2005/03/31
アビエイター(ネタばれ注意)②>隔離quarantine
どんな興味でアビエイターを見るか。
1,監督スコセッシファンとして見る
2,レオ様、デカプリオファンとして見る
3,共演者のファンとして見る。アカデミー助演女優賞ケイト・ブランシェットファン、(キャサリン・ヘプバーンファン)『シカゴ』でロキシーの旦那役だったジョン・C・ライリーはヒューズの会社経営右腕役、『指輪物語』のビルボ役だったイアン・ホルムは、気象学者の役、エロール・フリンを演じるジュード・ロウのファン
4, 飛行機や航空会社に興味を持っている人
5, 空をびゅんびゅん飛ぶものが画面に映ることを楽しみを見いだす人(一部ジブリファンと重なる)
6, ハリウッド映画制作の裏側やハリウッド伝説メイキングが好き
7, 脚本賞撮影賞編集賞美術賞衣裳デザイン賞など、興行成績には関係ないアカデミー賞に興味がある
8, 強迫性障害(かって強迫神経症と呼ばれていた)に関心がある人
レビューチェックでは、1の人は、この映画を高く評価(例:mackychan)
2の人もおおむね満足している。私は『マイ・ルーム』のメリル・ストリープの息子役、『太陽と月に背いて』のアルチュール・ランボー役でのレオ様はいいと思ったが、『タイタニック』では、大根に見えてしまってかわいそうと思った。
今回のハワード役は、今までで一番いい。額の皺が横に走るのではなく、眉間に四角くよるのが難点だが。
3の人も、ケイトのアカデミー助演女優賞受賞を当然と思う。私はキャサリン・ヘプバーンが好きだったので、『指輪物語』のガラドリエルや『エリザベス』の印象が強烈なケイトがどう演じるのか興味があった。知的な雰囲気は共通しているが、顔立ちが似ているわけではない。しかし、ケイト演じるキャサリンはぴったりだった。
ロウ様ファンは大憤慨。ジュード・ロウがちょびっとしか画面にでなかった。
「21世紀の『市民ケーン』」という評もあったので、母と息子の関係とか成功者の孤独などが、どのように描かれているのかと興味をもった。
『ケーン』のキーワードは「薔薇のつぼみ」だが、この映画で母と子のキーグッズ&キーワードは、小さな石鹸箱と「隔離quarantine」という言葉。
私が一番共感できたのは、この「隔離」というキーワード。そして「強迫性障害」の部分だった。
ハワード・ヒューズに共感を見いだせない人の意見。
「金持ちの坊ちゃんが金を湯水のように使いたい放題で夢を実現したからって、どうだっていうのさ。所詮は金持ちの遊びにすぎないじゃないの。人を信じられない変人にでもなるしかないね」
強迫性障害へのシンパシーがない人から見て、ハワードの行動は異常に見えるだろう。
洗っても洗っても汚れが消えていかないような気がして、手を洗い続けたり、他人が口をつけたコップで水を飲むことができない、という性癖から逃れることができない者は、ハワードが他人がふれたドアノブにさわれなかったり、血がにじむまで手を洗い続けたりする画面に「現代を生きるひとつの姿」を見る。
ハワード・ヒューズの母は息子を溺愛し、学校生活になじめないハワードのために、つきっきりで教育したという。
映画では冒頭シーンで、美しい母が回想される。幼いハワードを風呂で洗ってやる母は黴菌に満ちた外の世界の恐怖を語り、黴菌からの隔離Quarantineのスペルをハワードに教える。
ハワードの母が「隔離Q U A R A N T I N E」と、スペリングしながら息子の体を洗っていくシーン、妖しいエロスに満ちている。
母と息子の間の秘密の儀礼のごとく、静かに水は少年の体を流れ落ち、母は息子をこの世のすべての穢れから隔離しておきたいと願う。
少年の多くは「もうひとりのオイディプス王」であるという。
ハワードが16歳のとき、母が亡くなった。18歳で父の遺産を引き継ぎ、映画製作に乗り出すまでの2年間は、ハワードにとって何も心を埋めるものがない時間だったのではないだろうか。
もう、美しい母は息子に「隔離」とつぶやかない。
息子の欠落を埋めるものは、映画と飛行機だった。18歳で手にした莫大な遺産をハワードは惜しみなく注ぎ込む
『アビエイター』は、20歳のハワードが映画制作に乗り出したところから始まる。
<アビエイターつづく>
04/01 アビエイター③強迫性障害
04/02 アビエイター④イカロスの翼