春庭パンセソバージュ

野生の思考パンセソバージュが春の庭で満開です。

心も頭もポカポカ春庭のへぇ!へぇ!平成教育研究「春庭の国学③」

2004-01-09 | インポート
(2004/01/09)
心も頭もポカポカ春庭のへぇ!へぇ!平成教育研究「春庭の国学③」

 たぶんそうはいないと思うけれど、本居春庭の国学にものすごく興味がある人がいるならば。
 春庭の「本居春庭」の業績紹介は、飯田晴巳さんの研究によります。興味がある人はサイトへGO! http://www.kgef.ac.jp/ksjc/kiyo/910090k.htm からの引用、受け売りです。

 現代語訳と、係り受け図示の解説は「ポカポカ春庭」が、正月だけはビール解禁、頭ポカポカでやりましたので、誤解や理解足らずのところがあるかもしれません。

 今年こそ「みんなMサイズなのに、私一人LLサイズの衣裳で踊った2003年ジャズダンス発表会」の雪辱をはたすべく、せめてLサイズにしたいと、ビールを断っていましたが、正月くらいはねぇ。でもって、頭ポカポカです。

本居春庭の国学研究「和歌のことば、係り受け」(現代語訳ポカポカ春庭)

 『 私は常に、和歌を学び始めた方の歌を数多く見ている。あれこれと間違っていることがたくさんあるが、どのように初心者に教えてやろうかと考えて、むかしの和歌を取り上げて、ことばの係り受けやテニオハの意味を、初心者にもわかりやすいように、印をつけ、図示して、教え諭してやろうと思う。
 和歌のことばの「係り受け」を次の記号で示すことにする。

1, ⌒   このマークは、次の詞へのみ係っていくことを示す

2,┌――┐ このマークは、その詞テニオハの句を隔ててむねと係るところを示す

3,└――┘ このマークは、下のことばから上のことばに逆方向に係る所を示す

4,┃ このマークは、和歌の途中で切れる部分を示す

5,━ ━━ このマークは、「紐鏡」という本で述べている「結び」のテニオハを示す

6,〔  〕  このカッコは、枕詞を示す

 マークをつけて、言いたいことはいろいろあるが、初心者が理解できないことや、書き尽くせないことも多いので、初心者は、自分でよく心得て、自ら学んでいくようにしなkればならない。』

<本居春庭の原文>
 おのれ常に初学のともからの歌を多く見るにこれかれあやまる事多けれはいかてしらしめむと思ひよりけるまゝにいにしへの哥ともをこれかれ出して其かゝるてにをはのさまを心得安かるへき様に印をつけ筋なと引て教へ諭しつるなり

⌒  此しるしは次の詞へのみかゝるをしらせたるなり

┌――┐ 此印はその詞てにをはの句をへたてゝむねとかゝるところをしらせるなり

└――┘ 此印は下より上にかへりてかゝる所をしらせたるなり

┃ 此印は哥のなからにてきるゝをしらせたるなり
━ ━━ 此印は紐鏡にいへる結ふてにをはをしらせたるなり

〔  〕 かくかこみたるは枕詞なり

猶印をつけいはまほしき事ともゝ多かれと中々わつらはしく初学のともからは思ひまとふへく又筆には書取難き事ともゝ多しそはみつからよく心得ておのつからさとるへき事なり


万葉集No.2601「うつつにも夢にも我は思はざりき|ふりたる君にここに逢わんとは」
古今集No.84「[久方の]光のどけき春の日に静こころなく花の散るらむ」
古今集No.113「花の色はうつりにけりないたずらに|我が身世にふるながめせしまに」

を例にして、ことばがどのように係っていくか、ことばの係り受けを図示している。

(万葉2601)               
解説
1, 真ん中の「|」の部分で、一首が区切れていることを示している。

2,「おもはさりき」の係助詞「は」と過去の助動詞「き」は、呼応して「係り結び」を成立していることを「━ ━」のマークが示している。

3,「思はさりき ふりたる君にここに逢むとは」は、倒置であることを「└――┘」のマークで示している。本来は「昔ふれ合った君に、ここでに逢うとは思わなかった」と、「思う」があとに来る述語であるが、倒置されて前に出ている。

4,「ふりたる」と「君」は、連体修飾被修飾の関係で直接結びついていることを「⌒」で示している。

5,「ここに」「逢はむとは」は、連用修飾被修飾の関係で直接結びついていることを「⌒」で示している。

古今集No.84
解説
1,「久方の」は枕詞であることを 〔  〕マークで囲って示している。

2,「ひかり」は「のどけき」に直接係る。「のどけき」は「春」に係る。「しつ」は「心」に「花の」は「ちるらむ」に係る

3,推量の助動詞「らむ」がこの一首の結びの語であることを ━━マークで示している。

4,「しつ心なく花の」までが「ちるらむ」に係ることを ┌――┐マークで示している。

古今集No.113     
解説
1,┃マークのところで歌が区切れている。

2,└――┘のマークは倒置を示しているので「なすこともないままに我が身を世にすごし雨が長くふっているのを眺めている間のように時がうつってしまったことよ」となる。

3,詠嘆の助動詞「けり」で一首が結びとなっていることを ━━マークで示している。倒置なので、結びの語が前に来ている。

4,「わが身」と「世に」は「ふる」に係ることを ┌―┐マークで示している。

5,「世に」は「ふる」に、「ながめ」は「せし」に「せし」は「間」に係ることを ⌒マークで示している。

 本居春庭は、日本語の構造(シンタックス)を具体的に目で見てわかるように図示し、ことばがどのようにつながってひとつの文として構成されているかを、研究した。

本居春庭が図示したことをコピーしようと試みたのだが、行替えがことなって、私の転記能力ではうまく図示できなかった。図をみたい人は、上記サイトへ。

 ポカポカ春庭は、日本語学を学ぶ過程で日本語関係の本をある程度は読んだけれど、たぶんこの程度では、文法を学ぶ人から「えっ、そんなもので修士論文を書いちゃったの?」と言われるだろう。

 春庭は、小説やエッセイやその他の本も読みたくて、ついつい文法関係書の読破はおろそかになった。
 おまけに、読み終わると、文法の肝腎なところは内容を忘れてしまう読書だから、ちっとも身につかなかった。

 そのかわり、雑学好きになれたと思っている。「言語学・日本語学・日本語教育学・第二言語習得理論に関係ない本をもっともたくさん読んだ日本語教師」としては立候補できるだろう。

 日本語教師としては学が足りないポカポカ春庭にとって、日本語の構造を理解するために、大いに役だった本を紹介しましょう。

 時枝誠記「言語過程説」とか、三上章「日本語主語論(象は鼻が長い)」とか、日本語教師必読本はたくさんありますが、私の言語観文法観の基本は、おもに下記の書によっています。

☆☆☆☆☆☆☆
春庭今日の10冊No.79~88
No.79(お)奥田靖雄『日本語文法・連語論(言語学研究会編)』
No.8081(く)工藤浩『叙法副詞の意味と機能』『副詞と文の陳述的なタイプ(『日本語の文法3 モダリティ』第3章)』
No.82,83(た)高橋太郎『動詞の研究 動詞らしさの発展と消失』『動詞の意味用法の記述的研究(国立国語研究所編)』
No.848586(て)寺村秀夫『日本語のシンタクスと意味Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』
No.87,88(み)南不二男『現代日本語の構造』『現代日本語文法の構造』

蛇の足跡:
 と、縷々本居春庭について、のべてきたものの、これで「本居春庭にすごく興味がわいたから、ちょっと研究してみます」という人が出てくることがあるのかしら。

 いないだろうとは思いつつ、そこは「年のはじめのためしとて」ちょっと厳粛に話をはじめてみたポカポカ春庭。もう限界です。格調高いのは、似合わないのよネェ。