『世界』5月号が今日届いた。特集の1が「憲法を取り戻す」である。
残念ながら、カネにまみれ、カネのことしか考えない政治家や企業家が実権を握っているわが国では、日本国憲法をないがしろにし、日本国家における憲法の位置について、まったく無理解のままである。無理解のまま、アメリカ合州国の要請に基づき、堂々と憲法を踏みにじる。そのアメリカ合州国こそ、世界ではじめて成文憲法をつくりだした国である。憲法を書くという行為によって、アメリカという国家を始めたその国が、他国の成文憲法の破壊に手を貸している。
さて『世界』と同時に今日、『法と民主主義』4月号も届いた。特集は、「「政治改革」30年 総括と展望」である。巻頭で、小沢隆一さん(かつて静岡大学にいた)が、本号は、今は亡き森英樹名古屋大学名誉教授に教えを受けた方々が執筆している、とある。
森英樹さんは、講師として、静岡県によくきていただいた。分かりやすく、聞きやすく、依頼した時間通りに終わるという神業であった。また、話の中には、講演当日の朝のニュースで報じられていたことがあったり、堅牢な構築物のような話のなかに、ヴィヴィッドなネタを取り入れて、それはそれは驚くべき講演であった。
なぜそんなに時間通りに話をまとめることができるのかと問うたことがあった。森さんは、話をする内容をユニットとしてもっていて、それを並べるだけだからなどと答えていたが、しかしそれならなぜ最新のネタを入れることができるのかと疑問に思った。
森さんは、『法律時報』などで、まさに当該時期に課題となっているテーマを、憲法学の理論と方法を駆使して論じ、わたしなどもそれらを読んでいた。昨年出版された『民主主義法学の憲法理論』(日本評論社)は、森さんのそうした論文を集めたものだ。7480円もするから、もう現役を引退したわたしは買うことはないだろうが、しかし、森さんの現実に対する学問的な姿勢は、今なお忘れることはできない。
あんなに元気で、大きな声で話されていたのに、突然亡くなられた。5年前のことであった。歴史学者でも、法律学者でも、わたしが尊敬し、世話になった方々は、ほとんど亡くなってしまわれ、わたしは寂しくて仕方がない。