとして、
「けっ、剣?剣なら俺も持っているけど。かなり上等な奴だ」
といった。すると、師匠とマレオが驚いて、太郎の顔を見た。
太郎はあわてて袋から剣を出そうとした。
「ああ、それなら、わしはもう見ている。それは、ちょっと小さ過ぎる。それに天皇の剣と言うのはもっと白く光る金属でできていると言われている」
と仙人が首を横に振った。
それを聞いて、師匠とマレオが安堵の表情となり、
「なーんだ!驚かすなよ」
と大笑いをした。まさか、太郎が天皇だなんて想像すらできなかったからである。
皆もつられて、大笑いすると、太郎が真赤な顔をして、怒った。
「さーてさーて、話はこのくらいにして、昼飯の支度に取りかかろうか?そろそろ山のあけびが甘くなっている頃だ。少し獲って来るわ」
と言うと、仙人はパッと姿を消した。
「ほう!相変わらず、すばやいことだけは、敵わないな。よし、マレオ!我々もうまい物を獲りに行こう」
と師匠はマレオと共にバタバタと山の茂みに入って行った。
「まあ、めずらしいこともあるものね。食事の支度なんて、!仙人がそんなことを言うのは初めてじゃない?どう言う風の吹き回しかしら?」
と、はなが不思議がった。
「ああーっ!ひょっとしたら、勾玉のせいじゃないか?」
と太郎が言うと、ゴクウも、
「そうですね。今まで勾玉の持ち主達を召使のようにご飯を作らせていたんだから。ついでに、剣の持ち主も火滝係にして」
と皮肉を言った。すると、太郎が、
「そうだな。それじゃ、今回は、我々が天皇の子孫のように、あの仙人達の作るごちそうをよばれようか」
と茶化すと、
「そんな訳にはいかないわ。もし、期待はずれだったらどうするの?」
と、はなとローザは、いつものように昼食の準備に取り掛かった。
太郎が焚き火の準備を終えて、岩の上にのんびりと寝そべっていると、遠くの空から黒い影が近づいて来た。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
「あっ、いけねえ!やばい!タカコだ。ああ、早く小人と幸福の木の居所を聞かなきゃ」
と太郎はガバッと起きた。
タカコはどんどん太郎達の方へ近づいて来た。
「おお、どうしたんじゃ!わしが見えぬか?」
突然の背後からの声に、太郎がびっくりした。あわてて振り向くと、そこに仙人がアケビいっぱい付いたツルを持って立っていた。
「ほれ!こんなにたくさん獲れた。が、まだ少し早かったかの」
と仙人は差し出した。すると、それを遠くで見ていたゴクウが、
「ああ、アケビですか?なつかしいな」
と言いながら近寄って来た。ケンも一緒だった。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
タカコの声がだんだん大きくなった。
「あのっ、仙人さん!小人と幸福の木のことを早く教えてください」
太郎が大声で仙人に向かって言った。
仙人もゴクウやケンも突然の太郎の質問にキョトんとしていた。
「確か、この山へ来れば分かると言ってたはずですが」
と太郎は必至に食い下がった。
太郎の背後から大きな鳥の影が見え、真上で大きな輪をかき始めた。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
「あっ、タカコだ、トビのタカコだ」
と、ゴクウが叫んだ。ケンもシッポを振ってワンワン答えた。
「おお、ここもえらく騒がしくなったな。このアケビはどうなるんじゃ?」
と仙人がアケビのつるを広げて見せると、
「仙人!今は、それどころじゃないんだ。早く教えてくれよ」
と太郎が必至で迫った。
「やれやれ、かなり深刻じゃな。それじゃ、話の続きをしようか、まあ、座れ」
と仙人は太郎の勢いに折れて、話を始めた。
「小人達が満月の晩にお祭をすると言うことは、ひょっとしたら、我々と同じことをやっているのかも知れない。我々が次の次の満月の夜に、皆がこの位山に集まってお祭りのような儀式をする。それは、その昔、大昔、まだ人間もサルとさほど変わらぬ生活をしていた頃、ある満月の晩に、この位山に、満月よりも大きい月が現れたんじゃ。分かるかの?そして、そこに引き寄せられた二人の若い男女に子を授けられたのじゃ。分かるかの?その子が大人になった頃、アチコチの土地から特別な才能を持った若者が引き寄せられるように集まった。彼らは、勾玉や剣を作ったり、食べ物を見つけたり、着る物や住む家等々いろいろな道具を発明した。」
と言うと、仙人は喉が渇いたのか、持っていたアケビをモグモグ食べた。
すると、それにつられて、太郎やゴクウも同じようにアケビを口にした。
仙人は最期のアケビの一口をゴクッと呑み込むと、
「うん、そしてじゃ。、その子が中心になって、その新しい人間の生き方を各地に広めていったのじゃ。それが一番初めの、天皇じゃ」
一方、はな達と言えば、
谷川へ水を汲みに行ってた、はなとローザがもどると、仙人や太郎達が何かを食べながら話しているのが見えた。
「あっ、あんな所で、さぼっている。そーっと近づいて驚かしてやりましょう」
との、はなの提案で二人が近づくと、はなとローザにも仙人の声が聞こえた。
「ところがじゃ、その天皇を中心に平和な村がアチコチに増えたのじゃが、そのうち大洪水が起こって村ごと水中に沈んでしまったんじゃ。実は、天皇がここで皆に知らせていたのじゃが、皆は聞こうとしなかったのじゃ。それからは、生き残った人々がここに集まって、天皇のお言葉を聴くようになった」
仙人がもう一個のアケビを一口食べた。
「あの、あの、その天皇って、ここに住んでいるんですか?」
とはなが突然聞くと、太郎とゴクウはびっくりして、後ろに振り向いた。
「まあ、そうあわてないことじゃ、これも大昔の話じゃ。その後も何回か洪水が起こったようじゃ。その度に日本中からここへ集まって、人々は生き延びていった。その後、天皇達は北の平野に移ったそうじゃが、ここは、その始めの地として、今もその満月の日に修行者や修験者や高徳の人達が集まって、その徳を偲んでお祝いをするのじゃ」
と言って、仙人はまた一口アケビを食べた。
「ふーん、で、それが小人や幸福の木と、何の関係が有るんですか?」
太郎が性急に聞いた。
「そう、それじゃよ。言い伝えによると、洪水の後、食べ物が無くて、人々が困ったそうじゃ。その時、天が天皇の願いを聞いて、モチを木に成らせたそうじゃ。おそらく、その幸福の木とは、その木が進化したものじゃろう」
「そう言えば、私のお婆ちゃんも村の長老さんもそれをまねてるわ。冬に穀物のモチをついた時、松などの木にそのモチをくっ付けて部屋に飾っているわ」
と、はなが、言うと、太郎が、
「それは花餅だろ、変な話を持ち出すな。今は幸福の木の場所を聞いているんだ
と黙らせた。
「まあまあ兄弟けんかは後回しにして、それで、その幸福の木が今はどこにあるかを知りたいんだろ?」
と仙人が言うと、太郎は体を乗り出すように合槌を打った。
「いや、それは無理だ聞いても答えられないよ」
と背後で大きな声がした。
振り向くと、師匠が帰って来たのだった。マレオが師匠の後ろで、真赤な顔をして、何かを抱えていた。
「ええーっ、なんで無理なんだよ?ここまで話しておいて、今更駄目だなんて」
太郎が怒ると、
「怒ったって、仕方が無い。小人だろ?あれは森の妖精だ。気が小さくて、用心深い。特に人間に悟られないようにしている。まず無理だね」
と師匠はそっけ無く言った。隣のマレオが泣きそうな顔をこらえているようだった。
「まあ、マレオさん!どうしたのその顔は?」
しげしげとながめていたローザが声をかけた。
「ああ、これは、蜂だ。蜂に刺されたのじゃ。心配ない。すぐ腫れは引く。それよりも、娘さん!あんたが好きな蜂蜜を獲って来たぜ。ほれ、こんなにたくさん」
と師匠はマレオが抱えている壷のような物を覆っているほう葉を取って見せた。
プーンと甘い香りが周囲に漂った。
「まあ、おいしそう!蜂蜜なんて、今まで一度指でなめただけだわ」
と、はなが大喜びした。
「ああ、やっぱり、勾玉の効果ですね」
とゴクウが皮肉っぽくささやいた。太郎が、
「ちょっと、うるさい!今は小人と幸福の木の話をしているんだ。どうして、満月の夜、毎回祭りをやっているのに、その場所が分からないんだ?。こんな静かな土地で?」
と太郎が怒ると、
「その満月の夜が駄目なんじゃ。狼は吼えるし、サルも騒ぐ。昆虫も小さな動物もうかれて騒ぐから、小人の祭なんか埋もれてしまう。我々人間だって、うかれて騒ぎまくる。村へでも行って見ろ」
と師匠は駄目押しするように言い切った。
これには、太郎もがっくり来た。
「ああ、妖精に仲間入りするか、フクロウやコウモリの仲間になるしかないのか」
と太郎は泣きたいくらいになった。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
空で、タカコが激しく鳴いた。その時、
「ああ、そうじゃ、!思い出した。一人いた。鳥達と話ができる奴が、彼はいつも鳥の空巣で瞑想している。昼も夜も、昼飛ぶ鳥も夜飛ぶ鳥達とも話しができるから、きっと小人達の祭りの場所も分かるじゃろう」
仙人が叫んだ。
「そっ、その人はどこにいるんですか?」
太郎がすがるように聞くと、
「満月の儀式にここへ来る。その時、紹介してやる」
と仙人も嬉しそうに答えた。太郎は、
「やったー!」と、立ち上がって拳を振り上げた。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
タカコも嬉しそうに鳴いて、しばらくすると、どこかへ飛び去ってしまった。
知らないうちに、日は西に傾いていた。

ハイハイハイハーイ、時間となりました。満月ですか、涼しそうですね。あとわずかで、九月、月のきれいな涼しい秋もま近です。がんばって残暑に耐えましょう。はい、では、またのお運びをお願いいたしまして、バイバイバイ!