飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

(続) 連載小説「幸福の木」 275話 空中の神殿?

2021-07-31 17:17:08 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや、連日おりんぴっくもタケナワ、日本の金メダルもたくさん獲得したようで、何はともかく目出度いです!
ウチの先生も種目が多過ぎる!って言って、テレビを見てません。結果だけ知りたい!って。
はい、理由は心配症ですので、見ていると負ける!そうです。
そうそう、各家庭に壁かけの巨大画面テレビで、試合だけでなく家庭で応援している人の姿や声も見えるようにすれば、完全リモート観戦になるんでは? なんて言ってます。
もちろん試合会場にも巨大画面で応援者の姿や声も届くようにして、ですが・・
はい、てな訳で、何はともかく原稿が届きましたので、早速、小説に参りたいと思います。
はい、では、開幕、開幕!

275 空中の神殿?

太郎やハナ達は花園の美しい女性に案内されて大きな池の前に立った。
その池の中央には小島があり、手前と向こう側が赤い橋で繋がっているのが見えた。
池の向こう側には、寝殿造りのような紅い木造りの邸が建っていた。
「あちらのお邸に木花咲姫様がいらっしゃいます。あなた方をお待ちになっておられます。どうぞ、この赤い橋を渡ってあちらのお邸までお歩きください。わたくしのご案内はここまでです」
女性は、前方の赤い橋に手を差し伸べて、太郎と皆に言った。
「えっ、ここまでって?あの、あそこまで案内してくれるんじゃないの?
太郎が即座に言った。
「いえ、わたくしは花のお世話がありますから・・・」
女性は太郎に首を横に振って答えた。
しばらく若者どうしの何やらまずい雰囲気になった。
長老と修験者が黙ったまま待っていられなかった。
「おいおい、タタロ、これからお前が先頭に立って皆を案内しろ、ウチの大将はもしかしたらここに残る事になるかも知れんからな」
突然、長老がタタロの肩を叩いて言った。
「えっ?・・・?でっ、おれが?」
タタロは不意の指示に驚いた。
「そうじゃ、ウチの大将はここで婿入りする事になるかも知れん、まあ、その時は皆で祝って追い出してやろうな、そう盛大にな」
今度は修験者が真面目な顔で答えたが、目は笑っているようだった。
「えーっ?婿入りって?ここに残るって?いったい何の話?」
ハナナとハナが驚いた。
「これこれ、そんなに追求するものじゃない、やはり娘達はまだ子供じゃのう、こう言う事は大人になったばかりの若者同志の微妙な話じゃ、ほれほれ、皆、そんなに注目するものじゃない」
と長老は皆が二人に目を向けるのを止めさせた。
「そうそう、その通りじゃ、放っておいて遠くから見守るものじゃ。ほれほれ、タタロよ、何をしている?早く皆の先頭に立って、あの赤い橋へ向わんかい、これからお前が大将じゃ、しっかりせい!」
修験者が思いっ切りタタロの尻を叩いた。
「痛い!」
タタロは叩かれた尻を撫でながら先頭に立って、赤い橋を渡り始めた。
ケンやゴクウはその先を行き、長老達やグー太やハナ達も続いた。
「太郎兄ちゃんは、どうするのかしら?」
時々ハナが後ろを振り向いた。
が、放っとけ!とばかりに長老達は先を急がせた。
一行は、赤い橋を渡ろうと足を踏み入れた。
橋の上から見る池の水は澄み切っていた。
そして、見た事もない鯉のような様々な色の魚達が群れをつくっているのが見えた。
皆はしばらく見とれていた。
「おい、タタロ、もういいじゃろう、出発しろ!」
また長老達が先を急かせた。
赤い橋を渡ると、小島に着いた。
小島には景色を見渡せる長椅子のよおうな休憩所があった。
それを見た長老達が、
「おお、せっかくじゃ、ここで休んで景色をじっくり味わおう、何か飲み物でも出て来れば言う事はないがのう、はっはっはー」
と大喜びで長椅子に座った。
しばらくすると、遠くの景色を見ていたハナナが言った。
「あっ、あっちの母屋の方から誰かが来るわ」
見ていると三人ほどの娘達が、何かを持って、赤い橋を渡ってきた。
そして、爺達の前に立つと、
「どうぞ、よくいらっしゃいました、これは粗茶とお供ですけど、どうぞお召し上がりください」
と和服のような着物の娘達が、茶碗と皿のお菓子を出してくれた。
「ああ、言ってみるもんじゃのう、思いがけず言った通りになってしまったぞ、やはり、言葉の力、言霊の力じゃ、はっはっはー」
願った事がすぐに叶って長老達はご機嫌だった。
皆が茶を飲み干すと、長老達の心を察して、娘達がすかさずお替りを入れてくれた。
その上品な和服の娘達は気が効くのに加えて、三人とも美人揃いだった。
「タタロよ、ほれっ、よく見ろ!この娘達もえらく美人の娘達じゃ、太郎は少し早まってしまったかも知れないのう、こちらの娘達の方が美人じゃと想うが、どうじゃ?たたろよ?はっはっはっはー」
長老達が大笑いした。
娘達も嫌な顔もせず、皆を見守るように立ったまま笑顔で聞いていた。
やがて皆が十分に休憩できたと見るや、娘達が促がして言った。
「あちらのお邸で木花咲姫様がお待ちでございますから、どうぞお出かけください」
「おお、そうじゃ、そうじゃ、あまり待たせるのも失礼じゃ、さあ、たたろよ、早く出かけようぜ」
またタタロを先導に皆が一列になって赤い橋を渡り始めた。
今度の赤い橋はより長い太鼓橋で、真ん中がかなり盛り上がっていた。
「わっ、いい景色、池全体が遠くまでよく見えるわ」
ハナ達は喜んで、踊るように足踏みしてはしゃいだ。
「あの、申し訳ありませんが、この橋はそれほど丈夫ではありませんので、静かにお渡り願います、たぶんこんなに大勢の人が渡るのは初めてですので少し心配してます」
と後ろを歩いていた女性達が心配顔で言った。
ハナ達は足踏みをピタッ!と止めて、顔を真っ赤にした。
橋を渡り終えると、前方の邸の前にお供を連れた木花咲姫の姿が見えた。
「おお、わざわざ木花咲姫様がお出迎えじゃ、こんなワシ等にはもったいない事じゃ」
長老達が恐縮した。
その時、ハナは何か違う!と違和感を感じた。
太郎の事でもなかった。
「ああ、そうだ!」
と大声を出した。
「思い出したわ、そうよ、私達じゃないのよ、主は私達じゃないのよ、私達は単なるお供なのよ、元々この旅はグー太のためにいろいろな人達が案内してくれるのよ。私達はグー太のお供なのよ、皆はグー太のために、あっつ失礼、かぐや太郎様のためにいろいろ便宜を計ってくださるのよ、長老さん、間違わないで、私達はグー太、いえ、かぐや太郎様のお供なのよ、主役はグー太、いえ、かぐや太郎様なのよ」

ハナはそう言い切ると、グー太を前に押し出した。
そしてハナナと共に、自分達はお供のようにぴったりと寄り添って歩くようにした。
「おやおや、お姉ちゃん達って、急に態度が変わったね、別に、おいらはどちらでもいいんだけど、・・・」
とグー太は、ハナ達二人が侍女のように従う前を、1人だけ悠々と偉そうに歩く事になった。
「タタロ兄ちゃん、あんたは案内人だから、そのままそこにいてもいいわよ。でも、木花咲姫様の近くへ行ったら、グー太、いえ、かぐや太郎様の後ろに回るのよ、私達の主人はあくまでもかぐや太郎様なんだからね、そう、爺さん達は、もう後ろにいた方がいいわ、あんた達も単なるお供の1人なんだから」
ハナナがはっきり言うと、さすがの長老達も黙ってしまった。
タタロを先導にグー太とお供のハナ達が近づくと、木花咲姫が、
「あらあら、皆様方の様子も前とはずいぶん違うのですね、かぐや太郎様もようやく子供扱いされなくなったようですのね、皆様方がそれだけ賢くなられた証拠で、それはそれは良かったですね、おやっ、あの太郎様の姿が見えませんが、どうかなさったのでしょうか?」
木花咲姫が不思議そうに聞いた。
「ええ、ちょっと、兄は道草をしてまして美しい女性が多いので少し 夢中になってしまいまして・・・」
ハナが恥ずかしそうに答えた。
「おやおや、そう言う事ですか?それはそれは、もし希望ならば、ここに婿入りしてお住みになっても大丈夫ですのよ、ねえ、皆さん?」
と傍の侍女達に言うと、侍女達にわっと歓声が沸いた。
「それでは皆さん方も十分休憩を取られたようですので、早速これからかぐや太郎様初め皆さん方をレムリアの一番尊い聖なる御神殿へ案内いたします」
と言うと、木花咲姫は侍女を伴って歩き始めた。
しかし、その行く先は池の前の赤い寝殿風の木造りの建物ではなかった。
その横を通り抜け、そのずっと奥の深い森のような山奥だった。
ハナ達や長老達は、あれっ?と思った。
「おやっ、はて?ワシは宮殿と寝殿と聞き違えたかのう? そもそも宮殿と寝殿は何が違うんじゃ?」
長老達が小声で囁き合った。
そんな声が聞こえたのか、
「先ほどの赤い木造りの宮殿は、わたくしが住んでいる宮殿です。これから行く所はレムリアの神様方が住んでおられる神殿です。
わたくしは木花咲姫と言う名の通り、ずっと昔にこの地球に初めて花の咲く木々を持ち込んで育ててきた女神です。
それまで地球には花の咲く樹木はありませんでした。
他の惑星から地球の環境で育ちそうなしかも花の美しい樹木を選んで、試行錯誤しながら懸命に育んで参りました。
なので、この先にはいろいろな珍しい木の花が咲いています」
やがて、木花咲姫が言った通り、路の両側には、種々の背丈の高い樹木が育っていて、様々な美しい花を咲かせていた。
また林の中の木陰には、色々なランの花々が咲き乱れていた。
「それでは、これからはツル性の樹木の森になります。藤や 葡萄やもその仲間です」
やがて路の両側には垂れ下がった美しい大きな藤の花がアチコチに見られた。
そんな藤の花にも立ち止まる事なく、皆は歩き続けた。
不思議な事に、ツル性の樹木は、何本かが互いに絡み合って、巨樹のように空高くまで伸びていた。
標高が高くなったためか、霧が出て来た。
その水分を吸うように、歩いている路にも樹木の根やツルが網みたいに覆うようになってきた。
そしてとうとう地面が根やツルで隈なく覆われてしまった。
霧に囲まれた両側には、藤や他の樹木のツルが勢いよく伸び、まるで熱帯の密林のようだった。
「霧のため根やツルは濡れて滑りやすくなります、でも大丈夫です。これから路は今までの坂道でなく階段になりますので心配ありません」
木花咲姫の言った通り、不思議な事に、路を覆っていた樹木の根やツルが隈なく絡み合って階段状になっていた。
そして皆が乗ると、その重さのためか、ゆっくり沈んだ。
「何だか空中を登っていくみたいだね」
グー太が気に入ったのか、久々に声を出した。
皆は、その樹木の根やツルでできた網目状の階段の珍しさに目を奪われた。
そして皆で面白がって登っていたが、その階段は延々といつまでも続いていた。
その内、フとゴクウが、不思議な事に気づいた。
それは、そんなにも長く高い階段路なのに、誰ひとり音を上げなかった事だ。
休憩もしないのに高齢の長老達でさえ息ひとつ切らしていなかった。
その時だった。
「おーい、おーい、待ってくれ!」
霧の中、下方の遠くから声がした。
太郎の声だった。
しかも、霧の中の、かなり下の、かなり遠くからの声だった。
「あっ、太郎兄ちゃんの声だわ、どうしたのかしら?」
真っ先に妹のハナが反応した。
「ひょっとして、あたい達を追い駆けているのかしら?もしかして彼女にふられたとか?」
ハナナが笑った。
(それは、大いに有り得る)
とでも言うように皆は顔を見合わせた。
「太郎兄ちゃーん、私達はここよー!」
ハナが振り向いて、霧の下遠くに向って叫んだ。
「おーい、お前達は、いったいどこへ向ってるんだーい?今まで歩いてきた路とは全然違ってるぞー!」
また太郎の声が聞こえた。
「太郎兄ちゃーん、大丈夫よー、間違ってなんかいないわー、木花咲姫様が案内してくださってるのよ、大丈夫よー!」
ハナが大声で答えた。
すると、今度はたまり切った疲れを振り絞ったような太郎の声が、聞こえた。
「おーい、あのな、お前達が登っているのは山じゃないぞー、空中だぞー」
「えっ?空中?・・・??」

(つづく)

ハイハイハイハーイ、いやいや、空中って?はてはて、いったいどうなっているの?それに、太郎の恋はどうなったの?
はいはい、それにオリンピックもころなも何もかもゴッチャ混ぜで、おまけに雷や台風や豪雨まで!
これから金メダルの数も気になりますが、コロナの数も気になります、果たしてどのくらいまで?
はい、てな訳で、「金増えコロナ減れ!」とまたのお運びを願いまして、バイバイ バーイとさせていただきまーす!

大暑の東京五輪! 台風まで駆けつけ?

2021-07-26 20:39:22 | 俳句日記の部屋

コロナ籠り 鬱憤吹き飛ぶ 金メダル  湧水

混沌の 列島に若き 金メダル  湧水

なぜか我も 早朝散歩 五輪日々  湧水

夏すとっく 初の散歩や 日の出前  湧水

早朝の ストック散歩に 木魚音  湧水

里寺の 木魚も早き 真夏朝  湧水

草いきれ 分け入る奥に ガイヤ臭  湧水

真夏きて かいなもすねも 出すわが身  湧水

涼しさや かいなとすねに 山の風  湧水

開け放つ 古民家どこも 扇風  湧水

川柳

今年もまた ランニングシャツと 短パン姿  もう何年同じ格好かな?

いよいよ東京五輪! 梅雨明けの飛騨

2021-07-21 10:55:51 | 俳句日記の部屋

突然に 真夏日なりし 梅雨の明け  湧水

汗覚悟 すっきり目指し 夏草刈り  湧水

 帰宅せし 顔揚々と 夏草刈り  湧水

村の空 草刈り音の 梅雨の明け  湧水

夏草や 焦らずに日に 籠一杯  湧水

さうな室 入る覚悟や 夏草取  湧水

畑サウナ 終えしシャワーの 快適さ  湧水

夏山に 若き声々 遥か永久(とわ)に  湧水

川柳

丸々と ダイエット知らず 干し布団  これでも体重は減ってるよ

作句せば 思い出すトースタ 焼きピーマン  とーすたで焼いて醤油味がお薦め

コロナ夏 福音告げて きりぎりす  ぎりぎりでーす?何が?

先見えぬ 良し悪し混在 五輪かな  はて、どうなる事やら?


(続) 連載小説「幸福の木」 274話 神殿への道の花園

2021-07-18 16:55:07 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ!、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや、いよいよ、オリンピック、どんな風になるのか?フタを開けてみないと分からないようなチグハグ感いっぱいの五輪になりそうです。
はい、いよいよ梅雨も開けそうで、熱さも気になります。
そう、海外ではマスクも日本ほど律儀にしないようで、やはりA型の多い日本人は少し統一感が強すぎるのでは?
はい、何はともかく、原稿が参りましたので、早速、小説に参りたいと思います、はい、では、開幕、開幕!

274 神殿への道の花園

太郎は、美しい巫女や女性神官がいると聞いてその姿を想像した。
すると、嬉しさと楽しみがこみ上げてきた。
途端に上機嫌になって、知らないうちに口笛が出た。
その太郎の変わりぶりに、ハナやハナナも長老達もあきれていた。
「おいおい、太郎よ、そんなに前で見てても美しい巫女さん達には触われないのだぞ」
ご機嫌な太郎を冷やかすように、まず長老が言った。
「そうじゃ、この前の果物みたいに、触ろうとしても消えて霧になるんだぞ」
修験者もからかう口調で言った。
しかし、当の太郎は口笛や鼻歌を唄い続けていて、全く聞く耳を持たなかった。
ハナとハナナはため息をつくように顔を見合わせた。
「あの太郎兄ちゃんの目は、そんな事は思っていないわ、きっと生身の巫女さん達が出て来て大歓迎されると信じ込んでいる眼だわ」
太郎の横顔を見ながら、ハナが心配そうに言った。
やがて目の前の霧の画面に、美しい富士のような山が映り始めた。
「おお、始まった、始まった!きっと、あの山の頂上に宮殿があるんだ」
太郎は興奮したように体を乗り出して叫んだ。
しかし、その富士のような山の頂はまだずっと遠くにあり、その前には広々とした山麓が広がっていた。
そこには高原が横たわっているのが見えた。
その高原の中央をを切り開くように一本の真っ直ぐな広い道が、はるか山頂まで続いているように見えた。
その道の両側には、庭園のような園や緑の木々や数々の池が延々と続いているようだった。
太郎やハナはもちろん、長老達も、唖然とした。
いや全員が今まで見た事のない絵に描いたような美しいパノラマだった。
その眺望に魅せられた皆は、まるで自分達がその中央の広い道へ降りて、そこからゆっくり歩いてゆくように錯覚した。
そう、皆は映像の世界の中でゆっくり歩いていた。
「あっ、道がここから階段になっているわ。この階段の上には広場があるみたい、何か歌声が聞こえるわ」
ハナナが言った。
「ほんと、女の人達の歌声みたい、綺麗な歌声」
ハナも合槌を打った。
映像がゆっくり階段を登り切ると、そこはやはり平らな広場だった。
そこには、木々の間にいくつかの広場が隣り合っていた。
そしてそれぞれの広場に数人の女性達が輪になって唄っている姿が見えた。
遠くには児童達の広場や男性達の広場が見えた。
青い広い空の下、緑の木々、それに香しい風。
その風に乗って、美しい歌声がはっきりと聞こえてきた。
「おお、何と美しい綺麗な歌声じゃ、まるで心が洗われるようじゃ、聞いているワシ等の身も心も澄み切って透明になってしまいそうじゃ」
長老と修験者は観劇の声を上げた。
その時、ソプラノ歌手のような美しい歌声が聞こえてきた。
広場の中央で1人の女性が唄っているようだった。
その歌の歌詞がはっきりと聞こえてきた。
「ここはれむりあ、芸術の里の歌の広場、
私達は歌詞や詩で私達の喜びや悲しみの想いや感動を皆に伝えて共有しています。
れむりあの人々は、遠くにいても、その音が小さくても、心でその響や波動を感じる事ができるのです。
なので、村中の人々が皆が好きな時に私達の歌声を楽しんで聞いています」
美しい歌の歌詞はそんな内容だった。
女性が唄い終わると、太郎が言い出した。
「あのさ、今の歌って、俺の耳にははっきりと歌の意味が分かったぞ、こんな事は初めての経験だ。
ひょっとしたら、あの歌手って特別に俺に向って唄っていたのかな」
「隊長、それはないと想いますよ、私にもはっきりと歌の内容が分かりましたから」
タタロが言うと、長老達も言い出した。
「そうじゃ、ワシにもはっきり分かったぞ」
「あれは、ワシ達のためにわざわざ唄ってくれたんじゃ」
するとハナナも続いた。
「そうだわ!あれは、女神様の代わりにあたい達に説明してくれたのよ、きっと頼まれていたんだわ」
「そうね、残念ながら太郎兄ちゃんだけに向って唄ったんじゃなかったみたいね」
ハナがとどめを射すと、もしかしてと期待していた太郎は憤然とした。
皆は、あちこちから聞こえる美しい歌声に感激しながらも、そのままゆっくり道を進んだ。
「あっ、また道が階段になっている、今度は何の広場かしら?」
またハナナが嬉しそうに言った。
映像が、階段をゆっくり登り切ると、そこは様々な花が咲いている広い花園のようだった。
アチコチニ青い池が見え、その周囲には美しい色とりどりの変わった花々が咲いていた。
そして、所々にたくさんの花の苗も育てられていた。
まるで全体が花専門の広大な植物園のようだった。
そして花の世話をしているのか、チラホラと若い女性達の姿も見えた。
皆は美しく、仕草にも上品さが感じられた。
前の歌の広場では、美しい女性達があまりにも多過ぎて、太郎も目移りしてしまった。
が、今度は女性達も少ないので、太郎は女性の姿をゆっくり見る事ができた。
その中の1人、最も近くで花の苗の世話をしている女性が太郎の眼に止まった。
優雅に立ったり座ったりしながら夢中になって花の苗の世話をしていた。
時々、苗を見て頬笑んだり声をかけたりして作業の手が止まる事が無かった。
その姿は、見れば見るほど太郎の好みのタイプのような女性だった。
太郎は何とか声をかけたいと想い、その女性の後ろ姿から目が離れなかった。
その時、不思議な事が起こった。
映像の中の作業中の、その女性が太郎の熱い視線を感じたのか、振り向いて太郎を直視した。
「えっ?」
驚いた太郎はドキッとして心臓が止まった。
驚いたのは、太郎だけでなく、心配顔で見ていたハナや爺達もだった。
「おお、何って事じゃ、こっちを見たぞ!えっ、あっち側の人もこっちが見えるのか?」
映像を見ていた長老達が思わず叫んだ。
さらにさらに、驚くべき事が起こった。
太郎の好みらしき、その花の苗を世話をしていた女性は、立ち上がって近くの白い薔薇の花を一本切り取った。
そして、それを胸にかざして太郎の方へ近づいて来た。
さらに、太郎の目を見ながら、その白い薔薇を顔の前に差し出した。
「わーーうを!」
差し出された薔薇は太郎の目の前で、しかも映像の画面からはみ出していた。
「わーーっ??!」
パニクッて、何が何だか分からない太郎が、それを手で受け取ると、確かに受け取る事ができた。
「わーっ、受け取れた!重さもある本物だ、いったい、どうなっているんだ?」
何度も太郎は驚き、見ていた皆も驚いた。
そして、見守っているはずの木花咲姫の姿を見ようとした。
しかし、傍にいたはずの木花咲姫の姿も無かった。
「えーっ、どうなってしまったのかしら?女神様もいなくなったみたいだし、木花咲姫様の姿も消えてしまったわ」
ハナ達が悲鳴を上げた。
ハナとハナナはもちろん、皆も映像から目を離して我に帰った。
そして、慌てて席を立ち、タイムエッグの周りをあちこち探した。
しかし、どこにも木花咲姫の姿は無かった。
「ホホホホホ!皆さん、こちらですよ、わたくしはこちらですよ!こちらにいますよ」
突然、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あっ、木花咲姫様の声だわ」
ハナ達が、急いでその声の方に視線を向けると、そこは映像の中だった。
しかも、眼の前の広場の花園のずっと奥の方だった。
すると、手前にいて、太郎に薔薇を手渡した女性が答えて言った。
「あの、木花咲姫様は、あちら奥の木の花の御殿にいらっしゃいますよ。ここは草花の花園です。奥の方は木の花の園になっています。そこに木花咲姫様がいらっしゃいます」
答えたのは、間違いなく太郎に白い薔薇を手渡した映像の中の女性だった。
「へえーっ、何じゃ、これは?画面の向こう側とこちら側とで話ができるのかい?繋がってしまったみたいじゃ」
「正に!そんな感じじゃ、いったい、どうなったのじゃ?いやはや、驚く事ばかりじゃ!」
長老と修験者はそう叫ぶと眼をパチパチさせていた。
その時、何処からか聞き慣れた海の女神の声がした。
「皆さん方、わたくしは海の女神でございます、あなた方が山の宮殿の方へ行かれるなら、すべてをこちらの木花咲姫様におまかせして、わたくしは去る事にいたします。
その事をあなた方にお話しして、お別れしたいと思いまして再び参りました。
それでは、またお会いできる機会を楽しみにしております。はい、それまでお元気で旅をお続けください、さようなら、さようなら、さようなら」
海の女神の声がだんだん遠くなり、聞こえなくなってしまった。
ハナや太郎達は、どうすれば良いのか分からず、そのまま立ち尽くしていた。
「あの、宜しければ私が木花咲姫様のところまでご案内いたしますが、どうされますか?」
太郎達を見ていた、目の前の映像の女性が尋ねてきた。
「??」
太郎もハナ達も、どう答えたらよいか分からなかった。
「あのさ、案内してくれるって言ってるんだから、案内してもらったらいいんじゃないか?」
グー太の声だった。
今までずっと口出ししなかったグー太が、久々に声を出した。
その言葉に、ハナやハナナは太郎や長老達と目を合わせた。
まかせる!と言う無言の眼の合図だった。
「それじゃ、お願いいたします」
ハナとハナナは皆を代表して、画面の女性に返事をした。
「それではご案内いたしますので、どうぞ皆さんこちらへお集まりください」
「えっ?映像の中へだぞ?」
と皆が心で驚きながらも、映像の中に足を踏み入れると、そこは何の違和感も無かった。
「あっ、入れた!」
それは、まるでお客さんが見ている舞台へ踏み込んで、その世界の中に入り込んだみたいだった。
皆はその場所の景色は既に見慣れていたが、突然、珍客が現れたかのように小鳥達が驚いて寄ってきた。
そして、美しい花々の園の中を、皆はゾロゾロと女性の後を金魚の糞みたいに付いて歩いた。
「あの、花の妖精さん達があなた方に歓迎の手を振ったり声をかけたりしていますので、どうぞ、答えてあげてください、かわいい妖精さん達も喜びますので」
と女性が言ったが、誰にもかわいい妖精の姿など見えなかった。
「やあーやあー!」
太郎だけが、見えているかのように手を振って歩いた。
やがて草丈の低い草花の園を抜けると、今度は背の高い木の花の園に入った。
桃や梨やさくらんぼ、それに梅やさくらやもくれんや桐など様々な木の花々が咲いていた。
道の両側には大きな池があって、その周りをそれぞれの木が色とりどりの花々を咲かせていた。
大きな池の畔に木造りの宮殿のような建物が見えた。
まるで寝殿造りの平安時代の絵のような景色だった。

(つづく)

ハイハイハイハーイ、いやいや花ばかりの道を歩いているようで、正に花の楽園って感じですね、奥には何があるのでしょうか?はい、ではまたのお運びを願いバイバイとさせていただきます、とうとうオリンピック、いやいやどうなるか?はい、小説よりも面白くなりそう!


二刀流見参! 白い登山すとっく?

2021-07-15 23:47:31 | エッセイの部屋

なんてたいとるでは、昔の武士の話なのか、それとも何の話なのか分からない。
昔の話でなく、現在の話で、しかも白杖の話である。
先日、山の中の水路脇の散歩道を歩いていて、誤って水路へ背から落ちた事を述べた。
幸い怪我もなく自力で帰宅できたがかなりしょっくだった。
その後は、水路側でなく、反対側のロープの手すりのある方を歩く事にした。
そちら側も落ちると危険なので、ろーぷを白杖で触れながら歩いている。
これは、まるで電車のぱんたぐらふのようだ。
白杖をろーぷの上に乗せて滑らすようにして歩いている。
この歩き方は、けっこう疲れる。
それに、時々は、念のために白杖を手前の道に降ろして確認する必要も出てくる。
(白杖を、もう一本ほしいくらいだ!)
なんて冗談を想いながら歩いていた時に、フとらじおの「山カフェ」を思い出した。
今は高齢者の登山が増えている。
なので、その人達が登山をする時には、すきーのすとっくのように両手に杖を持つと言う話だった。
両手のすとっくは、スキーと同様に転倒防止や疲れ軽減にもかなりの効果があるようだった。
「あっ、これだ!」
と思いついた。
早速、帰宅して古びて使わなくなった白杖を探し出した。
そして、がたがたしている箇所をてーぷで固定した。
翌日、早速、両手に白杖を持って玄関を出ていつもの散歩に出かけた。
村の人達に、何か大袈裟な格好をしているな!なんて見られると想うと、少し恥ずかしかった。
しかし、使い心地は悪くなかった。
舗装道路を歩いていても、左右の白杖で手前の広い範囲の安全性が確認できるので、より安心して進む事ができた。
なのでいつもより早く歩く事ができた。
(おお、これはなかなか調子いいぞ!)
と大喜びだったが、私の杖はかなり丈夫な方だったので、ちょっと重いな!と感じた。
ねっとで調べてみると、登山すとっくは握る箇所にとらっぷがあり、t字型の握り部なので疲れにくいようだった。
(これも、慣れてくれば大丈夫だろう)
一本使用の場合、前方に障害物などがあると、一本の杖を左右に動かして確かめなければならない。
二本杖ならば、一本で進行方向を確かめつつ同時に他方で障害物の大きさも確かめる事ができる。
なので、行動範囲も二倍以上に広がるように想えた。
実際、いつもの山の中の水路脇の道も、歩きやすかった。
一本の杖で手すりろーぷを滑らせ、もう一本の杖で前を確かめ、宮本武蔵のように二刀流なので素早く歩けた。
「これなら、猪や猿が出ても、右手の杖を振り回せば追い払う事もできるな」
等と頼もしく想えた。
そんな訳で、いつもの倍の早さで歩いて帰宅した。
我が家の玄関に入ろうとしていたら、通りがかった近所の女性が、
「湧水君、熊が出るようだから気を付けてね」
と注意された。
「えっ?」と驚いた。
そう言えば、水路の散歩道から下る時に、珍しく近所の人が軽トラを止めて、
「気を付けて、無理をしないように!」
と声をかけられた。
私は、てっきり、白杖を二本も振り回していたので、多分、目に止まって久々に声をかけたのだろうと思っていた。
そうではなかったようだ。
田舎の人は、寡黙と言うか、無口である。
特に男性がそうだ。
なので、もう私が知ってる事だろうと思って、「熊が出るから」と言う言葉を省いたのかも知れなかった。
もし、そうだとしたら、今回の私の二本すとっくの思いつきは、実にたいむりーな決断だったと言う事ができる。
それは、私の場合、十分有り得る話だ。
と言うのは、先日のへるぱーさんの蜂射されの時も、そうだった。
あの日は前日からの料理が余っていて、私も体調も痛風気味で悪く、スーパーの買い物も断りたかった。
しかし、当日の予定変更は無理な話なので仕方なく買い物を頼むつもりだった。
それが、買い物の直前にヘルパーさんが蜂に射されて、急遽帰ってもらう事になった。
なので、心の中で、・・・・などと思っても絶対に口にも顔にも出せなかった。
他にも、私には今までに同じような事があった。
昔のブラジルにいた時の話になるが、 日本から来たばかりの私に意地悪をする現地の男性がいた。
私は逆らわずに耐え、めげずに仕事を続けた。
すると、まもなく彼が預かっていたお金が盗まれたり、息子が交通事故で顔面を大手術をすると言う不幸に遭遇した。
以来、彼の私への意地悪は無くなった。
また、日本へ帰ってきた時でも、私を上司に告げて私を追い出した老夫婦がいた。
が、後になって、その息子が大事故に会った事を聞いた。
これ等は私の勝手な思い過ごしかも知れないが、どうやら私の周囲には私に意地悪する人達を私に代わって懲らしめる守護神達が付いているのかも?なんて思っている。
そう言えば、今まで長年自然農法を行っていて、雨が欲しい時に天の竜神に願うと、実際に雨が降ってくれて感謝した事が何度もあった。
いやいや、失礼、これは、話が外れてしまった。
さて話を元のトレッキングポウル、いや、登山ストックにもどして、
市販の価格をねっとで調べてみると、3000円台からありそうだ。
早速、白杖を買った近くの福祉の店に取り寄せができるか問い合わせしてみようと想う。
よく視覚障碍者が駅のホームから誤って落ちて亡くなったにゅーすを聞く。
私が落ちた水路も、駅のホームや流れの速い深い排水路だったら大きな事故になっていた事だろうと想う。
いつもの慣れている道でも、長年の内には勘ちがいで不慮の事故が起こる事もあるだろう。
そんな時でも、もし一本の白杖でなく二本の白杖だったら、多分落ちないで済んだだろうと想う。
なので、二本杖を実際に自分で使ってみて、良さそうならば皆に紹介しようと想う。
いや、もしかしたら、熊に出会うかも・・・?

(おしまい)