ですから、アメリカとの同盟関係においてのみ一定の高い能力を発揮し得るけれども、自ら自立した形で海を渡って外国を席巻するような構造にまずなっていない。これは税金の使い道を普通にチェックしている国であれば一目瞭然のはずなのに、我が国の国会はそういった議論に踏み込んだことがほとんどないような印象を持っております。現在の構造である限り、例えば百倍の防衛費を投入しても外国を侵攻することは不可能なんです。それは世界の先進国の軍事専門家であれば常識であります。そういった常識の議論がなぜできないのか。これがまず私が不思議に思っている点でございます。
この外国を侵攻できない構造に自衛隊を維持することこそ、専守防衛という言葉で表現されている日本のポリシーの具体的な姿であるということも言えるのではないか。そういったことを踏まえながら、例えばアメリカとの関係もきちんと維持していかなければいけないわけであります。日本がこの専守防衛の構造を捨てることを特に米国は望んでいない。これは日本の軍事的自立の問題につながるからでございます。この専守防衛というのは、当然ながら日本の原理原則である平和主義に含まれてくるものと理解されるべきではないか。そういった日本の専守防衛の構造の自衛隊であります。
この自衛隊の国際貢献への派遣は憲法の精神とも矛盾しないものだと考えて、このイラクの復興支援あるいは安全確保支援活動への派遣というものを明確に打ち出すべきである。単なるその海外派兵といった幼稚な表現は避けるべきだと私は思っております。
そういう中で、今衆議院でも、今日かなり活発な論戦が行われているのをラジオで聞きましたけれども、まず、イラク戦争への日本国としての支持は日本の原理原則を根拠にすべきであったろうと。あるいは、イラク戦争への支持を打ち出す前に、私自身は、日本の原理原則から支持をするかしないかということを明確にすべきだということを言ってきた立場であります。
これについては若干考え方について整理をし、御説明を申し上げなければならないんですが、私は、一昨年九月十一日の同時多発テロの直後の日本の政府、つまり対米協力あるいは対米支援というものが先行している状態について、修正すべきだという意見を述べ、また一昨年十月十三日のテロ特別委員会においても、与党側の参考人としてそういう修正を求める発言をしたわけであります。
当時の日本としての立場を考えれば、同時多発テロを日本の平和主義への重大な挑戦と位置付けて対テロ戦争に参加すべきという選択肢が目の前にあったということが言えるわけであります。反対する立場であればまた反対すればいいと。そういう立場を明らかにすれば、日本は、テロの容疑者や容疑組織が国際的な裁きの場に立たされるまで国際共同行動を取るべき立場であるということが明確になったわけであります。
そういう立場に立てば、自衛隊の派遣にしても、憲法の枠内という制約は当然伴いますけれども、地球上のどこへでも派遣できなければならない立場であった。また、それを実行しなければ、自ら掲げてきた平和主義とか国連中心主義を否定することになりかねない自家撞着に陥るような立場であったわけであります。こういった形で議論を整理して、対テロ戦争に参加をすれば、望んでもいない集団的自衛権の議論に頭を突っ込むこともなく自らの国際的な役割を果たすことはできるだろうという話を、当時、テロ特別委員会でしたわけであります。
これと同じように、イラク戦争への支持についても、大量破壊兵器の有無を根拠にすべきではないということを私は申し上げた。それは、アメリカやイギリスが大量破壊兵器があるということを理由に開戦に踏み切ったとしても、日本はそれを検証する能力がないわけですから、ただそれに引きずられて開戦を支持するというのは自ら墓穴を掘る行動になりかねないという危惧があったからであります。
日本は、やはりこれは小泉総理も言ってこられたことではありますけれども、大量破壊兵器開発疑惑国とテロ支援国家、あるいはテロリストの結合を世界平和への脅威と考えなければならない立場だと。これは平和主義の問題であります。そして、これは同時に日本の国家安全保障上の問題、すなわち個別的自衛権の問題として考えなければならない立場だということを当時も申し上げていた。
とにかく、日本は、大量破壊兵器開発疑惑国とテロリストを結合した場合、三つの立場からテロの標的となることを考えなければいけない国である。それは、サミットを構成する主要国の一つである、あるいは米国の最大の同盟国である、又は対テロ戦争を遂行している国であるという立場からテロのターゲットになりかねない。
そういう日本は、イラクに大量破壊兵器開発の疑惑を晴らすように働き掛けたけれども拒否された立場である。イラクは国連の査察を妨害したなどのかどで国際的な軍事制裁の対象となった面があるわけであります。そういったことを前提とした場合、日本は自国の原理原則と国家安全保障上の理由から軍事制裁を支持するという選択をしたのだということを言えばそれなりの筋は通る。もちろんこれに反対するという立場を打ち出しても構わなかったわけであります。
場合によっては、軍事制裁を支持するというだけじゃなくて、個別的自衛権の問題から自衛隊を、これは当然ながら補助的な作戦に限定されるわけでありますが、参戦させられる立場であるということも明らかにしてよかったわけであります。これは理屈の上では成り立つわけであります。この考え方であれば、大量破壊兵器の有無と開戦を支持した日本政府の立場が関係付けられることはなかったと。この考え方を示しておくことは、同様に、北朝鮮に核兵器の開発や保有を断念させる上でも有効な圧力となったであろうと私は考えております。
そういったことをきちっと明確にした上で、軍事組織、具体的には自衛隊でありますが、その派遣についての位置付けは、治安が回復されるまでの期間限定の復興支援とすべきであるということで送り出していくことが必要だろうと思ったわけであります。
とにかく、送り出していく場合、担当地域にかかわらず、当初は治安維持能力が必要になります。ほかの地域を担当しているほかの国の組織に対する応援もあり得るわけであります。そんなことを考えますと、例えば武器弾薬の輸送についても、これはこん包そのものが外見で実は判別できるわけでありますが、輸送任務はきちっと果たすべきである。こういったことを考えないと、やはり治安維持の回復までの任務を全うすることはできないだろうという話なんです。
そういう流れの中で、持たせてやる武器というものは、普通科連隊、つまり歩兵連隊の部隊が元々装備している重迫撃砲以下の部隊装備火器の範囲内で選ぶ。そして、本当に先進国の軍隊同士が戦うために編成を組み直すことが、実はRCT、連隊戦闘団という考え方があるんですが、これは絶対にやらない。これはいわゆる憲法が禁じている武力行使に当たりますので、これはやらないということで一線を画さなきゃいけない。
しかも、どんな武器を持っていくかということよりも重要となるのは、部隊行動基準、ROEを事細かに任務を遂行できる内容に定めることであろうと。どんな破壊力の大きな重装備を持っていたとしても、先に攻撃されるようなROEであれば何ら意味をなさないからであります。そういった議論をきちんと整理していただきたい。
それから、安全についていろいろ議論がありますけれども、イラクにおいてはやはり基本的に米国だけが、米軍だけが攻撃されている。イギリスは慣習を無視した結果、トラブルを起こして六人亡くなりましたが、若干違うとらえ方をしなきゃいけない。また、ほかの国の部隊が余り攻撃されていない理由については早急に調査をする必要があるだろう。
最も重要となるのは、イラク国民とひざ詰めでニーズの発掘を行わなきゃいけない。各階層の指導者たちと話をし、本当にアラビア語の堪能な人間をそこに投入をしてニーズを掘り出していく。そのニーズに合った形で自衛隊が活動をすれば、当然ながらその地域のイラクの住民が自衛隊の安全を守ってくれるぐらいの立場になることは可能である。自ら安全を確保することがここで可能になってくるという話なんです。
そういったニーズの発掘を基に、日本は、CPA、暫定占領当局と調整した上、任務を遂行する。どんな服装をして行った方がいいかなという選択も、そのニーズがはっきりした上で決めていくということが大事であります。
そして、日本がやらなきゃいけないのは、単なる米国の下部組織ではなく、自国の原理原則で行動していることを現地の言葉でイラク国民に伝える努力が必要だろう。そして、日本が担うべきは、日本の戦後復興のノウハウなどによるイラクの国家建設を手助けすることだということを忘れてはならない。その辺のことをもう一回整理をして自衛隊の派遣を議論していただきたい、決めていただきたいというのが私の立場であります。
どうもありがとうございました。
○委員長(松村龍二君) ありがとうございました。
次に、栗田公述人にお願いいたします。栗田公述人。
○公述人(栗田禎子君) 栗田と申します。中東の近現代史を勉強しております。
最初に資料を御確認ください。A4の資料がありまして、三枚目に大きいB4のが付いております。この資料であります。
まず最初に、今審議されておりますいわゆるイラク特措法、審議するに当たって我々が検討すべき問題が大きく言って二つほどあると考えられます。一つは、自衛隊という武装部隊、武装集団を海外に派遣するということ自体が、それ自体がそもそも憲法の平和主義の原則と矛盾するのではないかという問題です。第二点として、実際に自衛隊をイラクに派遣するということがイラクの状況を考えたときにどのような意味を持つのか、あるいは、これがまた更に重要なことですが、イラクのみならず、日本・中東関係全般にどういう影響を与えるかという問題がございます。
この間、この法案を推進される立場の方々からも、イラクの復興に貢献することは中東の安定に寄与することであると、なので日本は復興に参加しなければいけないという御議論がありました。正にそれはそのとおりであります。イラクに対応することは中東全体に対応することであります。ですので、単に自衛隊の海外派遣それ自体が憲法に矛盾するということ以外に、それが日本・中東関係全体にどういう影響を及ぼすのかということを是非考える必要がある。
以下では、その問題について主にお話ししていきたいと思います。
第一番目ですが、一番目はイラク戦争の正当性をめぐる問題であります。
この法案の第一条では、イラクに対する米国等の武力行使は一連の国連決議に基づくものであったということが明記されております。ところが、この戦争を国連決議に基づく戦争だったという理解は実は必ずしも国際社会の一致を見ていないという現実がございます。
御承知のように、戦争に至る前、多くの国が問題を国連中心で平和的に解決することを求め、戦争に反対してまいりました。戦争が始まった後も、あるいは戦争が一段落した後も、戦争が国連決議に基づくものではなかったという立場を取っております。実はこの中に中東諸国の大半が含まれるのであります。記憶をたどっていただければ、戦争に至る、戦争前の時期に、イスラム諸国会議、あるいはアラブ連盟、あるいは中東諸国のほとんどが加入しております非同盟諸国がいずれも戦争に対して反対の姿勢を示したということは御記憶に新しいことと思います。
ですので、イラク戦争が国際的に正当な戦争だったということについて国際社会の一致が見られていない、その状況で戦争は正当だったという前提に立つ、しかもそれを第一条に明記した法案を通すということの問題性をよくお考えいただきたいと思います。
第二点目です。これは戦争の結果成立した現在のイラクの米英占領体制の正当性をめぐる問題であります。
本法案は、国連決議一四八三は占領体制を正当化しているという理解に基づいて作られております。ところが、実は、この国連決議一四八三が占領体制を正当化しているか否かについても実は多くの議論、疑義が出されております。例えば、一四八三は確かに全会一致で通ったわけですが、それは占領を正当化するものではないんだと、占領が存在すると事実を確認し、米英は占領軍なので占領軍としての義務を果たすよう求めたものにすぎないという理解がございます。
さらにまた、その一四八三の適切性自体についても、これは戦争が終わった後いつまでもイラクの人々を何の国際的枠組みもなしに米英の占領下にほっておくわけにはいかないので、一応一四八三という決議を国連の場で通したけれども、しかしその一四八三の決議が完全に、内容が完全に適切あるいは公正ではないだろうと、そういう議論もございます。
例えば、現在の体制、イラクにおける占領体制というのはあくまで米英占領軍中心で取り仕切っていく体制であって、そこでは復興プロセスあるいは今後のイラクの国づくりのプロセスから、そこに国連やイラク人が果たす役割を極力排除していこうとするような構図に実はなっているんだと、その意味で一四八三の内容というのは実は完全に適切あるいは公正なものではないので、ある段階に至ったらば、今後、国連やイラク国民が中心的役割を果たすべき体制に作り直していくべきだという議論がございます。
これは、御承知のように、フランス等はこういう議論を最近しきりに行っておりますし、あるいはアジアの大国でも、インドは例えばやはり同じような理解に立って、国連決議に基づいては、国連決議の一四八三の枠内では派兵ができないという考え方に基づいて、軍隊派遣を見送るといった決定を行っております。実は、中東諸国の多くもこれと同じ理解を取っているということが重要であります。
こうなってきますと、一四八三は占領体制を正当化しているという理解に基づき、かつ米英占領体制への協力を中心に据えた法案を日本が成立させるということの重要な問題点が明らかになると思います。これが三番目につながっていきます。
と申しますのは、本法案の内容は、イラクに対する人道支援もうたわれておりますが、あくまで主眼は米英占領軍が行うイラク国内の安全・安定確保活動を支援することであることは明白であります。ところが、その米英占領軍がイラクで行う安全・安定確保活動というのは何かというと、結局はこれは占領体制に対するイラク国民の抵抗を弾圧する、あるいは抵抗を排除するための軍事行動であるというところがあからさまな真実であろうと考えられます。
その際に、イラク国民の抵抗、米英軍に対して抵抗を行う人々の、これは多様、様々であり得ます。先ほど板垣公述人からのお話にも触れられましたが、中には確かに旧体制支持者、旧サダム・フセイン政権支持者によるものもあると思いますが、一方には、一般の市民が、当初は抵抗していなかったのが、占領体制下で生活状況が一向に改善されない、むしろ悪化していく、あるいは米英占領軍がいかにも外国占領軍であることを丸出しにするような非常に横暴な行動を取るといったことに対して抗議をして、それに対して、その結果衝突が起きると。場合によっては、非暴力の抵抗であったものに対して米英軍が武力で対処して流血の事態に至ってしまう、そういったこともございます。
要は、米英軍に対するイラク国民の抵抗、様々なイデオロギーに基づく様々な立場の人が行うかもしれませんが、基本は米英占領軍がいるということによって起きている問題ですね。外国占領が存在するということによってもたらされる占領軍とイラク国民の間に生じる矛盾の問題であるということでございます。
そこに、米英占領軍とイラク国民の激しい矛盾が存在するイラクに占領軍の側に完全に立つということを明らかにした形で自衛隊が出ていくということの問題点が考えられます。占領体制の国際的疑義が出されている状況下で、占領軍の側に完全に身を置き、占領軍の安全・安定確保活動、具体的に軍事行動であるわけですが、それを間接的にせよ支援するということの重要な問題点が明らかになると思います。
まとめに入りますが、最初に述べましたように、イラク問題は中東全体にとって重要な、大変な重要性を持つ問題であります。文字どおりイラクの復興にかかわることは中東全体の安定に寄与することであります。ですので、長い目線で日本・中東関係を見据えてイラクに関与していくというならば、イラクに関与するに当たっては是非とも中東諸国、中東の人々の意見を踏まえるべきであると考えられます。
中東の多くの国々、国民によってイラク戦争が国際法上の根拠を欠いたものと考えられ、かつその後の占領体制の正当性も疑われている状況で占領軍の軍事行動への協力を中心に据えた法案を成立させることには大きな問題があると考えられます。
欧米諸国が中東に対して軍事侵略や植民地支配の過去を持つのに対して、日本は幸いに、これまでは中東に対して直接的には軍隊を送ったことも占領したこともないという幸運に恵まれております。もちろん、先ほど板垣公述人がおっしゃったように、実際は第一次大戦後の中東分割にかかわった過去は実はありますが、直接軍隊を送っただの植民地支配をしたということは幸いにもなかったんですね。そのために、日本は中東では非常に良いイメージを享受してきたと言うことができます。今後、日本がすべきことは、このイメージを大切にして、中東の人々が望むような形の支援を考えていくべきだということだと思います。
ここで、中東の諸国、中東の人々の意見を踏まえるべきだということに関連して資料を紹介させていただきたいのですが、中東の人々は具体的に日本に何を望んでいるか。これは通り一辺倒の調査ではもちろん済みません。草の根の民衆から聞き取り調査をする、あるいは実際にイラクに行って一般の市民とお話をするといったことも必要で、NGOの方々などは実際もうかなりそういう作業を進めておられると思います。
そこまでは私今回できなかったのですが、それに代わり得る一番手っ取り早いといいますか、無味乾燥かもしれませんが、簡単な方法として、在京中東諸国の大使館にアンケートを送って、中東は日本に何してほしいですかと聞くということがあり得ます。
添付した資料の二番目がそのアンケート原文になっておりまして、それを簡単にまとめたものが三枚目の資料になっております。
これは後でお時間があるときに見ていただきたいんですが、基本的に四点聞きました。法案自体への意見は聞かないということを前提にした上で、日本・中東関係に関して以下の四点について一般的参考意見を伺う。一、イラク戦争に対する貴国政府の立場はどのようなものでしたか。二、戦争の結果、イラクにもたらされた現在の状況に対する貴国政府の立場はどのようなものでしたか。三点目、イラク復興に関して、日本に最もふさわしく、期待される支援の在り方はどのようなものと考えますか。四番、日本は中東で一般にどのような役割を期待されているのでしょうか。
これは実は、おとつい、昨日と二日間で全アラブ諸国とイラン、トルコ、それからイスラエル、それから中東ではありませんが関係深いということでパキスタンの諸国に、大使館にメールとファクスでお送りしまして、二日間で、火曜日に送って水曜の午後までに返事を返せという大変乱暴なことをやったわけですが、その中でも、文書回答、トルコ、シリア、スーダン、パキスタン、カタールですね、大使が直接、大使若しくは一等書記官に直接面接いただいたのがチュニジア、ヨルダン、サウジアラビア、三国、計八か国からの回答がありまして、大変な関心の強さを逆にうかがわせました。
詳しい内容の検討は省きますが、これを読みますと、後で見ていただきますと、中東の人々が日本に望んでいる支援は圧倒的に医療、人道及びインフラ再建等の平和的支援であるということが確認できると思います。
本国会がイラク支援の在り方を決定されるに当たりましては、是非とも中東諸国、中東の人々の意見を踏まえる形で、中東の人々の感情を決して踏みにじるようなことがない形で決定を下されることを切に希望いたします。
ありがとうございました。
○委員長(松村龍二君) ありがとうございました。
次に、前田公述人にお願いいたします。前田公述人。
○公述人(前田朗君) このような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
私の意見陳述は原稿の形でお手元に配られていると思いますので、それを読み上げる形で陳述させていただきます。ただし、やや長めですので、あちこち省略をしながら進めさせていただきます。
戦争犯罪論を研究する者として意見陳述をさせていただきます。
最初に、米英軍のイラク占領とは何であるのかを検討いたします。ここでは原則論、特に国際刑法の観点から見た原則論を再考したいということでございます。その後、イラク特別事態に対処しようとする本法案への疑問を述べていくということ、及びアフガニスタン国際戦犯民衆法廷というNGOの試みについて御紹介をした上で、本法案への疑問点を述べさせていただきます。
一番ですが、本法案はイラクに自衛隊を派遣しようとする法案ですから、米英のイラク占領統治の法的性格、その正当性について検討することから始めます。国際法上、他国の領土にその国家の同意なしに軍隊を派遣することは違法な武力行使に該当し、侵略行為を構成することは言うまでもありません。
十行ほど飛ばしますが、さて、法案二条三項は、国連安保理事会決議一四八三その他政令で定める国連総会又は安保理決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができるとして、その国の同意なしに対応措置を実施するものと定めています。ここに言う「イラクにおいて施政を行う機関」としての米英が、その国の同意なしに軍隊を派遣する法的権限を有していたか、侵略行為に当たらないような権限を有しているかが問題になります。
決議一四八三本文パラグラフ四は、当局に対し、国連憲章及びその他の関連国際法に従い、特に安全で安定した状態の回復及びイラク国民が自らの政治的将来を自由に決定できる状態の創出に向けて努力することを含む領土の実効的な統治を通じてイラク国民の福祉を増進することを要請するとしています。
決議一四八三前文パラグラフ十三は、統合された司令部の下にある占領国としてのこれらの諸国の関連国際法の下での特定の権限、責任及び義務を認識し、としています。すなわち、決議本文パラグラフ四も、決議前文パラグラフ十三も、米英両国に対して関連国際法の遵守を求めているものです。関連国際法とあるのは、具体的には国連憲章及び国際人道法を構成する国際法が念頭に置かれています。
決議一四八三から明らかなことは、米英両国が事実上の占領国として、既存の関連国際法によって認められた特定の権限、責任、義務を果たす必要があること、つまり占領統治が国際法に従って行われるべきことであります。
決議一四八三は、米英両国に占領を行う権限を与えたものではなく、事実上占領している米英両国に占領国としての既存国際法上の権限、責任、義務を果たすように求めたものです。決議一四八三は新たな権限、責任、義務を米英両国に付与するものではありません。
そもそも現代国際法は戦争の違法化の歴史の上に成立していますから、国連憲章一条は、国際紛争の平和的手段による解決を国連の最も重要な目的として掲げております。今日、武力行使を行わないという武力行使禁止の原則、これが現代国際法の基本となっております。
もちろん、現実には、今日の国際社会において、なお各地で多数の武力行使が実際に発生しています。それらの武力行使について合法性の有無が常に的確に判断されているか否か、これにも疑問が残ります。現代国際法が戦争や武力行使を違法化しているとはいっても、現実に現代国際法が十分遵守されているわけではありません。
そこで、ハーグ条約やジュネーブ条約等の発展の上に国際人道法が形成されてきました。現代国際法は、戦争や武力行使を違法化しつつ、現実に生じている戦争や武力行使に対応して、すべての当事者が遵守しなければならない人道的な規則を発展させてきました。国際的性格の武力紛争であれ、非国際的性格の武力紛争であれ、現実に発生した武力紛争において、捕虜の虐待や民間人に対する攻撃など、いかなる場合にも違法とされるべき行為を禁止することによって、戦争に伴う残虐性や無用の攻撃を抑制しようとしたものです。したがって、国際人道法は、当該武力行使が合法なものであるか違法なものであるかにかかわりなく、すべての当事者に人道的な規則の遵守を求めたものです。そのような責任、義務が米英両国にあるにすぎません。
三枚目に移ります、若干飛ばして三枚目ですが。
法案一条は、イラク特別事態なる概念を、安保理決議六七八等三決議、これらに基づいた、及びそれに対して引き続き行われている事態という形で特徴付けております。ここでは少なくとも二つの問題を指摘できます。
最初に、米英によるイラク攻撃がこれら三決議に基づく正当な武力攻撃であったという解釈の問題点です。米英のイラク攻撃が安保理決議に基づいた行動だという主張には非常に無理があります。この点は、しかし既に何度も議論されてきたことでありますので繰り返しはいたしません。ただ、二点だけ別途指摘しておきたいと思います。
第一に、これら三決議が米英に武力行使を認めたという解釈をするとすれば、これらの三決議が武力行使の程度や範囲や時期について何ら言及していない事実に照らすと、そのような解釈をしてしまえば、安保理が米英にほとんど無条件に権限を付与した白紙委任の決議であるということになってしまいます。そのような解釈は到底採用できません。
第二に、安保理における新決議をめぐる経過及びその後の各国の対応から見ても、これら三決議がイラク攻撃を授権したという解釈は国際社会においておよそ共通認識となっていないことであります。このような事態では、政府が行うべきことは、決議はこう解釈できるとか、このような解釈も可能であると主張することではなく、決議の意味内容を安保理において直接明白にするように努力すること、及びイラク復興支援を一刻も早く国連の枠組みに戻すように努力することであります。このことが最も重要なことであると考えております。
次に、法案一条の「これに引き続く」というさりげない表現であります。この文言は、イラク攻撃のみならず、軍事占領もまた三決議によって正当化されるかのような解釈を取っております。
しかし、ここには大きな飛躍があります。三決議が米英によるイラク攻撃を認めた決議であるという解釈自体が無理であることをいったん差しおいて、仮に米英のイラク攻撃が三決議に基づいた行動であったとしても、その場合、その武力行使の目的や程度は三決議から当然に引き出される範囲のものでなければなりません。したがって、米英によるイラク攻撃は、大量破壊兵器及び長距離ミサイルの拡散の防止に必要な範囲に限られなくてはなりません。この目的と程度から必要な範囲を超えて、イラクの民主化等の名目でイラク全土を長期にわたって軍事占領することは明らかに必要な限度を超えていますから、むしろ三決議に違反することになります。三決議が大量破壊兵器の拡散の防止だけではなく、イラクの民主化等をも含んで米英に授権しているという解釈はおよそ採用できません。
第一に、三決議にはそのような解釈を許す文言がありません。第二に、そもそも安保理にはそのような授権を行う権限がありません。国連憲章三十九条等には、そのような権限は一切書かれておりません。
三番目として、戦闘地域と武器使用の部分に移らせていただきます。この部分も既に多く議論されている部分ですので、私は簡単に述べるにとどめさせていただきます。
本法案三条三項における安全確保支援活動とは、具体的には米英軍によるイラク敵対勢力に対する軍事作戦を支援するものです。それは、仮に武器弾薬ではなく水や食料を輸送するものであったとしても、また自衛隊自身の武力行使を伴わないものであったとしても、米英軍の軍事作戦と地理的にも時間的にも一体不可分の武力行使に当たることは明白です。
また、戦闘地域と非戦闘地域の区別の問題も既に十分御議論されていると思いますので、ここでは省略いたします。
現在、イラク国民は、旧政権に反対していた勢力も一致団結して、イラク国民自身の政権樹立、米英占領軍の早期撤退を要求しています。このような状況下で日本が自衛隊を派遣し、軍事占領体制に加わることは、イラク国民に対する侵害であり、結果として挑発行為となってしまいます。これは重大な過ちを犯すものであります。
占領が長引き、イラク国民の手に政権を返すのが遅れれば、抵抗は更に広範に広がっていく可能性があります。このような状況下で自衛隊を派遣するということは、自衛隊員が状況の中で思わず知らず戦争犯罪を犯してしまいかねない、そのような状況に送り出されることを意味しています。そうなれば、自衛隊員にも犠牲が生じるおそれが高く、自衛隊員をそのような危険に身をさらす地域に送るべきではありません。
続きまして、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷というNGOの活動について若干御紹介いたします。
お手元にブックレット、チラシ等の資料が配付されていると思います。後ほどお読みいただけると幸いです。
私たちは、今月二十一日に東京千代田区の日本教育会館におきまして、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷第一回公判を開廷いたします。イギリス、アメリカ、インド及び日本から五名の民衆法廷判事、日本から十一名及びアメリカから一名の民衆法廷検事が参集します。これは国際社会において空洞化され、形骸化されつつある武力行使禁止原則、戦争と武力行使の違法化という現代国際法の基本原則を復権させるために、民衆のイニシアチブによって開催する民衆法廷です。
民衆法廷検事団が作成し、アメリカ大使館及びホワイトハウスに送付した起訴状によれば、ジョージ・ウォーカー・ブッシュ米大統領は、アフガニスタン空爆に関して、侵略の罪、人道に対する罪、民間人虐殺、捕虜虐殺、捕虜虐待の戦争犯罪で訴追されるものとなっております。
民衆法廷の歴史は、ベトナム戦争におけるラッセル・アインシュタイン法廷、あるいは湾岸戦争におけるラムゼイ・クラーク法廷、さらには、二〇〇〇年十二月に東京で開催された女性国際戦犯法廷などが知られております。
これらに基づいて私どもも開催いたしますが、民衆法廷には国内法上も国際法上も根拠が与えられてはいません。そのような法廷を開くのは、国家や国際社会が国際法を守らないときであります。国家や国際社会に対して国際法をきちんと守るべきであるという提案をしていく、そのようなNGO活動であるということになります。
次のページに移りますが、私どもは、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷は、これまで六次にわたるアフガニスタン戦争被害調査団を派遣して、アフガニスタンにおける難民や民間人爆撃の被害者を調査してきました。カブールでも、カラバーでも、クンドゥズやマザリシャリフでも、被害者は一般市民です。一瞬にして二十名もの村人が殺害された現場を訪れ、クラスター爆弾によって足にけがをした少年、失明した少年に会ってきました。破壊されたモスクの跡で、村人は悲痛に耐えながらモスクの再建をしていました。アフガニスタン各地を回ると、アメリカの戦争犯罪がよく見えてきます。
私たちは、日本各地、先週は沖縄でも開催いたしましたが、十二回にわたって公聴会を積み重ねて、アフガニスタンを取材したジャーナリスト、NGO、国際政治学者、国際法学者に証言をいただき、多数の証拠を積み上げてきました。そのうちの一部は、お手元の公聴会記録集に掲載しております。その成果の上に第一回公判を迎えようとしております。
問答無用で大量破壊兵器を投下し、破壊を続ける帝国の軍事戦略が世界を混乱させている現状に民衆自身が向き合い、反戦平和の思想と運動を紡ぎ直す取組、日本国憲法の平和主義を世界に宣伝をする、そういう取組でもあります。
私どもの法廷は、七月二十一日に続いて、本年十二月にも公判を開き、判決を目指します。
同時に、私たちは現在、イラク国際戦犯民衆法廷を立ち上げるべく準備を始めております。何の罪もない数千人のイラク市民を殺害し、劣化ウラン弾をまき散らして国際平和に脅威をもたらしているブッシュ大統領らを被告人とする民衆法廷運動は本年夏には立ち上げたいと思います。
最後に、NGOの立場としてまとめの言葉を述べさせていただきます。
私たちは、ペシャワール付近の四つの難民キャンプで、多数のアフガニスタン難民への取材を繰り返してきました。また、アフガニスタン各地で多数の民間人犠牲者や遺族に取材し、彼らの生活再建のために努力をしてきました。
四半世紀にわたる戦争や内戦、そして米軍による爆撃によって、アフガニスタンは正に歴史の廃墟と化していました。古くから文明の十字路と呼ばれたアフガニスタンの都市は破壊され、人々は傷付き、おびえて暮らしています。貴重な文化が破壊され、一つの世代が丸ごと破壊されてしまった悲劇を目の当たりにしてきました。
いわゆる北部同盟が横滑りした現政権は首都カブールを支配しているだけで、アフガニスタンには責任ある政府が欠落したままです。今なおアフガニスタンには治安が回復していません。米英軍はいまだに軍事作戦を展開し、殺りくを続けています。国連も治安回復には無力です。国際赤十字さえも攻撃の対象とされて虐殺されております。そして、アフガニスタンは再び世界最大の麻薬大国になっています。国際社会はアフガニスタンをきちんと復興させる努力をまだ十分行っておりません。
〔委員長退席、理事阿部正俊君着席〕
アフガニスタンには北部同盟という受皿があってもなおこのような有様です。イラクには北部同盟に比肩すべき受皿もありませんでした。そのために、秩序が回復されず、無法な占領が継続する中で人民の抵抗が続いております。治安が回復する兆しもないままに、人々は危険や貧困や病気に脅かされ、米英軍の横暴に悩まされております。
欧米諸国による植民地支配に苦しんだ過去を持つ中東において日本が果たすべき役割は、むしろイラク人民自身の生活再建、国家の復興に努力することであり、協力することでありまして、軍事占領に協力することではございません。日本が果たすべきイラク国民への復興の努力というのは、中立、公平性、非武装が原則の復興支援でなければなりません。武装した部隊による、米軍への、復興というのは、これとは全く異なるものであるということであります。
これまでアフガニスタンでもイラクでも、多くのNGOが懸命になって活動を続けてきました。私はイラクでは活動しておりませんが、アフガニスタンでこれまで多数の人々の生活再建に努力をしてまいりました。その立場からはっきり申し上げますと、自衛隊派遣は、自衛隊だけではなく、日本のNGOに対する反感を生み出すおそれがあります。アフガニスタンの民衆の間にも、日本の自衛隊が給油をしたことが徐々に知られ始めております。今までは知られておりませんでしたから、私どもはカブールで活動できますが、このことが知られると、カブールで私どもが活動すること自体が危険になっていくということであります。
イラクの人民は既に、日本が米英による戦争を支持したことを十分に承知しております。そして、米英軍が軍事占領を続けているその現場に自衛隊が派遣されるということは、自衛隊員がイラクの民衆から反感を招いてしまう、それだけではなくて、イラクで活躍をするNGOやジャーナリストなど日本社会構成員もまた、残念ながら反感と敵意と憎悪の対象にされてしまうということになります。このようなことではNGOの活動は非常に危険であり、できないことになってしまいます。自衛隊派遣は、その意味で、NGOが取り組んでいる復興支援に対する妨害にしかなりません。
大変厳しい言い方で恐縮ですが、NGOの活動にとっても大変妨げになるおそれが極めて高いという懸念を申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
この外国を侵攻できない構造に自衛隊を維持することこそ、専守防衛という言葉で表現されている日本のポリシーの具体的な姿であるということも言えるのではないか。そういったことを踏まえながら、例えばアメリカとの関係もきちんと維持していかなければいけないわけであります。日本がこの専守防衛の構造を捨てることを特に米国は望んでいない。これは日本の軍事的自立の問題につながるからでございます。この専守防衛というのは、当然ながら日本の原理原則である平和主義に含まれてくるものと理解されるべきではないか。そういった日本の専守防衛の構造の自衛隊であります。
この自衛隊の国際貢献への派遣は憲法の精神とも矛盾しないものだと考えて、このイラクの復興支援あるいは安全確保支援活動への派遣というものを明確に打ち出すべきである。単なるその海外派兵といった幼稚な表現は避けるべきだと私は思っております。
そういう中で、今衆議院でも、今日かなり活発な論戦が行われているのをラジオで聞きましたけれども、まず、イラク戦争への日本国としての支持は日本の原理原則を根拠にすべきであったろうと。あるいは、イラク戦争への支持を打ち出す前に、私自身は、日本の原理原則から支持をするかしないかということを明確にすべきだということを言ってきた立場であります。
これについては若干考え方について整理をし、御説明を申し上げなければならないんですが、私は、一昨年九月十一日の同時多発テロの直後の日本の政府、つまり対米協力あるいは対米支援というものが先行している状態について、修正すべきだという意見を述べ、また一昨年十月十三日のテロ特別委員会においても、与党側の参考人としてそういう修正を求める発言をしたわけであります。
当時の日本としての立場を考えれば、同時多発テロを日本の平和主義への重大な挑戦と位置付けて対テロ戦争に参加すべきという選択肢が目の前にあったということが言えるわけであります。反対する立場であればまた反対すればいいと。そういう立場を明らかにすれば、日本は、テロの容疑者や容疑組織が国際的な裁きの場に立たされるまで国際共同行動を取るべき立場であるということが明確になったわけであります。
そういう立場に立てば、自衛隊の派遣にしても、憲法の枠内という制約は当然伴いますけれども、地球上のどこへでも派遣できなければならない立場であった。また、それを実行しなければ、自ら掲げてきた平和主義とか国連中心主義を否定することになりかねない自家撞着に陥るような立場であったわけであります。こういった形で議論を整理して、対テロ戦争に参加をすれば、望んでもいない集団的自衛権の議論に頭を突っ込むこともなく自らの国際的な役割を果たすことはできるだろうという話を、当時、テロ特別委員会でしたわけであります。
これと同じように、イラク戦争への支持についても、大量破壊兵器の有無を根拠にすべきではないということを私は申し上げた。それは、アメリカやイギリスが大量破壊兵器があるということを理由に開戦に踏み切ったとしても、日本はそれを検証する能力がないわけですから、ただそれに引きずられて開戦を支持するというのは自ら墓穴を掘る行動になりかねないという危惧があったからであります。
日本は、やはりこれは小泉総理も言ってこられたことではありますけれども、大量破壊兵器開発疑惑国とテロ支援国家、あるいはテロリストの結合を世界平和への脅威と考えなければならない立場だと。これは平和主義の問題であります。そして、これは同時に日本の国家安全保障上の問題、すなわち個別的自衛権の問題として考えなければならない立場だということを当時も申し上げていた。
とにかく、日本は、大量破壊兵器開発疑惑国とテロリストを結合した場合、三つの立場からテロの標的となることを考えなければいけない国である。それは、サミットを構成する主要国の一つである、あるいは米国の最大の同盟国である、又は対テロ戦争を遂行している国であるという立場からテロのターゲットになりかねない。
そういう日本は、イラクに大量破壊兵器開発の疑惑を晴らすように働き掛けたけれども拒否された立場である。イラクは国連の査察を妨害したなどのかどで国際的な軍事制裁の対象となった面があるわけであります。そういったことを前提とした場合、日本は自国の原理原則と国家安全保障上の理由から軍事制裁を支持するという選択をしたのだということを言えばそれなりの筋は通る。もちろんこれに反対するという立場を打ち出しても構わなかったわけであります。
場合によっては、軍事制裁を支持するというだけじゃなくて、個別的自衛権の問題から自衛隊を、これは当然ながら補助的な作戦に限定されるわけでありますが、参戦させられる立場であるということも明らかにしてよかったわけであります。これは理屈の上では成り立つわけであります。この考え方であれば、大量破壊兵器の有無と開戦を支持した日本政府の立場が関係付けられることはなかったと。この考え方を示しておくことは、同様に、北朝鮮に核兵器の開発や保有を断念させる上でも有効な圧力となったであろうと私は考えております。
そういったことをきちっと明確にした上で、軍事組織、具体的には自衛隊でありますが、その派遣についての位置付けは、治安が回復されるまでの期間限定の復興支援とすべきであるということで送り出していくことが必要だろうと思ったわけであります。
とにかく、送り出していく場合、担当地域にかかわらず、当初は治安維持能力が必要になります。ほかの地域を担当しているほかの国の組織に対する応援もあり得るわけであります。そんなことを考えますと、例えば武器弾薬の輸送についても、これはこん包そのものが外見で実は判別できるわけでありますが、輸送任務はきちっと果たすべきである。こういったことを考えないと、やはり治安維持の回復までの任務を全うすることはできないだろうという話なんです。
そういう流れの中で、持たせてやる武器というものは、普通科連隊、つまり歩兵連隊の部隊が元々装備している重迫撃砲以下の部隊装備火器の範囲内で選ぶ。そして、本当に先進国の軍隊同士が戦うために編成を組み直すことが、実はRCT、連隊戦闘団という考え方があるんですが、これは絶対にやらない。これはいわゆる憲法が禁じている武力行使に当たりますので、これはやらないということで一線を画さなきゃいけない。
しかも、どんな武器を持っていくかということよりも重要となるのは、部隊行動基準、ROEを事細かに任務を遂行できる内容に定めることであろうと。どんな破壊力の大きな重装備を持っていたとしても、先に攻撃されるようなROEであれば何ら意味をなさないからであります。そういった議論をきちんと整理していただきたい。
それから、安全についていろいろ議論がありますけれども、イラクにおいてはやはり基本的に米国だけが、米軍だけが攻撃されている。イギリスは慣習を無視した結果、トラブルを起こして六人亡くなりましたが、若干違うとらえ方をしなきゃいけない。また、ほかの国の部隊が余り攻撃されていない理由については早急に調査をする必要があるだろう。
最も重要となるのは、イラク国民とひざ詰めでニーズの発掘を行わなきゃいけない。各階層の指導者たちと話をし、本当にアラビア語の堪能な人間をそこに投入をしてニーズを掘り出していく。そのニーズに合った形で自衛隊が活動をすれば、当然ながらその地域のイラクの住民が自衛隊の安全を守ってくれるぐらいの立場になることは可能である。自ら安全を確保することがここで可能になってくるという話なんです。
そういったニーズの発掘を基に、日本は、CPA、暫定占領当局と調整した上、任務を遂行する。どんな服装をして行った方がいいかなという選択も、そのニーズがはっきりした上で決めていくということが大事であります。
そして、日本がやらなきゃいけないのは、単なる米国の下部組織ではなく、自国の原理原則で行動していることを現地の言葉でイラク国民に伝える努力が必要だろう。そして、日本が担うべきは、日本の戦後復興のノウハウなどによるイラクの国家建設を手助けすることだということを忘れてはならない。その辺のことをもう一回整理をして自衛隊の派遣を議論していただきたい、決めていただきたいというのが私の立場であります。
どうもありがとうございました。
○委員長(松村龍二君) ありがとうございました。
次に、栗田公述人にお願いいたします。栗田公述人。
○公述人(栗田禎子君) 栗田と申します。中東の近現代史を勉強しております。
最初に資料を御確認ください。A4の資料がありまして、三枚目に大きいB4のが付いております。この資料であります。
まず最初に、今審議されておりますいわゆるイラク特措法、審議するに当たって我々が検討すべき問題が大きく言って二つほどあると考えられます。一つは、自衛隊という武装部隊、武装集団を海外に派遣するということ自体が、それ自体がそもそも憲法の平和主義の原則と矛盾するのではないかという問題です。第二点として、実際に自衛隊をイラクに派遣するということがイラクの状況を考えたときにどのような意味を持つのか、あるいは、これがまた更に重要なことですが、イラクのみならず、日本・中東関係全般にどういう影響を与えるかという問題がございます。
この間、この法案を推進される立場の方々からも、イラクの復興に貢献することは中東の安定に寄与することであると、なので日本は復興に参加しなければいけないという御議論がありました。正にそれはそのとおりであります。イラクに対応することは中東全体に対応することであります。ですので、単に自衛隊の海外派遣それ自体が憲法に矛盾するということ以外に、それが日本・中東関係全体にどういう影響を及ぼすのかということを是非考える必要がある。
以下では、その問題について主にお話ししていきたいと思います。
第一番目ですが、一番目はイラク戦争の正当性をめぐる問題であります。
この法案の第一条では、イラクに対する米国等の武力行使は一連の国連決議に基づくものであったということが明記されております。ところが、この戦争を国連決議に基づく戦争だったという理解は実は必ずしも国際社会の一致を見ていないという現実がございます。
御承知のように、戦争に至る前、多くの国が問題を国連中心で平和的に解決することを求め、戦争に反対してまいりました。戦争が始まった後も、あるいは戦争が一段落した後も、戦争が国連決議に基づくものではなかったという立場を取っております。実はこの中に中東諸国の大半が含まれるのであります。記憶をたどっていただければ、戦争に至る、戦争前の時期に、イスラム諸国会議、あるいはアラブ連盟、あるいは中東諸国のほとんどが加入しております非同盟諸国がいずれも戦争に対して反対の姿勢を示したということは御記憶に新しいことと思います。
ですので、イラク戦争が国際的に正当な戦争だったということについて国際社会の一致が見られていない、その状況で戦争は正当だったという前提に立つ、しかもそれを第一条に明記した法案を通すということの問題性をよくお考えいただきたいと思います。
第二点目です。これは戦争の結果成立した現在のイラクの米英占領体制の正当性をめぐる問題であります。
本法案は、国連決議一四八三は占領体制を正当化しているという理解に基づいて作られております。ところが、実は、この国連決議一四八三が占領体制を正当化しているか否かについても実は多くの議論、疑義が出されております。例えば、一四八三は確かに全会一致で通ったわけですが、それは占領を正当化するものではないんだと、占領が存在すると事実を確認し、米英は占領軍なので占領軍としての義務を果たすよう求めたものにすぎないという理解がございます。
さらにまた、その一四八三の適切性自体についても、これは戦争が終わった後いつまでもイラクの人々を何の国際的枠組みもなしに米英の占領下にほっておくわけにはいかないので、一応一四八三という決議を国連の場で通したけれども、しかしその一四八三の決議が完全に、内容が完全に適切あるいは公正ではないだろうと、そういう議論もございます。
例えば、現在の体制、イラクにおける占領体制というのはあくまで米英占領軍中心で取り仕切っていく体制であって、そこでは復興プロセスあるいは今後のイラクの国づくりのプロセスから、そこに国連やイラク人が果たす役割を極力排除していこうとするような構図に実はなっているんだと、その意味で一四八三の内容というのは実は完全に適切あるいは公正なものではないので、ある段階に至ったらば、今後、国連やイラク国民が中心的役割を果たすべき体制に作り直していくべきだという議論がございます。
これは、御承知のように、フランス等はこういう議論を最近しきりに行っておりますし、あるいはアジアの大国でも、インドは例えばやはり同じような理解に立って、国連決議に基づいては、国連決議の一四八三の枠内では派兵ができないという考え方に基づいて、軍隊派遣を見送るといった決定を行っております。実は、中東諸国の多くもこれと同じ理解を取っているということが重要であります。
こうなってきますと、一四八三は占領体制を正当化しているという理解に基づき、かつ米英占領体制への協力を中心に据えた法案を日本が成立させるということの重要な問題点が明らかになると思います。これが三番目につながっていきます。
と申しますのは、本法案の内容は、イラクに対する人道支援もうたわれておりますが、あくまで主眼は米英占領軍が行うイラク国内の安全・安定確保活動を支援することであることは明白であります。ところが、その米英占領軍がイラクで行う安全・安定確保活動というのは何かというと、結局はこれは占領体制に対するイラク国民の抵抗を弾圧する、あるいは抵抗を排除するための軍事行動であるというところがあからさまな真実であろうと考えられます。
その際に、イラク国民の抵抗、米英軍に対して抵抗を行う人々の、これは多様、様々であり得ます。先ほど板垣公述人からのお話にも触れられましたが、中には確かに旧体制支持者、旧サダム・フセイン政権支持者によるものもあると思いますが、一方には、一般の市民が、当初は抵抗していなかったのが、占領体制下で生活状況が一向に改善されない、むしろ悪化していく、あるいは米英占領軍がいかにも外国占領軍であることを丸出しにするような非常に横暴な行動を取るといったことに対して抗議をして、それに対して、その結果衝突が起きると。場合によっては、非暴力の抵抗であったものに対して米英軍が武力で対処して流血の事態に至ってしまう、そういったこともございます。
要は、米英軍に対するイラク国民の抵抗、様々なイデオロギーに基づく様々な立場の人が行うかもしれませんが、基本は米英占領軍がいるということによって起きている問題ですね。外国占領が存在するということによってもたらされる占領軍とイラク国民の間に生じる矛盾の問題であるということでございます。
そこに、米英占領軍とイラク国民の激しい矛盾が存在するイラクに占領軍の側に完全に立つということを明らかにした形で自衛隊が出ていくということの問題点が考えられます。占領体制の国際的疑義が出されている状況下で、占領軍の側に完全に身を置き、占領軍の安全・安定確保活動、具体的に軍事行動であるわけですが、それを間接的にせよ支援するということの重要な問題点が明らかになると思います。
まとめに入りますが、最初に述べましたように、イラク問題は中東全体にとって重要な、大変な重要性を持つ問題であります。文字どおりイラクの復興にかかわることは中東全体の安定に寄与することであります。ですので、長い目線で日本・中東関係を見据えてイラクに関与していくというならば、イラクに関与するに当たっては是非とも中東諸国、中東の人々の意見を踏まえるべきであると考えられます。
中東の多くの国々、国民によってイラク戦争が国際法上の根拠を欠いたものと考えられ、かつその後の占領体制の正当性も疑われている状況で占領軍の軍事行動への協力を中心に据えた法案を成立させることには大きな問題があると考えられます。
欧米諸国が中東に対して軍事侵略や植民地支配の過去を持つのに対して、日本は幸いに、これまでは中東に対して直接的には軍隊を送ったことも占領したこともないという幸運に恵まれております。もちろん、先ほど板垣公述人がおっしゃったように、実際は第一次大戦後の中東分割にかかわった過去は実はありますが、直接軍隊を送っただの植民地支配をしたということは幸いにもなかったんですね。そのために、日本は中東では非常に良いイメージを享受してきたと言うことができます。今後、日本がすべきことは、このイメージを大切にして、中東の人々が望むような形の支援を考えていくべきだということだと思います。
ここで、中東の諸国、中東の人々の意見を踏まえるべきだということに関連して資料を紹介させていただきたいのですが、中東の人々は具体的に日本に何を望んでいるか。これは通り一辺倒の調査ではもちろん済みません。草の根の民衆から聞き取り調査をする、あるいは実際にイラクに行って一般の市民とお話をするといったことも必要で、NGOの方々などは実際もうかなりそういう作業を進めておられると思います。
そこまでは私今回できなかったのですが、それに代わり得る一番手っ取り早いといいますか、無味乾燥かもしれませんが、簡単な方法として、在京中東諸国の大使館にアンケートを送って、中東は日本に何してほしいですかと聞くということがあり得ます。
添付した資料の二番目がそのアンケート原文になっておりまして、それを簡単にまとめたものが三枚目の資料になっております。
これは後でお時間があるときに見ていただきたいんですが、基本的に四点聞きました。法案自体への意見は聞かないということを前提にした上で、日本・中東関係に関して以下の四点について一般的参考意見を伺う。一、イラク戦争に対する貴国政府の立場はどのようなものでしたか。二、戦争の結果、イラクにもたらされた現在の状況に対する貴国政府の立場はどのようなものでしたか。三点目、イラク復興に関して、日本に最もふさわしく、期待される支援の在り方はどのようなものと考えますか。四番、日本は中東で一般にどのような役割を期待されているのでしょうか。
これは実は、おとつい、昨日と二日間で全アラブ諸国とイラン、トルコ、それからイスラエル、それから中東ではありませんが関係深いということでパキスタンの諸国に、大使館にメールとファクスでお送りしまして、二日間で、火曜日に送って水曜の午後までに返事を返せという大変乱暴なことをやったわけですが、その中でも、文書回答、トルコ、シリア、スーダン、パキスタン、カタールですね、大使が直接、大使若しくは一等書記官に直接面接いただいたのがチュニジア、ヨルダン、サウジアラビア、三国、計八か国からの回答がありまして、大変な関心の強さを逆にうかがわせました。
詳しい内容の検討は省きますが、これを読みますと、後で見ていただきますと、中東の人々が日本に望んでいる支援は圧倒的に医療、人道及びインフラ再建等の平和的支援であるということが確認できると思います。
本国会がイラク支援の在り方を決定されるに当たりましては、是非とも中東諸国、中東の人々の意見を踏まえる形で、中東の人々の感情を決して踏みにじるようなことがない形で決定を下されることを切に希望いたします。
ありがとうございました。
○委員長(松村龍二君) ありがとうございました。
次に、前田公述人にお願いいたします。前田公述人。
○公述人(前田朗君) このような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
私の意見陳述は原稿の形でお手元に配られていると思いますので、それを読み上げる形で陳述させていただきます。ただし、やや長めですので、あちこち省略をしながら進めさせていただきます。
戦争犯罪論を研究する者として意見陳述をさせていただきます。
最初に、米英軍のイラク占領とは何であるのかを検討いたします。ここでは原則論、特に国際刑法の観点から見た原則論を再考したいということでございます。その後、イラク特別事態に対処しようとする本法案への疑問を述べていくということ、及びアフガニスタン国際戦犯民衆法廷というNGOの試みについて御紹介をした上で、本法案への疑問点を述べさせていただきます。
一番ですが、本法案はイラクに自衛隊を派遣しようとする法案ですから、米英のイラク占領統治の法的性格、その正当性について検討することから始めます。国際法上、他国の領土にその国家の同意なしに軍隊を派遣することは違法な武力行使に該当し、侵略行為を構成することは言うまでもありません。
十行ほど飛ばしますが、さて、法案二条三項は、国連安保理事会決議一四八三その他政令で定める国連総会又は安保理決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができるとして、その国の同意なしに対応措置を実施するものと定めています。ここに言う「イラクにおいて施政を行う機関」としての米英が、その国の同意なしに軍隊を派遣する法的権限を有していたか、侵略行為に当たらないような権限を有しているかが問題になります。
決議一四八三本文パラグラフ四は、当局に対し、国連憲章及びその他の関連国際法に従い、特に安全で安定した状態の回復及びイラク国民が自らの政治的将来を自由に決定できる状態の創出に向けて努力することを含む領土の実効的な統治を通じてイラク国民の福祉を増進することを要請するとしています。
決議一四八三前文パラグラフ十三は、統合された司令部の下にある占領国としてのこれらの諸国の関連国際法の下での特定の権限、責任及び義務を認識し、としています。すなわち、決議本文パラグラフ四も、決議前文パラグラフ十三も、米英両国に対して関連国際法の遵守を求めているものです。関連国際法とあるのは、具体的には国連憲章及び国際人道法を構成する国際法が念頭に置かれています。
決議一四八三から明らかなことは、米英両国が事実上の占領国として、既存の関連国際法によって認められた特定の権限、責任、義務を果たす必要があること、つまり占領統治が国際法に従って行われるべきことであります。
決議一四八三は、米英両国に占領を行う権限を与えたものではなく、事実上占領している米英両国に占領国としての既存国際法上の権限、責任、義務を果たすように求めたものです。決議一四八三は新たな権限、責任、義務を米英両国に付与するものではありません。
そもそも現代国際法は戦争の違法化の歴史の上に成立していますから、国連憲章一条は、国際紛争の平和的手段による解決を国連の最も重要な目的として掲げております。今日、武力行使を行わないという武力行使禁止の原則、これが現代国際法の基本となっております。
もちろん、現実には、今日の国際社会において、なお各地で多数の武力行使が実際に発生しています。それらの武力行使について合法性の有無が常に的確に判断されているか否か、これにも疑問が残ります。現代国際法が戦争や武力行使を違法化しているとはいっても、現実に現代国際法が十分遵守されているわけではありません。
そこで、ハーグ条約やジュネーブ条約等の発展の上に国際人道法が形成されてきました。現代国際法は、戦争や武力行使を違法化しつつ、現実に生じている戦争や武力行使に対応して、すべての当事者が遵守しなければならない人道的な規則を発展させてきました。国際的性格の武力紛争であれ、非国際的性格の武力紛争であれ、現実に発生した武力紛争において、捕虜の虐待や民間人に対する攻撃など、いかなる場合にも違法とされるべき行為を禁止することによって、戦争に伴う残虐性や無用の攻撃を抑制しようとしたものです。したがって、国際人道法は、当該武力行使が合法なものであるか違法なものであるかにかかわりなく、すべての当事者に人道的な規則の遵守を求めたものです。そのような責任、義務が米英両国にあるにすぎません。
三枚目に移ります、若干飛ばして三枚目ですが。
法案一条は、イラク特別事態なる概念を、安保理決議六七八等三決議、これらに基づいた、及びそれに対して引き続き行われている事態という形で特徴付けております。ここでは少なくとも二つの問題を指摘できます。
最初に、米英によるイラク攻撃がこれら三決議に基づく正当な武力攻撃であったという解釈の問題点です。米英のイラク攻撃が安保理決議に基づいた行動だという主張には非常に無理があります。この点は、しかし既に何度も議論されてきたことでありますので繰り返しはいたしません。ただ、二点だけ別途指摘しておきたいと思います。
第一に、これら三決議が米英に武力行使を認めたという解釈をするとすれば、これらの三決議が武力行使の程度や範囲や時期について何ら言及していない事実に照らすと、そのような解釈をしてしまえば、安保理が米英にほとんど無条件に権限を付与した白紙委任の決議であるということになってしまいます。そのような解釈は到底採用できません。
第二に、安保理における新決議をめぐる経過及びその後の各国の対応から見ても、これら三決議がイラク攻撃を授権したという解釈は国際社会においておよそ共通認識となっていないことであります。このような事態では、政府が行うべきことは、決議はこう解釈できるとか、このような解釈も可能であると主張することではなく、決議の意味内容を安保理において直接明白にするように努力すること、及びイラク復興支援を一刻も早く国連の枠組みに戻すように努力することであります。このことが最も重要なことであると考えております。
次に、法案一条の「これに引き続く」というさりげない表現であります。この文言は、イラク攻撃のみならず、軍事占領もまた三決議によって正当化されるかのような解釈を取っております。
しかし、ここには大きな飛躍があります。三決議が米英によるイラク攻撃を認めた決議であるという解釈自体が無理であることをいったん差しおいて、仮に米英のイラク攻撃が三決議に基づいた行動であったとしても、その場合、その武力行使の目的や程度は三決議から当然に引き出される範囲のものでなければなりません。したがって、米英によるイラク攻撃は、大量破壊兵器及び長距離ミサイルの拡散の防止に必要な範囲に限られなくてはなりません。この目的と程度から必要な範囲を超えて、イラクの民主化等の名目でイラク全土を長期にわたって軍事占領することは明らかに必要な限度を超えていますから、むしろ三決議に違反することになります。三決議が大量破壊兵器の拡散の防止だけではなく、イラクの民主化等をも含んで米英に授権しているという解釈はおよそ採用できません。
第一に、三決議にはそのような解釈を許す文言がありません。第二に、そもそも安保理にはそのような授権を行う権限がありません。国連憲章三十九条等には、そのような権限は一切書かれておりません。
三番目として、戦闘地域と武器使用の部分に移らせていただきます。この部分も既に多く議論されている部分ですので、私は簡単に述べるにとどめさせていただきます。
本法案三条三項における安全確保支援活動とは、具体的には米英軍によるイラク敵対勢力に対する軍事作戦を支援するものです。それは、仮に武器弾薬ではなく水や食料を輸送するものであったとしても、また自衛隊自身の武力行使を伴わないものであったとしても、米英軍の軍事作戦と地理的にも時間的にも一体不可分の武力行使に当たることは明白です。
また、戦闘地域と非戦闘地域の区別の問題も既に十分御議論されていると思いますので、ここでは省略いたします。
現在、イラク国民は、旧政権に反対していた勢力も一致団結して、イラク国民自身の政権樹立、米英占領軍の早期撤退を要求しています。このような状況下で日本が自衛隊を派遣し、軍事占領体制に加わることは、イラク国民に対する侵害であり、結果として挑発行為となってしまいます。これは重大な過ちを犯すものであります。
占領が長引き、イラク国民の手に政権を返すのが遅れれば、抵抗は更に広範に広がっていく可能性があります。このような状況下で自衛隊を派遣するということは、自衛隊員が状況の中で思わず知らず戦争犯罪を犯してしまいかねない、そのような状況に送り出されることを意味しています。そうなれば、自衛隊員にも犠牲が生じるおそれが高く、自衛隊員をそのような危険に身をさらす地域に送るべきではありません。
続きまして、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷というNGOの活動について若干御紹介いたします。
お手元にブックレット、チラシ等の資料が配付されていると思います。後ほどお読みいただけると幸いです。
私たちは、今月二十一日に東京千代田区の日本教育会館におきまして、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷第一回公判を開廷いたします。イギリス、アメリカ、インド及び日本から五名の民衆法廷判事、日本から十一名及びアメリカから一名の民衆法廷検事が参集します。これは国際社会において空洞化され、形骸化されつつある武力行使禁止原則、戦争と武力行使の違法化という現代国際法の基本原則を復権させるために、民衆のイニシアチブによって開催する民衆法廷です。
民衆法廷検事団が作成し、アメリカ大使館及びホワイトハウスに送付した起訴状によれば、ジョージ・ウォーカー・ブッシュ米大統領は、アフガニスタン空爆に関して、侵略の罪、人道に対する罪、民間人虐殺、捕虜虐殺、捕虜虐待の戦争犯罪で訴追されるものとなっております。
民衆法廷の歴史は、ベトナム戦争におけるラッセル・アインシュタイン法廷、あるいは湾岸戦争におけるラムゼイ・クラーク法廷、さらには、二〇〇〇年十二月に東京で開催された女性国際戦犯法廷などが知られております。
これらに基づいて私どもも開催いたしますが、民衆法廷には国内法上も国際法上も根拠が与えられてはいません。そのような法廷を開くのは、国家や国際社会が国際法を守らないときであります。国家や国際社会に対して国際法をきちんと守るべきであるという提案をしていく、そのようなNGO活動であるということになります。
次のページに移りますが、私どもは、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷は、これまで六次にわたるアフガニスタン戦争被害調査団を派遣して、アフガニスタンにおける難民や民間人爆撃の被害者を調査してきました。カブールでも、カラバーでも、クンドゥズやマザリシャリフでも、被害者は一般市民です。一瞬にして二十名もの村人が殺害された現場を訪れ、クラスター爆弾によって足にけがをした少年、失明した少年に会ってきました。破壊されたモスクの跡で、村人は悲痛に耐えながらモスクの再建をしていました。アフガニスタン各地を回ると、アメリカの戦争犯罪がよく見えてきます。
私たちは、日本各地、先週は沖縄でも開催いたしましたが、十二回にわたって公聴会を積み重ねて、アフガニスタンを取材したジャーナリスト、NGO、国際政治学者、国際法学者に証言をいただき、多数の証拠を積み上げてきました。そのうちの一部は、お手元の公聴会記録集に掲載しております。その成果の上に第一回公判を迎えようとしております。
問答無用で大量破壊兵器を投下し、破壊を続ける帝国の軍事戦略が世界を混乱させている現状に民衆自身が向き合い、反戦平和の思想と運動を紡ぎ直す取組、日本国憲法の平和主義を世界に宣伝をする、そういう取組でもあります。
私どもの法廷は、七月二十一日に続いて、本年十二月にも公判を開き、判決を目指します。
同時に、私たちは現在、イラク国際戦犯民衆法廷を立ち上げるべく準備を始めております。何の罪もない数千人のイラク市民を殺害し、劣化ウラン弾をまき散らして国際平和に脅威をもたらしているブッシュ大統領らを被告人とする民衆法廷運動は本年夏には立ち上げたいと思います。
最後に、NGOの立場としてまとめの言葉を述べさせていただきます。
私たちは、ペシャワール付近の四つの難民キャンプで、多数のアフガニスタン難民への取材を繰り返してきました。また、アフガニスタン各地で多数の民間人犠牲者や遺族に取材し、彼らの生活再建のために努力をしてきました。
四半世紀にわたる戦争や内戦、そして米軍による爆撃によって、アフガニスタンは正に歴史の廃墟と化していました。古くから文明の十字路と呼ばれたアフガニスタンの都市は破壊され、人々は傷付き、おびえて暮らしています。貴重な文化が破壊され、一つの世代が丸ごと破壊されてしまった悲劇を目の当たりにしてきました。
いわゆる北部同盟が横滑りした現政権は首都カブールを支配しているだけで、アフガニスタンには責任ある政府が欠落したままです。今なおアフガニスタンには治安が回復していません。米英軍はいまだに軍事作戦を展開し、殺りくを続けています。国連も治安回復には無力です。国際赤十字さえも攻撃の対象とされて虐殺されております。そして、アフガニスタンは再び世界最大の麻薬大国になっています。国際社会はアフガニスタンをきちんと復興させる努力をまだ十分行っておりません。
〔委員長退席、理事阿部正俊君着席〕
アフガニスタンには北部同盟という受皿があってもなおこのような有様です。イラクには北部同盟に比肩すべき受皿もありませんでした。そのために、秩序が回復されず、無法な占領が継続する中で人民の抵抗が続いております。治安が回復する兆しもないままに、人々は危険や貧困や病気に脅かされ、米英軍の横暴に悩まされております。
欧米諸国による植民地支配に苦しんだ過去を持つ中東において日本が果たすべき役割は、むしろイラク人民自身の生活再建、国家の復興に努力することであり、協力することでありまして、軍事占領に協力することではございません。日本が果たすべきイラク国民への復興の努力というのは、中立、公平性、非武装が原則の復興支援でなければなりません。武装した部隊による、米軍への、復興というのは、これとは全く異なるものであるということであります。
これまでアフガニスタンでもイラクでも、多くのNGOが懸命になって活動を続けてきました。私はイラクでは活動しておりませんが、アフガニスタンでこれまで多数の人々の生活再建に努力をしてまいりました。その立場からはっきり申し上げますと、自衛隊派遣は、自衛隊だけではなく、日本のNGOに対する反感を生み出すおそれがあります。アフガニスタンの民衆の間にも、日本の自衛隊が給油をしたことが徐々に知られ始めております。今までは知られておりませんでしたから、私どもはカブールで活動できますが、このことが知られると、カブールで私どもが活動すること自体が危険になっていくということであります。
イラクの人民は既に、日本が米英による戦争を支持したことを十分に承知しております。そして、米英軍が軍事占領を続けているその現場に自衛隊が派遣されるということは、自衛隊員がイラクの民衆から反感を招いてしまう、それだけではなくて、イラクで活躍をするNGOやジャーナリストなど日本社会構成員もまた、残念ながら反感と敵意と憎悪の対象にされてしまうということになります。このようなことではNGOの活動は非常に危険であり、できないことになってしまいます。自衛隊派遣は、その意味で、NGOが取り組んでいる復興支援に対する妨害にしかなりません。
大変厳しい言い方で恐縮ですが、NGOの活動にとっても大変妨げになるおそれが極めて高いという懸念を申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
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私の質問──学者はなぜ9.11事件を自作自演と言わないのか?に板垣雄三は正直に答えてくれた。よって出世とは無関係になってから彼は自作自演説を公表したのだが、それをしてしまうと文化勲章はもうもらえないということになる。
スポーツと暴力の体現者・長島茂雄、その彼が暴力で維持される天皇から勲章をもらうのであるから、期待を裏切らない結果であるかもしれない。
★文化功労者
2003年
- 安藤忠雄(建築)
- 飯島澄男(材料化学)
- 板垣雄三(中東史学)
- 伊藤清(数学)
- 伊福部昭(作曲)
- 岩田靖夫(哲学)
- 遠藤実(作曲)
- 近藤淳(物理学)
- 中村鴈治郎 (3代目)(歌舞伎)
- 末松安晴(情報工学)
- 菅野晴夫(腫瘍学)
- 曽野綾子(小説)
- 田沼武能(写真)
- 唄孝一(民法学)
- 米川敏子(箏曲)
2005年
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文化勲章 - Wikipedia
辞退者
河井寛次郎(陶芸)- 1955年(昭和30年)
名利を求めない信条を貫いて辞退。河井は自身の作品にも銘を入れないほどこの姿勢に徹底しており、人間国宝や芸術院会員への推薦も同様に辞退している。
熊谷守一(洋画)- 1968年(昭和43年)
「これ以上人が来てくれては困る」と辞退。熊谷は孤高の画家として有名で、来客を一貫して避けていた。
大江健三郎(小説)- 1994年(平成6年)
ノーベル文学賞の受賞発表を受けて文化勲章の授与と文化功労者としての顕彰が決定したが、「民主主義に勝る権威と価値観を認めない」と文化勲章そのものを否定して受章を拒否[9]。
杉村春子(舞台演劇)- 1995年(平成7年)
「文化勲章は一番大きい勲章で、今後も出演を続けたいのに、もらえばおしまいになるような気がする」と辞退[10]。
公になっている辞退者は以上の4名である。
【緒方孝市】緒方監督の暴力発覚 去就次第で広島選手にとってプラスに|野球|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
長島茂雄・星野仙一に殴られた殴られた名選手たち~山本昌・小林繁・西本聖・角光男(現・盈男)~ - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)
★桑田真澄
私は、体罰は必要ないと考えています。「絶対に仕返しをされない」という上下関係の構図で起きるのが体罰です。監督が采配ミスをして選手に殴られますか? スポーツで最も恥ずべきひきょうな行為です。殴られるのが嫌で、あるいは指導者や先輩が嫌いになり、野球を辞めた仲間を何人も見ました。スポーツ界にとって大きな損失です。
2017.10.21
長嶋茂雄氏が張本勲氏にビンタ!「お前が指導者になったらこの気持ちが分かるはずだ」
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https://www.daily.co.jp/baseball/2017/10/21/0010662459.shtml
TBS系「サンデーモーニング」の「喝!」で人気の野球評論家、張本勲氏(77)が21日放送の同局系「サワコの朝」に出演し、巨人時代に長嶋茂雄監督(81)から平手打ちを食らった秘話を打ち明けた。
張本氏は1976年、日本ハムから巨人に移籍。監督2年目の長嶋氏は「厳しかったですよ。野球にすごく純粋な方なんですよ。勝ちたい一心なの」という人物だった。
「私35歳でしょ。パ・リーグでは肩で風切って歩いていた生意気な男ですよ」という張本氏だが、長嶋氏には「引っぱたかれましたよ。平手」と、ビンタされたという。
「富山県でゲームがあって、2対1でうちが勝ってたんですよ。確か6回裏かな。1アウト一、三塁。私ですよ」というシチュエーション。
「スクイズのサイン出てた。見ませんよ!。出ると思わないから。それでボール投げたでしょ。三塁ランナーの柴田(勲)が走って帰ってくるわけですよ。『お前何やってんだよ!』『張本さん、スクイズですよ!』」
張本氏は「私、何十年やってるけど、バントやったことないんだから。スクイズってのはね、打てない人がだいたいやるもんだから。なんで俺にバントのサインしやがってと思うじゃん」と、不満タラタラ。二死二塁と場面は変わり、張本氏は「たまたまヒット打って二塁ランナー帰ったんですよ」と、適時打を放った。
試合後、長嶋監督に呼ばれて「よーし、小遣いでもくれるかな」と行った張本氏だが「座れ!」と一喝されて「パチーンと来たよ」と平手打ちされた。
長嶋氏は「お前がゴロを打つ場合もあるじゃないか。ダブルプレーなら点が入らないじゃないか。もう1点どうしてもほしいんだ。点が入って2アウトセカンドで王(貞治)に回して、そういう流れを俺は考えてたんだ。なんで監督のサインに従わないのか。お前が将来、指導者になったら、この気持ちが分かるはずだ」と、張本氏に熱く説いた。
張本氏は「この人は野球に対して純粋」と痛感し「よし、この人についていこうと思った。生意気な私をね、たたく人います?いないです」と、長嶋氏に忠誠を誓ったという。