1gの勇気

奥手な人の思考と試行

心の鏡(仮名)2

2006-10-15 23:06:05 | 1gのおときばなし
日曜日。
もうすぐ寝る時間。
に、"heav"につなげる、涼子。

テレビのリモコンにセットしてあるショートカット(お気に入りの方が通りがいい?)を押す。
真っ白の画面。
「...いないの?」

数秒の間のあと、

heav>>

「...」
ホログラムキーボード(入り腕時計)はないので、
携帯電話の要領でテレビリモコンで打ち込む。(携帯でも打ち込めるが、あいにく充電中。)

ryo>> いるの?

...反応なs

heav>> おお。ちょっと待った。
ryo>> ...何してんの、
heav>> 取り込み中。
ryo>> だから、何を、
heav>> 言ってもいいが、訊かない方がよいぞ。
ryo>> ...で、女の子をいつまで待たせる気、
heav>> 五分後また会おう。
ryo>> 了解、

「ふぅ、ま、一応人間ってことかしらね。」
「...女かしら。というか、このひと一体いくつなの?」
動かない画面をぼーっと見ながらつぶやく。

結論としては、"興味ない"ということにしたらしい。
その間に、テレビのしたのキーボードを久方ぶりに引っ張り出す。
何か本気で相談したいことでもあるらしい。

五分と二分後。

heav>> よう、待たせたな。
ryo>> 遅刻、
heav>> まあ、そういうな。まさか日曜の夜に繋いでくるとは思わなかったし。
heav>> 初めてだろ?
ryo>> 二度目、
heav>> よく覚えてるの。さすがプロ。
ryo>> ...
heav>> なにがあった?デートでへまでもしたか?
ryo>> うるさい。って、まだそこまで行ってないわよ、
heav>> なんだ、片想いか。はよ玉砕せ。
ryo>> ...ケンカ売ってる?
heav>> 正当な忠告だ。
ryo>> まじめに話聞く気ある?
heav>> おっと、失礼。お聞きしましょう。恋愛ネタ。
ryo>> ...切るわよ。
heav>> 深刻そうだな。指が震えてる。
ryo>> え?

周囲を見回す。カメラでもあるんではないかと。(まあいつものことだ。)
指が震えてるのは確か。
緊張してるのだ。

heav>> 明日何かあるのか?
ryo>> ちょっとね。
heav>>
ryo>> ...あの、
heav>> 続けて。
ryo>> あ、いや、えーっと、...誰にも言わない?
heav>> 言ったって影響ないだろう。どこの誰ともわからんひとの噂なんて。
ryo>> あるのよ、あるかもしれないでしょ、約束しなさい、
heav>> へいへい。安心しな。
ryo>> ...、明日プレゼンがあるの、
heav>> ほう。
ryo>> 訊かないの?誰にとか、何をとか。
heav>> 話してはくれないのか?
ryo>> ...話すわよ、
heav>>
ryo>> 社内のちょっとした業務改善案をね、役員会で。
heav>> ほう。それは大変だの。
ryo>> そうなのよ、
heav>> で、相談とは?
ryo>> べ、別にそんなんじゃないけど...
heav>> 自慢したい訳じゃないだろ?
ryo>> ...怖いの、
heav>> 何が。
ryo>> ふつー緊張するでしょう、こんなの初めてだし、
heav>> そうか?相手は日本人だろ?日本語通じるんだろ?
ryo>> あたりまえでしょ、そうじゃなくてn
heav>> 何が怖いんだ?失敗か?
ryo>> e、人の言葉に割り込まない、
heav>> いつもやってるくせn
ryo>> うるさい、
heav>> iで、何が怖い?
ryo>> べ、別に怖いなんて言ってないでしょ、
heav>> まあ、確かに。言ってはないな。でも怖いんだろ?
ryo>> ...不安なの、
heav>> どうして?
ryo>> わかんない、けど、うまくできなかったら...と思うと、
heav>> うまくできてもできなくても、明日のプレゼンは自動的に終わるもんさ。
ryo>> そ、そうだけど、失敗したら、
heav>> 首になるわけでもあるまい?
ryo>> ま、まあ、
heav>> 客先ならともかく、社内のお偉いさん相手なら別に売り上げに響く訳でもないだろ?
ryo>> そ、そうだけど、でも、やっぱり、
heav>> しくじったら何か問題であるのか?
ryo>> 上司とか、他の人に迷惑が...
heav>> ほっとけ。上司なんてそのためにいるようなものだ。その分余計に金もらってる。
ryo>> ...そういう考え方もあるのね。
heav>> 上司は使うものだ。
ryo>> あなた、サラリーマン?
heav>> さぁ。そんな時期もあったかもしれん。
ryo>> でも、
heav>> 心配しなさんな。うまくいこうが、失敗しようが、それがその時の、ryoの実力。
heav>> 仮に失敗したら、そんなことをさせた上司が悪い。だろ?
ryo>> ふぅ、簡単に言うわね、
heav>> 大体今悩んだってしかたないだろ。やるのは明日だ。
heav>> 今から余計な心配して、不安感じてても、明日余計に緊張するだけだとは思わんか?
ryo>> そうかもしれないけど、不安なものは不安なの。
heav>> テトリスでもやっとけ。
ryo>> は?
heav>> そうすれば、いっ時忘れられるだろ。
ryo>> ...それは現実逃避ではないの?
heav>> その通り。だが、無意味な不安の連鎖を繰り返すのが現実なら逃避した方がなんぼかマシだ。
ryo>> なんか違うような、
heav>> 準備は済んだんだろ?プレゼンの。
ryo>> 当然よ。金曜日に終わってるわ、
heav>> なら、もうすることはないじゃないか。不安になることも含めて。
ryo>> だって、なるんだもん、しかたないでしょ、
heav>> だから、テトリスでもしとけって、眠くなるまで。
ryo>> ...何でテトリスなのよ。
heav>> 例えだ。別になんでもいいが、俺はこんな時はテトリスだ。
ryo>> お勧めってわけね、
heav>> そうだ。かなりいいぞ。適度に疲れるから眠くもなる。
ryo>> ふぅ。疲れるのがいいなら、外でも走ってこようかな。
heav>> ま、それもいいかもな。
ryo>> 相変わらず、なんだかよく分からない理屈で丸め込まれたような気がするけど、
heav>> でも、走る気になったろ?
ryo>> テトリスではなくてね、
ryo>> じゃ、ちょっと行ってくるわ、
heav>> いってらっしゃい。車には気をつけて。
ryo>> ありがと、じゃ、

リモコンで電源を切る。(キーボードにも電源ボタンはあるが、使ったことはない。)
「さて。じゃあひとっ走りしてきますか。」
とは言っても、普段走ったりはしない、涼子。

「まあ夜だし。これでいいか。」
まったくおしゃれのかけらもないスエット着て、出かける。
不思議と走っていると、余計なことは浮かんでこない。

というか、どうでもよくなってくる。
そもそも、なんで、あんなに怖かったのだろう。
確かに、うまくいこうがいかなかろうが、会社が傾くわけでも、自分が首になるわけでもない。

ただ、ちょっと上司に迷惑がかかるだけだ。
あの上司に。
いいか。たまには迷惑掛けてみるのも。

その分の高い給料もらってるわけだし。
すっかり、"heav"の言葉を自分の意見にしていることに、自覚はない。ようだ。
明日はいつものようにやってくる。そこに不安があろうとなかろうと。


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