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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

東電の経営者の責任

2017-03-07 18:56:56 | その他
 『読売新聞』が、「福島原発の東電社員、「中傷」で強いストレス…順天堂大など分析」という記事を配信した。その一部。

 福島第一、第二原子力発電所で事故後も働く東京電力社員の心の傷は、津波や知人を亡くした被災体験よりも、中傷などの批判によるものが根強く残るとする分析結果を、順天堂大学などのチームがまとめた。英医学誌に7日発表する。


 医療機関で受診を拒否されたり、避難先で住民に問いつめられたりするなどして心に傷を受けた社員は、11年時点で12・8%にあたる181人。事故から3年以上が過ぎても、こうした経験をしていない社員に比べて、約3倍も非常に強いストレスが残っていた。

 東電社員のストレスを増しているのは、東電経営者の原発事故隠しや補償に対する誠意の無さなどがあるからだろう。今月号の『世界』の特集は、「原発事故に奪われ続ける日常」である。そのなかで、事故原因を研究している七沢潔、海渡雄一、田辺文也各氏の論攷や、田中三彦氏が加わった討論を読むと、津波対策などをケチっていたこと、事故時に対応を誤ったこと、事故後に責任をとらずに、事故原因の探求についてもサボり続けている、そういう会社の姿勢を知れば知るほど、東電への怒りをもつ。

 東電の経営者の姿勢が変われば、東電社員への怒りもおさまるだろうが、現状では全く無理というしかない。


喪家の狗

2017-03-07 10:21:43 | その他
 「喪家の狗」とは、飼い主に見捨てられた犬。または、そのようにやせ衰えて元気のない人のこと、をいうのだそうだ。富島健夫の小説に、在日朝鮮人の話があるというので、図書館から借りた。それが「喪家の狗」だ。

 その内容は、米軍基地の地区に住む在日朝鮮人、日本人の女性と同棲し、彼女に食わせてもらっている。米兵たちを女のところに連れて行くという「仕事」をしている李という者がいて、その「仕事」を彼もやろうとするが、MPに捕まってしまう。釈放されて帰宅すると、李が彼の妻を襲うところに出くわすが彼は沈黙し、家を去って行くというものだ。醜悪である。こういう現実があったとしたら、醜悪この上ない。現実は、目を背けたくなるような事実に満ちているのだろう。朝鮮戦争時の米軍基地周辺の断面が描かれたというのであろうが、知りたくない現実だ。

 もうひとつ「断崖」という短編があった。敗戦直後の朝鮮の状況が記されている。作家の富島は朝鮮からの引き揚げ者である。総督府によって抑圧されてきた朝鮮人の家には、韓国の国旗が掲げられていた。その旗は、総督府によって所持を禁止されていたのに、掲げられていた。その姿は、日本の工事現場の飯場でも同様であったことを私は知っている。朝鮮人が、いかに日本の植民地支配に嫌悪感を抱いていたかの証左でもある。

 敗戦直後、朝鮮半島にいた日本人をいくつもの悲劇が襲う。暴力的な仕打ちがあった。その一断面を、この小説は露わにする。

 小説が表す、その時代の一断面。それらを集めることによって、その時代の相を表すことが出きるのではないかと思うほど、迫真に迫った叙述であった。

 富島は、「喪家の狗」で芥川賞候補になったそうだ。学生時代に書いたもので将来が嘱望されていて彼は、何故にポルノ作家になったのだろうか。