最近のマイブームはリンゴ。決して好きではなかったこの果実を盛んに食べるようになったのは、年初に体調を崩したのがきっかけでした。そう、あのことわざを思い出したのです。「1日1個で医者いらず」。

 有名な英医学誌に一昨年末、面白い論文が発表された。

 英国の50歳以上(約2200万人)が対象。コレステロールを下げる薬スタチンを飲んでいない人が新たに飲み始めた場合と、7割の人が1日1個のリンゴを食べた場合を仮定し、「心臓発作など血管の病気による死者数がどれほど減るか」をシミュレーションした。

 ともに効果は高かったが差はあまりなかった。オックスフォード大のチームは、スタチン服用者は続けるべきだとしたうえで、「ことわざは現代的な薬と同等の効果を持ち、副作用も少なさそうだ」と結論づけた。

 フィンランドやオランダなどで多数の住民を対象に行われた長期間の追跡調査でも、リンゴを多く食べる人は、がんや脳卒中、気管支ぜんそくなどのリスクが低いと報告されている。

 日本でも一大産地の青森県でリンゴと健康の関係が調べられている。弘前市岩木地区の住民を対象にしたこれまでの調査では、1日1個以上を食べる人たちの血中の総コレステロール値は、そんなに食べない人たちと比べて有意に低かったという結果がみられたという。

 ではなぜ、健康にいいのか。この調査にも参加する農研機構果樹研究所(茨城県つくば市)の庄司俊彦主任研究員によると、以前は血圧を下げる効果のあるカリウムや、血糖値の上昇を抑える食物繊維が注目されていた。確かに含まれているが、際立った成分ではない。そこで近年注目されているのがポリフェノール。赤ワインブームを引き起こした抗酸化成分だ。

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 切り口がやがて茶色になるのはポリフェノールが酸素に触れた結果だ。全体の0・1~0・3%ほど含まれ、その中でも5~6割を占める特徴的な成分がプロシアニジン類。茶の成分としても知られるカテキンが複数つながった構造をしている。

 「プロシアニジン類にはいろいろな健康効果が期待されている」と庄司さん。例えば脂肪が腸管に吸収されるのを邪魔して体外に排出されやすくする効果がある。結果、コレステロールや中性脂肪が増えるのを抑えてくれると考えられている。ほかにもメラニン色素ができることを邪魔する効果が確認されていたりもするという。美白につながるかもしれない。

 ただし、一度にたくさん食べればいいというものではなさそうだ。庄司さんも「食生活のバランスを良くするために採り入れてはどうか」と提案する。

 記者もリンゴ習慣を始めてから便通が良くなったのは実感している。様々な健康効果は気長に待ってみようと思う。(須藤大輔)

 

 ■インフォメーション

 そのまま食べてもおいしいが、料理にも活用できる。JA全農のウェブサイト「りんご情報局」(http://vegemart.net/apple/)ではおかずやおやつなどのレシピを紹介。青森県の生産者団体などでつくる「りんご大学」というサイト(http://www.ringodaigaku.com/)も詳しい。いろいろな品種の解説なども参考になる。