卓治さんの〈ひまわり〉
聴くたびに
その世界に入っていく
女はきっと誰もが「絵葉書」を待っている
心の端っこで
ここでないどこかを夢見て
今日でない明日をみつめて
自分でない自分を求めて
だから〈ひまわり〉の女房が
羨ましかったりする
そしてやがて首を振ってつぶやく
「ひまわりはほほえむように揺れていたのではなく
ただただ揺れていただけよ」
その人の女房はある日 絵葉書を受けとった
丘の上のひまわりがほほえむように揺れる写真
午後3時には荷造りと化粧をすませて
日曜日にしかかぶらない帽子を深くかぶる
彼女は部屋を出る時も笑顔を崩さない
足早に階段を降りて歩きだす
ひまわりの花を見るたびに
階段を下りてゆく彼女の後ろ姿を思う
彼女は今ごろどうしているだろうか
〈ひまわり〉は1984年に発表された
26歳の彼
「大事なことは生き続けることなんだと思い始めていた」
と語っている
あれから25年
〈ひまわり〉は
相変わらず
色褪せず
聴く人を
ひまわりがどこかに咲いているだろう世界へと
連れていってくれる
つらくても
切なくても
とにかく
生き続ける
聴くたびに
その世界に入っていく
女はきっと誰もが「絵葉書」を待っている
心の端っこで
ここでないどこかを夢見て
今日でない明日をみつめて
自分でない自分を求めて
だから〈ひまわり〉の女房が
羨ましかったりする
そしてやがて首を振ってつぶやく
「ひまわりはほほえむように揺れていたのではなく
ただただ揺れていただけよ」
その人の女房はある日 絵葉書を受けとった
丘の上のひまわりがほほえむように揺れる写真
午後3時には荷造りと化粧をすませて
日曜日にしかかぶらない帽子を深くかぶる
彼女は部屋を出る時も笑顔を崩さない
足早に階段を降りて歩きだす
ひまわりの花を見るたびに
階段を下りてゆく彼女の後ろ姿を思う
彼女は今ごろどうしているだろうか
〈ひまわり〉は1984年に発表された
26歳の彼
「大事なことは生き続けることなんだと思い始めていた」
と語っている
あれから25年
〈ひまわり〉は
相変わらず
色褪せず
聴く人を
ひまわりがどこかに咲いているだろう世界へと
連れていってくれる
つらくても
切なくても
とにかく
生き続ける
ぐるぐるの太陽を描いて
大きな木を描いて
蝉を描いて
虫取り網を描いた
その頃から
ひまわりは
僕の太陽
でも
ひまわりはひまわりなんだ
僕は多くのものを望み
声を聴こうとした
でも ひまわりはひまわり
何も今は聞こえない
道しるべに ひまわりは咲かない
ビルの隙間から 合図も送らない
ひまわりはひまわり
たった一人で 歩かなければ行けない
今にもとけそうな 道 と
沸騰しそうな血液 を
体の中に時限爆弾のように抱えて
もう ひまわりは ひまわり
今年は 何も聴こえない
と
ひまわりは 僕に伝えた
あまりにノッポで頭でっかち
見上げないと
見えないのだけれど
ひまわりは
黙ってじっと見下ろしている
暑い夏休みの午後
1人虫取り網を持って
歩いてた男の子も
恋をしてスキップしてた
生意気な男の子も
道に迷って
下向いてた男の子も
見ている
だから顔を上げて
見上げる
ことばはなくとも
見上げる
時々忘れる
キミのコトバで 思い出した
見上げる と いうことが
どんなに大切なのか 思い出した
そこには
無限があって
自由があって
季節があって
深呼吸がある
思い出した よ
忘れないようにしないといけない
思い出すように しないといけない
下ばかり向いていた
トボトボ歩いて
猫背になって
どんどんちっぽけな自分になった気がした
デッキチェアを買った
ベランダに置いて
とにかく空を見上げた
ただただ広く
ただただ青く
雲が形を変え
鳥が鳴き
風が顔を撫で
夜になると
月を見上げた
何も変わらない
外の風景があった
何も変わらない風景が
そこにあって
ほっとした