飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

(続)連載小説「幸福の木」 307話 クリスタル列車!

2022-04-23 16:03:17 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、暖かくなりました、南飛騨も村祭りも花さくらも終わって、緑萌ゆる季節となりました。
世界は旧いものの破壊と新しい萌芽が混沌として複雑です!なんてウチの先生が最近やや元気になって若作りしながら悟ったような事?を言ってます。
はい、何はともかく原稿が届きましたので、早速、小説に参ります、今回は、まちがいなく途中切れしますので、悪しからず、またのお運びを願います、はい、では開幕開幕でーす!

307 クリスタル列車!

「僕、やっぱり高い山に登って岩魚を釣ってみたいな」
この僕の一言が、予定を大きく変えるきっかけになってしまった。
「だったら、あたい達と一緒に旅すればいいよ、両親に聞いてみたら?」
ハナナが賛成すると、男の子は早速、両親に尋ねた。
両親は、遠慮がちに皆さん方がokならいいと答えた。
「それじゃあ、決りね、あたい達はokよ」
ハナナは笑顔で太鼓判を押して、隣のハナに了解を求めた。
それを見て、長老達が渋い顔で言い出した。
「ちょっと待て!それはまずいじゃろう?いくら何でも、ちょっとやり過ぎじゃ」
「そうじゃ、子供の頃にあまり甘やかし過ぎると、大人になってまちがいなく不良になるからな」
長老と修験者は、両親には聞こえないように小さな声で反対した。
「別にいいじゃないの?あたい達は元々大勢なんだから、少しぐらい増えても何でもないわよ」
性格が大ざっぱなハナナは爺達の懐の小ささに少し腹立たしいかった。
やがて太郎も口を開いた。
「別に俺達は元々予定なんか無さそうだし、どちらでもいいんじゃないかな?旅は大勢の方が面白いし・・」
太郎は自分が言い出した岩魚に、男の子が興味を持ってくれた事に気分良くしていた。
ハナは何故か爺達と同じ渋い顔で言い出した。
「でも、鷹コプターがもう一機必要になるわ、それに皇室の人達って、落ちたら大変だから、ミニ飛行機なんか乗らないと思うけど」
と現実的な事を言い出した。
「おお、そうじゃ、そうじゃ、落ちたらどうするんじゃ?誰が責任を取るんじゃ?」
勢いを得た爺達は、もう小声でなく大声だった。
「あの、わたしも少し事情を説明させてもらってよいでしょうか?」
話の流れを遮るように、急に、青い制服の彼女が言い出した。
「あの実は、このご家族はヨーロッパの小さなある国のロイヤルファミリーの方達なのです。それで、このお子さんは先々には皇太子や国王になる可能性のある方です。
今回は将来に備えて日本の観光事業の視察を兼ねて来日されたようです。
なので日本の皇室からも、くれぐれも丁寧に対応するようにと依頼されています。私達もできるだけご希望に添えるように努めております」
そう言いながら、彼女はなぜか甲板の片隅にちらっと目を向けた。
見上げていたケンが、すばやくその視線を追うと、黒い影が消えた。
皆はそんな事は気づかず、気にも止めなかった。
ロイヤルファミリーと言う、この突然の彼女の説明に、驚いた爺達は黙ってしまった。
すると、静かに見守りながら聞いていた木花咲姫が、口を開いた。
「あの皆さん、わたくしが思った事を申しますと、そうですね、、抑々私達がこの豪華な観覧船に乗る事ができたのも、このご家族の了解があったからです、なので互いに協力し合う事はどちらの国のためにも良い事だと思いますよ」
とニコニコ顔で答えた。
すると、太郎が隊長のように宣言した。
「それじゃ、これで決りだ!で、もう一機のこの家族用の鷹コプターはどうするんだ?」
太郎が命令するように皆を見回した。
すると、長老が、
「いや、この人達には操縦は無理じゃ、誰かが代わって操縦してやらなきゃ、そうじゃ、タタロじゃ、タタロが良い、ついでに小さな男の子はハナナの隣に乗ればよい、お似合いじゃ、これで決りじゃ、はっはっはー」
と村の会合のように、ひとりで決めて、ホッと満足したように笑った。
「ワンワンワンワン!」
またケンが甲板の片隅に向って吠えた。
ゴクウが内緒のように小さな声で言った。
「あの、さっきから、男の人が甲板の隅から、ずっと私達を監視しています」
「えっ?ああ、そんなの別の料理人か船の係の人じゃろ?気にする事じゃない」
修験者が無視した。
すると、木花咲姫の侍女が、
「ああ、たぶんシークレットサービスでしょう、私達は気にしなくてもいいですよ」
と何でもない口調で静かに言った。
「えっ、シークレットサービスって何だ?」
太郎には、何でもない事ではなかった。
「見張りじゃ、見張りじゃ、見てるだけじゃ、気にするな」
修験者が太郎の肩を叩いた。
すると、青い制服の彼女が補足した。
「はい、いわゆる秘密警察の方達ですね、皆に気づかれないように皇室や偉い方々を警護している人達です。
いつもどこかで見張っていて、いざと言う危険な時には、体を張って護衛します」
それを聞いた太郎は驚いて、
「えーっ、この子達はそんなに偉い人達なのかい?それじゃ、飛んでいるミニ飛行機なんか、どうやって守るんだ?」
と、思わず大声を出した。
「はい、その通りです。やはりミニ飛行機に乗るのは無理だと思います。その代わりに、いい方法があります。
幸いこの岐阜から長良河に沿って観光用の「クリスタル列車」と言う新しい列車が走っていますので、ここからはその列車で行かれた方が良いと思います。
今はこの「クリスタル列車」は子供にも大人にも大人気の列車なので、きっと気に入られると思います」
と明るい声で勧めた。
すると、木花咲姫が、
「そうですね、クリスタル列車はわたくしも調べてみましたが、長良河列車と飛騨川列車の二つがあるようです。これ等は美濃駅と美濃太田駅でどちらにも乗り入れしています。
ですから、ここ岐阜で乗って途中から長良河を離れて飛騨川沿いに行きましょう。そうすれば高山本線を北上して、ずっと奥の北アルプスふもとまで行けますから」
と言った。
「よし、そうと決まったら、今夜は思いっ切り食べたり飲んだりしよう、二日酔いでも列車なら、うるさく禁止されている飲酒運転にはならないからな」
と太郎が喜びの声を上げた。
「それを言うなら、飲酒運転じゃなくて、飲酒操縦でしょ?」
ハナが太郎の浮かれた気分に冷水を浴びせた。
「あの、そのクリスタル列車って、何がクリスタルですか?」
お姉ちゃんの女の子が英語で質問した。
「はい、クリスタル列車と言うのは、列車の外観が六角形の水晶を横にしたような形なので名づけられました。
もちろん窓や天上や横壁が水晶のように透明な物で作られていて、外の景色が丸見えです。なので大自然の中を走っているような体感が味わえます。
特に川の上の鉄橋を渡る時は真下が見えて恐いくらいなので、遊園地のジェットコースターのようなスリルがあると子供達には人気があります」
「へえーっ、そんなにスリルがあるの?でも、まさか落っこちたりはしないんでしょ?」
ハナナが興味深々になった。
「そりゃ、そうよ、落っこちたら、それこそ大変よ、秋には紅葉の深い深い渓谷も続くんでしょ?」
ハナは綺麗な紅葉谷を思い描いていた。
「はい、この列車は全体が鉄より堅くて丈夫な特殊なプラスチックで造られていますので、重心がずっと低くて、一般の列車より安定が良いのです。
さらに、地震の時には、すぐに軌道を掴む装置が働きますので脱線はしないそうです」
太郎は、詳しくは理解できなかったが、わざとそれを隠すように言った。
「へえーっ、そりゃすごい!最新の技術を取り入れたなかなかな列車だろうな?」
彼女は、それを質問だと思って丁寧に答えた。
「はい、ここの鉄道は電線無しの電化されていない鉄道だったので、今までは重油を燃やすディーゼル車でした。
しかし、このクリスタル列車は最新の燃料電池を利用したモーターで動く電車です。
ディーゼルでなく電気モーターなので、づっと静かになりました。
でも、昔のディーゼルの音が好きだと言う人達のために、水素エンジンを搭載した列車もあります。
どちらも燃料には、石油でなく水素ガスを使用します。
カーボンニュートラルの影響で、現在は列車だけでなく、乗用車やバスやトラックにも、石油から造られるガソリンや重油の代わりに水素が多く使われるようになりました」
早速、ハナが質問した。
「あの、水素水素って、その水素って、どうやって作るのですか?」
「はい、今、日本では太陽パネルで発電した電力で水を分解して作っています。また夜間に余った原発の電力を利用して、同じように水を分解して作っています。
また海外のオーストラリアや砂漠の国で共同開発して造った水素を輸入しています」
すると今度はタタロが質問した。
「あの、水素ってガスだったよな、火を付ければ燃えるんだったよな?爆発だってするんじゃないかな?危なくないですか?」
「はい、それは大丈夫です。液体にしたり、吸着剤に吸わせたりしていて安全に・・」
と彼女が説明していると、甲板上の夜空に変な音がしたので話が中断した。
何かな?と皆が思ったまもなく、
「ドドドカーン!・・ドドドカーン!」
と周りの空気も震わせたものすごい爆発音がした。
「きゃーーっ!」ハナやハナナは真っ先に悲鳴を上げた。
太郎や長老達もアーッと思わず驚きの声を上げた。
「あっ、山の上のお城が爆発したわ!」
「いえ、お城じゃないわ、あの山が、山が爆発したのよ」
「いや、爆発じゃない、噴火だ」
「いや、水蒸気爆発じゃ、噴火じゃ」
「いやいや、これから噴火するんじゃ、前ぶれじゃ」
皆は甲板の上で大騒ぎになった。
皆の目は暗い山影の頂きの小さな岐阜城に釘付

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