1gの勇気

奥手な人の思考と試行

心の鏡(仮名)5

2006-11-05 22:56:32 | 1gのおときばなし
桐下涼子。
そろそろ結婚も意識する頃ではあるが、今のところそんな相手もいない。
という、ふつーのOLが、ふとしたことに悩んでおります。

おもむろに、テレビのスイッチを入れて、そのリモコンでそのまま打ち込む。

ryo>> ねえ、heav、
haev>> お。
ryo>> あなたは神の存在を信じる?
heav>> は?
ryo>> どうなの、
heav>> また、随分唐突だな。どっかの新興宗教にでも捕まったか?
ryo>> ちがうわよ、失礼な、
heav>> ...別に失礼ではないと思うが、
ryo>> 信じてるの?
heav>> ふむ。まあ、ふつーに神社に初詣くらいはいくな。
ryo>> ふーん、で、信じてるの?

しつこい。
とは思いつつ、何を疑問に思ってるのか、聞き出さんと話が進まない。

heav>> ryoはどうなんだ?信じてるのか?
ryo>> え?ああ、初詣くらいには行くわよ、

...同じじゃんか。

heav>> どうして急にそんなことを?
ryo>> いや、だって、最近宗教戦争してるじゃない、
ryo>> イラクへ攻め込んだ多国籍軍は十字軍だっていう、うわさだし、

いや、だれだ、そんな危険な噂流したの。

heav>> ああ、キリスト教とイスラム教の対立だな。
heav>> 古くて新しい問題だ。
ryo>> で、あなたはどう思ってんの?そのことに、
heav>> 対立か?
ryo>> 違うわよ、神の名において人殺しするような人たちのことよ、

ようやく本題らしい。

heav>> ふむ。ようわからんが、日本の神様は人殺しなんてさせなかったし、
heav>> 彼らのゆう神の意志というのは、理解に苦しむ。
ryo>> そう、そうよね。ね。
heav>> でも、それもまた、正しい。ということなんだろう。彼らにとっては。
ryo>> なんでよ、おかしいじゃない、人殺しよ、神はそんなに悪い人なの?

いや、神は人ではないし。
というか、大体、

heav>> 神の名を語る。が正しいのではないか。
heav>> 恐らく彼らは否定するだろうが。
heav>> 信ずるというのは、そのくらい心地いいものだ。
ryo>> 信じる?こと?
heav>> 疑わなくていい。それが唯一絶対の真理なら。な。
ryo>> 疑わない?なんで、それが気持ちいいのよ、
heav>> 楽だから。
ryo>> 楽って、そんな理由で人殺ししてんの?
heav>> 話がごっちゃになってるぞ。飛躍しすぎだ。
ryo>> だって、そうじゃない、
heav>> 人殺しの話はブッシュにさせておけ。とりあえずここでは、神の話だ。
ryo>> そ、そうね、で、で?
heav>> ryoは全ての事柄について、いちいち考えて生活しているか?
ryo>> え?あ、そりゃ、考えてるわよ、今夜の夕飯とか、
heav>> ふむ。なら、タマネギ切る時、包丁の使い方をひとつひとつ確認してるか?
ryo>> しないわよ、そんなの、タンタンタンって、テンポよく。
heav>> だろ。つまり、いちいち包丁の使い方なんて考えてはいないんだ。
ryo>> ...そね、で、それが神と何の関係が?
heav>> もし、それが善悪の判断だとしたらどうだ?
ryo>> タマネギ切るのが?
heav>> そうだ。

本当は違う話だったのだが、もういい。
めんどくさい。
なんか最近ようやく、ryoが天然だということに気がついてきた。

ryo>> 何の問題もないんじゃない?悪ではないわ。
heav>> なら、善か?
ryo>> ...食べるためだもん、生きてくためだわ。善よ。
heav>> 考えただろ。今。
ryo>> あなたが変なこと言うからよ。
heav>> そうやっていちいち考えてると面倒だろ?
heav>> 極端にいえば、なんで悪いことしてはいけないか。どう思う?
ryo>> え?あ、だって、ほら、だめなのよ、えーっと、
ryo>> 他の人に迷惑だし。
heav>> もし一年後に同じこと訊いても、やっぱり考えるだろ。なぜ?って。
ryo>> ま、まあね、
heav>> キリスト教で言えば、神の国へいくためだ。
ryo>> なにが?
heav>> 悪いことをしてはいけない理由だ。
ryo>> ふーん、神の国?って何?
heav>> 簡単に言えば天国だな。
ryo>> ああ、天国、いいわね。それは、悪いことできないわね、
heav>> キリスト教徒に訊いてみると言い、今訊いても、一年後訊いても同じ答えが返ってくる。
ryo>> あ、...なるほど、考えなくていい、わけね、
heav>> そうだ。信じてるってのはそういうことだ。
heav>> 唯一の答えが決まってるからそれについて考える必要ないのだ。
ryo>> ふむふむ、で、神の存在は?
heav>> そこに唯一の答えを示す神をおけば、その神の言葉だけを信じてれば、
heav>> それについて考える、つまり悩む必要はなくなる。
ryo>> ふーん、まあ、そうね、なんで人殺しがいけないのか、なんて悩む必要はないわね、
ryo>> 神様がそういってるから、で、お終いだもんね、
ryo>> ...なのに、人殺ししているキリスト教信者って、なに?
heav>> さあ、きっと彼らには矛盾はないんだろう、ようわからんが。
heav>> それこそ、十字軍かもしれん、異教徒は人間ではない。よって殺しても人殺しにはならない。
ryo>> ひどーい、なにそれ、
heav>> 十字軍の言い分だ。当時は異教徒は人間ではないとされていた。
ryo>> ...それの末裔なわけね、ブッシュは。
heav>> かもな。...そろそろ話を戻してもいいか?
ryo>> あ、えーっと、なんだっけ?
heav>> 神を信じる理由だ。
ryo>> ああ、そうそう、悩まなくていいって話だったわね、
heav>> ああ。ある程度の規範が決まっていれば楽だろ。いちいち考えなくても生活できて。
ryo>> まあ、ね。そうかもね。でも、日本でも昔から人殺しは悪だわ。
heav>> 例外もあるがな。
ryo>> 例外?
heav>> 仇討ちとか。
ryo>> あー、あれは人殺しよね、...あれは合法か、ふーん、
heav>> 誰も仇討ちが違法、つまり悪いことだとは考えていない。
heav>> これも考えるまでもない。つまり、信じてるってことだ。
heav>> 件の神と一緒だな。
ryo>> んー、なんだかよくわかんないわね。
heav>> つまり、信じるってことだ。信じていることは疑う、つまり考える必要はない。
heav>> そうすれば、簡単に生活できる。
ryo>> まあ、そうね。
heav>> 周りの人間、つまり社会全体がそれを信じていれば、それが事実上の法となる。
ryo>> ああ、なるほど。それに反することは罰が伴う。
heav>> その罰も必要かどうか悩む必要はない。だれもが信じているんだから。
ryo>> んー、なんかそれって、危険じゃない?
heav>> まあ、な。おかげで魔女狩りなんていう、殺人がまかり通ってわけだ。
ryo>> あー、聞いたことある、火あぶりにするあれでしょ?
heav>> そうだ。人は神を理由に同胞すら何の罪も感じずに殺してきた。
heav>> 信じるってのは、そういう面もある。
heav>> その究極が神だろ。
ryo>> ...でも、信じてる、楽だから、...いいの?それで、
heav>> いちいちタマネギの切り方悩みたくないだろ?
ryo>> それとこれとは、
heav>> 一緒だ。いちいち悩まなくていいように、人間はいろんなものを信じてる。
heav>> それこそ、無意識のうちに。
ryo>> その一つが、神の言葉、
heav>> そうだ。それで、楽に生きられるから、これだけ世界に広まった。
ryo>> そう、ね。イスラム教は教えさえ守ってれば、それだけでいいっていうし。
heav>> 楽だろ。いちいち考えなくて済んで。
ryo>> まあね。でも...
heav>> 神の教えに違和感を持つのは当然だ。それはryoがこれまで信じてきたのとは反するからな。
ryo>> ...どちらも間違いではない、
heav>> そうだ。どちらが、その社会にとって都合がいいかだけだ。
heav>> 日本だって明文化されてない風習がいくつもあるだろう。
heav>> そして、それを信じて生きているのが日本人だ。
ryo>> なるほど。でも日本人にもキリスト教徒はいるわよ、
heav>> ...なんかうまいこと折り合いをつけてるんだろ。ようわからんが。
ryo>> へー、あなたにもわからないことがあるのね、
heav>> 当然だ、おれは神ではない。
ryo>> つまり、考えなくてはならないことも、あるってことね。
heav>> そらそうだろう、生きてれば見たことも聞いたこともない状況に出くわすことなどしょっちゅうだ。
ryo>> なら、考えなきゃないじゃない。
heav>> ああ、そういうことはな。でもいつもやってることを悩まなくて済めば、
heav>> いざってときに、十分考えられるだろう。
heav>> いつも頭を悩ましてたら、いざってときには疲れて考えられなくなる。
ryo>> うん、そうね、だから、か、信じるって、必要なのね、
heav>> ああ、だから、人間は宗教を生み出した。
heav>> それは、人間がいざって時に考えることができるように。
heav>> つまり、生きていくために。
ryo>> 生きていくために神が必要だった。って、こと?
heav>> そうだ。神はともかく宗教のない国や民族なんてない。
ryo>> 日本は?無宗教ってよく言われるけど、
heav>> 妄信的に信じることだけが宗教ではない。初詣に行くだろ?
ryo>> まあ、ね。おみくじも引くわね、
heav>> 日本式の社会規範の中で生きている。疑いもなく。つまり信じて。
ryo>> ああ、なるほど。そうね。普段意識しないけど、
ryo>> 意識しないってことが信じてるってこと?
heav>> 無意識に信じてるってことだろ。無意識に行動できる。考えずに。
ryo>> 楽ね。...そうね。生きてくために必要なのね。信じるって。
heav>> ああ、人間にとってはな。やることがたくさんあるからな。
ryo>> 何か大変ね、人間って。
heav>> そうだな。
ryo>> あんまり大変ではないようね、あなたは、
heav>> まあ、神に頼るほどではないな。
ryo>> ほかに信じていることがあるってことね、
heav>> かもな。
ryo>> なんかはぐらかされたような気もするけど、いいわ、ありがと、
heav>> ああ、またな。今度はもうちょっと簡単な話にしてくれ。
ryo>> 努力してみるわ、

「信じる。ね。」
テレビのスイッチを切る。
「生きるため。か。なんか不思議な話ね。」

でも、不思議と今日の話に違和感はない。
人殺しはよくない、ブッシュのやってることはおかしい。
ということに共感してもらえたのかもしれない。

そして、ふと思う。
神は人殺しはしない。そうも教えてはいない。
神が教えているのは、規範だけ。

人殺しをしているのは、人であり、神の教えを都合よく解釈している。
つまり、利用している。
「だけよね。」


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