飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

(続)連載小説「幸福の木」 306話 日本中を見下ろす?岩魚

2022-04-15 22:58:08 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや雨雨の高山祭で残念でした。でも今年は行われただけでも良かったです。
はい、雨のせいか先生の原稿が届きましたので、早速、小説に参ります、前回は文字オーバーで途中切れで失礼いたしました、はい、では、開幕開幕でーす!

306 日本中を見下ろす?岩魚(いわな)

「わーっ、僕も高い山へ登って、その岩魚(いわな)を食べたいな」
男の子が言うと、即、ハナナが答えた。
「それなら、これからあたい達と一緒に旅すればいいよ、多分、この先、飛騨の高い山も行くからさ」
男の子は、早速、両親や姉に相談していた。
何を思ったのか、また太郎が突然皆に向って質問した。
「あのさ、俺、いつも疑問に思っていたんだけど、どうしてあんな高い峰の谷に岩魚がいるんだろうな?あんな所までいつ遡上したんだろう?って不思議に思ってた。だってよ、途中には高い滝がいくつもあるんだぜ」
「へえーっ、そうなの?そんな上流にも岩魚っているの?」
それはハナやハナナも、聞いてびっくりだった。
いったいどうやって登ったんだろう?考えれば考えるほど不思議だった。
「いやいや、それは、やはり岩魚の野生力で昇ったんじゃろう、なにせ昔から鯉の滝のぼりと言う諺もあるくらいだからな、岩魚は鯉より細くて滝に慣れているのじゃ」
真っ先に答えたのは長老だった。
「嘘だ、それは嘘だ、有り得ない、何メートルもある滝だよ、どうやって昇るんだ?あの落下している水を昇るのかい?無理だ、まさか何メートルも空中を飛ぶのかい?」
太郎は烈火のごとくに否定した。
「すると今度は修験者が答えた。
「いや、ほんとうじゃ、がしかし、滝の水を登るんじゃない、横の崖を登るんじゃ、ほらっ、よくため池や水たまりの水が無くなると魚達は地面の土の上を歩くように移動するじゃろう?あれと同じじゃ、きっと水のない崖を少しづつ登るんじゃ」
「嘘だ、嘘だ、ますます有り得ない、それじゃ、鳶やカラスや獣達にどうぞ捕まえてって言ってるようなもんだ、一度でもいいから見てみたい」
太郎はまた即、否定した。
「やっぱり諺通り、鯉の滝登りじゃ、あの落下する水をすごい勢いで登るんじゃ、それしか考えられん」
長老は滝のぼり説を主張し続けた。
実際、山奥の何メートルもある滝の下はもちろん、上にも岩魚達は住んでいた。
「・・シーン・」
考え込んだ皆の沈黙が続いた。
「はーい、あたい分かったわ!」
突然、ハナナが生徒のように手を上げて、明るい声で言った。
「あの、前に聞いたんだけど、昔々大雨が降って日本中が高い山の頂だけを残して沈んでしまったんでしょ?そして、次第に水が引いていったんでしょ?
その時に岩魚達が高い峰の谷に残ったのよ、なので日本中の上流に岩魚が住んでいるのよ」
「!!!???」
(えっ、まさか?でも一応すべてをうまく説明しているようだけど・・?)
太郎や長老達は焦った、口には出さなかったが、心の中では、やはり当っているかもと思った。
ハナナは、まるで満点のテスト結果を待っているような顔で、長老達を見つめていた。
「いやいや、そんな神話の世界のような遠い昔の話を持ち出さなくても、答えが見つかるんじゃないかな?」
ばつが悪そうに、黙っておれなくなった修験者が無難な答えでごまかした。
白けた空気が流れた。
すると、ハナが小声でボソッとつぶやいた。
「確か爺ちゃんが、昔は小さい岩魚は滝の上やもっと上流に放つって言ってたわ」
その声は静かな中で、イナヅまのように皆の耳に響いた。
「えっ、ハナ、今、今、お前、何って言った?」
太郎が立ち上がった、
爺達があっと大きな口を開けて、自分の手で額を叩いた。
「ああ、それじゃ、それじゃ、それが犯人じゃ、人間じゃ!人間が滝の上に岩魚を上げたんじゃ、そうして岩魚を上流でも池のように飼っていたんじゃ、将来の子孫のためにな」
長老がそう言うと修験者も続けた。
「ああ、それはワシも聞いた事を思い出した、山奥の岩魚釣り名人からな。あそこの岩魚は、そろそろ大きくなって食べ頃じゃと言ってたな、はっはっはー、この謎は、そう言う事じゃったんじゃ、ハっはっはー」
と爺達二人は互いに顔を見合わせて大笑いした。
なーんだ、そう言う事だったんだ!
と皆も納得して、これで一件落着!と落ち着き安堵した。
しかし、太郎だけが、何故かまだ納得できずブツブツ言っていた。
「しかし、あんな遠い不便な峰の谷に、村人がわざわざ岩魚を獲りに行ってたのだろうか?」
すると、それまで沈黙を続けていたゴクウが初めて口を開いた。
「あの、滝ができる前はもっとゆるやかな流れだったんじゃないですか?その頃は岩魚達もふつうに遡上できたんじゃないですか?
その後に地震の断層や風雨の浸食によって流れが急になって今のような滝ができたんじゃないですか?」
その予想外の、しかも有り得そうな説に、皆は唖然とした。
ゴクウとは、もう何百歳も生きている山の主と言われる「白猿」、その跡取り息子である。
父親からいろいろ聞いているだろうと、皆はいつも注目していた。
「おお、そうか、そう言う事かい、滝ができる前に、岩魚達はもう上流まで遡上していたと言う訳か?なるほどなるほど、谷の地形は年月と共に変化するからな、なのでそれは十分有り得る話じゃ」
と長老達は改めて感心した。
「あの、ソレハ、イツゴロ、ナンネンマエのハナシデスカ?」
通訳を通して聞いていた外国家族の父親が質問した。
青い制服の彼女は、英語で懸命に説明し始めた。
その様子を見ながら長老がつぶやいた。
「しかし、ゴクウの父親は何百歳と言うし、その父親から聞いた今の説も、遠い遠いずいぶん昔の気の長い誰にも分からん話じゃのう」
全く!とばかりに修験者もうなづいていた。
やがて木花咲姫が口を開いた。
「そうですね、この私達が住んでいる地球も魚達にも長い長い歴史がありますから、でも皆さん方が答えられた説明は素晴らしいと思いました。
岩魚がなぜ山奥の源流にもいるのかと言う謎は、その答えを想像しながら釣りをするのも、渓流釣りの楽しさのひとつだと思います。よく言われる男のロマンでしょう。
他にも、古代日本独自の変な形の勾玉(まがたま)のように、どうしてあんな形なのか?を想像するのも楽しい謎があります。
むしろ、答えが見つかるとがっかりするかも知れません」
と木花咲姫が一時口を閉じると、これ以上は話さないのかとハナやハナナ達は少し不安になった。
また木花咲姫が話し出すと、ハナ達は安心した。
「あの、先ほどの皆さん方の話についてですけど、鯉や岩魚達が滝を昇る時には、水中深くから勢いをつけて泳ぎ昇るようです。
なので滝壺のような深い水がある場所は昇りやすいようです。しかし、滝の下が浅い場所では勢いがつけられないのでそんなに高くは昇れないようです。
また、滝の横の水の無い場所を登ると言う話ですが、やはり魚達は身をクネクネと蛇のようにくねらせて登るようです。それぞれどのくらいの高さまで可能かと言う事については、わたくしはまだ見た事がありませんので詳しく申し上げられません」
と木花咲姫が言って口を閉じた。
すると、自説を肯定されたように長老と修験者は、ほらっな!と自慢顔になった。
「木花咲姫はさらに話を続けた。
「さて、岩魚の謎についてわたくしもひとつの説を申し上げましょう。
地球には何度か氷河時代と言うとても寒い時代がありました。その時代は赤道付近以外では厚い氷が大陸を覆っていました。
最後の氷河時代の終わりには、まだ日本の高山には厚い氷が残っていたと思います。
温暖化につれて少しづつ解けていったと思いますが、その時に、氷が解けた水が高い峰々に数多くの小さなせせらぎを作ったと思います。
もしかしたら岩魚達はそのせせらぎを辿って高い峰まで登っていったのかも知れません」
それを聞いた修験者が、
「おお、思い出した、つい最近、ワシが現在の御岳の写真集を見ていたんじゃ。
すると、山頂に滝壺跡があって、雪解けの時だけ滝に水が流れるそうじゃ。
その時には、標高三千メートルと言う日本一高い滝になると言ってた。きっと氷河時代には、年中水が流れていたのじゃろう、なにせ滝壺ができたくらいじゃからのう」
と嬉しそうに言った。
「さすが、修験者さんですね、現在の御岳の様子を写真で確かめるとは」
と、高山を治めている女神の木花咲姫は、修験者の信仰心を褒めた。
すると、ずっと通訳で話を聞いていた男の子が、
「僕、やっぱり高い山に登って岩魚を釣ってみたいな」
と大声を出した

(つづく)

ハイハイハイハーイ、さて、ここまで原稿が載るかしら?もしかして、ぎりぎりセーフかも?でしたら、またのお運びを願いバイバイバーイ!です。


急に暖かな春 高温に雪解けの奥飛騨!

2022-04-13 14:11:58 | 俳句日記の部屋

久々の 高山祭に 急さくら  湧水  コロナで三年ぶりの再開

祭屋台 満ちて迎えむ 花さくら  湧水

仇花も 醒めて素朴な 祭飛騨  湧水

背丈越す 雪も解かして 祭り飛騨  湧水

素朴さに 忘れる暗世の 春霞(かすみ)  湧水

不安霞 足元見れば 優しき芽  湧水

うぐいすの おそ鳴きの間に つばめ声  湧水

懐かしき わが家にも来し つばめ達  湧水

年々と 減りゆく里の 百鳥かな  湧水

気晴らしと ストレッチ兼ね 春の畑  湧水

草運べば 白杖落とす 春小川   湧水

無季、時事句

田も畑も 虫や鳥には 非天国  わが畑も防草シートで虫も鳥もわずか

荒れ放題 畑は虫や鳥には 天国かな  そうしたいが現代は近所の目が許さない

思考変え 探せば安心 不安の裏  テレビの不安あおるニュースに免疫を持とう!

何ごとも datkで 乗り越えようdatkとは大丈夫ありがとう楽しもう謙虚に!

八百万の 神は主の元に 地球過渡期 目ざめ、アセンション、神の子メシアに

(以上)


(続)連載小説「幸福の木」 305話 さくら鱒と岩魚

2022-04-11 13:58:22 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水です、いやいや週末に間に合いませんでした、失礼しました。
はい、ウチの先生にはいい事が続いたようで、天国天国!って浮かれています。はい、その内容はまたいづれ、はい、遅れながらも原稿が届きましたので、小説に参りたいと思います。はい、では開幕開幕!、今回はまちがいなく文字オーバーで尻切れになると思います。

305 さくら鱒と岩魚

「僕も五月鱒のようにがんばるよ、皆を見返してやるんだ!」
男の子はそう叫んで五月鱒と落ち鮎を川に放流した。
皆はその様子を見守りながら沈黙していた。
「えーっ、お前もいじめられていたのか?」
と太郎は、聞こうとしたが、それを喉奥に呑み込んだ。
もし、「お前も」なんて言ったらバレテしまう。
自分も幼い頃いじめられていたなんて、皆に知られたくなかったし、さらに認めたくもなかった。
そう、きっと男の子の本心もそうだろう。
皆も、そんな心境を察してか、それ以上細かく質問しなかった。
やがて木花咲姫がしみじみとした口調で話出した。
「そうですね、生きていくと言う事は様々な苦労が伴います。人間だけでなく動物も魚達もそうですね、ほんとうに五月鱒ってえらいと思いますね、川の住み慣れたエサ場を他の仲間に譲って、自分は川を下って未知の海への長い旅に挑むのですから、ほんとうにたいしたものですね」
と心から褒めた。
太郎は、なぜか自分が褒められているような気がして嬉しくなった。
その得意そうな顔にハナが気づいた。
「でも、仕方なくそうなっただけだから、本人はそんなに褒められる事じゃないと思うけど・・」
と冷たく言って太郎をチラッと見た。
ムッとした太郎が、何か反論しようとした時、青い制服の彼女が、それを止めるように先に言い出した。
「あの、先ほどの説明のついでにですが、付け加える事があります。この長良河の五月鱒と同じように、仲間の一部が海へ行って大きくなってもどって来る別の魚がいます。
それが「さくら鱒」です。こちらの方が知られていると思います。
主に日本海側全般や太平洋側の北部の川に住んでいます。
ここの五月鱒は太平洋側の南部にしかいない珍しい鱒です。
さくら鱒もさくらが咲く時期に川で姿を見られたので、そう名づけられたのです。
さくら鱒も五月鱒も、どちらも鱒科で親戚の魚なのでよく似てます。
川に住み続ける小さな魚を「やまめ」や「あなご」と呼んでいます。人々は渓流釣りを楽しんでいます」
ここまで聞いていた長老が、思わず声を上げた。
「いやいや、川の魚って見かけによらず、けっこう複雑じゃのう。そう言う話を聞くのは初めてじゃ。そう言えば、昔、魚が群れになって遡上するとか聞いた事もあるが?そう言う事かい」
長老が感心しながらうなづいていた。
「まあ、長老さんったら、長い間生きているのに、そんな事も知らなかったの?」
ハナナが遠慮なしに思ったままを口にした。
「きっと、長老さんは村ばかりに住んでいたので、遠くの事は知らなかったのよ、でも修験者さんはアチコチ修行の旅をしているから、きっと知ってるわ」
ハナナの失礼を打ち消そうと、ハナが爺さん達を敬うように言った。
しかし、修験者は困った顔になってしまった。
「いや、修験者と言っても、実は、ワシ等は山ばかり歩いているから、川や海の事は詳しくは分からんのじゃ。北では秋に魚が遡上すると言う事ぐらいしか知らんのじゃ。残念ながら、きっと、よく魚釣りをしている太郎の方がワシ等より知ってるじゃろう」
と正直に薄情した。
「えっ、何が残念ながらだ、野山について知ってる事は、爺達も俺もドングリの背比べみたいなもんだ、年長だからって偉そうな事を言うな」
太郎が溜っていた不満をぶつけ始めた。
すると、また青い制服の彼女が話を始めた。
「あの、ついでに鮭についての話もしましょう。今修験者さん達が話していた、北で秋に魚達が群れを為して川を遡上すると言うのは、鮭の話の事です。
鮭は今まで話した五月鱒やさくら鱒とは親戚ですので、よく似てます。
しかし、鮭は川で産卵しますが、一匹も川に残ることなく、全員が海へ出て三年ほどして大きな体になって帰ってきます。
それが秋に群れとなって同じ川を遡上して産卵するのです。
これはもう何万年と言う長い間繰り返している事で、縄文時代には人々には大自然の貴重な贈り物として大変感謝されました。
五月鱒やさくら鱒は日本だけですが、鮭は日本以外の北方の国々の川でも遡上します」
その時、それまでいかにも不満そうな顔で聞いていた太郎が、突っ込みを入れた。
「えーっ、ちょっ、ちょっと待った!冗談だろ?大きな魚が群れになって川を遡るなんて、大袈裟過ぎるぞ、だったら浅い場所では獲り放題じゃないか?子供でも猫でも鳥でも簡単に捕まえるとでも言うのかい?まさか、まるで雉鳥が自分から網に飛び込むようなものだ、はっはっはー」
とあきれた太郎は大笑いした。
すると、青い制服の彼女は、凛としたはっきりした口調で、
「はい、その通りです、ですから北海道では小さな川を群れになって遡上する鮭達をヒグマ達が食べて冬眠の準備をするのですよ」
ときっぱり言った。
「えーっ、嘘だ、そんなんだったら俺達人間は遊んで暮らせるじゃないか、川の横に細い流れを作って籠を置けば、鮭達が勝手に飛び込んでくるとでも言うのかい?」
「はい、そうです、信じられないと言うなら、是非一度北海道へ見物に行ってください」
「うへーっ、マジかい?俺には信じられないや馬鹿にするな」
太郎はそれ以上反論する気を無くして唖然としていた。
「・・・・」
緊張した沈黙を破るように、木花咲姫が話し出した。
「そうですよ、本当の事ですよ、特に縄文時代は北海道や東北地方では秋には鮭が遡上して人は容易に捕獲できて冬用の蓄えもできました。
人間だけでなく熊の他に様々な獣や鳥達にも冬の食糧となりました。
神の造られた大自然は、人や動物達を養うためにすぐに入手できる食べ物を用意してくださっていたのです。
また、鮭や鱒だけでなく、海の他の鰊(にしん)や鰰(はたはた)等の魚達も、秋になると浅い岸に集まって産卵するため、漁師達は一度網を投げれば冬中の食糧を獲ることができたのです。文字通り魚の群れでした。
また森や山には栗などの木の実や柿やあけび等の果樹、それに松茸やしめじなどの木の子、山芋や百合の根やクズ等山の幸が溢れていました。
太郎さんが先ほど言ったように、本当に人間達は遊んで暮らせたのです。
事実、毎日好きな事をしていて、狩りや漁や採取などには、わずかの時間働いただけです。
太郎さんもどちらかと言えば、今の人達に比べれば、遊んで暮らしているようなもの、いえ、そう言う人達の部類ですよね?
はい、前にもお話した通り、大自然の恩恵に感謝して暮らした人達には争いや戦いもなく、平和で幸福な毎日を送っていました。
なので、この素晴らしい幸福な時代を、後になって「北のまほろば」と呼んで憧れたそうです・・・・」
木花咲姫がゆっくりと話し終えると、真剣に聞いていたタタロが言い出した。
「あの、俺、思ったんだけど、北の土地でそんなにたくさんの魚が獲れたのなら、この辺でも、例えばこの長良川でもたくさんの魚が獲れたんじゃないですか?」
すると即、長老が、
「そうじゃ、それは有り得るな、太郎、ひょっとして、ここを鮎の群れが遡上したかもな?」
と長老は太郎の肩を叩いて喜んだ。
「そんな事有り得んでしょ!さっきの話をちゃんと聞いていたの?鮎は北海道の鮭のように産卵場所まで一気に遡上しないのよ、川底の石藻を食べながらゆっくり遡上するのよ、そこで互いに場所争いをするのよ、だから鮎は友釣りができるんじゃない?っつたく、五月鱒じゃあるまいし」
ハナナが烈火のごとく噛みついた。
「そっ、それじゃ、五月鱒じゃ!その五月鱒が群れを為して遡上したんじゃないかな?なあ、タタロよ」
と長老は今度はタタロの肩を叩いた。
正直で真面目なタタロは、判らないので黙っていた。
すると、修験者が、
「まあまあ縄文時代と言ってもじゃ、もっと遠い過去から来たワシ達にとっては未来の話じゃからな、分かるはずがないが、聞けば縄文時代は人工が少なくて食べ物も野山に豊富だったと言うから、鱒の群れなんかにはそれほど興味が無かったかも知れんな。
神や大自然が、人工の多い土地に食べ物を与えてくれたとすれば、この辺りは群れにはならなかったかもな」
と冷静な口調で学者みたいに言った。
太郎は、元々そんな説教みたいな話は嫌だった。
「あのさ、皆は鮎や鱒の話ばかりしているが、肝腎な事を忘れているぞ、岩魚だ、俺達に一番身近なのは岩魚だ、岩魚の話をしないで鮎や鱒の話ばかりなんて、ワサビの無いワサビ漬けみたいなもんだ、止めよう止めよう、これから岩魚の話にしようぜ」
太郎の強引な言葉に、ハナやハナナが怒りかけた。
「おー、イワナ、イワナですか?それナンですか?」
興味を持ったのか外国家族の父親がカタコトの日本語で食いついてきた。
「岩魚ならワシも知ってるぞ」
と修験者も食いついてきた。
「イワナとはじゃ、ワシ達が、高い山で修行している時に谷で見かける魚じゃ。
まあ日本では一番高い上流に住んでいる魚じゃな。
しかし用心深い魚でめったに人には姿を見せないんじゃ、岩陰に隠れていて虫が飛んで来たりすると飛び上がって食うので岩魚と呼ぶんじゃ」
すると長老も負けじと説明した。
「そうじゃ、虫でも小魚でも何でも食べる肉食魚じゃ、味はさっぱりしていて美味しいのう、塩焼きすれば最高じゃ」
すると、通訳してもらって聞いていた男の子が思わず言った。
「わーっ、僕も高い

「清明」の飛騨 南は満開の梅とさくら!

2022-04-06 20:47:43 | 俳句日記の部屋

のどかなる 静かな春や 閉テレビ  湧水

敷き草に みどり葉立てて チューリップ  湧水

春畑や 雑草おさなく あどけなく  湧水

枯れ株の 陰におさなき 春雑草  湧水

春大地 芽吹くガイアの 草の息  湧水

芽吹かんと ガイアの命の 春の息  湧水

尻と脚 降ろすガイアの 春の土  湧水

大自然の 春の女神に 癒されて  湧水

あふれたる 主神の愛や 春野山  湧水


(続)連載小説「幸福の木」 304話 五月鱒の長旅

2022-04-02 15:51:14 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや前回はちょっと失敗したようで、文字オーバーと鮎ト鱒ノ混同で失礼しました!とウチの先生が反省シテました。
はい、もう歳ですので、またしでかすかも?です。はい、その折はよろしく。
はい、では開幕開幕でーす!

304 五月鱒の長旅

「あらあら、始まるのですか?鮎焼きが、それなら、あの海外の方達にも声をかけましょうね」
見にキタ木花咲姫ガ、ソウ言うと、傍ノ侍女が呼びに行った。
甲板ノ砂地ノ焚火ニハ、逆さノ曲がった鮎ガズラーッと周りヲ囲んでイタ。
鮎ニ串ヲ刺しテ炭火デ焼いてイタノダ。
そして炭火の真上ニモ金網ガアッテ、ソコデモ鮎ヲ焼いてイタ。
野外テーブルの上には趣向を凝らした様々な料理が並べられていた。
他に地元の酒やワインもタクサン並べられていた。
「さあ、焼けたぞ焼けたぞ、熱いうちに食べよう」
早速、太郎が串を砂地から一本引き抜いて、塩焼きした鮎にかじりついた。
「あっ、あつい!やけどしそう、美味い美味い!」
太郎ハ、ハナ達の怒ってにらんでいる視線に気づいて言った。
「ああ、お前達も、食べたい奴は勝手に取って食べろ、たべろ!ここは自由勝手方式だ」
料理人が持ってきた皿を出した。
「サア、ドウゾ召し上がってクダサイ、熱いカラ火傷ヲシナイヨオウニ気を付けてクダサイ」
青色ノ制服ノ彼女ガ、皿に乗った鮎を皆ニ配った。
「美味い美味い!」
「ワンワンワンワン」
皆ハ話す事モ忘れて、次々ト二匹目ノ鮎ヲ皿ニ受け取った。
「オオ、ソウ言えば、グー太ノ姿ガ見えんナ、ドコニイルンジャ?」
長老ガ口ヲモグモグ動かしながら辺りヲ見回して、ハナ達ニ聞いた。
ハナトハナナハ、互いに顔ヲ見合わせタ。
二人ともスッカリグー太ノ事ハ忘れてイタ。
「アア、アノ幼いオ子サンナラ、釣りヲシテマスヨ、私に釣り道具ヲ借りに来ましたヨ」
料理人ガ鮎を焼きナガラ答えた。
「アア、ソウカイ、ハテ、ドコデ釣ッテイルンジャロウ?」
安心した長老ト修験者ガキョロキョロト甲板ノ縁ヲ見回した。
「えっ、姿が見えんぞ!マサカ、川ニ落ちたンジャナイダロウナ?」
青くなった修験者ガ言うト、ハナ達も食べている口ガ止マッタ。
「ワンワンワンワン!」
ケンガ何か吠えた。
「アノ、グー太ハ、モウカナリ前カラ船の後ろ甲板デ釣りヲシテイルヨウデス」
ゴクウガケンの通訳ヲシタ。
「ナーンダ、ソウジャッタンカイ?ソレデ姿ヲ見かけナカッタ訳ジャ」
長老達も皆モ安心シタ。
「ドウゾ、ドウゾ、コチラヘ来て、鮎ヲ召し上がってクダサイ!木花咲姫様、海外ノオ客さん方ヲオ連れイタシマシタ」
ト侍女ガ案内ヲシテキタ。
海外の客トハ男の子と女ノ子と両親の一家族ダッタ。
「ホーラ、コンナ大きな魚ガ釣れたヨ」
真っ先ニ、一番小さなグー太ガ、バケツのような器カラ魚ノシッポヲ掴ミ上げて見せた。
「バシャバシャ!」
大きな銀色の魚が嫌がって手から器の水に落ちた。
「オオ、大きいぞ、コレハ五月鱒ジャナイカ、ヘエー、ヨク釣り上げたモンダ」
料理人ガ驚き感心した。
「ヘーイ、アイヘルプトヒム」
男の子ガ、僕モ手伝ってアゲタンダよ!ト得意ソウニ英語デ言った。
青い制服の彼女がすばやく同時通訳をした。
また姉さんラシキ女の子ガ、「ソウヨ二人デ協力して釣り上げたノヨ!」ト自分の事のように説明した。
後ろで見守っていた両親も、ニコニコシナガラ自慢顔だった。
「マダ他にも魚を釣ったノヨ!」
ト女の子ガ自慢げに言うト、弟の男の子ガ魚ノ入ったバケツヲ料理人ニ見せた。
「オオー、何ダ?大きな落ち鮎モ入ってイルジャナイカ」
驚いた料理人が、大きな鮎ヲ掴んで持ち上げた。
「オオ、スゴイ、立派ナ落ち鮎ダ!」
「ほんとじゃ、大きいのう、どうやって釣り上げたんじゃ?」
太郎ヤ長老達もびっくりして歓声ヲ上げた。
「おー、オチアユーッテ、ナニデスカ?別ノ魚の事デスカー?」
父親ガカタコトノ日本語デ聞いてキタ。
すると、青い制服の彼女が、進み出て、
「アノ、ココハ私ニ説明サセテクダサイ」
と言って、英語デペラペラト説明シ始めた。
「オー、イエース、ヨークワカリマシタ」
夫婦や子供達ガ納得スルト、今度は彼女ハ皆ニ振り向いて説明し始めた。
「アノ、前ニ説明シタ時ニ、鮎ト五月鱒ノ産卵場所ヲ混同シテイマシタ。訂正します。
鮎は川の中流、五月鱒は上流です。
鮎ハ孵化シタ後ニ、スグニ河ヲ下ってエサノ多い海ヤ河口デ過ごすタメニ産卵場所ハ少し上ノ浅瀬デス。
ナノデ、春カラ夏ニカケテ川を遡上シテ川底ノ石ノ藻ヲ食べて大きく成長シテ卵ヲ持った鮎達ハ、秋ニは川ヲ下って産卵場所へ行きます。
ソレガ、コノヨウニお腹ニ卵ヲ持った大きな「落ち鮎」デス。
夏の終わりから秋に獲れるこの落ち鮎よりも、夏に獲れる若鮎の方が美味しいと言って好む人が多いです」
と彼女はバケツの中の大きな鮎を見ていた。
すると、料理人が、
「ああ、今焼いている鮎は、すべて美味しい若鮎だよ」
と串や金網の鮎を裏返した。
その様子をチラッと見ながら、彼女は話の続きをした。
「一方、五月鱒ハカナリ上流デ産卵シテ、ふ化シタ稚魚達ハ小さな川で住む場所の争いヲシマス。
ソノ争いニ負けた弱い魚達ガ川ヲ下ッテエサヲ求めて海ヘ出ます。
ところが広い海はエサも多く鍛えられるので、コノヨウニ巨大な体ニナッテ川ニモドッテ来るのです。
そして河口から上流の故郷まで遡上スルノデス。ちょうどそれが五月頃に姿を見せるのでこのように名付けられました」
ト彼女はバケツの五月鱒ヲ覗き見た。
「・・シーン・・」
「ヘエー、知らなかった、ソウ言う事じゃったのか?ヘエーッ驚いた、場所争いデ負けた方ガ、勝った魚達よりも何倍モ大きナ体ニなってもどって来たのじゃな、イヤイヤ、驚イタ驚いた」
長老ガ感動で涙を浮かべながら言った。
修験者モ感動シテ、
「いやいやスゴイ、いい話を聞いた、負けるが勝ち?と言う事じゃ、実に素晴らしい話を聞いた、早速、太郎モ見習わなきゃ」
と二人は何故か同時に太郎に目を向けた。
「おいおい、太郎よ、聞いていたか?海ジャ、広い海ジャよ、ソウ、海外ジャ、外国ジャ、お前はソコヘ行って、大きな偉大な人間ニナッテ村ヘもどってくるんじゃ、そしてお前をイジメタ故郷の奴等ヲ見返してやるんじゃ」
修験者と長老達は、ほとんど自分達の事のように興奮して赤ら顔で太郎に言った。
対照的に太郎は醒めた無表情の顔だった。
「・・・ったく!他人事だと思って勝手な事を言いやがって、そんなに感動したのなら自分達でやったらいいんだ」
と反発すると、
「いやいや、ワシ等はもう歳じゃ、これは若いお前達の話じゃ、判らんかのう、情けない奴じゃのう」
と嘆息した。
その爺達の嘆きに、賑やかだった雰囲気も白けて沈黙が続いた。
それを打ち消すように木花咲姫が口を開いた。
「いえいえ、長老さん型、そんなに嘆くような事でもないですよ、この太郎さんとハナさん達は、村長さんに頼まれて村の宝物の幸福の木を探しに村を出たのですから、もう立派な五月鱒の道を歩いていますよ。
もし、目出度くその幸福の木を村に持ち帰る事になったら、それはそれは立派な五月鱒以上の功績ですよ、故郷に立派な錦を飾る事ですよ」
そう言われると長老達は、ハッと気づいたように目を丸くした。
「おお、そうじゃった、そうじゃった、ワシもすっかり忘れていた、村を昔の平和な村にするために旅に出たのじゃったな、ああー、ごめんごめん、すっかり忘れていた、ごめん」
と真っ赤な顔で謝った。
すると、ずっと様子を見ていた、外国人の男の子が立ち上がった。
「僕も五月鱒のようにがんばるよ、皆を見返してやるんだ!」
大声の英語で言った。
それを聞いていた両親と姉の女の子が涙を流していた。
「この五月鱒が僕に勇気を与えてくれた、ありがとう、元気で旅を続けて!」
突然、男の子は五月鱒と落ち鮎をバケツの水ごと川に投げた。
放流された五月鱒と落ち鮎達は、あっと言う間に暗い波間に消えた。
グー太は、落ち鮎を一匹だけ両手に隠し持っていた。

(つづく)

ハイハイハイハーイ、ここまでは載らないと思いますよ、