ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや、暑さ寒さも彼岸まで!と言いますが、はい、朝晩がめっきり涼しくなりました。
はい、近くでは稲刈りも終わりました。これから飛騨は寒い冬へとまっしぐら!で、はい、あっと言う間です。
そうそう、膝痛で今年から自然農法を止めてしまったウチの先生も、今は白菜苗植え等の畑仕事も無くなりましたが、植えてもらった里芋の収穫だけは残っている!と言ってます。
はい、どう言う気まぐれか、原稿が届きましたので、早速、小説に参りたいと思います。
はい、では、開幕開幕!
252 洞窟の異変?
「あれっ、何か変だよ?」
タタロがつぶやくように言った。
皆は、綱を握って大婆の話を真剣に聞いていた。
タタロだけが、途中から他の事に気を取られていた。
「あれっ、やっぱり変だ、ケンだ」
タタロが今度は大きな声を出した。
「えっ?何の話じゃ?」
驚いた大婆は話を中断し、皆もタタロの方を見た。
「あっ、本当だ!ケンが吠えている、私達を呼んでいる気がするわ」
ハナも、付け加えるように言った。
「狼です!狼が来たのでケンが洞窟に入らせないように吠えているようです」
ゴクウが言った。
「えーっ、それは大変じゃ、洞窟に入られたら、ワシ等の肉体も食べられてしまうぞ」
驚いた長老が真っ青になった。
「ハハハー、それは大丈夫だ、誰が一番老いたまずい長老の肉なんか食べるもんか。食べるなら一番柔らかそうで美味しそうなハナナやハナの肉だ」
太郎が大声で笑った。
「えーっ、冗談はやめてよ!」
ハナナとハナが、心配顔に変わり慌て出した。
大婆も事の重大さに黙っておれなかった。
「ああ、これは大変な事態じゃ、未来の世界の見学どころじゃない、すぐに地球の洞窟へもどるんじゃ、あのケン一匹じゃ狼の群れには敵わないのは明らかじゃ。洞窟に入られるのも時間の問題じゃ、さあ、急げ、急いで洞窟へもどれ!ほらっ、何をボヤボヤしているんじゃ?」
と大婆は皆を急がせた。
ハナ達は慌てたが、咄嗟にどうしたらいいか思いつかなかった。
「こらっ、早く行かんか、何しているんじゃ!」
大婆はモゾモゾしている娘達を叱った。
長老やタタロやゴクウは、もう地球に向ったのか、既にその姿が消えていた。
残っているのは、ハナとハナナと、もう1人、太郎だけだった。
「あの、駄目なんです、頭で洞窟の事を思い出そうとしても、恐ろしい狼の事ばかり浮かんできてしまうんです」
ハナとハナナが、泣きそうな顔で大婆に言った。
大婆は、叱りつける事もできず、しようがないと言う顔で聞いていた。
そして、お前もか?と言うあきれた顔で太郎をにらんだ。
「あっ、ちっ、違うよ、俺は、洞窟って言ったって、別に楽しい場所じゃないから、今いち気が乗らないのか、ちっとも体が飛んで行かないんだ・・・」
太郎の弁解には大婆はあきれた。
「っつたく!本当にしょうがない奴等じゃ。仕方がない、それじゃ、別の帰る方法を教えるから、よく聞いておれ!」
大婆は、彼等が今まで生意気な事を言っていても、やはりまだ子供達なんじゃと怒りを抑えた。
「それじゃ、いいかい?まず心を落ち着けて、よく目を凝らして見る事じゃ。お前達のヘソから細い銀色の線が伸びているはずじゃ・・・」
と言って口を閉じた。
しばらくすると、
「ああ、見えるわ、見えるわ!細い線がずっと伸びているのが見えるわ」
娘達が嬉しそうに叫んだ。
「そうじゃ、そうじゃ、その線は地球の洞窟のお前達の肉体と繋がっているはずじゃから、その線を辿って飛んで行けば、必ず肉体にもどれるのじゃ。さあ、分かったら、さっさと飛んで行けー!」
「はい、分かりました、大婆さん、どうもありがとうございました、では、行きます」
ハナとハナナはペコリと頭を下げて、二人で手を繋いでゆっくりと飛んで行った。
「おい、大婆さんよ、俺のヘソの線は見えないよ、どうしてだ?」
傍でもたもたしている太郎が言った。
「あのな、謙虚な心にならないと見えないんじゃ。それと、肉体が死んだ人間はこの線が消えてしまうんじゃ。お前は、そのどちらかじゃ」
大婆が突っぱねるように言った。
「えーっ、じっ、じっ、冗談じゃない!まだ死んでたまるか、おーい、ハナ、ちょっと待ってくれー、俺を置いて行くなー、待てー!」
太郎は怒鳴りながらハナ達を追いかけて飛んで行った。
その姿を見て大婆はホッとため息をついた。
「やれやれ、これでワシも久しぶりにゆっくりできる、いやいや、若い奴等相手で疲れてしまった。さーてさーて、ゆっくり休むとするかのう」
大婆は、遠ざかる三人の姿を満足そうな、そして少し淋しそうな眼で見送っていた。
さてさて、静かになった宇宙とちがって、一方地球の洞窟では、大変な事になっていた。
「ワンワンワンワン!」
小さなケンが洞窟の入り口の前で必死に威嚇していた。
月明りもない新月の闇の夜だった。
入口の前の広場には、無数の狼らしき姿が星明りの下で何かを待っているようだった。
遠巻きしている狼を含め、二、三十頭はいるだろう、いやもっといるかも知れなかった。
ケンのような小さな犬は、一頭の狼にすら敵わない。
ましてや、二、三十頭以上の狼達だ。おまけにケンは前足の片方には障害があった。
実は、賢いケンは、こんな事態も心配していた。
それは、二、三日前の事だった。
洞窟の中で、皆の寝ている体を見張っていた時、入口からノコノコと小さな動物が入ってきた。
薄暗かったので、ケンはきっとキツネかタヌキだろうと思って激しく吠えて追い払った。
案の定、侵入者は突然の大声に驚いて振り向きもせず逃げ去った。
逃げ去る姿を見ると二匹だった。
その時、ケンには嫌な予感がした。
(あれは、ひょっとしたら狼の子じゃないか?探検ごっこでもしていて、洞窟の入口を見つけて入って来たのじゃないか?人間の臭いや寝ている姿に気づいたのではないか?)
そうなると、まちがいなく狼の親達に報告する。
すると、狼の群れは他で獲物が見つからなければ、今度は群れでここへ襲いに来るかも知れない。群れで襲ってきたら自分だけでは防ぎようがない。
そう思ってケンは天にいる太郎や長老達にもどって来るように吠え続けていたのだった。
もう二、三日、朝昼夜何度も何度も吠えていたが、その甲斐が無かった。
それも、そのはずだ。太郎や長老達は、未来の文明の滅亡を見るための時空の旅の真っ最中だったからだ。
そうこうしている間に、とうとう心配していたその時が来てしまったと言う訳だった。
予想は当たってしまった。しかも最悪の形で。
洞窟の入口の闇のケンの目の前には、獰猛な狼の群れが現れていた。
吠えもせず、静かにその光る目だけが、ケンの様子や背後を伺っていた。
狼達は、子供の報告から、洞窟には小さな犬以外には動く者の姿は無いと予想していた。
その予想が正しいかどうかを、念のために確認している様子だった。
その確認さえ終われば、群れが一気に襲いかかる予定だった。
狼達は、小さなケンなど蹴っ飛ばして洞窟内になだれ込めば、たちまちに寝ている皆を襲う事ができる。
皆は魂が抜けているから、体を動かす事も声を出す事もできない。
オオマイゴッド!ノッサセニョーラ!万事休す!絶対絶命の事態だった。
唯一の防御策と言えば、狭い入口を木や岩で塞ぐ事だが、それは小犬のケンには無理な事だ。
(太郎隊長ー、長老さーん、タタロさーん、早くもどって来て、本当に本当に緊急事態なんだー、ワンワンワン!)
ケンの今まで以上の必死の叫びに最初に気づいたのは前述のように大婆の話の途切れた時のタタロだった。
そして、事の重大さに気づいて、全員が地球の洞窟へ向う事になった事は、前に述べた。
しかし、宇宙の彼方から地上の洞窟に帰ってくるには、慣れていない長老やタタロやゴクウ達には時間がかかった。
危機一髪の最後のチャンスのその時に、残念ながら間に合わなかった。
「ウヲーーーーう!」
星空の闇の山塊に、狼の頭の一声が響き渡った。
その声を合図に、群れが頭を先頭にケンの守る洞窟の入口に襲い掛かった。
小さなケンは相手にもされず、頭の一蹴りで遠くへ吹っ飛んでしまった。
狼の群れは、一列になって土石流の怒濤のように洞窟の入口内になだれ込んだ。
「ワーンワーンワーンワーン!」
はね飛ばされ倒れたケンは、為す術もなく悲痛な声を上げた。
自分は、自ら進んで洞窟に寝ている皆の肉体を獣から守るために、いち早く帰ってきたのだ。
皆はケンが守っているならと安心し切っているのだ。
それなのに、何の為す術もなく、洞窟になだれ込んだ狼達によって、皆の肉体が貪り食べられようとしているのだ。
「ワーンワーンワーンワーンーン!」
ケンの悲痛な声は星空に響き渡った。
「あれっ、今度はケンの悲しい声が聞こえたような気がする!」
またタタロが最初に言った。
「ああ、そのようだ、もっと急ごう」
長老やゴクウも合槌を打って、いっそう先を急いだ。
少し遅れた場所にハナ達がいた。
「あらっ、ケンが泣いているような気がするわ」
ハナが言うと、ハナナも同じように感じていた。
「おい、まさか、俺達の体が獣達にかじられているんじゃないだろうな?」
太郎は、洞窟の見張り番は、小さなケンには重過ぎた役割だったと、改めて悔やんでいた。
「とにかく、急げ、急げ!」
皆は、自分の体のどこが食べられ始めるのか等の想像を、頭の中から打ち払いながら急いだ。
さて、洞窟の入口の前は静かだった。
「・・・・」
洞窟の外にひとり残されたケンは、放心したように遠くから入り口だけを見つめていた。
中で何が起こっているのか、想像などできなかった。
しばらくすると、何かどよめきらしきものを感じた。
「えっ?どうしたんだろう?」
フと吾にもどったケンが、洞窟の入口を見つめた。
すると、まちがいなく狼達の悲鳴らしき声が聞こえてきた。
「キャンキャンキャンキャン!」
と同時に、入口から狼達の姿が見えた。
狼達は、大急ぎで一列になって、入る時と同じ怒濤のように逃げ出していた。
(えっ?どうしたんだろう?)
とケンが目を見張っていると、
「キャンキャンキャンキャン!」
狼達の群れは、かなり面食らったように動揺し混乱して逃げ続けていた。
「キャンキャンキャンキャン!」
ようやく群れの最後の一頭が逃げ終わった。
かなり時間がかかったが、群れのすべてが逃げ去り、洞窟の入口の前は、元の静けさにもどった。
入口から見慣れない何者かが出てきた。
「ああ、とんでもない奴等だ。危うく食べられてしまうところだった」
そう怒鳴りながら姿を見せたのは修験者だった。
松明を右手に掲げた初老の修験者姿は少し長老に似ていた。
「おーい、番犬よ、無事だったらもどって来ーい、もう大丈夫だ、安心してもどって来ーい、もしかして怪我をしているのかーい?おーい!」
「・・・・」
修験者は明らかに自分を呼んでいる、とケンは思った。
しかし、初めて見る人で、誰なのかケンには想像すらできなかった。
「ワンワンワンワン!」
一応、敵を追い払ってくれた味方なので、ケンはシッポを振って近づいて行った。
「おお、いたいた、番犬よ、無事だったか?良かった良かった、もう大丈夫だ、狼の奴等には松明で火傷をするくらい痛い目に会わせてやったから、これに懲りて二度とここへは来ないだろう、さあ、安心して、中へもどろう」
修験者は、ケンの頭を優しく撫でながら洞窟内へと連れて行った。
修験者の言葉から察すれば、どうやら皆の肉体は狼達から守られたようだった。
「ワンワンワンワン!どうもありがとうございました、ところであなたはどなたですか?」
ケンは、もし人の言葉が話せたなら、そう言いたかった。
(つづく)
ハイハイハイハーイ、小湧水でーす、いやいや、危なかったですね、突然変なおっさんが出てきて、危機一髪のところを助けてくれたようで何よりでした。
しかし、この人はいったい誰でしょう?
はい、では、またのお運びを願いまして、バイバイですが、誰と言えば、いったい誰が優勝するでしょうか?
はいでは、結果は千秋楽まででーす!