ある日、日帰り旅行に出た。悩みがあったから出た旅だった。
少し気が晴れての帰りの列車の中だった。
4人がけの椅子におじい様と40代くらいの女性、そして私が座っていた。
みんな知らない同士です。
それがひょんな、何が原因かも判らないことでおじい様が怒り出した。
おじい様と40代の女性は向かいあって座っていたのね。
その2人が売り言葉に買い言葉で丁々発止で喧嘩を始めた。
私はは女性の隣に座っていたのですが、どちらかというとおじい様が一方的に女性に難癖をつけている感はいなめず、女性もだから引くに引けない状態になっていた。
全く関係のない私は隣でさりげなく巻き込まれているのであり…そう言ってしまえばこのおじい様も女性もここで出会っただけの他人で…。
何故、ここまでよく判らない理由でエキサイトしてしまっているのか…。判らない。
言ったから言い返す。
売り言葉に買い言葉の世界です。
私は止めに入った方がいいんでしょうか?
迷ったんですが…。
入れない。
おじい様が降りるまでの5駅…一駅区間が10分くらい…の間、さすがに言い合いは止まっていたものの、険悪な空気拭いきれず、よほど席を移ろうかと思ったのですが、躊躇している間におじい様の下車駅が来たらしくおじい様は静かに去っていかれました。
それから嘘のような平和な時間が過ぎました。
突然、女性が私に向かって
「嫌な思いさせてごめんなさいね」
と言ったんです。
私、少し泣いてたんですね。
嫌なことがあって救いを求めるように日帰りの旅に出てやっと気持ちが落ち着いて帰る列車がこれですから。
つらくてどうしていいか判らなかった。
そうなんですよね、どうしておじい様があんなに些細なことで怒り出したのか判りません。
言いがかりと言えばそうです。
年を取るということは人を気難しくしてしまう。私には年齢のもたらした言いようのない寂しさにも見えました。
誰かにどんな形でもいいから構って欲しい。
そんな風にも見えました。
その相手を目の前の人に女性に求めた。
女性からしたら災難でしかないだろうけど。
女性は間に入って助けることもしなかった、ただの傍観者でしかない私に「気にしないでね」と言い下車されました。
日帰りの旅行ですから、ジャージで東京の隣の県です。
逃げたかった。
ただ目の前の現実から逃げ出したかった。
どうしてその私の目の前でこんな争いが起きるのか。それは判らない。
このときのことはどうとらえるべきかまだ判らないけど、いろんな教訓を私に残し、忘れられない記憶となりました。
1番の宝は、おじい様に当たられ、傍観者の私にも気を遣われた女性の心の大きさだろうか。
まだまだひよこだ。
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