浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】花崎皋平『静かな大地 松浦武四郎とアイヌ民族』(岩波書店)

2023-12-17 11:21:19 | 

 東京への往復の電車で何を読もうかと書棚から選んだのがこの本。買ってあるのに読んでない本がたくさんある。

 新幹線車内で読みはじめたら、これは読みとおさなければならないと思った。松浦武四郎という人物の名は知っていたが、具体的にどんなことをしていたかは知らなかった。そういえば以前『現代思想』臨時増刊号がこの松浦を特集していたことを今思い出した。確か、私はそれも購入している。

 松浦は伊勢松坂の出身、本居宣長のところである。松浦も国学を学んでいる。多くの和人がアイヌを蔑視していた時代に、松浦のアイヌとの間につくった対等な関係がうかがえる。といっても、アイヌは和人に徹底的に搾取収奪されていたから、松浦にとっては実質的に対等な関係ではないが、アイヌをまさに同じ人間として対していることがわかる。それは国学の影響か、それとも彼の人間性の問題か、おそらく後者であると思うが。

 しかし読んでいて、アイヌを直接管理し働かせる和人(「番人」)の卑劣なこと。彼等は重労働を強い、食料を与えず、結婚もさせないで人口を減らすなどの蛮行を繰り広げた。「番人」は、アイヌの娘を妾にしたり、アイヌの妻を横取りしたりしていた。以前私は、1930年におきた台湾の霧社事件について調べたことがある。台湾を植民地化した日本国家は、「原住民」(台湾ではこの呼称をつかっている)が住むところに警察官の駐在所を置き、警察官はその地域の「原住民」の長の娘を妾にしたり、「原住民」を酷使したりしていた。それと同じことが、蝦夷地で行われていたことを知った。植民者が行うことは時代を越えて共通している。

 松浦は「番人」たちの蛮行を細かく調べて書き留めている。

 和人がアイヌに対して行った無数の暴力、それは近代になっても継続された。

 そうした実態を知らず、知識もないままにネットでながされる偽情報を真に受けてそれを拡散させる自由民主党の国会議員、杉田某に、さらに怒りを覚える。

 「静かな大地」を、「和人」、日本人は、大いに混乱させてきた。そうした歴史をきちんと認識すべきである。

 

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