いつもいろいろ勉強になる、ETV特集(NHK)。
いつものように、朝、新聞テレビ欄をチェックしたら、表題の番組を見つけたので、早速録画予約。
「想像したとおり、深刻な事態になっている!」が視聴後の感想でした。
空前のクワガタブームの中で、とくに人気が高い「オオクワガタ」。このクワガタが、世間では1匹数万円、高いものは10数万円と値がついている。 番組では、1匹14万円の値がついているものが紹介されていました。
インターネットで検索したら、出てくるわ出てくるわ、このオオクワガタの魅力にとりつかれた人たちのHPやらブログやら・・・。
確かに、独特の黒光りする頑丈そうな体つき、低重心なやつは、どことなく戦車を思わせる「強そう」なイメージ。
私も子どものころは近所の林や山へ、庄川本流にあるダムサイトへ、外灯のある場所へ、とクワガタやカブトムシを探しにいったものです。コクワガタ、ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタが普通みられるもので、カブトムシはあまり見つからない。ヒラタクワガタもあまり見られらない・・だいたいこんな感じでした。オオクワガタなんて図鑑の中でしか見ることができませんでした。富山県では少ないのかどうかしりませんが、とにかく見たことも、手にしたことも一度もなかったのが、オオクワガタでした。
それが、いまや、昆虫ショップやペットショップなどへ行って金を出せば簡単に手に入るというのですから、ずいぶん変わりました。カブトムシの類は「捕まえる」というのが常識だったけど、今や、「買う」時代です。
とにかく、ネットオークションをはじめ、あちこちで、虫が金になっているのです。「黒いダイヤ」などと言われているようです。
金にするためなら何でもありということで、オオクワガタの産地(?)というのか、オオクワガタが生息しやすい環境の里山では、その幼虫がすんでいるクヌギやブナの木を次々削って捕獲していくというやり方が横行しているというのです。材割(ざいわり)というそうですが、120年、130年の木がこれによって死んでいく。大変な被害をこうむっており、警察がパトロールするほどひどいそうです。
クワガタは枯れ木や、生きている木でも枯れている部分のなかで卵を産み、その幼虫は数年かけてその木の繊維を食べて成長していきます。番組によると、幼虫は木の繊維を食べながらそれを体内の微生物の力で分解し、あらたな栄養分を作り出しているそうです。実はこれが里山の生物の循環にとって重要な役割を果たしているというのです。いわゆる食物連鎖のピラミッドの最底辺で重責を担っているのです。乱獲によって、オオクワガタが消えてしまった里山が生まれている。大変な事態に直面しているのです。
外来生物法が施行されてブラックバスの問題についていろいろ考えをめぐらしている過程で、動植物の輸入が急速に拡大し、そのことが日本全国でさまざまな問題を起こしているということを心配していました。日本には居ない生物があちこちで発見されるー琵琶湖でピラニアが捕獲される、最近発見報道があった外来生物ーなどです。
番組では、珍しい世界のクワガタ、カブトムシが輸入され、それがいつの間にか野外に放たれ、全国で発見されているといいます。しかも、単に発見されたというにとどまらず、すでに定着している痕跡もあるというのです。
心配されるのは、交雑が進行してしまうということ。日本古来のクワガタやカブトムシが何百万年かけて日本固有の形態に進化してきたのに、外来種と交雑することで、そのDNAがあっという間に書き換えられる。
輸入だけでも規制できないか、番組でもそう問いかた上で、環境省の役人の言葉を紹介。「特別なルールをつくると貿易摩擦の火種になりかけねない」、「国内で飼育の規制がされていないものを、輸入禁止にすることはまずい」という理由から、それは見送りになったそうです。環境の問題を、貿易摩擦の問題で後回しにしていいのか、と思いました。
出演された大学教授は、「問題は、金で虫が買えること、本来日本に居ない虫を簡単に手にすることができる不自然な状況にあることだ」と言っていました。それはその通りです。しかし、番組の限界もあったのでしょう、禁輸は難しいという前提にたった上でどう対処するかという話に終始したのが非常に残念でした。つまり、当面は「野外に放さない」ようにするしかないとか、それは大人のマナーやモラル、学校の授業などでの啓蒙活動による努力が大事だとかというものです。確かにそれは必要なことだけれど、現実に迫られている問題を解決するには、あまりにも弱いと思うのです。そういうやり方では、もう手遅れになるというのが私の実感です。専門の教授らしく、「やっぱり、輸入禁止を一刻も早く決断すべき」と一言でも言ってほしかったですね。