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Go To Zeroを聴きながら

小山卓治を聴きながら夢の国
今日が終わってまた明日

前夜

2010年02月17日 | 小山卓治
〈前夜〉は「ing!」Black盤 1987-2009のDISC2に収録されている。

   いつも憂鬱な会話をくり返した
   同じことを別々に理解して
   どれだけ話しあっただろう
   どれだけ憎みあっただろう
   俺の欲望をしまい込むためには
   狭すぎるこの家を明日出ていく

かつて私も大きな夢を持ち
愛情という鎖で
がんじがらめの家の中で

話し合い
憎しみあい
同じことを別々に理解して
繰り返し
繰り返し
折り合うことのない会話を続けていた。

そしてある日
家を出た。

そして海を渡った。
それは2人の手の届かないところだったから。

できるだけ遠くに行って
鎖を断ち切りたかったから。

   俺の体に2人の熱い血が
   流れてるってことは決して忘れない

あの頃はそんなこと考えもしなかった。
自分の体に2人の血が流れてるなんて
当たり前のことなのに
考えたくなかった、あの頃は。

そして今
この歌を聴き

2人を想う。

とても切なくなるけれど
同時に安らかな気持ちにもなれる。

旅立った母と同じ血が私の中に流れていると実感できるから。

そして細くなった父の腕には
私と同じ熱い血を感じることができるから。

やっぱり私にはあなた達の熱い血が
力強く流れていることを確信できるから。



   前夜


   詞:小山卓治 曲:小山卓治


   いつも憂鬱な会話をくり返した
   同じことを別々に理解して
   どれだけ話しあっただろう
   どれだけ憎みあっただろう
   俺の欲望をしまい込むためには
   狭すぎるこの家を明日出ていく
   ただの1人の男として
   あなたの息子としてではなく
   俺の体に2人の熱い血が
   流れてるってことは決して忘れない

   さよなら父さん
   あなたのような男になるよ
   さよなら母さん
   あなたのような女を探すよ

   俺はこの街で市長になるより
   大統領になりたかったんだ
   あなたが俺を殴った
   痛みも持っていくよ
   あなたもずっと昔 街を出て
   母さんを愛し俺達を育てた
   その時のあなたに
   今の俺はそっくりなはずだ
   2人が俺を息子として誇りに
   思ってくれたことは決して忘れない

   さよなら父さん
   あなたのような男になるよ
   さよなら母さん
   あなたのような女を探すよ

   俺達は互いに不器用なだけだ
   距離を置いてでしか愛せなかった
   だから何も言わないで
   もう哀しむ時なんかじゃない
   俺が生まれた朝のことのように
   今日のことをいつまでも忘れないで

   さよなら父さん
   あなたのような男になるよ
   さよなら母さん
   あなたのような女を探すよ

種の歌/EZO音楽祭・時計台ホール 2/8

2010年02月15日 | 小山卓治
小山卓治が時計台で歌った6曲の中で
〈種の歌〉だけは生声だった。

高い天井に
彼の生声の〈種の歌〉が響き渡った。

たくさんのお客さんがその声に聴き入った。
小山卓治を知る人も、知らない人も。

きっといくつものたんぽぽの種が蒔かれただろう。
蒔かれていつか心に芽を出すだろう。

最新のCD〈ing!〉のフォトアートブックに
タンポポの種が飛んでいる。

それは今にも空っぽの画面に着地して

新しい花を咲かせるように

新しいストーリーをつくりだすように

新しい出会いをつくりだすように

飛んでいる。


   種の歌
   
   詞:小山卓治 曲:小山卓治


   たんぽぽの種は空を飛び
   小さな庭に花を咲かせた
   少女がちっちゃな指で花を摘み
   海を渡る父に贈った
   花は歌う 小さな声で
   笑って、さあ笑って、と

   たんぽぽの種は空を飛び
   国境の丘に花を咲かせた
   赤い雨に打たれ咲く花は
   たくさんの靴に踏みつぶされた
   花は歌う 小さな声で
   笑って、さあ笑って、と

   たんぽぽの種は空を飛び
   廃墟の街に花を咲かせた
   人はみんな黙りこんだまま
   花に気づかずこうべを垂れた
   花は歌う 小さな声で
   笑って、さあ笑って、と
  
   たんぽぽの種は空を飛び
   兵士の墓に花を咲かせた
   両手を合わせひざまずく妻は
   花の上に涙こぼした
   花は歌う 小さな声で
   笑って、さあ笑って、と

   たんぽぽの種は空を飛び
   小さな庭に花を咲かせた
   窓辺のベッドで眠る赤ちゃんの
   かたわらにそっと花は飾られた
   花は歌う 小さな声で
   笑って、さあ笑って、と

路傍のロック/札幌楽天舎ライヴ2/7

2010年02月11日 | 小山卓治
北海道まで誰かに会いにいくなんて
久しぶりのことだ。

前回は、10年前の2月だった。
といってもそのとき会いにいったのは
「神田日勝(かんだ にっしょう)」
という32歳で亡くなった画家の絵画。
どうしても本物に会いたくて
鹿追町の神田日勝記念美術館までわざわざ出かけていった。

そして今回は小山卓治を聴きに。

神田日勝の残したものは素晴らしいけれど
彼はもういないから
その感動はどうしてもそこで留まってしまう。

生きて唄い続ける小山卓治は
聴くたびに新鮮な感動をくれるから
その言葉に触れるたびに変化を感じるから
何か足りないものは何なんだろうと考えさせてくれるから
だから聴きにいくのかもしれない。

   何か足りない
   いつも足りない
   もどかしい
   確かにあるのに
   手に取れそうで
   見たこともない
   生きるヒント探すために歌う
   路傍のロック

きっと、死ぬまでわからないだろう。
そこにあるけど見えない
触れそうで触れない
絶対あるのに何があるのかわからない。
考えれば考えるほど形がなくなっていく。

ずっと探し続けるのだろう。
だから人はそれぞれの路傍のロックを唄い続ける。

バンドでの〈路傍のロック〉は
イントロがかっこよくゾクゾクするが
ソロのアコギでのそれも好きだ。
詞のよさをじっくり聴ける。



   路傍のロック
   
   詞:小山卓治 曲:小山卓治


   それは深夜 恋人の元へ飛ばす車のスピードの中にある
   それは夕暮れ ほとりと落ちてまだ香るつばきの濃い赤の中にある
   それはかつて 生まれたばかりの君を抱いた父のプライドの中にある
   それはいつか たどり着けると信じてた約束の場所の裏通りにある

   手に取れそうで
   見たこともない
   生きるヒント探すために歌う
   路傍のロック

   それはあの日 待ち合わせした街角で口ずさんだメロディの中にある
   それはさっき ふと見た君の横顔に初めて浮かぶ陰りの中にある
   それは昔 力でねじ伏せられた男が見上げた空の中にある
   それははるか 彼方に人が描いてた希望の祖国の設計図にある

   手に取れそうで
   見たこともない
   生きるヒント探すために歌う
   路傍のロック

   それは朝 高層ビルのてっぺんを最初に照らす光の中にある
   それは夕べ ベッドで何度も結んだふたつの体の熱の中にある
   それは明日 誰かが犯す罪に課せられる判決の中にある
   それは今 何かに急かされ立ち上がり歩きだした道のかたわらにある

   何か足りない
   いつも足りない
   もどかしい
   確かにあるのに
   手に取れそうで
   見たこともない
   生きるヒント探すために歌う
   路傍のロック