農業も多様性の時代だと思う。
その土地の地形や気候や風土、また消費環境によって、様々に方法が違って当然だと思う。
最近はコンピュータ制御の野菜工場や名人級の高級果物等々多様化が激しい。
北海道やアメリカ、ブラジル等広い土地では大型機械が必要だろうが、私の住んでいる飛騨などの日本の山間地では別のやり方があるはずだ。
と言う訳で、私の今年の自然農法に話題を移すと、
今年はシルバーの爺さんが腰が痛くて、いつものように作業に来られないらしい。
そこで、視覚障碍の私でもできる農法を考える事にした。
それは、機械を使わない農法、大袈裟に言えば石油を使わない農法である。
昨年使用した黒マルチが畑にそのまま残っていた。
本来ならば、その黒いマルチをきれいに取り除いて、ボカシ肥を投入して耕運機やクワで混ぜ耕す。
しかし、私にはそんな面倒な事はできないから、耕すのをやめて黒マルチはそのまま使用する事にした。
その代わりに、昨年作物が植わっていた穴に手を突っ込んで、ボカシ肥を入れ手袋で土をかき混ぜる事にした。
すなわち、耕運機で耕す作業を手でかき混ぜるだけに省略した訳だ。
実際にやってみると、作物が植わっていた穴は、土が柔らかく混ぜやすかった。
その後に、土の中での発酵を促すためにemと糖蜜の数百倍液を撒いた。
苗を植える予定の場所すべてを二、三日かけてやり終えた頃、運よく二日ほど大量の雨が降った。
これで、注文した苗が届く十日ぐらいまでには、土の中のボカシ肥の発酵も終わっている事だろう。
思っていたよりも案外簡単に一人で畑の準備ができた。
苗植えは、それほど腰に負担はないからシルバーの爺さんに手伝ってもらうつもりである。
上記の畑の準備はすべて私一人でできたが、
実は、この作業の前ニ、ジャガイモ植えの準備作業があった。
その時、私は本来の方法でと、黒マルチを取り除いて、耕運機の代わりに備中鍬で堅い土を起こし始めた。
しかし、そんな事は長年やっていなかったので数分で汗だくになって息切れし、途方に暮れていた。
すると、それを見かねた隣の姉さん夫婦が小型耕運機で耕してくれた。
そこまでやったら、シルバーの爺さんが、ジャガイモを植えてくれた。
その時、果たして毎年、耕運機で畑全体を耕す必要があるのだろうかと私は疑問に思った。
作物を植えるには、土が十五センチほど柔らかければ十分だ。
後は作物の根が堅い土を押しのけて伸びていく。
私の畑は長年自然農法を行っているので、深い所まで土は柔らかくなっているはずだ。
だから、耕運機を使わなくても、昨年の穴にボカシ肥を入れればいいのではないか?
と思って、穴に手を入れて見ると、そこは予想以上に土が柔らかかった。
「これなら大丈夫だ!」
と言う事で、その後の畑の準備は前述のように私一人で行う事にした訳だ。
この方法でうまく行けば、自然農法は力ある若い男手でなくても、お年寄りや女性でもできる事になる。
ついでに、私が以前に農業塾で行った実験について述べておくと、
畑の土を地下深くまで柔らかくしようと思って、地下一メートル近くまでツルハシやスコップで掘って有機物を入れた。
しかし、野菜を作って一年経つと、地下15~20センチの下は元の堅い土にもどっていた。
それは、野菜にはそんなに深い所までは柔らかい必要がないのだと感じた。
しかし、化学肥料や農薬を使用する農業では、土中の微生物が自然農法ほど増えないから、年々土は堅くなり、毎年深くまで耕やさなければならなくなる。
(つづく)