ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水です。台風一過、晴天になると思っていたら、あいにく雨になってしまいました。弐、三日前寒かったですね。今年は紅葉がきれいでしょう。急に寒くなったから。
いや、もう十月も終わりです。cop10も、上海万博も、終わりで、いよいよ明日は十一月。早いもので、そうそう、ウチの先生は、飽きっぽいと言うか、新しがりと言うか、あれほど芋芋と言ってたのに、今年は目もくれません。また、何か変わった事を考えているんでしょう。やけに静かですからね、一応、原稿がギリギリで届きましたので、早速、開幕といたしたいと思います。はい、では、開幕開幕!
54 西方への旅立ち
「太郎さん、はなさん、起きて!仙人がいません。それに、ケンもいません。もしかして、仙人を探しに行ったのかもしれません」
ゴクウの声に太郎とはなが起こされた。
「ええーっ、もういなくなったの?、まだお別れのあいさつもしていないのに」
はなは、眠そうな目をこすりながら、身を起こした。太郎は寝返りをうっただけだった。「太郎兄ちゃん、起きて!仙人とケンがいなくなったって」
はなが、太郎の体を揺さぶった。
「あーあ、何だよ。何するんだ。あーあ、まだ、真っ暗じゃないか、頼むよ、起こさないでくれ」
と、太郎は、また寝返りをうった。
「ああ、ゴクウさん、しょうがないから、私達だけで探しに行きましょう」
と言って、はなとゴクウがケンの名を呼びながら、近くを探し始めた。
東の空が明るくなって来た。
「ああ、本当にうるさいな。いなくなったって、勝手にいなくなったんだから、しょうがないじゃないか。ったく、帰りたくなりゃ、そのうち帰って来るよ」
眠りを妨げられた太郎は不機嫌そうにブツブツ言いながら、起き上がって、身づくろいをした。
「ケーン!、仙人さーん!」
はなとゴクウが大きな声で呼びながら帰って来た。
「あらっ、太郎兄ちゃん、お早う、ケンが行方不明なのよ」
太郎は返事もしなかった。朝日が昇って、明るい光が射し始めていた。
「はな!朝飯にしよう。ケンなんて、ほっといても帰って来るよ。ああ、腹が減った、早く食べよう」
太郎はもう、朝食の事しか興味が無さそうだった。
焚き火を起こして、暖かいスープのような朝食ができ上がった頃、
「ワンワン!」と言って、ケンがしっぽを振って戻って来た。
「まあ、ケン!どこへ行ってたの?仙人様も一緒だったの?」
はなが、聞くと、ケンはしっぽを振って、口にくわえていた物をはなに差し出した。
「何?あらっ、これって、タマゴの殻じゃないの」
手に受け取ったはなが、捨てようとすると、
「いえ、はなさん、その殻には何かが書いてありますよ」
とゴクウが言った。
「ええ、どれどれ、俺に見せろ」
太郎が、はなの手から卵の殻を取り上げて覗き込んだ。
「あれっ、絵と記号が書いてある。あっ、卵の絵だ。卵の殻に卵の殻の絵だ、けっ、何だ。しょうもない」
期待のはずれた太郎は、殻をいまいましそうにぽいっと捨てると、ずっと手も出さずに見守っていたゴクウがすばやく拾った。
「ゴクウ、そんな物は、誰かのいたずらだ。ほっとけ、ケンもしょうも無い物を拾って来たものだ。それよりも、早く飯にしよう」
との太郎の声に、皆は食べ始めた。
少人数の朝食で、昔に戻ったような気がした。
「あーあ、とうとう、仙人も行ってしまって、我々だけになってしまったのか、昨日までの事なんて、何か遠い夢みたいだな、あーあ」
お腹が膨れると、太郎はいろいろと思い出し、ため息をついた。
周囲を見回しても、昨日までのあの大きな騒ぎの痕跡は何も残っていなかった。ゴミも無く、焚き火の跡も仮設庵の跡もさらに大勢の足跡すら残っていなかった。
「ええーっ、どうして足跡が無いの?」
はなが、驚いた。
「たぶん、ここは聖なる山だから、帰る時、皆で元へ戻していったのじゃないですか」
とゴクウが行った。
「えっ、それじゃ、皆で山全体を大掃除して帰ったと言うのか?はっはっはー」
太郎が大笑いをして、皮肉を言った。
「そうよ、太郎兄ちゃんが誰かさんの夢を見ている時に、皆が掃除していたのよ」
はなも皮肉を言うと、
「何、そう言うお前も、寝ていたんじゃないか!」
と太郎はローザのことを言われ、ムキになった。
「ワンワン!」
ケンが口ケンカを止めるように吼えた。
「おお、ケンか、ああ、お前も掃除に行ってたんだな、あの卵の殻はゴミと言う訳か?」
太郎がさらに皮肉を言った。
その時、晴れ渡った朝の澄み切った青空に、遠くまで通る鳴き声がした。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
「あっ、トビの声、タカコだわ、タカコだわ」
はなが叫んだ。
太郎やゴクウも見上げると、南の空遠くから飛んで来る黒い鳥の影が見えた。
「ああ、まちがい無くタカコだ。」
太郎もゴクウもケンも、もちろん、はなも、久ぶりのタカコの姿をなつかしそうに見つめていた。
「ああーっ、大変!思い出した。太郎兄ちゃん、空巣仙人よ。早く空巣仙人に聞きに行かなくちゃ」
はなが、また叫んだ。
「ああーっ、そうだった!こんな事をしてられない、急ごう、帰ってしまわれると大変だ」
太郎は、荷物を抱えると、大急ぎで空巣仙人のいる崖の方へ走り出した。ケンも太郎の跡を追いかけた。
はなとゴクウも急いで後片付けをして、荷物全部持って出発した。新しい旅立ちになると感じたからである。
「あっ、ちょっと待って!」
はなは、焚き火の跡に土をかぶせて元にもどした。ゴクウも、そのままになっていたゴミの穴に土をかぶせた。
「ああ、これで、私達も大掃除したわ。さあ、出かけましょう」
はなとゴクウは山頂の方に顔を向けて
「山の神様、いろいろありがとうございました」
とお礼を言いながら、一礼した。そして、見納めるように眺めると、ふんぎりがついたように元気に山を下った。
「太郎兄ちゃんは、うまく空巣仙人から小人や幸福の木の場所を聞けたかしら?」
はなは、細い山道を下りながら、つぶやいた。
「修験者達は、皆去ったんですから、やっぱりもういないかもしれませんね」
ゴクウも歩きながら、、少し心配そうに答えた。
崖の下まで来ると、石に腰を下ろしてしょんぼりしている太郎の姿があった。はな達は悪い予想が当たったと思った。
「あれっ、太郎さん、どうしたんですか?空巣仙人は?」
ゴクウが、はなに代わって聞いた。
太郎は首を横にちょっと振っただけで、黙ったままだった。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
上空でタカコが大きな輪をかいていた。
「あれっ、タカコだわ。崖の上の仙人がいた松の上で鳴いているわ」
はなは、タカコを見上げて言った。
その時、ケンが崖の上から駆け下りて来て、ワンワン吼えた。
ゴクウはずっと持っていた卵の殻を見せながら、
「やっぱり、これは文字ですよ。仙人からの伝言ですよ。きっと卵の殻を見ろと言ってるんですよ」
と、はなと太郎に言った。それを見たケンも激しく吼えた。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
タカコも激しく鳴いた。
「えっ、どう言うことなの?この記号を文字って言うの?丸の中に線が有るだけなんだけど?」
はなが、ケンやタカコにせき立てられるようにゴクウに聞いた。
「ええ、それが文字だと思うんです。確かローザさんのお婆さんの家にも書いてありました」
とゴクウが答えると、太郎が急に、
「何?ローザだって、?で、その卵の殻には何って書いてあるんだ?」
と立ち上がって、詰め寄って来た。
「いえ、私は文字は読めません。だから、仙人は私達のために絵を描いてくれてるんですよ。これを届けるようにケンに預けたんですよ」
とゴクウが言うと、ケンがまた激しく吼えた。
「分かったわ。で、それで、その絵で仙人は何って言ってるの?」
はなも詰め寄って来た。
「だから、卵の殻を見ろ、とか探せって言ってるんですよ」
とゴクウが言うと、
「ああ、そうか、卵の殻を捜せってか、でもそれをどこで探すんだ?」
と太郎が聞き返した。
ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
また、タカコが鳴いた。
「ああ、分かった!空巣仙人がいた巣だわ。きっと、そこに卵の殻が有るのよ」
はなが叫ぶと、太郎は真っ先に崖の上へと側面の林を登り始めた。
ゴクウもはなもケンも後に続いた。
崖の上の大きな松の木の傍まで来ると、太郎は目もくらむような高さに体が縮んだ。
空巣仙人がいた巣は、その松の、崖に張り出した大きな枝の上にある。太郎には手も足も出なかった。
「ああ、太郎さん、私にまかせてください」
と言うと、ゴクウはいとも邯鄲に松の枝に上り、空の巣まで行って、中を覗いた。その姿を見ながら、ゴクウはサルだったのだと、太郎とはなは改めて思った。
「あっ、ありました。ありました。卵の殻に何かが書いてあります」
そう言うと、ゴクウはその卵の殻を太郎やはな達のもとへ持って来た。
「おお、ゴクウ、ごくろう、ごくろう、さて、何が書いてあるんだろう?」
太郎が覗き込むと、はなも覗き込んんでいた。
「あっつ、お日様の絵だわ。これが、日の出で、こちらが日没だわ。それに、指が日没の方を指しているわ。そちらに、小さな小人の絵がある、ああ、判った、西へ行けって言うことだわ」
と、はなが得意そうに大声で言うと、
「うるさいな。俺が言おうとしていることを先に言うな、ちょっと、黙ってろ」
と太郎は怒った。ゴクウが、
「ああ、そうですか。西へね。空巣仙人が鳥達から聞いたんでしょうね」
と言って、西の方をながめると、
ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
と、タカコも西に向かって飛んでいった。
「ああ、賢いトビだわ。きっとタカコは、もう分かっているんだわ」
はなや太郎達がタカコをながめていると、タカコは西の空の遠くでまた輪をかいていた。
「ああ、こっちへ向かって来いと言うことか、よーし、じゃあ、西へ向かって再出発だ」
太郎の声に一同は改めて旅立つことになった。
日はもう西に傾いていた。そのお日様に向かって、気分も新たに、ケン、太郎、はな、ゴクウの順に元気よく歩んでいた。
ハイハイハイハーイ、、時間となりました。何ですか、文字が出てきましたね。昔のことだから、神代文字でしょうか?ええ、日本にはかなり古い文字が有ったと言う人もいますからね。そうそう、富山で、縄文時代前期の貝塚から骨やいろいろ出てきたようです。してみると、・・・、あっ失礼、閉幕しなきゃ、はい、では、またのお運びをお願いいたしまして、はい、おバイバイでございます。はっ、では、チャオ?