ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、ウチの先生が猛暑の熱中症の心配で、原稿が書けず長らくお待たせいたしました。
まだまだのようですが、久々に原稿が届きましたので、早速、小説に参りたいと想います、はい、では、開幕開幕!
361 大家さんの策略?
「いやーっ、なかなか面白かったのう」
「手品なんて久々に見たのう」
長老と修験者は、子供達の後ろから覗き込むように見ていて、その乾燥をずいぶん喜んで話していた。
大勢だった姉妹達や世話人達も、既に大広間から退出していた。
遅れて大家さんがやってきた。
「へえーっ、そんなに面白かったですか?それは良かったですね。だったら今夜はあの姉妹達も大満足でおとなしく眠るでしょう」
と言いながら大家さんは、長老達の横の茶碗酒に目を向けた。
長老は、少し苦笑いしながら弁解した。
「ああ、そうじゃ、ワシ等は子育ての手伝いなんて、経験がないので、サボッてこの大広間で酒を飲んでいたんじゃ。
ところが思いがけず、突然、皆がやってきて手品がはじまった。
ワシ等は、ちょうど退屈していたところじゃったので、有難く楽しませてもらった」
と修験者を促がすように見た。
すると、修験者も合槌を打って、
「ああ全くじゃ、その通りじゃ、実に楽しい座興じゃった。
特に、あの一番小さい三女が面白かった。幼くてもなかなか負けん気の子で、ワシには、むしろ手品よりも、あの三女の反応の方が面白かったくらいじゃ、はっはっはー!、また見たいのう」
と、長老達は大笑いした。
「へえーっ、そんなに面白かったですか?それなら私も見たかったですね。そうでしたか?それは良かったです、また見たいくらいでしたか?」
と大家さんは、目を輝かせて念を押した。
そして話を続けた。
「はい、今回はたまたま水族館のアユ姉さんの予想外の手品ショーみたいになったようで、子供も東長屋の姉妹達がメインでしたが、・・・」
と大家はしばらく考え込んでいたが、すぐに、
「ああ、そんなに面白かったなら、明日の夜も何か座興と言うか余興と言うか、面白いショーをやりましょうか?今度は、東西南北の全長屋の子達を集めて」
と長老と修験者の目を覗き込むように言った。
「えっ?明日の夜?明日の夜もやるのかい?それは楽しみじゃ、ますます酒も美味くなるのう」
修験者は無邪気に喜んだ。
「ちょっと、それは・・ああ、それはワシ等にとっては楽しみじゃが、そうなると、ワシ達ももう一晩ここに宿泊する事になるのう、そうなると木花咲姫様や村長や太郎達の了解も必要になるのう」
と、長老が水をさした。
すると大家さんが、
「ああ、そこなんですよ、そこを何とか、長老さんや修験者さん方の力で、引っ張ってもらって、もう一晩宿泊するように頑張ってもらえませんか?
まして、夜は全員がこの大広間で座興を楽しめるようになれば、皆も喜ぶ事になると想いますが・・ねえ?」
大家さんに、強くそう言われると、長老も参道せざるを得なくなった。
それを見た修験者がひとり手を打った。
「それじゃ決定じゃ!ワシ等も明日の晩も泊まる事にしよう、そのために皆の参道も取ろう、のう、そうじゃろう、長老さんよ?」
長老は、
「ああ、木花咲姫様や村長さん方はお願いすれば賛成してくれそうじゃが、太郎達が何と言い出すかが心配じゃ。
へたにヘそを曲げて「俺は嫌だ!」なんて言い出しかねないからな。そうなるとまとまらなくなるからな」
と心配した。
修験者が対策を言い出した。
「それじゃ、問題は太郎じゃ、太郎が強引に反対しないように何とか手を打とう、さあ、それを今から考える事にしようか?」
修験者の言葉に、大家さんはずいぶん嬉しそうな顔になった。
「それじゃ、そのようにお願いいたします、私はその座興の準備がありますので、ここで失礼します」
と大家さんはいそいそと大広間を去った。
さてさて、翌朝になった。
子育て長屋での家族の朝食が終わると、突然、ボランチアの人達は大広間へ集められた。
そして、そこで全員が打ち合わせと朝食をする事になった。
大広間にはコの字の形に細長い座卓が並べられていた。
その座卓の上には全員の朝食が載っていた。
それ等は、二階にお客さんが泊まった時と同じやり方だった。
つまり、臨時に手伝ってくれる近所のおばさん達の手作りの田舎料理だった。
大広間の座卓の正面の上座には、いつものように村長や木花咲姫様と侍女や長老達が座っていた。
その端には大家さんが少々悪い目つきで手をこまねいていた。
そして、皆が来るのを気にかけながら見守っていた。
ほぼ全員の姿が見えた頃、大家さんが待っていたかのように大声で話を始めた。
「えー、皆さん方おはようございます。昨晩と今朝はお子さん達のおお世話にご苦労さんでございました。これからのわたくしの話は、目の前の朝食を食べながら聞いていただければけっこうでございますので、どうぞ皆様方、お召し上がりください!」
その声を聞くや否や、
「いっただきまーす!ああ良かった、よく食べ物を前にして、待った!をかけられるのは、犬のケンだって嫌だからな」
と威勢のいい声が上がった。
もちろんそんな事を言うのは、太郎の声だった。
大家さんは少し顔色が雲った。
が、すぐに笑顔になって話し始めた。
「はーい、皆さーん、この料理は田舎料理ですがけっこう評判が良いのです。
いつもお泊りになった方々に褒めていただいています。
もちろん、日替わりなので明日は違った料理になります。
昨晩は水族館のアユ姉さんが、この大広間で素晴らしいマジックショーを行ってくださいまして、ありがとうございました。
昨晩は残念ながら、東長屋の姉妹さん方だけが中心だったので、皆さん方全員が見られませんでしたが、
そんな面白い座興だったら、私達も見たかった!と他の長屋からも声をたくさんいただきましたので、急遽、今夜も、続けて余興をする事にいたしました。
つまり、予定が大きく変更いたしますので、それについて急遽お話をさせていただきたいと思って、皆さんに集まっていただきました。
「えっ、げーっ、なっ、なにーっ?」
それを聞くと、太郎が驚いて食べた物を口から出しそうになった。
「えーっ、変更だって?まっ、まさか、もう一晩泊まるなんて言い出すんじゃないだろうな?」
太郎の声があまりにも大きかったので、長老と修験者が慌てて叱った。
「こらっ、太郎、静かにしろ、大家さんの話をちゃんと聞いてから、後で質問があれば質問したらいいんじゃ、大勢の人がいるんじゃから、お前はちょっと黙っていろ!」
この叱声には、さすがの太郎も反論できず口を閉じた。
太郎が黙ったので、冷や冷やしていた大家がホッとした。
「はい、と言う訳で、できれば皆さん方全員が、もう一日、つまり今夜もお泊りいただいてボランチアを続けていただきたいと願っているのですが、さあ、皆さん方、いかがでしょうか?」
「シーン・・・・」
と、大家さんに言われても、突然の事なので、皆はすぐには返事ができなかった。
太郎が何か言い出しそうだったが、叱ったばかりの長老と修験者がすざましい眼光でにらみつけているので、太郎は目を向ける事さえできなかった。
「あたい達は、もう一晩泊まってもいいわよ、めえハナちゃん?」
ハナナがハナに向って大声で言った。
すると大家さんの緊張顔が綻んだ。
「あのさー、あんた達は暇だからいいけれど、私達は仕事があるから、そう言う訳にはいかないわよ、ねえ、アユちゃん?」
とママさんが水族館のアユ姉ちゃんに向って言った。
アユ姉ちゃんはそうなのと言わんばかりに何度もうなづいていた。
それを見ていた大家さんが、苦い表情になった。
すると母親の1人が、
「あのー、私達は、どちらでもいいですよ、明日の予定もまだ決まっていないので・・・それに子供達同志も少し慣れて親しくなってきたみたいだし、もう一晩泊まってもいいですよ、ねえみんな?」
と他の母親や子供達に聞いた。
皆は一斉にうなづき合って賛成の態度を示した。
それを見ていた大家は、ますます顔を綻ばせて、話を続けた。
「はい、実は前以て、村長さんや木花咲姫様方と話合っていたのですが、村長さんも木花咲姫様方も皆が賛成するなら良いのではないかと了解を既にいただいておりまして、
お母さん方とお子さん方が賛成ならば、まあ、ママさん方のように仕事のある方達は仕方がないですけれど、まあ、そう言う事で、ほぼ全員の了解がいただけたものと、わたくし大家から、改めてお礼を申し上げます。誠に協力をいただきまして有難うございました」
と、大家は皆の前に出て来て、深々と頭を畳にこすり付けるように平伏した。
その姿を見ていた太郎が、大家に何か怪しさを感じて、心の中で思った。
(変だな?どうしてそれまでして皆にもう一泊させようとしているのだろう?)
すると、またママさんが言い出した。
「あのー、私達も、やっぱりもう一泊して子育てボランチアをする事にしました、手作りの朝食も楽しみだし、今夜の座興と言うか余興も楽しみだし、私達ももう一日仕事を休む事にしました、そうよ、ねえアユちゃん?」
とまた水族館のアユ姉ちゃんと、互いにうなづき合って笑っていた。
今度は、長老と修験者が大きな拍手をして大声で言った。
さーて、決まったきまった!これですべて決まった!」
「それじゃ、今夜の余興はどんなるのじゃろう?また水族館のアユ姉ちゃんが、別のマジックショーをやるのかのう?」
修験者が言った。
アユ姉ちゃんが、首を横に振りながら、
「いえいえ、私はもうやりませんよ、私が知ってるのはあれだけですから、そうだ、修験者さんこそ、何