よりみち散歩。

日々の暮らしのなかで心に浮かぶよしなしごとを、こじんまりとつぶやいています。お役立ち情報はありません。

自分の頭で考えるということ。

2016年10月02日 | コラム
書店に平積みされるのは「自己啓発」「健康(ダイエット)」「ビジネス(語学)」、
この三種が多いそうである。

確かに私も小説を読まなくなった。

面白い小説がなくなったからというのもあるし、
現実生活のほうが興が深いということもある。

昔の名著を紐解くことはあるが、最近の小説はあまり読まない。

これは、きっと私だけではあるまい。
芥川賞、直木賞作家は例年輩出されるが、その後の作品というのはほぼ知らない。

10代の頃、それなりに読書を重ねておいて良かったと思う反面、
少し良書を読みたいなという感情も残っている。





さて、書店で売られている本は、いずれも
「自身を良いほうに変えたい」という需要からくるものであろうと思う。

私の心の師匠K氏は
「本から何かを学ぼうというのが間違いだ。
 本を読んだ後は、著者の考えに染まった頭を一度冷やせ。
 自分の頭で考えろ。
 他人に『おすすめ本』を聞くものじゃない」
と一蹴していた。

林修先生も「読みたい本がわからないのは情けない」と憂えていた。

浅田次郎氏も「最も唾棄すべきは自己啓発やハウツー本だ」と断じていた。


要するに、この世界にはヒントはたくさん散りばめられているのだが
皆、早く回答を欲しがっているのだ。

そしてその回答を、自分で見つけるのではなく、他者が授けてくれると期待している。
まるで、口を開けていれば、親鳥が餌を与えてくれるがごとく、
漫然と待ち続けているような、そんな気さえする。

たまに著者に興味をおぼえ、セミナーに参加することがあるが、質問者はほぼ、
講師が「回答」を――それも自分に”“都合のよい答え”を教示してくれると
信じ込んでいるような気がする。


本田宗一郎氏の有名なエピソードがある。

「経営学」について、有名企業の社長たちを前に講演する予定だったのが
時間を過ぎても本人が現れない。

15分ほど経過したところ、油まみれの作業着をきた初老の男性が壇上にあがり
「君たちは何をしている?
 こんなところで私の話を聞いて、経営がわかると思うのか。
 それより現場に出て、汗を流せ」
とまくし立て、そのまま退場してしまった。

もちろん、本田宗一郎その人である。
事務局の苦労はしのばれるが、本当の啓発はこういうものでないか、と思う。


人に依存し、自分の頭で考えることを放棄し、何も行動せず、
「本を読んでいる自分は格好いい」と「自分磨き酔い」しているうちは
多分、何も変わらない。

そういう人が多いからこそ、あの手の本が売れるのだろうな、とも思う。

金木犀が香りだす、過ごしやすい季節に移りつつある。
読書の秋。勉強の秋。
「自分の頭で考え、行動する」ことを自戒も込めて取り組もうと念じてみた。


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