『植物 オヤジ』

日々出会う植物たちの「たくましさ」と「美しさ」を再発見する、ハードボイルド・ボタニカルライフ。音楽、美食なども。

武満徹

2019年12月29日 | 音楽

武満徹の合唱曲はめずらしい。
その歌を聴きに堺まで足を運んだ。
今年できたらしい美しいホール。
300名程度の小ホールはほぼ満席。
ご年配の方が多い。


武満さんらしいシンプルで美しい装丁のプログラム。

無伴奏の混声合唱
ピアノ伴奏のソロパート
休憩を挟んで再び混声合唱
どのパートも素晴らしかった。
武満さんのオーケストラや弦楽曲は難解で聴くのにコツがいる。横のメロディよりも不協和音による縦の響きや不穏な空気を醸し出す。いわゆる現代音楽。
しかしこの歌たちはとてもわかりやすく聞きやすい。「燃える秋」などは歌謡曲の様だ。
これは聞き覚えがあったのが誰が歌ったか思い出せない。帰ってからYouTubeで調べるとハイファイセットの動画があった。そうか、それをどこかで聞いていたのだ。その頃の風景はすっかり忘れてしまったけれど。



詩は谷川俊太郎や五木寛之ら。
武満自身の詩があったのは驚いた。
作詞もあったのだ。
簡潔で美しく、力強い詩だ。

武満徹さんは既に没後24年だという。
いつの間にかそんなに時間が経ったのだ。
亡くなるその日は病院のベッドの上でNHK FMからたまたま流れるマタイ受難曲を聴いて涙を流したという逸話が残っている。友人で敬愛する立花隆氏が武満さんを悼んでコメントしていたのを覚えている。武満さんらしい象徴的な話だ。
酒に酔うと演歌を口ずさんでいたという話もあり、特別に気難しい人ではなかったようだ。この歌たちを聴いてわかった。解説者が言うように武満徹の根底は「うた」なのだ。あの難解なノベンバーステップスや弦楽のためのレクイエムにも根底には歌が潜んでいたのだ。
温故知新というのか、新しい発見もありいいコンサートだった。