春庭パンセソバージュ

野生の思考パンセソバージュが春の庭で満開です。

ぽかぽか春庭のへぇへぇ平成(へぇなる)言語文化教育研究 青房赤房、力の色②

2004-01-27 | インポート
ぽかぽか春庭のへぇへぇ平成(へぇなる)言語文化教育研究
「平成好色一代女 青房赤房、力の色②」
(2004/01/27)

 相撲協会は日本人横綱を作ることにやっきになっているようだ。外人横綱に対して日本の人はあまり温かくない気がする。

 1/10の本場所でも、朝青龍の取組の前に席を立って帰る人たちがいた。
 好き嫌いはあろうとも、横綱の結びの一番を見ないで帰ること、少し寂しい気がした。土俵に近い枡席に座った方々には、あと数分で終わるのを待てないほど時間が切迫している多忙な人たちが多かったのかもしれないのだが、忙しい中、ひいきの力士だけ見に来たというより、露骨に「ガイジン横綱を見なくてもいい」という雰囲気で、そそくさと帰り支度をしているような感じを受けてしまったのだ。


 ひいき力士は、だいたい「ご当地出身」という人も多いので、外国人力士の応援が少ないのは仕方がない。
 せめて、日本語教師春庭は、遠い海の向こうから、土俵めざしてやってきた力士を応援したい。
 どの力士も稽古を重ね、本場所では日々力の限りを尽くそうとしている。
 マワシを締め、土俵に上がれば出身がどこの地だから強いといういうことはない、素質を生かし、稽古に励んだ者が強いのだ。出自ではなく、その稽古で流した汗と涙を応援しよう。

 近頃の力士のマワシの色、昔の黒や濃紺の地味な色合いだったころに比べると、本当にカラフル。オレンジ色あり、エメラルドグリーンあり。スカイブルーあり。
 おすもうさんの肌の色もきれい。グルジア出身の黒海は、色が白くて「白い黒海」であった。(赤い白墨、緑の黒板、白い黒海!!)

 私がすわったひとり枡席は、枡席通路側の三角コーナー。1.5人分くらいの広さなので見やすいし足のばせるし。赤房側花道のうしろ。東側花道を出入りする力士がよく見えた。

 赤房青房は、元々は赤柱、青柱など屋根を支える柱だった。
 屋外に相撲の土俵を作る際に四隅に柱を建て屋根をのせて、周囲とは異なる神聖な場所を作る。注連縄を張り巡らせた神域と同じ。家を建てる際の地鎮祭で、注連縄で地所内に囲みをつくるのもいっしょ。

 「当年の豊作を占い、神意をうかがうための神聖な勝負が行われる場所」として、柱の内側は、周囲とことなる聖域であることをしめしていた。ゆえに「力」を神に示すことをしない女性は土俵にあがってはいけない、というので、大阪知事と相撲協会は折り合いがついていない。

 柱の色が白黒赤青の四色であるのは、01/03に述べた「日本の基本的な色の名」がこの四つであったからだが、中国から陰陽五行説が入ってきてからは、中央=黄も付け加わって、色は季節や動物、方位、など様々なものと結びついて、人々の思想や生活に入り込んだ。

 近年は『陰陽師』のヒットで、一般の人も陰陽五行説を意識することが多くなったが、実は無意識の領域にこそ、この陰陽五行説は入り込んでいる。
 古い民俗文化と結びついており、気づかないうちに、陰陽五行説の影響を受けているのだ。

「五行説」=「気」を木・火・土・金・水の五つに分類し、その五つの気の働きによって万物が生じると考える説。それぞれ、次のものと結びついている。

木=青・春・朝・東・龍・鱗(魚)・目・話す声(呼ぶ声)・酢味・肝臓
火=赤(朱)・夏・昼・南・朱雀・羽(鳥昆虫)・舌・笑い声・苦味・心臓
土=黄色・土用・中間時・中央・(龍)・裸(人)・口・歌う声・甘味・脾臓
金=白・秋・夕方・西・白虎・毛(獣)・鼻・叫び声(哭き声)・辛味・肺
水=黒・冬・夜・北・玄武(亀)・貝・耳・うなり声(呻)・しょっぱい味・腎臓

 季節と色を組み合わせると、青春、朱夏、白秋、玄冬という「人生の四季」になる。私?そりゃ、春庭という名のとおり、今は青春でしょう。

 また、古墳に描かれた壁画に「龍、朱雀、虎、亀」が色鮮やかに出現したことがあった。高松塚、キトラ古墳などに描かれているのも、五行思想の動物。
 今は冬だから「亀」が冬の動物。色は黒。方位は北。時刻は夜。声は、うなり声である。不況にそして戦火に呻吟する民の声。

 「土」は中間的な性質を持ち、方位は中央。「土用」は季節のまんなか。春土用、夏土用などがあったが、現代では「夏土用にうなぎを食う」ことだけが生活の中に残されている。

 世界の中心に位置すると自分たちの国を「中国」と名付けた国の皇帝は、当然中央の中央に位置するので、衣裳は中央の色である「黄色の布地」で作る。
 黄色の衣裳は皇帝専用であった。そして文様は龍。「黄色い布地に龍の文様」を、皇帝以外の者が着ることは許されなかった。

 また、五行説では五気の循環によって物事は変化するとされる。
 循環の順序については「相克説」と「相性説」の二種類がある。

 「相克説」では木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木に勝つものとして“木土火水金”とする。

 「相生説」では、木は火を、火は土を、土は金を、金は水を、水は木を生むものとして“木火土金水”としている。

ゲーム「ポケットモンスター」の勝ち負けも、この五行循環の思想が生かされている。
 たとえば、水ポケモンは火ポケモンには強い。火ポケモンは鋼(金)ポケモンに勝つ。草(木)ポケモンは土ポケモンに勝つ。

 こども達は五行循環なんてこと知らずに遊んでいるが、知らず知らずに五行説が心身にしみこんでいるのかも知れない。

 古代神事の相撲の勝ち負け。東方から登場の力士と西方から登場の力士が力を競い、勝ったほうが豊作になる。あるいは、力によって、悪霊や田にくる悪い虫を退散させる。

 その優れた力業を示すことで人々の生活を安寧にさせ、勝負によって神の意を占う大事な神事だった。また、力士が四股を踏むのも、大地を踏み固め、大地母神を鎮める所作。 <続く>~⑤

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春庭今日の一冊No91
No.91 (よ)吉野裕子『隠された神々―古代信仰と陰陽五行』(講談社現代新書)