農林水産省は17日に原案をまとめた「食料・農業・農村基本計画」で食料自給率目標(カロリーベース)を50%から45%に下げる一方、日本の食料生産力を示す新たな指標を示した。もし食料の輸入が止まっても、国内農業をイモ中心に切り替えれば必要なカロリーを確保できるという。

 基本計画は、今後10年の農業政策の方針を示すもので、今月中の閣議決定を目指す。これまではカロリーベースの食料自給率を重要視してきたが、生産力や、「売れる」農産物をどれだけ作っているかを重要視する政策に転換する。

 新たな指標は、いざという時に国産でどれだけの食料を供給できるかを示す「食料自給力」だ。戦争などで輸入が止まった場合に、国内で国民1人に対して1日にどれだけのカロリーを提供できるかを示す。

 体重を保つために人が1日あたり必要なカロリーを2147キロカロリーとし、どんな作付けでどの程度のカロリーを供給できるか、4パターンの試算(2013年度)を示した。

 いまの食生活に近い「コメ中心」の2パターンでは最大1855キロカロリーしか供給できず、必要な分を賄えない。一方、カロリーが高いサツマイモやジャガイモ中心の2パターンでは最低でも2462キロカロリーを確保できるという。

 農水省は食料自給力の指標を食料自給率と合わせて毎年8月に発表していく。

 カロリーベースの食料自給率目標は50%から45%に下げる。民主党政権だった10年に目標を45%から50%に上げ、コメの生産調整を守った農家などに3年間で約1兆6千億円をかけたが、実際の自給率は13年度まで4年続けて39%と低迷し、目標を見直した。

 一方で、生産額ベースの食料自給率目標は70%から73%に上げる。この指標だと、肉類や果物など価格が高く、消費者の需要が多い農産物の実態が反映されるため、「もうかる農業」を後押しするねらいだ。

 新たな指標を導入するのは、食料自給率を高めるために多大な予算や労力をつぎ込んだが、結果として自給率を高められなかったことがある。今後の農政は、絶対的な生産力の確保に軸足を移すが、担い手となる若手農家を確保できるのかなど、課題も多い。