ハナママゴンの雑記帳

ひとり上手で面倒臭がりで出不精だけれど旅行は好きな兼業主婦が、書きたいことを気ままに書かせていただいております。

映画 『クワイ河に虹をかけた男』

2016-08-13 22:46:31 | 戦争

皆さんもうご存知でしょうか?

永瀬隆さんの実録映画が制作され、8月27日(土)から東京で公開されます!


クワイ河に虹をかけた男

    


永瀬さんの故郷・岡山市では7月9日から15日まで、先行上映されたようです。

監督は、『クワイ河に虹をかけた男』 を著したジャーナリストの満田康弘さん。

私は満田さんのドキュメンタリーはまったく拝見していませんが、この本のおかげで

永瀬氏の贖罪と和解の活動を詳しく知ることができました


私が本書の存在を知るきっかけになったのは、“The Railway Man” の著者エリック・ローマックス氏の死亡記事でした。

(私の過去のブログ記事:  “The Railway Man”      


その後 “The Railway Man” が 『レイルウェイ 運命の旅路』 として映画化され、私も見に行きました

興行作品だから、ドラマチックなシーンが必要だったのはわかります。 わかるんです。 が・・・・、

永瀬氏の描写やローマックス氏の行動に、とても納得できませんでした。

 


映画とは対照的に穏やかだった、永瀬氏とローマックス氏の実際の再会場面。

 

カンチャナブリでの再会後、ローマックス氏は日本も訪れたそうです。

 


戦争中だった若き日、支配する側とされる側だった日本軍人と捕虜たち。

(下左画像・左端が永瀬氏だそうです。)

 

思い出の地を、2人はどんな思いを胸に、歩いたのでしょうか。

 

 

 「戦時中だったから、命令に従うしかなかった。 仕方がなかったんだ。」 として過去を封印し、戦後の民主主義と自由とやがて迎える

経済的繁栄を楽しむこともできました。 実際 “身に覚えのある人” の多くがそうしたでしょうし、たぶん私もそうしたと思います。

でも永瀬氏はそうしなかった。 自分の良心に従って行動を開始し、生涯それを続けました。

      

個人主義でなく“長いものには巻かれろ” の集団主義が好まれる日本において、そうすることはとても勇気が要ったはずです。

新世紀に入った現在ならともかく、戦争の記憶がまだ人々の心に鮮やかだった頃、国全体が戦争の傷を癒すことを

最優先にしていた頃に、日本の戦争責任を訴え行動を起こしたのですから。

そして永瀬氏は、旧日本軍の外国人捕虜に対する戦争責任だけでなく、徴兵され異国に散ったまま遺骨を回収する

努力も供養もされることなく無視されてきた同胞兵士に対する責任も、言葉鋭く批判しました。


永瀬さんが「わしは言いたいことがあるんじゃ」と言ってカメラに向かってしゃべり始めた。

「私たち南方軍の人間は、輸送船の上で『海行かば水漬く屍、山行かば草生す屍』と歌ってやってきた。

ところが55年経ってみてどうですか。

歌の通り、『山行かば草生す屍』となって兵隊さんたちは草むらの下に眠っている。

私は去年初めてここに来た時、日本人として本当に恥ずかしいと思いましたよ。

私たち戦中派の人間は一体何のために戦ったのか。この間もある兵隊さんが言いましたよ。

『私たちは犬死ではなかったのか』と。

靖国神社に名簿は祀られていますけど、天皇陛下は参ることもできない。

戦後処理が何もできていない。そのことを日本人はなんとも思っていない。

私たちはもう先はないかもしれないが、私は訴えたい。

日本の人たち、しっかりしてください」

『クワイ河に虹をかけた男』より抜粋―


映画 『レイルウェイ 運命の旅路』 を見てから、心の底に不満をくすぶらせていた私。

永瀬さんを主人公にした映画ができないかと望んでいた私。

なので、永瀬さんの実録映画、永瀬さんの本当の姿を見せてくれる映画ができて、嬉しいです!

実は、ブログに 『レイルウェイ 運命の旅路』 の感想を書いたあと、それを読んでくださった満田康弘さん――

『クワイ河に虹をかけた男』 の著者で映画版の監督でおられる満田さん――からメールをいただいていました。

そのご縁で今回も、永瀬さんの映画が完成し公開されることをお知らせいただきました。

最近は私、怠けて全然ニュースをチェックしていないので、お知らせいただかなかったら気がつかないところでした。

「次は英語版とタイ語版を作ってイギリス他各国で上映するのが目標です」 とのことなので、

ぜひぜひそれが実現し、イギリスで公開の運びとなるよう祈りつつ待つことにします。

2019年のラグビーW杯と2020年のオリンピック開催を控え、日本はこれから注目される機会が増えるはず。

時期的にもタイムリーなのでは。

ということで私はイギリスでの上映を待つしかありませんが、日本、特に東京とその周辺に在住の皆さんは、

ご興味があったらぜひ見にお出掛けくださいね。


映画 『クワイ河に虹をかけた男


は、2週間後の8月27日(土)から9月16日(金)まで、毎日12:30より、ポレポレ東中野で上映されます。


*       *       *       *       *       *       *       *      *       *       *       *


話は変わって、『クワイ河平和基金』。

(動画: 故永瀬さんの平和基金 タイの看護学生に奨学金20年


1946年7月、永瀬さんはタイを離れ、引揚船で帰国の途についた。タイから日本に復員した日本兵は、ビルマ方面から

撤退してきた人たちも含めて12万人に膨れ上がっていた。バンコク・クロントイの埠頭から乗船する直前、

日本兵一人ひとりに飯盒いっぱいのコメと中蓋一杯のザラメ砂糖が支給された。ザラメは当時は貴重品である。

船が出港すると、永瀬さんはその米を船のデッキで食べた。本当においしかったという。

『クワイ河に虹をかけた男』より抜粋―


自国に侵略してきて好き放題してきたが、敗戦したためボロボロになって帰国する日本軍。 その兵士たちに、タイ政府とタイ国民は

米とザラメを支給してくれた。  『クワイ河平和基金』 は永瀬氏がその恩に報いるため私財を投じて始めたものですが、

「永瀬氏の生前は彼の資産と民間からの寄付で続いていたものの、彼の死後は寄付が途絶えて存続の危機にある」

とのメールを、一昨年タイ在住のビジネスマンの方からいただきました。 以前は高かったタイの金利が近年は2%

ほどにまで落ちてしまったことも、大きく影響しているようです。 満田さんとも連携して基金の維持に尽力されている方で、

タイにある寄付の振込先銀行を教えていただいたので私もダーズリーの銀行から寄付金を振り込もうとしたのですが、

振り込みには 「振込先銀行の住所が必要」 だし、「25ポンドの手数料がかかる」 と言われてしまいました。

住所はともかく、25ポンド(3250円)もの手数料はイヤ~!


「同じタイだし、ガミーくんのための資金集め Hope for Gammy のように、ネットのページで簡単に

寄付できるようになるといいのですが?」 とのメールを送らせていただいたところ

「永瀬さんとその基金を紹介するウェブを制作する方向になっています」 とお返事いただきました。

でもそれきりになっていたので私も忘れて(オイオイ)いましたが、この記事のためググッてみたところ、

クワイ河平和基金の Facebook ページ を見つけました。 ここに日本での振込先銀行の詳細があるので、

次回日本に行ったときはぜひ寄付させていただきます。


FBページによると、岡山市での映画の先行上映では13万円を超える寄付が集まったようですね。

東京とその近郊の皆様にも、期待させていただきたいと思います。

一番の理想は、十分な額の寄付が集まって、その利息だけで毎年の奨学金給付が賄えるようになることなのですが・・・・・

日本で多額の寄付金を集めるには、どうしたらいいのでしょうね? 何かアイディアをお持ちの方がいらっしゃいましたら、

ぜひメッセージかコメントでお寄せ下さい。

2005年には読売国際協力賞を受賞したクワイ河平和基金。 それを廃止に追い込んでしまったら、

日本人はタイの人々に二度目の不面目をさらすことになる。 そう私は思います。

クワイ河平和基金が、どうかどうか、存続されますように・・・!


 今回の記事のためネットで検索していて新たに見つけた、参考になった記事のリンクです。

英国在住ジャーナリスト・木村正人氏 「死の泰麺鉄道」 戦争の真実と和解 (1) (2) (3) (4) (5)

上記記事中に言及されていた、旧日本軍による捕虜の取り扱いの詳細がまとめられた

旧軍における捕虜の取扱い ―太平洋戦争の状況を中心に―

ついでながら、永瀬氏が発起人の一人となって1995年に始まった、英連邦戦没捕虜追悼礼拝。

22回目を迎えた今年は、先週の土曜日(8月6日)に催されたようです。


 日本人にとって8月は、戦争を考える月。 過去は変えられませんが、未来は変えられます。

過去を反芻し、反戦の誓いを新たにしようではありませんか。



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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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知りませんでした (Yoko)
2022-07-06 17:22:07
いつもブログの更新を楽しみにしております。
今回はたまたま過去の記事を拝見し、クワイ河平和基金を知りました。
敗戦後の日本兵に「飯盒いっぱいのコメと中蓋一杯のザラメ砂糖が支給」は今では想像することもできない程のことだったと思います。
東日本大震災の際にもタイ国は助けてくれました。感謝です。
現在、私も日本を離れているので募金がしづらい状況ですが帰国できたら何とかしようと思います
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コメントありがとうございます。 (ハナママゴン)
2022-07-07 03:13:58
私も日本にいた間は、永瀬さんについてまったく存じ上げませんでした。
なので、遅すぎた感はあれど知ることができて嬉しかったです。

クワイ河平和基金、その後はどうなっているのでしょうね。
永瀬さんがせっかく始めた恩返しの活動が先細りになった挙句に消滅してしまうとしたら、本当に残念です・・・。
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