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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】西岡研介『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』

2019-12-23 20:21:44 | 社会
 東洋経済新報社、2019年10月刊行、600頁に及ぶ本である。昨日図書館から借りだし、一挙に読み終えた。著者の筆力と取材力が、読む者をひきつける。一気に読み進んだ理由はそれだけではない、読む私も学生時代に「革マル」の暴力を目の当たりにし、その卑劣な集団に明確な憤怒を持ち続けているからである。同時に、本書とも関わるが、国鉄の分割民営化に際して、国鉄労働組合への差別的取扱いを、当局と結託して行った「革マル」が牛耳る動労は、まさに国家的「不当労働行為」に加担したことを、私は許したくないからでもある。

 「革マル」派は、反スターリン主義、反帝国主義を掲げているが、私が見る所、もっともスターリン主義に毒されている組織である。組織至上主義の「革マル」が、国鉄の分割民営化、いわゆる国鉄改革に、方針を転換して結託した背景には、組織を維持するというスターリン主義的な欲望が働いたからだろう。

 「革マル」が牛耳る「東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)」が、どのような活動をしているかが本書では活写されているが、その行動形態はなるほど「革マル」らしいと思わざるをえなかった。
 JR東日本には、JR東労組だけではなく、国労東日本、JR東日本ユニオンなどがあるが、JR東労組は、組合員が他の組合のメンバーと交際することを固く禁じている。それがバレた場合は、徹底的に吊し上げられる。組合をやめさせ、さらにはJRからも放逐する。その事例が記されている。

 「積極攻撃型組織論」、長い間君臨した革マル派幹部・松嵜明JR東日本労組委員長がうちだした理論である。国労などの、同じ国鉄労働者であるから異なった組合のメンバーであっても「統一と団結」で結びつこうという考えを排斥し、他の組合員や組合内のある意味での「異分子」を敵対的矛盾として徹底的にたたきのめすという考えが、JR東日本労組にはあったし、それは「革マル」が牛耳っているJR北海道やJR貨物の労働組合でも行われていたようだ。

 また盗聴や盗撮、拉致監禁などを行う「革マル」派は、社会に起きる事件を、権力の謀略事件と捉えて、それに関わっていくということも行っていた。しかし「革マル」自体が謀略を専門に行う部署をもっている。早稲田大学から「革マル」派が放逐される過程の中で、早大総長の自宅に盗聴器を設置したり、忍び込んだりしていたということもあったという。

 そして問題は、そうした「革マル」が牛耳る組合(東日本、北海道など)と経営当局が足並みを揃え、他の組合を抑圧していたという驚愕の事実も記される。現在JR東日本は、「革マル」との関係を絶とうとしているという。著者もそれが正しいとしているが、同感である。

 いずれにしてもJR東日本や、JR北海道で、「革マル」系の労働組合によりどんなことが起こされていたか、たいへんよくわかった。

 58頁に、「革マル」の戦略として、「既成組織への“もぐり込み”、それら組織の理論や運動の“のりこえ”、さらにはそれら組織内部からの“食い破り”」があることが指摘されている。これも納得である。
 「革マル」派活動家が無党派の市民組織のなかに“もぐり込み”をしていることを、私は知っている。そしてその市民組織のメンバーとして、「革マル」がスターリン主義政党として“のりこえる”対象としてある日本共産党系の人びとと街頭で仲よく並んでいる姿も見ている。

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