政府は10日、75歳以上の高齢者に対する運転免許制度を見直し、記憶力や判断力といった認知機能のチェックを強化する改正道路交通法案を閣議決定した。筆記式の検査で認知症の恐れがあると判定された全ての人に医師の診断を義務づけ、発症していたら免許を停止か取り消しにする。

 現行法は75歳以上の免許所有者に対して、3年に一度の免許更新時にペーパーテスト形式の「認知機能検査」を義務づけている。結果によって記憶力・判断力が低いと「1分類」に、少し低ければ「2分類」に、問題ないと「3分類」に分類。1分類で、道路の逆走や信号無視といった交通違反をした人に医師の診断を義務づけ、発症していたら免許を停止したり取り消したりしていた。

 改正案では、検査と医師の診断の機会を増やす。検査は従来の免許更新時に加えて、新たに政令で定める特定の交通違反をした時にも課す。また、1分類と判定された場合は交通違反の有無にかかわらず、全ての人に医師の診断を義務づける。

 警察庁によると、2013年は約145万2千人が検査を受け、約3万5千人が1分類と判定された。医師の診断を受けたのは524人で、このうち118人が免許停止・取り消しになった。法改正によって年間3万人を超える人が医師の診断を受けることになり、免許を失う人が増える可能性が高い。

 13年の交通死亡事故は3854件で10年間で41・2%減ったが、75歳以上による死亡事故が占める割合は11・9%に倍増。警察庁の分析で、75歳以上による死亡事故の約3割で運転者の認知機能が不十分だった可能性があることもわかった。政府は認知機能の低下がお年寄りの事故に影響を与えているとみており、現行の検査ではお年寄りの運転適性を十分に把握できないと判断した。

 改正案には免許区分の変更も盛り込んだ。普通、中型、大型の3区分の普通と中型の間に、「準中型」を新設し、4区分とする。18歳で免許を取得できる新区分を設けて、若手の運転手不足が深刻な運送業界に応えた。