『植物 オヤジ』

日々出会う植物たちの「たくましさ」と「美しさ」を再発見する、ハードボイルド・ボタニカルライフ。音楽、美食なども。

トアロード デリカテッセン

2018年05月21日 | 日記

神戸は元町にあるトアロード デリカテッセン。
近隣にに20年以上住んでいるが初めて伺った。
きっかけは村上春樹さんだ。
春樹さんはかなりの食通(小説を通してしか知りませんが)で
サンドウィッチやオムレツなど平凡かつ難解な料理に関する記述が多い。
「世界の終わりとハードボイルド ワンダーランド」には美味しいサンドウィッチの記述がある。

私はソファーに対するのと同じようにサンドウィッチに対してもかなり評価の辛い方だと思うが、そのサンドウィッチは私の定めた基準線を軽くクリアしていた。パンは新鮮ではりがあり、よく切れる清潔な包丁でカットされていた。とかく見過されがちなことだけれど、良いサンドウィッチを作るためには良い包丁を用意することが絶対に不可欠なのだ。どれだけ立派な材料を揃えても包丁が悪ければおいしいサンドウィッチはできない。マスタードは上物だったし、レタスはしっかりとしていたし、マヨネーズも手づくりか手づくりに近いものだった。これほどよくできたサンドウィッチを食べたのはひさしぶりだった。
(本文より引用)

20年くらい前に読んで感動した一冊。
どうもそのサンドウィッチのモデルになっているのがこのお店らしい。
春樹さんのエッセイに「生涯で一番美味しいサンドウィッチ」だと出ていたので間違いないだろう。
一階が切り売りのハムやチーズ、ワインの店舗、二階はレストランだ。
サンドウィッチとレーベンブロイ、白ワインをいただいた。
パンの耳は香ばしく軽くはじけるクリスピー感があり
中はしっとりとして、また弾力がある。
こんなに薄いのに軽く噛んだ歯を跳ね返すほどだ。
チーズは口の中でいつのまにかとけて後味だけを残す。
サーモンもローストビーフも美味しかった。
春樹が言うように今までで一番美味しいサンドウィッチだった。
私の表現力では言葉にならないので、上記の引用文を参考にしてみていただきたい。
その通りだと思いました。

レストランはサンドウィッチ ルームといわれていて、最初はサンドウィッチ教室的な場所だったようです。
落ち着いた良い部屋だった。
接客も申し分なかった。
帰りに一階で買った品物を持って玄関まで送り出して頂いたほどだ。
創業は昭和24年というから私よりも一回りも先輩なのだ。
20年前に心の何処かに届いた手紙が今開いたような気がする。
しかもこんなに近い場所で。
文学の力とはすごいものですね。
いや、それ以上にこのお店のあり方が素晴らしいのだろう。
しばらくは通うことになりそうだ。




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