飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

コント(その 4 ) 一枚二枚・・!

2018-12-30 11:26:27 | エッセイの部屋

ボケ田 「一枚、二枚、・・」
トン作 「おい、お前、何やってるんだよ、こんな大通りでお金なんか数えて?」
ボケ田 「ああ、お前か、いや、おかしいな、一枚、二枚・・」
トン作 「おいっったら!何してるんだ?それ一万円札だろ?」
ボケ田 「ああ、やっぱりおかしい、この辺に落ちていないか?」
トン作 「えっ、一万円札を落としたのか?そりゃ大変だ」
きょろきょろ辺りを探す。
トン作 「いや、この辺には見つからないけど・・」
ボケ田 「ひょっとしたら風に飛ばされたかな?」
トン作 「そっ、そりゃ、大変だ、何枚だ、そうナンマイダ」
またあわててきょろきょろ見渡す。
トン作 「ちょっと見つからない・・いったいどうしたんだ?」
ボケ田 「いや、ちょっと前に十万円降ろしたばかりなのに、もう二枚しかないんだ」
トン作 「・・・・」
ボケ田 「一枚、二枚・・・」
トン作 「おい、やめろ!あのな、それはお前が使ったんだ、無くなったんじゃなくて、使ったの!」
ボケ田 「いや、そんなはずはない・・・」
トン作 「あのな、そう言う事だ、落としたんでも、吹いていったんでもない、お前が使ったんだ、それで無くなったんだ、分かった?」
ボケ田 「えーっ、そう言う事かな、・・とほほほ・一枚、二枚・・」
トン作 「やめろ!まるで幽霊屋敷のお岩さんじゃないか、気持ち悪い」
ボケ田 「えっ、お岩さんって?」
トン作 「そうだ、江戸時代にお屋敷のご主人の皿を割って、井戸で自殺した女中だ。夜な夜な井戸に出てきて、一枚二枚って数えるんだ」
ボケ田 「ふーん、そうなんだ、ふーん・・・それじゃ、これはナーニだ?」
前方の上の方を指さしながら、
ボケ田 「いちハカ、にハカ、さん・・」
トン作 「何だ?突然クイズかい?ハカって?もしかして墓の事か?」
ボケ田 「うん、そう、当たり!一墓、二墓・・」
トン作 「なんで墓石がそんな高い所にあるんだ?」
ボケ田 「そう、じゃあー、ヒント! 春風亭昇太デース、一墓、二墓、・・」
トン作 「えっ、昇太?墓石を数えているって?????」
ボケ田 「昇太が、城の石垣に埋まっている墓石を数えているんデース、一墓、二墓、三・・」
トン作 「・・・」
ボケ田 「じゃあ、今度は、これはナーンダ?一羽、二羽・・」
前方を指さして数え始める。
トン作 「またかい、一羽、二羽って、もしかしてバードウヲッチングか?」
ボケ田 「一羽、二羽、三羽・・えーっと」
トン作 「ああ、今は湖に鴨や白鳥も来ているからな、何百羽もな」
ボケ田 「一羽、二羽、三羽・・たくさん」
トン作 「おいおい、マサイ族か?ここはケニアか?」
ボケ田が足をガタガタ踏む。
トン作 「何だ?足がどうかしたのか?」
足元から何かを持ち上げる。
ボケ田 「えーっと、合計365羽か、まだまだ・・」
トン作 「えっ、何だ、カウンターかい、なんで足でカウントするんだ?」
ボケ田がポケットからスマホを取り出してカメラボタンを押し始める。
「カシャ、カシャ、カシャ!」
ボケ田 「えーっと、なになに、全部で一万二千六百三十六羽か、まあまあだな」
トン作 「えっ、それって映像から数えるんかい?すごい!今って、そうなの?そう言えば、中国で群衆から・・」
ボケ田 「うーん、今年はひどいな、・・浮気した雌が二千九百七十六羽もいる。ひどいもんだ、ああ、と言うよりも離婚したカップル数と言った方がいいかな?」
トン作 「ゲッ、そんな事まで分かるのかい?すごい!、そんなスマホで・・」
ボケ田 「あっ、これはもっとヒドイ!爺さんが孫娘とカップルになっていやがる」
トン作 「ゲゲゲーッ!血縁関係まで分かるんかい?」
ボケ田 ああ、そうだよ顔認証でな」
トン作 「いやいやびっくりだ!今時、ビッグデーターってそんなにすごいんかい?」
ボケ田 「ああ、毎年カメラで撮っているからな」
トン作 「しかし、鴨も白鳥も俺には皆同じ顔に見えるけどな・・」
ボケ太 「じゃあ、次だ、これはナーンだ?、一ク、二ク、・・」
トン作 「またかい、懲りないな、何だ?一ク、二クだって?」
ボケ田 「そう、一ク、二ク・・・」
トン作 「ああ、分かった!議員だ、選挙区だ、今年も恥じも外聞もなく増やしたからな」
ボケ田 「ブー、残念でした!一区でなく一句でした」
トン作 「何だ、俳句かい。苦労して作ってるから、一苦、二苦だろ?ハハハー」
ボケ田 「じゃあ、これはナーンダ?一号、二号、・・」
トン作 「???」
ボケ田 「ああ、ちょっと難しいかな?それじゃ、ヒント!一夫人、二夫人、三デビ夫人、あっ、まちがえた!」
トン作 「なーんだ、ひょっとして最新のaiロボットかと思ったら、昔の側室の事かい」
ボケ田 「じゃあ、最後に、これってナーンダ?一クビ、二クビ、三・・」
トン作 「いやいや気持ち悪い物が出てきたぞ。、首だなんて、分かった!信長だ、敵将の首実検だ」
ボケ田 「ブー!残念、ヒントです!女性です」
トン作 「女性?それじゃ女城主か?ほらっ、美濃の岩村城の・・」
ボケ田 「ブーッ残念!奥床しい女性でーす」
トン作 「奥床しい??・・・」
ボケ田 「はい、時間でーす、そうでした、来年も一月16日にあります。はい、一首、二首・・歌会初めでした!」

おしまい、失礼しました。

では、来年はよいお年を!今年もありがとうございました!
      2018年12月30日


短歌で思うこと やまとことばと漢字

2018-12-28 12:39:41 | エッセイの部屋

先日ある本を読んでいたら、長年の疑問が解けた気がした。
それは漢字の事である。
漢字と言えば、今は漢字検定などで小学生にも人気があるようだが、
私は大人になって、ある事をきっかけに初めて漢字に興味を持った。
それは、故白河教授の古代中国殷王朝の甲骨文字研究の話をテレビで聞いてからである。
その時、いつか暇ができたら私も詳しく調べてやろう!と思った。
また故宮城谷正道氏の「太公望」を読んでいた時には、古代殷王朝の時の漢字の起こりの頃を知る事ができた。
さて、漢字の中でも重要なものに「道」と言う字がある。
古代中国の「老子」の思想にもある天地万物を貫く永遠の真理を表す言葉である。
しかし、その道と言う漢字は首と言う旁を含んでいる。
どうして崇高な真理を表す漢字に、首などと言うぶっそうな旁を使用しているんだろう?
と言う疑問を持つようになったのは、前述の白河教授の話を聞いた、その時からだった。
それまでは、そんな事は思いもしなかったし、気がつかなかった。
教授の話では、確かこんなふうだったと思う。
古代中国では互いに戦い、敵を滅ぼして、その土地を奪っていた。
その奪った土地を歩く時、死んだ敵の怨念や大地の悪霊が出てこないために、敵の首を棒先に縄で垂らして先頭を歩かせた。
その事が、道と言う漢字の起源だと言う事だった。
その時、ずいぶん生臭い野蛮な起源だな!と気持ち悪く思った。
ちなみに、その頃中年だった母の名前は「道子」だった。
これは、かなり前の事である。
それから幾十年、先日「日本の言葉の由来を愛おしむ 語源が伝える日本人の心 高橋こうじ著」と言う本を退屈しのぎに読んでいた。
すると、その中に、
「古代の日本では、「みち」と言う言葉は、敬う物に付ける「み」と「地」を合わせた言葉だ」
と言う事が記されていた。
つまり、土地の中の通りやすい場所を表す、敬う言葉なのである。
「やっぱり、そうか!何か違うと感じていた」
と私は、長年の疑問が解けた気がした。
この中国から輸入した道と言う漢字は、日本の文化には馴染まないのだ。
特に漢字の使用を始めた「殷」王朝は、甲骨文字占いの外に、他民族の羊飼い民を祭祀の生け贄にしたり、今からみると野蛮な宗教行事を行っていたと聞いている。
その点からも大和民族の日本の伝統文化や大和言葉には馴染まなかっただろう。
しかし、漢字を輸入した頃、まだ文字を持たなかった日本は、その漢字を使わざるを得なかった。
そうして、後になって、日本文化に馴染む独自の文字が発明されるようになった。
それが仮名である。
しかし、当初は、まだ盛んに中国から知識や文化を取り込んでいたから男性の教養としては漢文が主であった。
仮名は主に女性が使っていた。
その後、先日までテレビで放映していた西郷隆盛を始め、明治の偉人達は漢詩を書にしている。
明治時代まで、男性は漢文で詩を作るのが嗜みだったようだ。
私も若い頃、漢詩に憧れて、作り始めたが、難しくて歯が立たなかった。
そして時が経ち、音声ソフトでブログを始めた頃、俳句を始めた。
そして最近になって短歌を始めた。
短歌は和歌と同じで、できるだけ大和言葉を使う方がよい。
と言う事を知ったのはごく最近だった。
なので、今まで知らない内は漢文のような漢字ばかりの短歌を作って応募していた。
例えば、
熊山に手鼓木霊する紅葉谷峰より時雨て霧の錦絵

これなんかは、まるで漢詩だ。
熊山響手鼓 木霊紅葉谷 峰降下時雨 霧描如錦絵
なんて、どうかな?漢詩になっているかしら?
こんな短歌だったから、もちろん入選などしなかった。
そんな訳で、漢字から離れて大和言葉に関心を持つようになった。
それが、「やまとことば」の本を読み始めた理由である。
上記の「道」の他に、もうひとつ気になる漢字がある。
それは静と言う字である。
この漢字に、なぜ争と言う旁が使われているのだろう?
静かと言う意味には、全然似つかわしくない旁だ。
静かな山、静かな湖畔、静かな夜等々、そこには争いなどミジンもない。
やはり、これも道と同じく、ミスだと思う。
ちなみに、日本人のしずかさとは、音がしない事ではない。
静けさやいわにしみいるせみのこえ、の芭蕉の句や、静かな湖畔の森のかげから、もうおきちゃいかがとかっこうが鳴くと唱歌にあるように、傍にいる人の心を乱さないまた気を使わせない音は、okなのである。
そんな事が本に書いてあった。
確か、せみの声を日本人は声と呼んで愛でるが、外国の人は雑音だ、と言う事を聞いた事がある。
やはり日本人の大和心には、大自然と宥和する心が根底にあるようだ。
と言う訳で、短歌に上達するために、これからももっとやまとことばを知ろうと思う。
と・・・、ここで大変な事に気づいた。
短歌も古い和歌も、歌を一首、二首と数えるではないか!
これって、戦国武将が、敵方の打ち取った首を数える時と何の違いがあるだろうか?
全く血なま臭い、およそ歌に相応しくない数え方だ。
どうして、こんな数え方になってしまったんだろう?
それに、どうして今まで改めなかったんだろう?
俳句は一句、二句と数えるのに。
ちょっと調べてみると、やはりこれも古代中国からの輸入だったようだ。
来年の皇居の「歌会初め」でもそうである。
もう千年余り、日本ではこの呼び方が続いている。
幼い子供達や、日本語を学ぶ外国人達には、ギョッ!とさせられる呼び方である。
平成の終わりと共に新しい時代を迎えるが、この際、ついでにこの呼び方を歴史的に改めた方がいいと思うが・・いかが?

(おわり)

クリスマスイブ 落ち着かぬ世相!

2018-12-24 21:35:54 | 俳句日記の部屋

北風に 土芋あらう 飛騨サンタ  湧水

昼食が 動きはじめや わが冬日  湧水

美味かった!が 心にカイロ 北風路  湧水

童話ごと 日ざしに服ぬぐ 北風道  湧水

何事か 為して終わらむ 冬ひと日  湧水

柚子一個 香りが記憶す 冬至の湯  湧水

知らずして 残り芋焼けば 子等の客  湧水

細芋を 好みて焼きし 爺も逝く  湧水

小春日に 想う早目の 大そうじ  湧水

蓄え芋 減りて気持ちも 楽になり  湧水

恵まれし 芋をむだなく くばる幸  湧水

山ねむる ねこは炬燵で 夢の中  湧水

喧噪に 村里逃げし 山ねむる  湧水

川柳

なま物を 送ると言われ 家出られず  宅急便が帰ってしまうかもと ひとり居の爺

トンコレラ 言葉は軽き さつしょぶん  サツ処分かタチ処分か聞きとりにくい


冒険小説「幸福の樹」(その 16 ) 雪の飛騨と温泉

2018-12-23 16:23:33 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、今日は12月23日、目出度い休日です。まもなくクリスマス、昨日は冬至でした。
ウチの先生も、忘れていた!って南瓜やユズを鍋や風呂に入れてました。
以前は薩摩芋とバラでした?
何はともかく原稿が届いたので、早速、小説に参りたいと思います。
季節がようやく小説に追いついた!と喜んでました、そうなると現行の大部分も以前のリライト?かも知れません。
はいっ、余分な事は言わず、開幕、開幕!

16 雪の飛騨と温泉

いつものように、ケンとゴクウを先頭に太郎とハナが一列になって、北東へ向って旅していた。
ハナが時々後ろを振り返るが、そこには老犬のゴロー爺さんの姿はなかった。
ハナは淋しそうな顔をして、また前を向き、再び歩き続けた。
「おーい、ゴクウ、俺達の向っている先は雪で真っ白の山だぞ、いつになったら川を渡って温かい南へ向かうんだ?」
太郎が、ハナの淋しさを振り払うように怒鳴った。
「いえ、もう私達は雪の多い北でなく東へ向っています。まもなく川幅が狭くなって渡れるはずです」
ゴクウが答えた。
その時、寒い北風が吹き始めた。
「おお、北風だ、いいぞ、いいぞ、涼しくてちょうどいいや、荷物が増えて汗だくだったんだ、はっはっはー」
太郎が大笑いした。
皆も亡くなったゴロー爺さんの荷物を分担して背負っていた。
そして、太郎と同じように少し汗をかいていたので、確かに北風は涼しくて気持ち良かった。
それだけでハナの気持ちが少し明るく軽くなった。
しかし、どんどん東へ歩いてゆけども、川幅はいっこうに狭くならなかった。
おまけに北風は雪を運んでき始めた。
「いったい、どこまで行けば渡れるようになるんだ?」
無言の太郎やハナも疲れてきて、だんだん機嫌が悪い顔になった。
さらに足元には雪がうっすらと積もり始めた。
(このままではまずい!)
そう感じたゴクウが、フとゴロー爺さんの言葉を思い出した。
「あっ、そうだ!あの、ここをちょっと寄り道しましょう。きっと気に入ると思いますから」
とゴクウは、急に細い山道に入って先を急いだ。
太郎は、驚いて立ち止まった。
「何だって?寄り道だって?とんでもない!何を考えているんだ、あいつは」
と怒鳴ると道端に腰を下ろしてしまった。
太郎の前にいたケンはそのままゴクウの後をシッポを振って付いて行った。
最後のハナは、ふてくされて座っている太郎を気にしながら通り過ぎて、ケンの後を付いて行った。
小さな谷を登ると、そこは岩ばかりの場所だった。
そして、その先には真っ白な湯煙がもうもうと上がっていた。
「ワーッ、温泉だわ、温泉だわ!」
ハナが嬉しそうに歓声を上げた。
ハナ達の故郷の村にも小さな温泉があった。
今回、ハナ達が旅に出てからは初めての温泉だった。
温泉の湯気と臭いは懐かしかった。
そして婆さんや爺さんと一緒に入った頃の事を思い出した。
「何て久しぶり、懐かしいわ!
ハナは喜ぶと、早速、着ている物をぬいで湯気で真っ白の岩湯の中へ入ってしまった。
「ああー、気持ちいいわ!なんだか今までの疲れも取れそう」
広々とした湯の中で、全身を伸ばしてゆっくりと温泉気分を味わっていた。
「あっ、そうだわ、ついでに洗濯もしておきましょう!」
湯に浸かったまま、その中で洗濯を始めた。
ゴクウやケンも、離れた岩場ですっかりくつろいで温泉を楽しんでいた。
一方、太郎は、道端でひとり腰を下ろしたまま休んでいた。
雪が頭の上や肩を覆った。
「あれっ、おかしいな?ゴクウやハナ達がちっとも帰って来ないぞ。いったい何してるんだ?ったく!心配だから行って見よう」
太郎が重い腰を上げて雪を振り払った。
そして、重い荷物と共に岩場へ登って来た。
すると、そこには、そんな事も知らないで何もかも忘れて無邪気に楽しんでいる温泉客気分のハナやケンやゴクウの姿があった。
「おい、こらっ、何だ、お前達は!自分達だけ楽しんで、何で俺を呼ばないんだ?」
腹が立った太郎は真っ赤になって怒鳴った。
しかし、皆はキョトンとした顔をしただけで、誰ひとり反応しなかった。
(こりゃ、言ってもだめだ!)
と思った太郎は、そんな事は後にして、速、湯に飛び込んだ。
「あっつ、あっつーっ、でも気持ちいいーっ、ああ、気持ちいい」
太郎も久々のお湯に感激した。
そして、今までの疲れがすべて吹っ飛んでしまう気がした。
やがて気分も機嫌もすっかり良くなった。
「おお、みんなも久々の天国だな。疲れも寒さも無くなった。ゴクウ、お前はなかなかいい場所を知っているな、ずいぶん役立つようになったな。さすが、あのハクエンの息子だ」
「いえ、これは、あの亡くなったゴロー爺さんが教えてくれた場所です。私達猿はめったに温泉には入りませんから」
「えっ、あの老犬の爺さんが教えてくれたのかい?」
「はい、たぶん爺さん自身でなく、一緒にいた家族の人達が入っていたのでしょう」
「そうか、これも、あの爺さんの贈り物かも知れないな」
それを聞くと、皆の心もさらに温まってきた。
「あっ、こんな所に寝床がある。たぶん爺さんの家族が来た時に使う場所だ」
岩の横に広い穴のような場所があった。
雨や風が来ない場所で、そこは温泉熱で温かかった。
「よーし、ここで泊まろう!二、三日休む事にしよう」
太郎が、ハナが懸命に洗濯している姿を見て言った。
「ああ、そうだわ、これから寒くなるから冬着も準備しなきゃ」
ハナは荷物の袋の中から絹の布を出した。
「おお、そうだ!雪だ、これから雪が積もるから雪靴を作らなきゃ、俺、ちょっと材料を探しに行って来るわ」
「ワンワンワンワン!」
ケンも太郎の後を付いて行った。
やがて太郎は、枯れすすきをたくさん担いでもどって来た。
「おい、ゴクウ、お前、頼むから、森の中から藤ツルのような巻き付ける物を取ってきてくれ、それにくっ付ける樹液のような物も、この枯れ草で雪靴を作るんだ」
「靴?」
「そう、この足にはく物だ」
やがて、ゴクウが森の中から、細いつると樹液のような物を器に入れて持ってきた。
太郎は、石と粘土で長靴の型を作り、それに枯れ茎で覆い、つるでガンガンに巻き付けた。
そこへ樹液を付けて焚火で乾かした。
翌日になって、中の粘土と石を取り出した。
すると、立派な雪靴ができた。
「おっ、いいぞ、いいぞ!完ぺきだ、これで雪の中へ足が落ち込まないぞ」
太郎は、出来栄えに大満足だった。
「よし、この調子でハナの雪靴も、ゴクウの雪靴もケンの靴も作ってやろう!」
太郎は、楽しそうに皆の靴を作り始めた。
休みは二、三日だったのが延びて、数日経ってしまった。
寝床の上のロープには、枯れ草でできた雪靴が小さい順に四足仲良く並んで吊り下がっていた。
「よーし、皆の雪靴ができた、いよいよ明日は出発だ、今夜はよく寝ておけよ!」
と言うと、太郎は真っ先に鼾をかいで寝てしまった。
やがて、ハナ達も寝入った。
四つの吊り下がった靴の向こうには、冬の星座がきれいに光っていた。
そして、その光景は、まるで、空の雪靴の中に、素晴らしい贈り物を待っているようだった。

(つづく)

ハイハイハイハーイ、今回は短めでした、と言うのも明日はいよいよクリスマスイブ、靴下の中にはどんな贈り物が入っているかな?なんて、いやいや、人はいくつになっても贈り物が欲しいものです。
そうだ、アッシも靴下をたくさん吊り下げよう、はい、では、またのお運びを願いまして、メリークリスマス!

コント(その 3 ) 最新ai金庫?

2018-12-19 16:09:48 | エッセイの部屋

主人 「いや、この前は夫婦で海外旅行の留守中にひどい目に会った。タンスの中の家内の高級バッグが全部盗まれてしまった。頭に来た、何が盗難を完璧に防ぐaiセキュリチィーハウスだ、腹が立ってメーカーに文句を言った、そろそろ返事が来る頃だ」

リリリリリーン!

主人 「ああ、昔の音だ、懐かしいな、家内も頭にきてaiスピーカを止めて、昔のダイヤル式の黒電話を骨董店から買ってきたんだ。もしもし、もしもーし?」
メーカー 「もしもし、あっ、始めてハウスをご購入いただいたご主人様ですか、先日は大変でございました」
主人 「そうだよ、お宅は完璧に盗難防止だと宣伝していたが、どうしてくれる。すべての責任を取ってくれるのかい?」
メーカー 「あの、ご主人様、実は当社の製品には何の手落ちもありませんでした。いろいろ検討した結果、ご主人様が空き巣をガードマンと勘違いされてスマートホンで玄関ロックを解除されたのが致命的なミスでした」
主人 「・・・」
メーカー 「今回はニュースや週刊誌でも話題になり、当社のセキュリチィーハウスも大変な宣伝となりましたので、そのお礼として、当社のai金庫を特別価格でご提供いたしたいと思いますが、いかがでしょうか?ねえ、ご主人様?」
主人 「あれっ、何か、いつも通っている銀座のママそっくりの声だな、ひょっとしたらママかい?」
メーカー 「いえ、違います、銀座のママではありません、お客様とは信頼関係が大切ですので正直に申しますと、私も黄体aiです。」
主人 「えっ、あんたは人間じゃないのか?」
メーカー 「はい、申し訳ございません、お客様のお好きなタイプの女性の声で応対してます」
主人 「えっ、なんでワシの好みが分かんだ?」
メーカー 「はい、あの、g社の○○マップをご存知かと思いますが、今まだ公開されてませんが、実は、今、内緒で世界中の通りだけでなく、建物の中まで覗き見る事ができるのでございます。そこでご主人様の通っている銀座の店のママさんをマネるのです」
主人 「なんでワシが行く店が分かるんだ?それに店の中も?」
メーカー 「はい、今は皆さんがスマホを持っていらっしゃいますので、世界中のスマホからの位置、声、内容映像のビッグデーターから分かります」
主人 「えっ、うそだ!それじゃ、浮気なんかバレテしまうじゃないか!」
メーカー 「はい、その点は企業秘密ですのでノーコメントです」
主人 「あのさ、それなら、この前の空き巣の居場所も分かるんじゃないか?」
メーカー 「はい、残念ながら、彼はスマホを持っていませんでした、今後通りの防犯カメラや車のドライブレコーダーのデーターが入手できれば逃げ場所も分かるようになります。もうしばらくお待ちください、はい、そんな訳で、ご主人様が内緒でお持ちの宝石や金塊を盗まれないように当社の完璧ai金庫特別価格はいかがでしょうか?・・ねえ、イーサンったら、いいでしょ?、だめ?おねがい」
主人 「ウ・・ああ、分かった分かった、いいよ」
知らない内に、奥さんがにらんでいる。
奥さん 「ちょっと、あんた!何してるの?鼻の下を長くして何を話しているの?どなた?電話の相手は?」
主人 「あっ、いや、そんなんじゃない、メーカーだ、今度、完璧に安全な金庫はどうかって言うので買う事にした」
奥さん 「またaiでしょ?わたしは嫌よ、懲りたわ」

ピンポーン、ピンポーン!配送センターでーす!

主人 「おっ、早いな、きっと気が変わらない内に、と言う方針だな、よし、玄関ロックを開けよう」

配送センターの車から、布をかぶった大きな重そうな物を四人がかりで降ろして家の中へ運び込む。

主人 「そうそう、そこでいい、ご苦労さん、ああ、皆帰ったな、では布を取って姿を見ようか」
奥さん 「えーっ、あんた、これって大黒様じゃない?金庫を買ったって言ってたでしょ?」
主人 「馬鹿だな、これが金庫だ、お前が骨董好きだからこれを選んだんだ。気に入らなきゃ他のにするかい?」
奥さん 「他のって?」
主人 「ああ、他には仏壇型や神社型がある、仏壇型の方が良ければ今からでも取り換えてもらうぞ」
奥さん 「いえいえ、縁起でもない、この方がマシだわ、でも、ずいぶん角ばった体格ね、もっと金庫らしいセンスのいい外観はないの?」
主人 「馬鹿だな、空き巣達に金庫とさとられない形にしてあるんだ。仏壇や神社なら奴等も良心が働いて改心するかも知れない」
奥さん 「ふーん、なるほど、そう言う事なの、で、明ける時はどうするの?」
主人 「まずこの大黒様には二個の金庫が表と裏にある。お前が表を使え、俺は裏を使う。今度は本人しか開けられない指紋認証と顔認証もある。もちろん、今までのような声のキーワードでも、タッチパネルの暗証番号でも鍵でも開けられる。それらの二重三重にしてもいい、今度はもう絶対に盗難の心配はない、この前の空き巣も歯が立たないぞ、はっはっはー、ザマーを見ろだ」

数日後、

主人 「ただいま、今帰ったぞ、あれっ、どこにいるんだ?おーい・・あれっ、奥の部屋で家内の泣き声がする、どうしたんだろう?」
奥さん 「しくしくしく、お願い、大黒様、どうぞ金庫を開けてください、キーワードと暗唱番号を忘れてしまいました。どうぞ、私と認めて開けてください、あなたは賢いaiなんでしょ?お金が無いと、今夜の食べる物がないんです、飢え死にしてしまいます、うわー・・」
主人 「おい、なにやっているんだ、また泣き落とし作戦か?なに?また言葉や番号を忘れたって、どうして指紋認証や顔認証を使わないんだ?」
奥さん 「・・・」
主人 「仕方がないな、明日メーカーから来てもらって開けてもらおう」
メーカーの人 「お客さん、まだよかったです、今回は設定がゆるやかでしたから、設定が厳しくなりますと、本人以外、我々メーカーでも開けられないですから」
主人 「おい、お前、今度は俺みたいに指紋認証や顔認証にしろよ、そうすれば忘れても安心だし、他の人にも盗まれないから」
奥さん 「・・・」
主人 「えっ、返事がないな、気に入らないのか、どうして?」
奥さん 「・・・・」

奥さんが、主人の留守中にお友達と電話している。

奥さん 「もしもし、久しぶり、元気してる?そうなのよ、私、指紋認証や顔認証は絶対いやだわ、えっどうして?って、それはそうでしょう、ウチは主人も外国にいる子供達も、お金となると目の色が変わるのよ。例えばよ、この先、私が病気や老化でベッドに寝たっきりになった時よ、顔はどんどん痩せていくし、指も細くなっていくわ。
その時よ、問題は!!
絶対、彼等は、生きている内に、私の指を切って、金庫を開けるわ、まさか首は切れないし、だって、亡くなった後では指紋も変形してしまうでしょ?」

はい、今回はブラックユーモアでした。
(おしまい)、